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ミステリの祭典

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正月十一日、鏡殺し

作家 歌野晶午
出版日1996年09月
平均点6.47点
書評数17人

No.17 7点 蟷螂の斧
(2023/05/22 05:54登録)
①盗聴 6点 「カチカチドリを秋葉原で飛ばせ」という意味不明な会話を傍受・・・童話(盗聴を兄に知られ笑える)
②逃亡者大河内清秀 7点 女の子に声をかけられ好きになってしまう。友人は詐欺というが・・・逃亡者の手記(コミカルで楽しめる)
③猫部屋の亡者 7点 猫好きな彼女を殺してしまった。翌日から彼女の声が聞こえ始めた・・・悪霊妖気退散(気がおかしくなっていく様子がうまい)
④記憶の囚人 5点 主婦が錆びた玄関の鍵を握って殺されていた・・・アルコール依存症(読者を混乱させる幻想的な詩は微妙)
⑤美神崩壊 8点 マンションを訪ねると彼女の顔は傷だらけであった。病院へも警察へも行きたくないという。レイプ?・・・美貌(「最後の一行」物が好きなもんで)
⑥プラットホームのカオス 7点 問題児の中学生が担任教師と同級生の目の前で電車に撥ねられた・・・告発された同級生(遠くから見るとそうなるか)
⑦正月十一日、鏡殺し 8点 夫を事故で亡くしてからは、義母が疎ましくなってきた・・・鏡餅(やるせなく、救いのない物語)

No.16 7点 虫暮部
(2021/08/12 11:32登録)
 前半は“リミッター装着済み”って感じで、特に「盗聴」は物足りない。後半はそれを解除、「美神崩壊」は十年後も夢に見そう。
 “作風のヴァリエーション”ってことではあるが、こんな風に明確に並べてしまうと、後半を引き立たせる為に前半を捨て駒にしたように思えてしまう。と言うか、私に対してはそのように機能した。

No.15 6点 メルカトル
(2020/07/25 22:25登録)
彼女が勤めに出たのは、このままでは姑を殺してしまうと思ったからだった―。夫を亡くした妻が姑という「他人」に憎しみを募らせるさまを描く(表題作)。猫のように性悪な恋人のため、会社の金を使い込んだ青年。彼に降りかかった「呪い」とは(「猫部屋の亡者」)。全七編収録。鬼才初の短編集を、新装版で。
『BOOK』データベースより。

作を追うごとに悲惨な話になっていく、ホラー風味のミステリ七編。最初の『盗聴』辺りは比較的真っ当で後味も悪くはないですが、他はブラックで陰鬱な雰囲気の漂う作品が目立ちます。もう少し捻りが欲しいところですね。良くも悪くも歌野らしい短編が並んでいると思います。結局最後の表題作に根こそぎ持っていかれましたけど。これを読むと他の作品が霞んで、一瞬全て忘却の彼方に追いやられると言うか、他はどうでも良くなってしまうような感覚を覚えますね。

ですから、この6点という評点は表題作が支えていると言っても過言ではありません。逆に言えばこれが無かったら5点でしたね。特に『記憶の囚人』は意味が解りませんでした。内容が頭に入って来ませんでした。いつも思うんですけど、この人の文章はあまりプロらしくない気がして仕方ありません。まあ私だけだけでしょうけど。

No.14 6点 まさむね
(2011/11/08 21:57登録)
 7話からなる短編集。
 第1話の「盗聴」はノーマルなミステリーですが,次第にブラック度が上昇し,最終話「正月十一日、鏡殺し」に至っては,これ以上ない程真っ黒に。物凄い後味でした…。
 とはいえ,「裏本格」は堪能させていただきました。個人的には「記憶の囚人」の見せ方に感心しましたね。出だしは「はぁ?」って感じなのですけれどもね。

No.13 6点 kanamori
(2010/07/13 22:18登録)
作者独特のテイスト・持ち味が確立したのは、この短編集からではないかと思っています。
たしか”裏・本格”と称されていたと思いますが、旧来型のトリックを重視することなく、意外な方向から読者に驚きを与える作風の短編が揃っています。

No.12 7点 E-BANKER
(2010/06/01 23:03登録)
ノンシリーズの短編集。
他の方の書評どおり、ブラックな7つの短編で構成されています。
①「盗聴」: ノーマルな短編。世田谷線は私も好きです。
②「猫部屋の亡者」: 正常だった主人公が徐々におかしくなっていく様子がなかなかの迫力。
③「記憶の囚人」: よく意味が分からないんですけど・・・
④「美神崩壊」: 個人的にはこれが一番ブラック。
⑤「プラットホームのカオス」: ブラック感はそんなにないと思うが・・・
⑥表題作: 救いのない話。女って怖いね・・・
他1編。読後にザワザワした余韻を残す作品になっています。
作者は短編がうまいですね。

No.11 6点 simo10
(2010/01/12 21:00登録)
7つの短編で構成されており、読み進むに従って、深い闇へ落ちて行きます。
ダークなお話、悲惨な結末が好き!っていう人にオススメです。

