home

ミステリの祭典

login
nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2940件

プロフィール| 書評

No.1280 4点 猫は床下にもぐる
リリアン・J・ブラウン
(2016/06/08 17:43登録)
(ネタバレなしです) 1989年発表のシャム猫ココシリーズ第9作のコージー派ミステリーです。些細なトラブルがやがて凶悪な大事件の謎解きにつながっていくというプロット構想は悪くないのですが、クィラランの推理は最終章でアマンダが言うように「あほらしいたわごと」レベルで、運のよさとはったりで解決したようにしか感じませんでした。クィラランと大工のイギーの漫才みたいなやり取りはなかなか面白かったですけど。


No.1279 5点 デーン人の夏
エリス・ピーターズ
(2016/06/04 05:03登録)
(ネタバレなしです) 1991年発表の修道士カドフェルシリーズ第18作です。1144年4月、懐かしのマーク(かつてのカドフェルの弟子)との再会で物語は幕を開け「死者の身代金」(1984年)に登場した某人物も重要な役どころで出演します。内容は完全に冒険スリラーと言ってよいでしょう。一応殺人事件と犯人探しも用意されていますがストーリーのメインテーマではなく、カドフェルも単なる傍観者的な役回りに留まります。冒険スリラーとしては様々な登場人物の思惑や行動が入り乱れ、どんでん返しの展開がスリリングですが、本格派推理小説を期待する読者には楽しめる部分は少ないと思います。


No.1278 4点 封じられた指紋
アントニイ・オリヴァー
(2016/06/04 04:50登録)
(ネタバレなしです) 英国のアントニイ・オリヴァー(1923-1995)はアンティーク商を営む一方で1980年代にジョン・ウェバーと未亡人リジー・トーマスのコンビを主役にしたミステリーを4冊発表しており、そこにはアンティーク業界にまつわる知識が散りばめられているそうです。ウェバーがフランスで起きた夫婦焼死事件を調査する本書は1985年発表のシリーズ第3作で、本格派推理小説と紹介されている書評も多いのですが犯罪スリラーとして読んだ方がいいと思います。確かに推理によって容疑者を犯人候補から外したりしてはいますが犯人当てミステリーとしては反則級のトリックが使われています。焼死トリックの謎解きも本格派推理小説の常識範囲を超えたものです(確かに意表を突かれましたけど)。


No.1277 6点 嘘から出た死体
A・A・フェア
(2016/06/04 04:38登録)
(ネタバレなしです) 1952年発表のドナルド・ラム&バーサ・クールシリーズ第13作です。もっとも本書のバーサは金勘定ばかりでちっとも役に立っていないのですが(笑)。バーサの援護はなし(秘書のエルシーは影で支えてくれますが)、警察にはにらまれ、ドナルドは四方八方敵だらけみたいな状態に陥りますがそこからの戦局打開はまさに快刀乱麻、複雑な事件背景を一気に解決します。結末も痛快に締めくくっています。


No.1276 4点 カモミール・ティーは雨の日に
ローラ・チャイルズ
(2016/06/04 04:20登録)
(ネタバレなしです) 2005年発表の「お茶と探偵」シリーズ第6作で、ランダムハウス文庫版の巻末解説ではこれまでの作品とは違うように評価していますが謎解きとしては特に変化は感じません。強いて挙げるなら容疑者数が少ないので早い段階で犯人の見当がつきやすいことでしょうか。セオドシアの日常の人間関係に関しては前作「ジャスミン・ティーは幽霊と」(2004年)を読んだ人はちょっと驚くかもしれない変化が起きていますが、問題の人はドレイトンやヘイリーに比べると影が薄かった人物なので正直どうでもよかったです(笑)。


No.1275 2点 悪夢はめぐる
ヴァージル・マーカム
(2016/06/04 04:13登録)
(ネタバレなしです) 米国のヴァージル・マーカム(1899-1973)は1920年代から1930年代にかけて8作のミステリーと2作の歴史小説を書いたことが知られているのみで、そのミステリーもいわゆるB級ミステリー系らしいです。1932年発表の本書の原書房版の巻末解説でマーカムの作品を「中盤までは文句なく面白いものの竜頭蛇尾の結末を迎えるものが少なくない」と紹介していますが、本書に関しては主人公の行動原理がわからないままに場当たり的に怪しげな人物たちと出会い、場当たり的に事件が起きていく展開で、冒険スリラー風ながら物語の筋が見えないゆえにサスペンスが犠牲になっています。後半になって密室内の溺死体という不可能犯罪の謎が唐突に発生し、第24章では本格派推理小説風の謎解き議論が活発になりますが真相解明はあっけなくしかも魅力的でありません。序盤の場面を再現するような締め括りになっているのが工夫として光ってはいますが、個人的には「中盤まで文句なくつまらなく、竜頭にさえ至らないまま結末を迎えた」作品のように感じます。


