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ミステリの祭典

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E-BANKERさんの登録情報
平均点:6.00点 書評数:1859件

プロフィール| 書評

No.239 6点 死者のノック
ジョン・ディクスン・カー
(2010/05/16 17:19登録)
フェル博士の探偵譚。
実在の推理作家コリンズ幻の作品「死者のノック」を真似た犯人が密室殺人を企てるという内容。
「密室」という言葉に惹かれて本作品読んでしまうと、ガッカリすること請け合いです。
ごく単純な錯誤を利用したトリックですし、実はあまり殺人事件の本筋には関係ありません。
今回、フェル博士はあまり出番がなく、ラストで真犯人の指摘をするのが唯一の見せ場。
本作品は、むしろフーダニットとして割合よくできているので、フェル博士がきっちり伏線を回収して真犯人を指摘してくれるのがいいですね。
その点ではまあまあ評価できる作品かもしれません。
ただ、地味ですね・・・


No.238 5点 ガラス張りの誘拐
歌野晶午
(2010/05/16 17:05登録)
ノン・シリーズで作者初期の誘拐物。
うーん、あまり感心しませんでしたねぇ・・・
「なぜ、身代金の引渡しをあろうことか警官警備による衆人環視の中でやるのか?」というのが本作品のメインプロットとなるのですが、その理由が今ひとつ納得できません。
それと、人物描写がイマイチのせいか、ストーリー自体の緊張感にも欠けていて、誘拐物独特のサスペンス感も特に感じません。
プロットとして魅力的な気はするので、書きようによっては結構面白い話になったんじゃないかなぁと思うと、ちょっと残念な気が・・・


No.237 5点 そして扉が閉ざされた
岡嶋二人
(2010/05/09 17:31登録)
作者の代表作の1つと言っていいでしょう。
密閉空間に閉じ込められた事件関係者4名が、3か月前の事件の真相に迫ります。
プロット自体は特に捻りがなく、読者には解決のための材料が事前には与えられないため、とにかく読み進めていくしかありません。
正直、シェルターから何とかして脱出しようとする「くだり」は事件に何ら関係がないので、最小限にとどめてもいいのになぁ・・・と感じます。
ラストももうひと捻り欲しいですねぇ・・・(欲張り?)


No.236 5点 天に昇った男
島田荘司
(2010/05/09 17:16登録)
「秋好事件」からの一種のスピンオフ作品。
島田イズムともいえる、「冤罪事件」と「死刑廃止論」をベースに、ミステリーというよりはファンタジー作品でしょう。
冒頭の死刑執行シーンは、他作品でも割合目にするシーンですが、作者の筆力差のせいか、十分にリアリティ・迫力を感じさせます。
「本当にそんなことってあるの?」と思わせますが、ラストシーンでは一応オチが付くようになっています。だからこそ、途中の話が浮いてしまって、意味のないものを読まされた感がどうしても残ってしまいます。(夢オチと一緒ですね)


No.235 9点 告白
湊かなえ
(2010/05/09 17:03登録)
第6回本屋大賞受賞の作者デビュー作。
「冠」に違わぬ文章力とプロットが光ります。
他の書評者の方は第1章を絶賛されているようですが・・・個人的には、第2章から展開される事件関係者視点のストーリーが本作品の”深さ”を醸し出しているような気がします。
本作品では「父親」という存在が徹底的に無視されていますねぇ・・・
「母子」の歪んだ愛情の中から起こってしまった殺人事件。確かに、子供にとって母親というのは唯一無二の存在なのでしょうけど、じゃ父親って何?と(父親でもある)私は思ってしまいました。
ラストは救いがないですねぇ。迫力はありますけど・・・


No.234 7点 ザ・ジョーカー
大沢在昌
(2010/05/09 16:47登録)
殺人も引き受ける便利屋「ジョーカー」を主人公とした連作短編集。
何となく、現代版「必殺仕事人」といった雰囲気も感じます。
①「ジョーカーの当惑」:出張マッサージ業界の裏事情についても知ることができます。
②「雨とジョーカー」:「新宿鮫」にも登場した改造銃作りの名手「木津」と肩を並べる男が登場。
③「ジョーカーの後悔」:一人の少女を媒介として、最後はちょっとしたいい話でオチがつきます。
④「ジョーカーの伝説」:本作品のベスト。昔の恋人が実は・・・という展開。ラストはハードボイルドしています。
他2編の全6編。
それほど重くなく、読みやすさを追求した作品集という感じでしょうか。


