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ミステリの祭典

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江守森江さんの登録情報
平均点:5.00点 書評数:1256件

プロフィール| 書評

No.456 6点 流星の絆
東野圭吾
(2009/09/15 07:40登録)
※察しの良い方にはネタバレになるかも
3兄弟の両親殺害事件だが、残されたビニール傘のロジックを名刑事(例えば作者の持ちキャラなら加賀恭一郎)が突き詰めていたら、時効寸前まで引っ張られる事件たりえない(精々ロジカルな短編か二時間ドラマの脚本にしかならない)
それを、名探偵(刑事)が介入しない為の意外な犯人を設定(此方は綾辻の某作品等、良く使われる)し、違った方向に話を膨らませ、これだけ読ませる作品にする辺りが東野圭吾の面目躍如だと思う。
ハヤシライスの食べ歩きをしたくなった読者も多い筈で、東野作品らしく洋食屋とタイアップも考えていたのかも?
ミステリとしての弱さをストーリーで消し去る=私の嗜好の対極にある作品。
小説としての面白さを評価基準の一番手にする方の採点なら高評価でも頷ける。


No.455 4点 レイクサイド
東野圭吾
(2009/09/14 11:00登録)
東野圭吾は、ある時期を境に私の嗜好する本格ミステリの対岸に突き進む作家の代表になってしまった。
それ故に、常に辛い採点になってしまう。
東野作品のメディアミックスの弊害か小説より先に映像化作品に接する事が多く、その後に小説を読んで喜びが増した事がない。
この作品もそんな一例だった。
それでも、小説を先にすれば・・・と後悔しないのだから、私にとっては、その程度の物なのだろう。
唯一嬉しいのは読了に時間を要しない事だろう。


No.454 2点 秘密
東野圭吾
(2009/09/14 10:30登録)
東野圭吾作品だからといって、この作品をミステリーの範疇に含めて良いのだろうか?
これを認めるなら五十嵐貴久「パパとムスメの7日間」や映画「転校生」の原作「おれがあいつで〜」もミステリーと認めねばなるまい。
私的に、それは「断じて嫌だ」との思いがこの採点にした理由。
単に小説として評価すれば東野圭吾の標準レベルはクリアしている。
チョロチョロと東野作品を読みながらも何故だか東野作品を褒めたくない(好きになれない)自分がいる。


No.453 6点 六色金神殺人事件
藤岡真
(2009/09/13 11:15登録)
出だしは伝奇ミステリーに不可能犯罪を絡めたガチな本格作品の雰囲気だった。
これまた壮大な駄ボラ話に近いのでサラッと読み進められる。
第二部で早々に明かされるオチに脱力し、更に先の捻った真相もそのまま通過し、結末の小説としてのオチで極限まで脱力した。
脱力させるオチとそれに連動したトリックは別にして、細かなロジックはしっかりしているので脱力系本格ミステリとでも称せばよいのかもしれない。
驚きより脱力感が強く高評価したくない。


No.452 6点 ゲッベルスの贈り物
藤岡真
(2009/09/12 19:10登録)
※始めに
本格ミステリの主流が、こちらの方向に向いている今こそ読み頃かもしれない。
さて、一応内容だが「殺人者のわたし」と「一応探偵役のおれ」の二視点から描かれ、些細な謎が壮大な駄ボラ話に転じながら収束する。
※ここから大幅ネタバレ注意!
全編に渡り叙述塗れで騙し(驚き)に奉仕している。
それ故に人間描写も捨て駒扱いなのはご愛嬌。
駄ボラ話である事で気楽に読め、展開がスピーディーで、あっと言う間に読了した。
大ネタが野球(特に阪神)ファンには余りに見え見えな為にエピローグ手前までは並な作品の域(5点レベル)を出ないと思っていた。
しかし、皆さんが褒める小ネタには上記の評価を改める笑い(+1点)があった。


No.451 6点 ヨギ ガンジーの妖術
泡坂妻夫
(2009/09/10 18:11登録)
この後、素晴らしい仕掛け本を2作品世に送り出したヨギ・ガンジーシリーズ第一弾。
妖術(マジック)のネタワリを本格ミステリに仕上げた作品集。
仕掛けがなくオーソドックスな本故に後の2作品より評価は下がるが、本格ミステリとして内容は濃く、6つのマジックネタを楽しめ仕掛け抜きなら此方の方が上だと思う。
どちらにせよ、後の2作品を楽しむ予行演習として読んでおきたい。


No.450 7点 生者と死者 酩探偵ヨギ ガンジーの透視術
泡坂妻夫
(2009/09/10 14:59登録)
特殊な装丁な為に限られた部数で絶版となり、今では装丁した印刷所も閉鎖され、手間を考えると再販の見込みもない。
所蔵図書館も極僅かなので手にするのに苦労した。
私が手にした本は袋綴じは裁断済みだが見出しと読み方を付す親切さだったので仕掛けは充分楽しめた。
短編でダブルミーニングの一方の徹底とシリーズキャラを排す事、長編ではダブルミーニングのもう一方を徹底する事で短編を長編に埋めて消し去る超絶技巧が炸裂する。
肝心のミステリとしての内容だが、短編は消え去る為にのみ存在し、長編も‘このシリーズ’らしいがマジックのネタワリ小説の域は出ず平凡だった。
同シリーズの仕掛け本「しあわせの書」は実演に使えるが、此方は使えない為1点低い評価にした。


