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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2929件

プロフィール| 書評

No.449 5点 名探偵ナポレオン
アーサー・アップフィールド
(2014/08/27 16:30登録)
(ネタバレなしです) 日本に初めて翻訳紹介されたシリーズ作品だからでしょうか、1953年発表のシリーズ第17作の本書は「Murder Must Wait」という英語原題を持っていますが邦題は探偵役の名前をそのまま使っています(しかしこれではフランス皇帝が活躍する歴史ミステリーと誤解されなかったでしょうか?)。大自然描写こそありませんが、スケール感のある舞台描写や原住民描写はこの作者ならでは。人物描写も細やかでクライム・クラブ版の古い翻訳も気にならないぐらい読みやすいです。乳児の連続誘拐事件を扱い、殺人犯探しより乳児発見を優先させたプロットなのが珍しいです。一応ボニー警部は誰よりも早く殺人犯の正体も見抜いたようですが、推理説明が十分でないのは残念です。


No.448 5点 歌麿殺人事件
水野泰治
(2014/08/27 15:30登録)
(ネタバレなしです) 高橋克彦の「写楽殺人事件」(1983年)に刺激を受けたかはわかりませんが、1984年発表の本書は現代の謎解きと歌麿の謎解きを扱った本格派推理小説になっています。高橋作品では写楽を芸術家として、本書では歌麿を大衆画家(通俗画家?)として描いているのが対照的です。どちらかといえば現代の謎解きに重きを置いているのは美術が苦手の私には好都合です。とはいえいきなり3人の男女の屈折した人間関係描写で始まる導入は、作品中の表現を拝借すればまさに「野卑」です。作中人物に「3、4人の男女が一緒に住んで、セックスと仕事や金銭を共有する生活は、ロシア革命直後のソ連でも流行してね、ちっとも新しくないんだよ」と語らせていますが、新しかろうがなかろうが小説題材としての魅力を感じませんでした。この屈折描写(三角関係が3組もあります)をちゃんと謎解きプロットと関連させているし、本格派推理小説の伏線の張り方は高橋より巧妙だと思いますが。


No.447 6点 殺人者はまだ来ない
イザベル・B・マイヤーズ
(2014/08/27 13:34登録)
(ネタバレなしです) イザベル・B・マイヤーズ(1896-1980)は米国の女性作家で、デビュー作の本書はあのエラリー・クイーンの「ローマ帽子の秘密」(1929年)と雑誌社の賞金コンテストで競合した本格派推理小説です。雑誌社の倒産問題もあって紆余曲折あったようですが、最終的には本書が賞金を獲得して1930年に出版されました。同じ本格派といっても都会風なクイーンとはかなり作風が違うので比較はあまり意味ないかもしれませんがサスペンス豊かで人物関係が整理されていて読みやすい点では勝っています。一方でゴシック・スリラーに通じるような雰囲気は好みが分かれるでしょうし、催眠術による自白場面などは当時の作品としても古臭さかったのではないでしょうか(但しちゃんと推理説明で解決しています)。個人的には起伏に富んだストーリー展開を楽しめました。意外だったのは光文社文庫版の翻訳者が山村美紗だったこと。


No.446 5点 死は深い根をもつ
マイケル・ギルバート
(2014/08/27 13:20登録)
(ネタバレなしです) ヘイズルリッグ主任警部シリーズ第5作と紹介されることもありますが、ヘイズルリッグは出番が少なく番外編というべき作品です。「ひらけ胡麻!」(1949年)でも脇役でしたが一応最後は重要な役割が与えられていたのに対し、本書では全く活躍していません。重厚な法廷スリラーとサスペンス豊かな冒険スリラーを交互に組み合わせたプロットがなかなかユニークです。拡大解釈された「密室」の謎解きもありますが推理説明が十分でなく本格派推理小説として期待してはいけないと思います。