No.233 7点 倒錯の帰結
折原一
(2010/05/05 13:52登録)
「倒錯」シリーズの完結編。
本作品は「首吊り島」と「監禁者」という2作品が背中合わせになっており、2作で1作という凝った作りになっています。
いや、評判悪いですねぇ・・・
どの書評をみても、まさに「批判一色」という感じです。
確かに批判する方の気持ちはよく分かります。「首吊り島」であれだけ魅力的な謎の提示をされて、もう一歩というところで「監禁者」へ・・・そこで解決されるかと思いきや、なにやら訳の分からない展開になり、そのままラストへ・・・
数々の?に収束をつけないまま、たいへん都合のいいエンディングになってます。
まぁ、そういう批判を理解しつつ、あえて今回はこの評点としています。
何しろ、山本安雄と清水真弓と大沢芳男が出てきて、これだけ縦横無尽に(作品中で)暴れてくれれば、本望というものです。(折原好き以外には分からない感覚かもしれませんが・・・)


No.232 6点 チャイナ蜜柑の秘密
エラリイ・クイーン
(2010/05/05 13:41登録)
国名シリーズの第8作目。
シリーズ中でもかなり「異色」の作品という評判です。
本作品のテーマは有名な「あべこべ殺人」。
殺人が行われた部屋の中で、なぜか被害者は服をあべこべに着せられ、家具などもあべこべの向きにされています。
問題は、当然「なぜ真犯人はあべこべにする必要があったのか?」というところになるのですが、これは私の頭や価値観では理解不能でした。
そもそも、この時代の「中国」という国に対する見方や、欧米の生活習慣?が分かってないと、これを見破るのは無理でしょう。
密室についても説明はあるんですが、正直理解できませんし、エラリーがあれだけ拘った「タンジールオレンジ」についても、「それはないでしょう!」という解決法でした。
本作を当時NYタイムズ紙が激賞したそうですから、欧米社会にとってはたいへん分かりやすい作品なのかもしれません。


No.231 6点 栄光一途
雫井脩介
(2010/05/05 13:27登録)
作者の処女長編作品。
日本の柔道界とドーピング問題をベースに、主人公が事件に巻き込まれていくという展開。
まずは、作品の設定・舞台そのものが珍しいことや、筆致もデビュー作とは思えないほど達者なため、グイグイ読み進めていけます。
中盤は若干モタモタするんですが、終盤は一気呵成にドンデン返しの連続・・・というふうに解説でも書かれていますが、ただ個人的には最後のオチはいらなかったですねぇ・・・
なんか最後にきて、救いのない話になってしまったような気がします。
主人公の篠子は柔道界を去り、次作「白銀を踏み荒らせ」では何とアルペンスキー種目に転進します。(なんか無理あるような気がしますけど・・・)


No.230 7点 イニシエーションラブ
乾くるみ
(2010/05/05 13:15登録)
「叙述トリック」で評判の作品。
今回あえて予備知識ゼロで読了しました。(本当に)
普通に読み終えてしまうと、80年代を舞台にした切ないラブ・ストーリーそのものですから、「どこがミステリー?」と思うしかなかったんですが・・・
というわけで、今回だけは2度読みする前に「解説サイト」を閲覧することに・・・
「なるほどね」・・・多分ほとんどの読者はそういう感想になるんじゃないでしょうか。
でも、これは80年代という時代に思い入れがないと楽しめないかもしれませんねぇ。
あと、個人的には繭子の行動には若干納得できないところもありますけど・・・2人に同じ○○○を付けるなんて!


