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ミステリの祭典

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探偵小説の「謎」
江戸川乱歩

作家 事典・ガイド
出版日1956年06月
平均点7.33点
書評数3人

No.3 6点 クリスティ再読
(2025/12/24 22:52登録)
乱歩のエッセイ集として、昔からポピュラーだった本だ。要するに「続幻影城」に収録された「類別トリック集成」が資料集みたいなものだから、もう少しエッセイ風に補足しながら書き改めたものに、いくつか独立したエッセイを追加した内容である。もともと社会思想研究会の依頼でまとめた本だから、現代教養文庫の文庫本がオリジナルということになる。だから社会思想社が潰れるまでは継続的に手に入れやすい乱歩のエッセイとして親しまれてきたよ。
(豚がガウン着ているカバーが懐かしいな)

なので「意外な犯人」「凶器としての氷」「異様な凶器」「密室トリック」「隠し方のトリック」といったあたりが、「類別トリック集成」の敷衍部分になるわけだ。「密室トリック」はこの本のために新たに書き直したもので、事実上乱歩の密室分類の完成形になる。1956年の本だから、例の「五十一番目の密室」まで言及があったりするよ。「針と糸」の具体的な解説図まで付けているくらいに力が入っている。

なんだけどもね「変身願望」に1章割いて、「大統領のミステリ」に詳しく触れていたりするのが、いかにも乱歩らしいわけだ。まあここらへんの話題はたとえば弟子筋の渡辺剣次「ミステリイ・カクテル」と同工異曲でもある。それでも「探偵小説の根本興味はパラドックスなりと感ず。インポシブル興味とはパラドックス(思想の手品)のことなり」と、自身のメモを参照して述べているあたり、「面白いトリック」と「つまらないトリック」との違いについての言及になっている。学者的な分類というわけでもないんだ。評者もフィージビリティを振り回すのはどうか?と懐疑的なんだけども、それはやはりトリックに「逆説の味わい」があるかどうかを評価ポイントにしていることからでもあるんだね。

しかしね「類別トリック集成」のトリック論から離れた内容の「明治の指紋小説」「スリルの説」といった後半のエッセイは、ふつうに興味深い。「明治の指紋小説」では科学上の指紋による個人同定の進歩に合わせて、指紋を題材にした小説が出てきた歴史がまとめられている。確かに「赤い母指紋」は個人同定がテーマではなくて、それを欺く手段としての悪用の話だから、個人同定がメインの話がいくつかあるはずだ。でマーク・トウェインから2本見つけるのと、明治の英人落語家快楽亭ブラックの「幻燈」が先駆的な指紋小説だという話。たしかになるほど。
最後の「スリルの説」。これはミステリが理知一辺倒ではない、ということを乱歩が力説する。スリラー、大いに結構!と乱歩がしっかり主張。まあ乱歩自身は明智通俗もので一世を風靡したことに忸怩たる気持ちがあったようだけども、この頃は吹っ切れているのかな(いや評者、通俗ものの評価はそう低くはないよ)。でドストエフスキーをスリルの観点で評価するあたり、面白いw。いいじゃないか。そういえば来年はカラマーゾフしないとね。

No.2 8点 測量ボ-イ
(2009/09/18 07:14登録)
ミステリのガイド本、いわゆるネタわり本ですが、乱歩氏の
著作とあって書かれている年代が古く、昭和30年代以降のミ
ステリには原則影響はありません。
でもいわゆる古典作品をこれから読もうという方には、この
本を読むのは暫く控えた方がいいかも知れませんね。
僕が読んだのはかれこれ20年近く前になるかと思いますが、
既読・未読に限らず、トリックの分類がわかりやすくなされ
ていました。有名な乱歩氏による密室分類もこの本で知った
のではと思います(多分)。

本が実家に置いてあり、いつでも手に取る事ができませんが、
また再読したいです。

No.1 8点 江守森江
(2009/09/07 22:01登録)
ミステリに目覚めた時期から幾度となく再読している究極の“ネタワリ本”!!
著者が作成した「類別トリック集成」&「分類表」を分かり易く解説している。
膨大な古典作品を読まずして、原点かつ典型的な古典作品の手の内を知ることができる。
※(時間を掛けて古典的名作群に取り組みたい方々は、一区切りするまで接してはいけない)
現在では、この分類を念頭に、更なるアレンジ(捻りや組合せ)で勝負する作品も多々あり、本格ミステリ好きなら教養として必要不可欠だと思う。
これを読んでから現在の本格ミステリを読めば、ネタワリと共に進化したマジック同様に、本格ミステリも進化と変貌を続けている事が認識できる。
又、一部の後退してるとしか思えない作家も分別し易い。

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