No.445 5点 黒い死
アントニー・ギルバート
(2014/08/26 18:56登録)
(ネタバレなしです) 1953年発表のクルック弁護士シリーズシリーズ第27作です。ハヤカワポケットブック版の古い翻訳に苦しめられますがそれでもサスペンスの効いた物語が楽しめます。でもいくら後半からの登場とはいえクルックや助手のビル・パースンズが登場人物リストに載っていないのはちょっと可哀想な仕打ち(笑)。脅迫者が怯えるというプロットがなかなか新鮮ですがやはり悪役なのでいまひとつ同情できませんね(笑)。前半をサスペンス小説、後半を本格派推理小説という作者得意の構成です。終盤の劇的な展開に読者は振り回されますが、その中にもしっかり謎解き伏線を忍ばせているのがこの作者らしく、エンディングも印象的。翻訳が古くなければもう1点加点してもよいのですが。


No.444 6点 ボンベイの毒薬
H・R・F・キーティング
(2014/08/26 18:16登録)
(ネタバレなしです) 1966年発表のゴーテ警部シリーズ第2作の本格派推理小説です。今回もゴーテ警部の捜査は彼の思うように進まず、その苦労ぶり描写がユニークな特徴となっています。もっともシリーズ前作の「パーフェクト殺人」(1964年)の場合は、特権階級の敷居の高さという非常にわかりやすい障害だったのに対して、本書ではなぜ事件関係者があれほど非協力的なのかちょっとぴんと来ませんでしたが。ゴーテ警部の人助けが思わぬ結果を生み出し、インド社会の描写と謎解きの前進に貢献しているところは巧妙なプロットだと思います。解決はあっさり気味ですが、前作よりはすっきり締め括られています。


No.443 6点 影をみせた女
E・S・ガードナー
(2014/08/26 18:03登録)
(ネタバレなしです) ペリー・メイスンシリーズは法廷論争が見所の一つですが(但し中には法廷場面のない作品もあります)、特に1960年発表のシリーズ第63作である本書ではメイスンの法廷テクニックが冴えわたり、いつのまにか検事側ががんじがらめ状態になってしまうのが印象的でした。そのテクニックは法律知識に裏づけされたものですが、読者に全く難しさを感じさせない語り口が見事です。犯人当ての謎解きが脇に追いやられてしまった感もありますけれど、本書の法廷論争はこの作者にしか書けないと思いました。


No.442 8点 沈んだ船員
パトリシア・モイーズ
(2014/08/26 17:48登録)
(ネタバレなしです) デビュー作の「死人はスキーをしない」(1959年)ではスキーリゾート地の美しい描写が素晴らしかったですが1961年発表のヘンリ・ティベットシリーズ第2作の本書でもその卓抜な描写力は健在で、今度は帆走するヨットや港町を雰囲気豊かに描いて見事に海洋本格派推理小説の傑作になりました。もちろん人物描写も秀逸です。最初の死亡事件が事故死扱いのため、すぐヘンリによる犯人探しというわけにいかず、手探り状態の前半はややじりじりしますが後半はサスペンスがじわじわと盛り上がります。なぜ犯行に至ったかという動機が印象的で、最終章でヘンリがコメントした「悲劇的な皮肉」という表現がぴったりはまってます。


No.441 5点 息子殺し
ロイ・ウィンザー
(2014/08/26 16:35登録)
(ネタバレなしです) 1976年発表のアイラ・コブシリーズ第2作の本格派推理小説で、舞台が前作のナンタケット島からニューヨークへ移ってます。英語原題が「Three Motives for Murder」(「三つの殺人動機)とあるように、犯人当て小説でありますが動機の謎解きにかなりのページを費やしています。ただ動機というのは理詰めで絞り込むのが難しく、コブの推理は間違いとは思わないまでも絶対にそれしか考えられないというだけの説得力はないように感じます。心理描写ではシリーズ前作の「死体が歩いた」(1974年)から進歩が見られます。


No.440 5点 虎の首
ポール・アルテ
(2014/08/26 16:21登録)
(ネタバレなしです) 1991年発表のツイスト博士シリーズ第5作はアガサ・クリスティーの作品を髣髴させるようなヴィレッジ・ミステリーの雰囲気にアルテならではの猟奇的犯罪や密室殺人事件をからめた本格派推理小説です。魅力的な謎をたっぷり詰め込んだ展開は安定した面白さがありますが、最終章でツイスト博士が解き明かした「運命の悪戯」は美しく着地した謎解きとは言い難いように思います。