No.229 4点 凶区の爪
竹本健治
(2010/04/30 21:32登録)
囲碁の天才、牧場智久を探偵役としたシリーズの一作。
辺鄙な田舎の村で強大な権力と富を握っている一族、そしてその一族には美人3姉妹や行方不明になった叔父、そして大昔の陰惨な伝説が残る・・・という設定はまるで横溝の「獄門島」を思い起こさせます。
本書の「謎」の中心は、なぜ昔の伝説になぞらえて殺人を行ったのかという、いわゆる「見立て」の意味を問うものなのですが、そこが何とも曖昧というか納得できない感じです。
真犯人についても、意外性はありますが、そもそも一族との関係について、読者に全く材料を与えられてないため、「なんで?」という感想しか持ちませんでした。
ちょっと「狙いすぎ」ですかねぇ・・・


No.228 7点 陰の季節
横山秀夫
(2010/04/30 21:23登録)
D県警を舞台とした連作短編集。
粒ぞろいの作品集といっていいでしょう。
①「陰の季節」: 警務課二渡警視が主人公。二渡は他の3作にも登場する本書のキーパーソンです。本作は、元刑事部長が天下り先を辞めない理由について、思わぬラストが控えています。
②「地の声」: 監察課新堂警視が主人公。ラストの捻りが効いていてなかなか考えさせられます。
③「黒い線」: 婦人警官にスポットライトが当てられます。女性から見ればこういうのは許せないのでしょうね。
④「鞄」: 秘書課柘植警部が主人公。組織の中で勝ち上がる厳しさに慄然とさせられます。
普通の「警察小説」は現場の捜査官(刑事とか)を主人公として事件の解決を追っていくのに対して、本書は警察内部の抗争や組織の中の争いを扱っている点が大きく異なっており、そういう意味で「今までなかった警察小説」というべきなのかもしれません。(解説の北上氏も触れてますが・・・)


No.227 5点 現金強奪計画―ダービーを狙え
西村京太郎
(2010/04/30 21:06登録)
スピード感のあるクライムノベル。
1人の青年を主人公に、7人の若者が日本ダービー売上金の強奪に挑みます。
綿密な作戦により、現金強奪計画が成功したかと思いきや、「そうは問屋が卸さない」とでも言うべき展開に・・・
背景には70年代という時代性を引きずっている部分が見え、この時期の氏の作品らしさが窺えます。
ただ、「暗い」作品ではなく、ラストはまるで映画のワンシーンのような感じ・・・(ちょっと安易ですが)
蛇足ですが、氏の作品としては珍しいくらい「夜の営み」シーンが多いのも本書の特徴でしょうか。


No.226 7点 銀行仕置人
池井戸潤
(2010/04/26 23:16登録)
なにやら、故藤田まこと主演の時代劇のようなタイトルですが・・・
作品の内容としては、主人公の銀行員が銀行の上層部に嵌められ左遷→→内部に味方を得て上層部の悪事をあばき、見事に仇を討つ・・・という展開。
作者の長編によくあるパターンです。
本作は、銀行内部の専門的な用語や職務内容に触れている部分が比較的多いため、一般の読者にはやや分かりくい所があるかもしれません。
ただ、プロットとしては銀行版の「勧善懲悪痛快娯楽作品」なので、肩の凝らない読みやすい作品に仕上がっているとは思います。
しかし、銀行って「ドロドロ」したところですね・・・氏の作品を読むとつくづく感じてしまいます。


No.225 6点 憎悪の化石
鮎川哲也
(2010/04/26 23:08登録)
鬼貫警部シリーズの代表作の1つ。
本作品もやはり典型的な「アリバイ崩し」ものです。
2つのアリバイトリックが鬼貫によって崩されるわけですが、個人的には2つともちょっと違和感があります。
1つ目のトリックについては、鬼貫の解法こそ鮮やかですが、かなり偶然性に頼った方法のように感じます。
2つ目は時刻表頼みというか、「知識の有無」だけでトリックが成立している点でどうかなぁ・・・という感想。
ただ、トータルで見れば、読んでいて安心感を感じるほどの完成度の高い作品なのは確かだと思いますし、これぞ「鬼貫」物と言うべき作品という評価でいいでしょう。