No.1274 3点 太陽黒点
森村誠一
(2016/06/03 17:52登録)
(ネタバレなしです) 「新本格推理三部作」の第1作として1980年に発表されましたが、一体何が「新」で何が「本格推理」なのか私にはよくわかりませんでした。殺人事件とその犯人探しはあるのですが捜査描写は断片的で、しかも不満の残る解決のため推理物としてはほとんど面白さを見出せませんでした。経済犯罪の描写などはさすが森村と感心するところもあり、本格派ではなく社会派推理小説として一般認知されているようです。復讐物語要素もありますが初期作品に見られた執念のようなものが希薄になったように思います(まあ初期作品の描写がくど過ぎたとも言えますが)。なお山田風太郎の「太陽黒点」(1963年)との共通性はありません。


No.1273 6点 奇想、天を動かす
島田荘司
(2016/06/03 17:45登録)
(ネタバレなしです) 1989年発表の吉敷竹史シリーズ第10作です。社会派推理小説要素の強いこのシリーズは王道的な本格派推理小説の御手洗潔シリーズがあまり売れなかった時代の打開策的に書かれたと理解しています。しかし新本格派の全盛時代になっても作者は本格派ばかり書かれることは決して好ましいことではないと思っていたようで(心境複雑ですね)、このシリーズは打ち切られずに精力的に書き続けられました。本書はいきなり犯人が現行犯で逮捕され、その後は犯人や被害者の過去を調べていく地味な展開で、ここは狭義の(犯人当て)本格派好きの私には少々辛かったですが後半になると様相が一変、首なし死体が歩いたり(結構恐いよ~)、走行中の列車の車両が突然空中に浮かんだり、天を衝くような巨人が目撃されたりと、派手な謎のオンパレードが謎解き好き読者にはたまりません。社会派と本格派のジャンルミックス型として高く評価されているのも納得です。


No.1272 5点 姑獲鳥の夏
京極夏彦
(2016/06/03 17:33登録)
(ネタバレなしです) 綾辻行人の「十角館の殺人」(1987年)に端を発した本格派推理小説の大流行の中、数多くの作家が登場しましたが1990年代で最も注目を浴びた存在の1人が1994年発表の本書でデビューした京極夏彦(1963年生まれ)でしょう。もっとも必ずしも一般受けしないのはまず著書の分厚さで、百鬼夜行シリーズ(京極堂シリーズとも呼ばれますが作者はその呼称を気に入っていないそうです)第1作でもある本書は講談社文庫版で600ページもありますが実はこれでも薄い部類で、1000ページを超す作品が珍しくないのです。また一部で「妖怪ミステリ」と紹介されているのも読まず嫌いを誘発していると思います。本書の謎解きは極めて合理的なもので本当に妖怪が容疑者になったりするするものではありません。とはいえ妖怪に関する知識や情報は半端ではなく、単なる物語の添え物でもありませんが。文章は明快で探偵役の京極堂も意外と気さくな面を見せていますが、むしろワトソン役である関口巽(せきぐちたつみ)の方が結構問題でした。非常に不安定な心理状態の上に、時に観察者としての信頼性を欠くことがあるので結局読みにくい作品になっています。この厚さで事件性がなかなか見えてこないプロットもミステリーとして冗長な印象を与えています。終盤はなかなか盛り上っていますけど。


No.1271 6点 寅申の刻
ロバート・ファン・ヒューリック
(2016/06/03 16:03登録)
(ネタバレなしです) 猿が落としていった指輪が犯罪解決の手掛かりとなる「通臂猿の朝」、水害で孤立状態となった田舎屋敷で黄金紛失と怪死事件を調べる「飛虎の夜」の2つの中編作品を収めた、1965年発表のディー判事シリーズ中編集です。英語原題は「The Monkey and the Tiger」という、十二支の動物に由来したシンプルなもので、もしヒューリック(1910-1967)がもっと長命を得ていたなら残りの動物タイトルの作品も書いてくれたのではと惜しまれます。どちらもハヤカワポケットブック版で100ページに満たない作品ながら内容は充実しており、「通臂猿の朝」は複雑な謎解きプロットが楽しめるし、「飛虎の夜」はそれに加えて賊徒の来襲の危機を絡めてサスペンスを盛り上げた贅沢な逸品です。