No.439 7点 逃げる幻
ヘレン・マクロイ
(2014/08/26 14:27登録)
(ネタバレなしです) スコッドランドを舞台にしてさりげなく自然描写を織り込んでいます。やっぱりこの地は霧が似合いますね。ここも第二次世界大戦と無縁でなかったのはジョン・ディクスン・カーの「連続殺人事件」(1941年)を読んだ読者なら先刻ご承知でしょうけど、1945年発表のベイジル・ウィリングシリーズ第7作の本書もまた時代性を強く感じさせる本格派推理小説です。謎解き伏線も豊富ですが専門知識を求めるものが多いのがちょっと弱点でしょうか。でもこれだけ丁寧に真相説明されるとそれさえ大きな弱点には感じませんでしたが。


No.438 4点 失楽の街
篠田真由美
(2014/08/25 13:20登録)
(ネタバレなしです) 2004年発表の桜井京介シリーズ第10作で作者がシリーズ最大の異色作と評価した作品です。確かに風変わりなプロットで、連続爆弾事件を扱い犯人グループの直接描写が何度も挿入されています。ハードボイルド小説向きの犯罪ですが、この作者ならではの繊細な心理描写はハードボイルドのドライな雰囲気とも異質に感じます。相変わらず桜井京介はやる気を見せず(笑)、本格派推理小説的な謎解き要素は希薄です。世間が騒然となる事件なのにパニック描写はなくサスペンスはゆっくりと醸成されます。あと本筋とは関係ないのですが蒼と香澄の名前が入り乱れる場面は過去のシリーズ作品を読んでいない読者はわけがわからないと思います。


No.437 5点 停まった足音
A・フィールディング
(2014/08/22 18:08登録)
(ネタバレなしです) ポインター主任警部シリーズを中心に20作以上の本格派推理小説を書いた英国女性作家A・フィールディング(1884-没年不詳)の代表作とされるシリーズ第3作です。本国の出版は1926年ですが日本でも早くから注目されていたらしく1930年代から翻訳出版が計画されては頓挫を繰り返し、ようやく21世紀になって日本語版が読めるようになりました。なるほど最後の劇的な場面は印象的で、これが代表作と言われる所以でしょう。しかしそこに至るまでのポインターの丹念で地道な捜査が延々と続く展開は盛り上がりに欠けます。同時代のF・W・クロフツが好きな読者なら気に入るかもしれませんが。


No.436 5点 南海の金鈴
ロバート・ファン・ヒューリック
(2014/08/22 17:51登録)
(ネタバレなしです) 1966年発表のディー判事シリーズ第12作です。本書の後もファン・ヒューリックはこのシリーズを書き続けますが作中時代としてはディー判事最後の事件を扱ったミステリーです。本格派推理小説の要素はほとんどなく、政治スリラー風な要素が濃い異色の作品です。中盤までは2人の副官の活躍が主体でディー判事の出番が少ないのが不満でしたが後半になるとまさに真打ち登場といった劇的場面が待っています。なぜディー判事が探偵活動をやめてしまうかについてよく考えられた理由が用意されており、シリーズ最終作にふさわしい幕切れになっています。


No.435 5点 或る豪邸主の死
J・J・コニントン
(2014/08/22 16:15登録)
(ネタバレなしです) 大学教授で数学者でもあった英国のJ・J・コニントン(1880-1947)の1926年発表のデビュー作です(シリーズ探偵は登場しません)。冒頭で読者に対するフェア・プレーを宣言していることがあのエラリー・クイーンに先駆けた「読者への挑戦状」であると評価されています。サンダーステッド大佐が謎解きに挑戦する本格派推理小説ですがやたらと悩んだりとまどったりしている上に、ある容疑者には犯人であってほしくないと肩入れしたりと、まともな探偵役ではありません。しかし同時代のアントニイ・バークリーのように思い切って羽目を外すところまでは踏み切れず、ユーモア路線ともシリアス路線ともつかない中途半端なところに留まったような気がします。「殺人光線発射装置」なる物が登場して驚きますが、SFミステリーではありません。淡々とした筋運びながら謎解きは意外と複雑です。