No.449 5点 盗作・高校殺人事件
辻真先
(2009/09/09 10:59登録)
このサイトで書評を始めた頃に再読したが、作品登録が無かったのでスルーしていた。
前作同様に仕掛けの為にスッキリさに欠けた印象が拭えなかった。
発表当時にジュヴナイルで、これだけ試した事が現在の本格ミステリ大賞受賞に繋がって嬉しい思いはある。


No.448 6点 スイス時計の謎
有栖川有栖
(2009/09/09 10:38登録)
表題作が他のデキの良いネタと併せて「双頭の悪魔」的長編か、又は他の収録作を厳選していれば「葉桜〜」が評価の割れる作品だっただけに本格ミステリ大賞を受賞出来たと思う。
そうなれば、以降に書かれた有栖・歌野・三津田の作品は今と違ったかもしれない・・・。
「あるY〜」は現・大阪府知事(橋下)オチに、「女彫刻〜」は聞き違いに苦笑しただけの作品だった。
「シャイロック〜」のトリックは清張「砂の器」で映像化されないトリック並みでパッとしない。
唯一、表題作は論理的フーダニットを楽しめた(読者挑戦を付して欲しかった)
しかし、地味でも推理の筋道はロジカルで読み応えがあっただけに、有栖の心情を削り論理パズルに特化した短編か、上記した様な長編ならと思え、中途半端な長さが惜しまれる。
短編集として評価するなら水準レベルの域を出ない。


No.447 8点 探偵小説の「謎」
事典・ガイド
(2009/09/07 22:01登録)
ミステリに目覚めた時期から幾度となく再読している究極の“ネタワリ本”!!
著者が作成した「類別トリック集成」&「分類表」を分かり易く解説している。
膨大な古典作品を読まずして、原点かつ典型的な古典作品の手の内を知ることができる。
※(時間を掛けて古典的名作群に取り組みたい方々は、一区切りするまで接してはいけない)
現在では、この分類を念頭に、更なるアレンジ(捻りや組合せ)で勝負する作品も多々あり、本格ミステリ好きなら教養として必要不可欠だと思う。
これを読んでから現在の本格ミステリを読めば、ネタワリと共に進化したマジック同様に、本格ミステリも進化と変貌を続けている事が認識できる。
又、一部の後退してるとしか思えない作家も分別し易い。


No.446 4点 セーラー服と機関銃
赤川次郎
(2009/09/07 03:24登録)
間違いなく30年前に映画原作として読んだのだが・・・内容の印象が薄い。
薬師丸ひろ子「カイカン」の台詞とタイトルをもじったAV「セーラー服と一晩中」だけが記憶に焼き付いている。


No.445 6点 当確への布石
高山聖史
(2009/09/06 21:07登録)
このミス大賞系の作品で、広範なミステリーの一角にある選挙サスペンス。
票読みや天気と投票率の影響など、先月の衆院選時(翌日の台風直撃が当日だったら・・・とか)に読めば一層楽しめたと思う。
どの道、選挙活動その物がサスペンスなのだから普通に描けば良いだけ。
散らばったエピソードも最後は収束するし、選挙物としては一捻りした結末は楽しめた。
怪しげな影の選挙参謀なオバチャンの存在がニクい。


No.444 3点 警視庁幽霊係
天野頌子
(2009/09/05 15:51登録)
一応ミステリーではあるが、警察&幽霊キャラ萌なシリーズの第一短編集。
霊と話せるのに簡単に事件を解決しない(出来ない)主人公と女子高生守護霊のゆる〜いお話。
自分には合わなかったので、これ一冊しか読んでいない。


No.443 4点 マーダーゲーム
千澤のり子
(2009/09/05 08:44登録)
小学六年生のクラスメート達が始めた「マーダーゲーム」がゲームから一転し現実の事件を引き起こす。
ゲーム途中での小学生達の推理は、小学生らしからぬロジカルさで楽しめる。
しかし、サスペンスとして盛り上がりに欠け、フーダニットとしてもカタルシスが得られず惜しい作品だった。


No.442 4点 さよならの次にくる 卒業式編
似鳥鶏
(2009/09/05 02:32登録)
ラノベ・ミステリーとして米澤穂信の古典部・小市民の両シリーズに及ばない。
本格度は谷原秋桜子の高額バイトシリーズに及ばない。
でも、名探偵な伊神さん他シリーズキャラは素敵なので読んでしまう。
そして、前編終了時に名探偵が卒業し、去ってしまうので後編が気になる。
※注意書き
主人公の葉山君を捨て駒にした第三話で使われる技法に、こんなチープなミステリーで最初に出会ったら、まるで「占星術〜」のネタを「金田一少年」で知った位の無念さを感じると思える(因みに、私は占星術を発表時に読んだので被害は無かった)
故に、ミステリー馴れしてない方は読まない方が良い。