①「盗聴」:その後の暗さを感じさせない、まあまあ健全(?)なお話。
②「逃亡者 大河内清秀」:上に同じ。
③「猫部屋の亡霊」:ダークだけど、コミカルな表現で笑えた。悪気はない分、彼女が可哀相だった。
④「記憶の囚人」:内容も怖いけど、語りが怖い。
⑤「美神崩壊」:タイトルのインパクト通りの内容。怖い。
⑥「プラットホームのカオス」:個人的には4番目のダーク度かなと思える。
⑦「正月十一日、鏡殺し」:タイトルからは予想もつかないホラーなお話。電車で読んで思わず頭を抱えてしまった。

オチこそあるけれどミステリとはちょっと違うかな。

No.10 5点 いけお
(2009/09/03 00:54登録)
良くも悪くも短編集らしい内容。

No.9 6点 シーマスター
(2009/01/11 20:51登録)
読みやすくて(第1話を除き)読後感の宜しくない作品が、[暗鬱度]弱→強の順に並んでいる「裏本格」短編集。

いくつかコメントすると・・・
『記憶の囚人』(第4話)は運命に打ちのめされた人々の心の闇と狂気がもたらすトラジディをミステリに仕上げた話。韻文詩調の地文で霧深いスコットランドを鬱々と演出した面白い構成になっている。
続く『美神崩壊』でのグロテスクなフィジカルダメージと陰惨なカタストロフィは底知れぬどす黒さ(or赤黒さ)以外の何物も残さない。
そして表題作での、〈彼女〉の精神を粉砕する壮絶な悲愴劇は何に例えんや・・・・・・・・Kyrie,eleison
                            
歌野氏は決してミゼラブルな話ばかり書く作家ではないが、彼らしい「読む者を引っ張る巧さ」が出てきたのは本作辺りからではないかな?

No.8 9点 Q
(2005/04/21 19:24登録)
いや、眩暈しますね。暗鬱で。

No.7 7点 ギザじゅう
(2004/11/28 16:41登録)
裏本格というものを、非常に楽しんで読めた。
黒々としたカオスのような作品でありながら、しっかりと伏線をはっている、まさに裏『本格』であった。また、日常的な出来事や最近の風潮などを取り上げているだけに、恐怖感も倍増。
特に表題作と「美神崩壊」が良かった。

No.6 6点 留吉
(2004/09/28 09:57登録)
相変わらず独特の重鬱感とコンパクトな文体で読ませてくれる。
・『盗聴』 この作者にしては極めて珍しい、健全な読後感を残す作。
・『猫部屋の亡者』 加害者が「あるもの」に気づかず妄想に捕らわれ破滅していく話だが、普通気づかないはずがない。
・『プラットホームのカオス』 題名通り、込み入った構成になっているが、謎解きよりも(いじめや教育問題にかすりながら)浅はかな人知と運命の悪戯により、幼気な命が無駄に失われる痛ましさとやりきれなさがフィーチャーされている。
・表題作 運命が人間を嘲嗤う様をさらに陰惨な形で具現化、あるいは、人は悲劇を回避し得るかという問いに対する、作者自身のアレゴリカルな考察提示なのかもしれない。
 
 こういう短編集は深く考えずに読み流すべきものなのだろうね。 

No.5 6点 なの
(2004/09/17 14:44登録)
何て言うか・・・嫌〜〜な気持ちになります。
どうにもブラックな話が多くて・・・。
『猫部屋の亡者』と『正月十一日、鏡殺し』が良かったですね。
『猫部屋の亡者』は、救済と採れなくも無いのですが、
『正月十一日、鏡殺し』は、真っ黒けっけで欠片も救いがありません・・・遊美ちゃん・・・合掌。

No.4 7点 桜ノ宮
(2004/07/14 23:31登録)
『記憶の囚人』と、『正月十一日、鏡殺し』が好きです。
父は『美神崩壊』を電車内で読んでいて、あまりのグロさに途中で1回降りて休憩をとったそうだw

No.3 7点 ハッチ
(2003/09/15 22:37登録)
相変わらず細かくトントンとまとまりのあるミステリを書き、相変わらず読後感がおっそろしくダーク。表題作はかなりこたえた。ああいう頼りにならない馬鹿な息子が身内にいるだけに、安直に精神科を勧める態度は読んでて本当頭にきた。ああいうやりとりが現実にある事を知ってて書いたのならやっぱり凄いや。だからラストはかなり痛かった。

No.2 6点 じゃすう
(2003/06/23 11:25登録)
ダーク。嫌いじゃないですけれど。
でもやっぱり、気分悪くなりますよ。
『盗聴』と『プラットホームのカオス』が、それなりに凝っていて好きです。

No.1 6点 テツロー
(2002/06/04 00:57登録)
 「盗聴」「逃亡者 大河内清秀」の2作は、まだ本格っぽく読めた。最初に謎があって、その解答を主人公達が推理する、そのオーソドックスな形で、まとまりも良い。後、「盗聴」のタイトルは「カチカチドリ飛んだ」にした方が読者の気を惹くだろうに、と最初考えたのだが、よく考えたら「どんどん橋落ちた」のパクリでしたね。
 その他の作品は、どちらかと言えばサイコ物寄りに思えて、僕にとっては重い作品群だった。
 「プラットホームのカオス」少年法や体罰反対の風潮を利用するだけ利用して、犯罪を権利として振舞う少年。本当に嫌な風潮だ。
 「猫部屋の亡者」あー、嫌な女。
 「美神崩壊」あー、怖い女。
 表題作、あー、遊美ちゃん、いい子だったのに。
 読後感は一言、ブラックです。

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