No.434 5点 スリープ村の殺人者
ミルワード・ケネディ
(2014/08/22 16:02登録)
(ネタバレなしです) ミルワード・ケネディが20冊近く書いたミステリーの中では1932年発表の本書はかなりストレートな謎解き作品に仕上がったとされる本格派推理小説です。少なくとも「救いの死」(1931年)よりは受け容れ易いでしょう。しかしながら考えていることを描写している場面が結構ある割には人物像が浮かび上がりにくいなどどうも文章が読みにくく、しかもアリバイ調べ中心のゆったりした展開なので退屈する読者はいるかもしれません。作品舞台(川の流れる村)の活かし方は上手だと思います。


No.433 9点 蘭の告発
キャロライン・グレアム
(2014/08/22 15:55登録)
(ネタバレなしです) 若い頃にはプロのステージダンサーだった経験もある英国のキャロライン・グレアム(1931年生まれ)はミステリー作家としてのデビューは50歳過ぎと非常に遅く、しかも最初は鳴かず飛ばずでしたが1987年発表のバーナビー警部シリーズ第1作にあたる本書が好評で、英国本格派推理小説の書き手としての地位を確立しました。小さな村を舞台にした、まさしくヴィレッジ・ミステリーですが内容は決して軽くなく、真相には恐いぐらいの衝撃があります。文章は読みやすく、本格派推理小説としての謎解きもよく出来ていますが、推理ゲーム感覚で読むような作品ではありません。バーナビー警部が見事に真相を見抜くのですが、それはまた秘められた悪意と残虐性、そして悲劇的運命がさらけ出された瞬間でもあります。知ってはいけないものを知ってしまったような気分にさせられる作品です。


No.432 10点 自宅にて急逝
クリスチアナ・ブランド
(2014/08/21 16:10登録)
(ネタバレなしです) 謎を巡ってああでもないこうでもないと議論するのは本格派推理小説の常套手段であり、これが巧妙だと真相に近づいているというわくわく感が高まってきたり、逆に謎が深まったりして面白さが格段に増えます。ブランドの凄いところは警察同士だけでなく容疑者同士にもやらせているところで、そこに異様な緊張感を生み出しています。1946年発表のコックリル警部シリーズ第3作の本書ではそれを家族間でやっていて、遠慮仮借なく「お前が犯人だろ」と告発し合っているのですからもう痺れます(笑)。作者得意のどんでん返しの連続に、思いもかけぬ急転直下の劇的な結末、そして最後の最後に明かされる不可能犯罪トリックと何もかもが素晴らしい演出効果をあげています。


No.431 6点 代診医の死
ジョン・ロード
(2014/08/18 17:58登録)
(ネタバレなしです) 1951年発表のプリーストリー博士シリーズ第53作となる本格派推理小説です。トリックは古典的ですがアガサ・クリスティーの某作品を連想させる大胆な使い方が印象的です。ただ有力な手掛かりが少なく、推測と仮説の域を出ない中盤の謎解き議論がやや単調です。忍耐強い調査描写を読者は覚悟して読む必要があります。


No.430 6点 非実体主義殺人事件
ジュリアン・シモンズ
(2014/08/18 17:08登録)
(ネタバレなしです) イギリスのジュリアン・シモンズ(1912-1994)は20世紀を代表するミステリー評論家として大変有名な存在ですが、ミステリー作家としても30冊近い長編作品があります。サスペンス小説や犯罪小説を得意としていますが初期作品にはマイケル・イネスやエドマンド・クリスピン風のユーモア本格派推理小説を書いていたようです。本書は彼のデビュー作で後に自ら駄作と切り捨て、本国でも絶版状態が続いたそうです。ユーモアはほとんど感じられませんがイネスやクリスピンだってデビュー作は結構手堅くまじめな作品でしたし、弱点というほどではないでしょう。アリバイを細かく検証する地味なプロットで特別な個性は感じられません。そこが作者は気に入らなかったのかもしれませんが謎解き説明は丁寧で本格派推理小説のツボは抑えてあります、

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