No.441 3点 アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂幸太郎
(2009/09/03 14:04登録)
図書館予約の関係で人気の無い旧作から読む事になった。
ミステリ・フロンティアの初期作品らしい新たな時代のミステリーで作者の才能は伝わってくる。
しかし、この手のミステリーが好みの中心からズレている為に自ずと厳しい評価になる。
しかも、ストーリーにも馴染めない為に流し読みになってしまった。
上手く映像化したと思える映画も観たが、やっぱりストーリーに馴染めず終わった。


No.440 9点 イニシエーションラブ
乾くるみ
(2009/09/03 12:21登録)
※ネタバレ注意。
売る為の工夫に乏しい単行本の不発は納得。
単行本で読み、察しが悪ければ'富島健夫'(エロ青春恋愛小説の大家)擬きと思えるだろう。
一転、文庫では裏表紙の作品紹介で叙述ミステリを謳い、再読に値すると賛辞し、更に再読の為の用語解説を付してブレイクした。
下手すると、これだけ親切な文庫本で読んでも作者の仕掛けを一部しか汲み取れず誤解した儘な読者もいる筈。
A面でマユの処女性に違和感を持ち、B面突入で、その他伏線での違和感拡大から人物違いは察せたので(謳い文句の最後の二行目での)驚きは薄かった。
しかし、A・B面の同時進行性には解説を読むまで気付かず、A・B面の時系列逆転と誤解していた。
解説を見ながら再読し、更に「解析サイト」(満足度に+1点)の詳細解説と首っ引きでもう一度読んだ。
それにより、散りばめられた伏線と作者の隠蔽技術を堪能したので「叙述仕掛けな恋愛小説」として客観的評価の最高点を献上する。
恋愛部分は更に捻り、小説外でのマユを妊娠させた第三の'たっくん'の存在を想像させたり、“結末の先”で暗にマユの状況がオートリバースで繰り返すと察せて切ない。
同世代が描かれ自分の恋愛経験がダブりほろ苦くもある。
※追記
この作品の本質は(単なる叙述ミステリではなく)卑近な恋愛物語で巧妙に隠蔽したホワットダニット(何が起きているのか?)本格であると最近になり思い至った。
※余談
作者についての知識が無い時に読んだので、乾くるみ(←女性だと思っていた)が髭モジャ中年男だった事が最大の叙述トリックだった。


No.439 7点 シルバー村の恋
青井夏海
(2009/09/02 05:16登録)
地方都市のコミュニティセンターを舞台に、ある家族が巻き込まれる様々な事件を描いた「ご近所&家族ミステリ」連作短編集。
各話の主人公が家族内でチェンジする形式。
更に、各話で犯人以上に意外な人が探偵役を務めたりする。
伏線や細かな気付きは、本格ミステリ作家クラブの機関誌「ジャーロ」に掲載された(先の3話)作品らしいデキにある。
更に、ダブルミーニングやミスリーディングの手法が現在その分野のミステリを牽引する‘道尾秀介’を思わせる(思い切り影響を受けたかも?)
そして、人間模様のダークな部分を描きながらもハートウォーミングに纏めたのは作者の真骨頂で素晴らしい作品集に仕上がった。
作者にとっては「赤ちゃんをさがせ」以来の傑作と云えるだろう。


No.438 5点 CSI:NY ニューヨーク 死の冬
スチュアート・カミンスキー
(2009/08/30 13:28登録)
私的・翻訳アレルギー克服企画の第二弾。
これも海外ドラマのノベライズで、人物設定をそのままにオリジナルストーリーになっている。
ドラマ本体が現在の科学捜査主導ミステリーだが本格色が濃いと評判な作品だけにノベライズも本格ミステリだった。
ドラマでもよくある2つの事件を平行して描く形式な為に翻訳小説では少々読みにくい。
しかし、1つが「密室」物、もう1つが犯人を落とすタイプの事件でドラマのイメージを損なわず楽しめる。
これもDVDレンタルして観たくなる相乗効果がある。
※長さ(フィート)・重量(ポンド)・通貨(シリング)等の単位基準が違い、翻訳者が日本で使用の単位に直して翻訳されずイメージが浮かばない為に読書が進まない事が翻訳アレルギーの一因だと感じた。(日本の古い単位はイメージできるのだから不思議な感じもする)


No.437 5点 ボーンズ 深く葬られし者
マックス・アラン・コリンズ
(2009/08/30 13:04登録)
私的に、読書幅拡大に向けて翻訳アレルギー克服企画を遂行する事にした。
まずは、字幕付き海外ドラマで見慣れた作品のノベライズを試してみる。
ドラマの人物設定をそのままにオリジナルストーリーになっている。
好きで観ているシリーズドラマの一つなので読みながら小説→映像のイメージ変換がスムーズで翻訳アレルギーを感じずにアッサリ読了した。
このシリーズ自体が科学捜査主導ミステリーで、ノベライズもドラマ感覚で入り込めるので助かった。
小説単独での評価は普通だがDVDレンタルしてドラマが観たくなる相乗効果は評価したい。

※テレ朝「相棒」のスピンオフ小説に近い感じで楽しむ作品です。

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