No.1270 5点 <未亡人の小径>殺人事件
レズリー・G・アダムソン
(2016/06/03 15:38登録)
(ネタバレなしです) ジャーナリスト出身の英国の女性作家レズリー・グラント・アダムソン(1942年生まれ)の1985年発表のデビュー作で、レイン・モーガンシリーズ第1作の本格派推理小説です。P・D・ジェイムズ絶賛とのことだったのでジェイムズ風に重厚で難解な作品でないかと心配しましたが、軽妙な会話をバランスよく織り交ぜており、プロットもストレートに謎解きに取り組んでいます。とはいえ全体的に地味過ぎて印象に残りにくい物語です。この内容なら舞台となる村の地図も欲しかったです。


No.1269 4点 桟橋で読書する女
マーサ・グライムズ
(2016/06/02 17:30登録)
(ネタバレなしです) 1992年に発表された本書はシリーズ探偵の登場しないミステリーです。文春文庫版の巻末解説でも「幻想」という言葉が使われていますが、確かに蜃気楼のようにゆらゆらした雰囲気に終始しています。本来なら派手なシリアル・キラー(連続殺人)ものなのに意図的にサスペンスを封じ込めたかのようなゆったりとした展開です。一応本格派推理小説に分類しますが謎解き要素が希薄で推理もほとんどありません。会話はちぐはぐで理解しにくいし、登場人物リストに載っていない人物が多くて頭の中を整理しきれませんでした。読解力が平均点未満の私には難解過ぎました。


No.1268 6点 毒殺は公開録画で
サイモン・ブレット
(2016/06/02 17:20登録)
(ネタバレなしです) 1985年発表のチャールズ・パリスシリーズ第11作はテレビ局を舞台にした本格派推理小説です。この種の作品だとウィリアム・L・デアンドリアのマット・コブシリーズを思い出す読者もいるでしょうが、ブレットの方が番組制作現場の雰囲気がよく描かれているように感じます(まあマット・コブは撮影現場の人間でないのでその点では不利にならざるを得ないのですが)。プロットもしっかりしていてチャールズの探偵活動がいつになくストレートに伝わってくるのもいいですね。ただ最後は推理でなく犯人に仕掛けた罠で真相が明らかになるのは、本格派の謎解きとしてはちょっと物足りないです(なかなか巧妙な罠ではありますが)。


No.1267 6点 論理は右手に
フレッド・ヴァルガス
(2016/06/02 17:13登録)
(ネタバレなしです) 木の根元の格子蓋の上の白っぽいものに興味を惹かれたルイ・ケルヴェールはそれが人間の骨だと推測し、歴史学者マルク・ヴァンドスレールの助けを借りて骨の主を探すというプロットの1996年発表の三聖人シリーズ第2作の本格派推理小説です。三聖人ことマルク、マティアス、リュシアンにしろマルクの伯父アルマンにしろ脇役扱いで、特にリュシアンとアルマンは実質出番がありません。まだシリーズ2作目にして配役バランスが崩壊しています。でも本書のルイも主役にふさわしい個性を発揮しています。最初の3章あたりまではとっつきにくかったものの、それ以降はすらすらと読めました。緊迫感に満ちた終盤の謎解きが印象的です。余談ですが最初にルイが訪れた警察署には「青チョークの男」(1996年)のアダムスベルグがいたんですね。でも残念、彼は異動してしまったようです(本書で警視と表記されているのは署長でなくなったから?)。いつかは三聖人とアダムスベルグが共同捜査(または探偵対決)する日が来るのでしょうか?


No.1266 5点 案外まともな殺人
ジョイス・ポーター
(2016/06/02 17:05登録)
(ネタバレなしです) ドーヴァー主任警部シリーズで有名なジョイス・ポーター(1924-1990)が新しいシリーズ探偵を創造しました。それが1970年発表の本書に登場するホン・コンという女性で、なぜホン・コンと呼ばれるかも本書で説明されています(ちなみに中国の香港とは全く関係ありません)。ドーヴァーの女性版ですが、違いはアマチュア探偵であることと行動型であることです。推理というよりほとんど勝手な思い込みで猪突猛進しながら犯人探ししています。このいきあたりばったりな探偵方法はある意味、後年の米国コージー派ミステリーのアマチュア探偵にも通じるところがあります。ただ雰囲気がコージー派と程遠くなっている理由は品位のかけらもないホン・コンの言動です。本書は推理はちょっと物足りませんが、犯人の殺人トリックがなかなかユニークです。