No.224 7点 三つの棺
ジョン・ディクスン・カー
(2010/04/26 22:58登録)
フェル博士の探偵譚。
言わずと知れた、作者を代表する「密室物」の大作。
ただ、本作品の評価は難しいですねぇ。
特に「密室」の構成については、実現性にどうしても疑問符がつくような気がしますし、トリックに使ったある道具についてもあまりに奇術的要素が強すぎる感じです。
ただ、そういう齟齬を補って余りある「謎」の面白さが本作品にはありますね。
同日に起こった2つの銃による殺人・・・見た目には「不可思議」としか言いようのない状況なのですが、それがフェル博士によって(まるで見てきたように)解き明かされる瞬間は、やはりカタルシスを感じます。
そういう意味で、本作は「密室物」というよりは、むしろ一種の「アリバイトリック」の方が素晴らしいと言えるかもしれません。
有名な「密室講義」は蛇足かもしれませんねぇ・・・


No.223 7点 北列車連殺行
阿井渉介
(2010/04/22 20:43登録)
牛深警部(本作ではまだ警部補)の列車シリーズ第1弾。
松島刑事とのコンビも本作からです。
列車シリーズは鉄道に絡めた「不可能状況」の連続がウリのシリーズですが、その点ではあまり高いレベルとは言えないでしょう。
中学時代の同級生連続殺人事件に「竹取物語」のストーリーを絡め、一種の「見立て殺人」的要素も取り入れていますが、残念ながら「怨恨」以外に見立ての必然性はありません。
ただ、雰囲気が好きなんですよねぇ。牛深のキャラクター造形の影響かもしれませんが、読後の余韻が非常に強く残ります。


No.222 6点 日曜の夜は出たくない
倉知淳
(2010/04/22 20:35登録)
作者の処女短編集。
猫丸先輩シリーズ。
①「空中散歩者の最期」: 真相で出てきた図を見ても、今ひとつ納得できなかったんですけど・・・
②「海に棲む河童」: 趣向は面白い。しかし、猫丸先輩は神出鬼没ですねぇ・・・
③「163人の目撃者」: 短編らしい作品。この中では割と正統派な作品。
④「生首幽霊」: タイトルは恐ろしいが、謎自体はやや陳腐な感じ。取り違えはすぐに気付くと思うのですが・・・
⑤「日曜の夜は出たくない」: 恋人が実は殺人者? というよくある趣向。あまり感心はしない。
というわけで本編7作はまあまあという水準。
ただ、この作品のハイライトはこの後の「オマケ」・・・
でもさすがにそれは気付かないよなぁ・・・ 
それに気付く人がもしいるなら素直に尊敬します。


No.221 6点 後鳥羽伝説殺人事件
内田康夫
(2010/04/22 20:24登録)
作者の長編第3弾は、十津川警部と並ぶ2時間サスペンスドラマ御用達探偵、浅見光彦の初登場作品。
ただ、広島県北で起こった事件の当初は、地元警察の部長刑事が探偵役であり、頭の固い県警の上司とぶつかりながら、自分の推理を信じ捜査を進める・・・ということで、信濃のコロンボ(浅見と並ぶ内田作品の主人公)のような展開です。
ただ、最終的には浅見がほぼ独力であっさり解決してしまいますが、最近の作品にはない「ロジック」が多少は感じられます。(ミエミエですが意外な犯人と言えますし・・・)
後鳥羽上皇の伝説については、軽くさわる程度ですので、その辺りは期待しない方がいいでしょう。


No.220 6点 Zの悲劇
エラリイ・クイーン
(2010/04/22 20:13登録)
ドルリーレーン4部作の第3弾。
名作「Xの悲劇」「Yの悲劇」から10年後が舞台であり、レーンは70歳を過ぎすっかり老境に入ってしまい、盟友サム警視は警察を退職し、私立探偵として活躍中・・・
この作品、他の方の書評どおり、読み所はラストシーン。意外な真犯人指摘まで、レーンの怒涛のような「消去法的推理手法」が披露されます。
確かに、この消去法を成立させるための伏線は見事ですし、本シリーズのレベルの高さを感じます。
ただ、途中の展開がちょっとまだるっこしいというか、今ひとつ緊張感に欠けるような部分が気になり、こんな評価になりました。(別にペイシェンスのせいではないと思うんですが・・・)

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