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ミステリの祭典

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悪夢はめぐる

作家 ヴァージル・マーカム
出版日2015年10月
平均点3.50点
書評数2人

No.2 2点 nukkam
(2016/06/04 04:13登録)
(ネタバレなしです) 米国のヴァージル・マーカム(1899-1973)は1920年代から1930年代にかけて8作のミステリーと2作の歴史小説を書いたことが知られているのみで、そのミステリーもいわゆるB級ミステリー系らしいです。1932年発表の本書の原書房版の巻末解説でマーカムの作品を「中盤までは文句なく面白いものの竜頭蛇尾の結末を迎えるものが少なくない」と紹介していますが、本書に関しては主人公の行動原理がわからないままに場当たり的に怪しげな人物たちと出会い、場当たり的に事件が起きていく展開で、冒険スリラー風ながら物語の筋が見えないゆえにサスペンスが犠牲になっています。後半になって密室内の溺死体という不可能犯罪の謎が唐突に発生し、第24章では本格派推理小説風の謎解き議論が活発になりますが真相解明はあっけなくしかも魅力的でありません。序盤の場面を再現するような締め括りになっているのが工夫として光ってはいますが、個人的には「中盤まで文句なくつまらなく、竜頭にさえ至らないまま結末を迎えた」作品のように感じます。

No.1 5点 kanamori
(2016/01/25 18:14登録)
刑務所長の”わたし”のもとに、全ての囚人に会わせてほしいという女性が現れたあと、ひとりの死刑囚が謎めいた言葉を残して死ぬ。さらに、郵送されてきた古い手紙の束を読んだ”わたし”は、刑務所長の職を投げ出し、財宝探しの冒険行に旅立つことに-------。

なんだこれは? 頭の中を整理するために”あらすじ”を書いてみたものの、我ながらまったく要領を得ないプロットです。主人公の行動原理がはっきりと説明されないまま、あれよあれよと脈絡もなく物語が展開していくので、ラスト近くまではモヤモヤ感が増すばかり。
”あの「死の相続」を超える米国黄金時代の最大の怪作”という触れ込みですが、まあ怪作には違いないにしても、個人的にはそれほどスゴイとは思えなかった。とくに、主人公がニューヨークの裏社会に潜入し、ギャングから情報を得ようとする前半部の、だらだらしたストーリー展開が非常に退屈に感じる。
後半になると、これまでの話の流れを完全に断ち切って、なぜか幻想的な雰囲気が漂う湖畔の村を舞台にした謎解きミステリになります。まったくジャンルが異なる2つの小説を強引にくっつけた感じで、”密室状況の小屋のなかの溺死体”という魅力的な謎がでてくるものの、その真相もいささか拍子抜けの感は否めない。
ラストに立ち現れる構図は美しく印象的なだけに、あれやこれや色々と勿体ないと思えた作品。

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