No.1265 5点 ココナッツ殺人
パトリシア・モイーズ
(2016/06/02 16:39登録)
(ネタバレなしです) 1977年発表のヘンリ・ティベットシリーズ第13作は本格派推理小説でなく犯罪スリラー系統の作品ですが、非常に巧妙な謎解きも織り込まれています。カリブ海に浮かぶセント・マシューズ島が舞台で、過去作品に登場しているタンピカが近代化が進むのと対照にのんびりした土地ですがここでアメリカの上院議員が殺され、原住民が逮捕される事件が起きてティベット主任警視が早期解決のために呼ばれます。人種問題が取り上げられ中盤には悲惨な出来事も起きますが、雰囲気が暗くならず他の作品同様軽い読み物に仕上がっているのはモイーズならです。考えようによってはモイーズの作風には似合わないテーマとも言えるかもしれませんが所詮フィクションと割り切るべきでしょう。これまでの作品で存在感のなかったレナルズ部長刑事が頑張っているのも特徴です。


No.1264 5点 ゴーテ警部罠にかかる
H・R・F・キーティング
(2016/06/01 11:37登録)
(ネタバレなしです) 1967年発表のゴーテ警部シリーズ第3作は最後にちょっと推理しているとはいえ本格派推理小説でなく冒険スリラーに分類される作品です。このシリーズ、自分の思うように事が進まずゴーテ警部がきりきり舞いするパターンがよく見られますが、冒険スリラーの方がこのパターンを使いやすいと作者は考えたのかもしれません。相変わらずインドという舞台を上手く利用しています。余談ですが作中で核問題に触れていますがその後のインドが1974年、1998年と核実験を行ったという史実を考えると(内容的にはフィクションとはいえ)どこか暗示めいたものを感じるといったら考えすぎでしょうか?


No.1263 5点 ヴァレンタイン・デイの殺人
キャロリン・G・ハート
(2016/06/01 11:27登録)
(ネタバレなしです) 1990年発表のデス・オン・ディマンドシリーズ第6作です。前作「ミステリ講座の殺人」(1989年)ではその行動が好きになれなかったローレルですが、本書では結構見直しました。その分アニーの方が神経質過ぎるようにも感じてしまいましたけれど。誰もが犯人らしく見えるようにするというのは本格派推理小説としての常套手段ではありますが今回はアニーの推理が余りにも粗く、真相を知ってもなお誰が犯人でも同じだったのではという思いが残ってしまいました。


No.1262 5点 フレンチ警部と漂う死体
F・W・クロフツ
(2016/06/01 11:20登録)
(ネタバレなしです) 1937年発表のフレンチシリーズ第16作です。前半は登場人物間の関係を中心に描き、中盤でメインの事件を起こし、後半は船上での探偵活動というプロットが同年に発表されたアガサ・クリスティーの名作「ナイルに死す」と同じなのは興味深いところです。もっとも舞台背景や人物の個性といった外面的要素で比較すると地味な作風のクロフツの不利は避けられないところです。第10章「幕間」では船や船員の様子が丁寧に描写されていますが、これがちっとも面白くないのがクロフツらしいです(笑)。まあフレンチとフレンチ夫人の会話なんかではユーモアを交えたりと頑張ってはいますけど。本格派推理小説としてはうまく伏線を張っているところもありますが、論創社版の巻末解説で紹介されているように謎解き手掛かりが解決前に十分提示しきれていないのは残念です。


No.1261 5点 光る指先
E・S・ガードナー
(2016/06/01 11:12登録)
(ネタバレなしです) 1951年発表のペリイ・メイスンシリーズ第37作です。今回のメイスンはかなり慎重な態度で対応しているのですがそれにも関わらずどんどん不利になっていく展開がサスペンス豊かで、宿敵ハミルトン・バーガーもこれまでにないほど自信満々です。そこまではいいのですがここでいつものように法廷で見事な逆転劇が見られるかと思いきや、意外にも決着は法廷外へとなだれ込みます。推理も若干はしていますがかなり強引な手法で解決へと導いており、しかも後味の悪い結果が気になります。デラの、「結局この方がよかったかもしれない」発言には個人的には賛同できません。

2940中の書評を表示しています 1661 - 1680