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ミステリの祭典

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寅申の刻
ディー判事ものの中編集

作家 ロバート・ファン・ヒューリック
出版日2011年02月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点
(2017/08/31 10:10登録)
「通臂猿の朝」
猿が残していった指輪に血が付いていた。その後、指を切り落とされた死体が見つかる。
と、事件の発端はなかなか魅力的です。
ディー判事の部下、陶侃が推理に参加して厚みのあるストーリーにしているところが好印象の作品でした。

「飛虎の夜」
緊迫感の演出が抜群の作。
ディー判事は現場にいながら、一人で屋敷を賊から守り、そして謎解きもする、部下を使わずいつも以上に自ら動き回る、サスペンスフルな館モノでした。
ただ真相は予想の範囲内。登場人物の少ない中編なので仕方ないか。

2編とも、いつもどおり伏線がさりげなく、うまい。
短編集「五色の雲」が印象的だったので、他を探してみたところ、中短編集は本書しかなかった。もうないのか、と残念な思いはあるが、今後は長編で我慢しよう。

No.2 6点 nukkam
(2016/06/03 16:03登録)
(ネタバレなしです) 猿が落としていった指輪が犯罪解決の手掛かりとなる「通臂猿の朝」、水害で孤立状態となった田舎屋敷で黄金紛失と怪死事件を調べる「飛虎の夜」の2つの中編作品を収めた、1965年発表のディー判事シリーズ中編集です。英語原題は「The Monkey and the Tiger」という、十二支の動物に由来したシンプルなもので、もしヒューリック(1910-1967)がもっと長命を得ていたなら残りの動物タイトルの作品も書いてくれたのではと惜しまれます。どちらもハヤカワポケットブック版で100ページに満たない作品ながら内容は充実しており、「通臂猿の朝」は複雑な謎解きプロットが楽しめるし、「飛虎の夜」はそれに加えて賊徒の来襲の危機を絡めてサスペンスを盛り上げた贅沢な逸品です。

No.1 7点 kanamori
(2011/03/04 20:42登録)
唐の時代、7世紀の中国を舞台にした本格ミステリ、ディー判事シリーズの中編2作収録。
「通臂猿の朝」は、テナガザルが持ち込んだ血染めの指輪を発端の手掛かりにして、殺人事件の真相が二転三転するいつもながらのディー判事探偵譚です。
もう一つの「飛虎の夜」がクローズド・サークルの館ミステリで、副官が登場しない異色作のこちらが好み。黄河の氾濫によって孤立した田舎屋敷での怪死事件に加え、屋敷を取巻く賊徒集団や女性の亡霊など、謎解きとサスペンスがミックスされた逸品でしょう。
本書にて目出度くシリーズ全作完訳ということなので、採点は+1点おまけ。

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