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ミステリの祭典

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ミステリー三昧さんの登録情報
平均点:6.21点 書評数:112件

プロフィール| 書評

No.32 7点 分身
東野圭吾
(2009/08/22 13:12登録)
<集英社文庫>東野圭吾の代表作(長編/1993)です。
「殺人事件があってトリックは?犯人は?」の意外性を突いた推理物とはかけ離れた医療サスペンス型ミステリーです。ただ「謎で楽しませる」という最低条件は楽にクリアしています。それは「鞠子と双葉の出生の秘密」の一点だけですが、それだけでも読者を惹き付ける力を持っています。現在と過去を繋ぐ糸の探求過程は読んでて飽きませんし、最先端医療という題材も興味深かったです。でも結局、最後で読者の心を揺さぶるのは人間ドラマです。主人公にとっては重すぎるシナリオでしたが、それを感じさせずに〇〇〇を使っての爽やかな幕切れを演じてくれました。そのさりげない道具の使い方が巧いですね。
余談ですが、東野作品に「美人で気の強い」女性が度々登場する理由が分かったかもしれません。多分探偵と呼べる人物を登場させないことが大きいのでは。この物語では鞠子・双葉が(素人)探偵役を務めることになりますが、当然「美人」であった方が男女問わず情報が掴めやすいという考えがあります。そして恋愛感情むき出しで男に振り回されやすい女性だと物語進行の妨げになるので、多少男を見下すぐらいの「気の強さ」は不可欠であり、結末を受け止めるのに十分な器を持たせるという意味でも「大人びた」主人公を登場させるのは必然的な考えです。例えば島田荘司では「レオナ」、有栖川有栖では「麻里亜」が美人で気の強い女性と呼べます。


No.31 8点 犬神家の一族
横溝正史
(2009/08/19 16:48登録)
<横溝正史自選集4>金田一耕助シリーズの代表作(長編/1950)です。
横溝正史の代表作に相応しく「オドロオドロしさ」+「謎の合理的な解決」の融合を見事に成功させた作品です。珠世への疑惑、顔を隠した男、三つの手形(指紋)、斧琴菊の呪い、大山神主の大暴露・・・などなど数え切れぬほどの伏線・レッドへリング・ミスディレクションが物語の骨格を成し、やがて語られるであろう驚愕の真相に向かって物語を形成していく様は巧妙かつ鮮やかなロジカルの極みと言えます。特に人物相関図(家系図)の変わり様は凄まじく、読み所の一つです。
以前まで印象の薄かった金田一耕助も今回はしっかり探偵としての役割を果たしてくれました。探偵の言動は謎の魅力を前面に押し出す効果があり、推理小説の質を高める上で非常に重要な役割を担っています。日記形式による古典独特の語り口は読者を惹き付ける上で必須となる演出です。その二つの相乗効果が推理小説としての質の高さを決定づけました。


No.30 6点 八つ墓村
横溝正史
(2009/08/16 23:06登録)
<横溝正史自選集3>金田一耕助シリーズの代表作(長編/1949)です。
私にはなぜ推理小説と呼べるのか理解できません。一番の謎は被害者のミッシングリンクを軸にした犯行の目的にあると思うのですが、伏線が不十分で説得力が薄かったです。そもそも謎を前面に押し出した作風ではないので探偵の必要性がありません。また、この物語を合理的な解決のある推理小説として仕上げる必要性もありません。物語として読む方が評価を下げずに済んだし、大量猟奇殺人自体に合理的な解決などあり得ないと思っています。人がバンバン死ぬからという理由で推理小説らしいと感じることもありません。ある程度の限度がなければ、動機に関しての説得性も薄れてきます。期待していただけに残念ですが、まだあります。
評価を下げた最大の要因は解決編を「蛇足扱い」にしたことです。「初めから犯人を知っていた」というセリフで金田一耕助に対する好感度も非常に下がりました。そのセリフを入れたことによって殺人事件自体が盛り上げの一部でしかなかったと勝手ながら感じてしまいました。解決編は金田一の言い訳作りのためにあったようなものと判断しました。
よって「宝探しを絡んだ冒険小説」+「主人公の周りを取り巻くラブロマンス」を融合したエンターテイメントと確定し、この点数にしました。謎をテーマとした本格推理小説とはかけ離れていて掴みどころが難しい横溝流推理小説にイマイチ馴染めない私がいます。


No.29 7点 同級生
東野圭吾
(2009/08/11 01:30登録)
<講談社文庫>初期作品以来の学園青春ミステリー(長編/1993)です。
思春期ならではの心の葛藤・悩み・苦しみがあるために感情移入が困難でした。同作家の『放課後』『魔球』などでも言えることですが、たまに登場人物の行動が非常に突発的・衝動的であるために物語がどのように転ぶのか予測しにくくなっている場合があります。本作では、特に主人公の行動が理解しがたかったです。その行動が多くの人間を巻き込み、結果的に多くの人間が犠牲を払ったように思えます。悲劇のヒーローぶっていますが彼は事件の被害者でもあり、加害者でもありました。
推理小説としては水準レベルですが、機械トリックはなかなかのもの。トリックを示唆する伏線もしっかり張ってあって、東野作品の中ではレベルの高いトリック演出でした。東野圭吾らしくないというか、読んでて戸惑いました。ただ学園青春ミステリーということで猟奇性が薄い分、多少トリックに軽さを感じたのも確かです。私的には東野圭吾の「学園青春+推理」小説のベスト作品なので、もっと読まれてほしい作品です。


No.28 6点 獄門島
横溝正史
(2009/08/08 12:27登録)
(ネタばれ気味です。)
<横溝正史自選集2>金田一耕助シリーズの代表作(長編/1947)です。
見立て殺人の必然性に納得できません。結局お偉い様の信念と美意識を貫いただけですよね。見立て殺人の意味よりも死の風景に読者が魅了されれば、それには意味があったと言えますが、色彩の美が感じられない原作では意味を成さないです。「気違いじゃが仕方がない」の本当の意味に関しても特に何も感じなかったし、フーダニットも納得できません。いつでも誰でも殺せたことになるだろうし、金田一耕助には止める術はなかったのでは。というか探偵らしくないし、頼りないです。なんだか今回は物語の惹きたて役に徹していました。第一印象としては自己主張がなく、受け身な探偵です。
私的には推理小説ではなく「悲惨な物語」でしかなかったです。三つの条件の一致が惨劇を起こしたという真実と吊鐘を使ったアリバイ偽装工作トリックには多少魅力を感じましたが。序盤から中盤にかけては推理小説を読んでる心地がなかったのも評価を下げた要因です。点数が低いのは、推理小説として評価した結果です。期待しながら読んだだけに残念でした。私的には『本陣殺人事件』に遠く及びません。


No.27 5点 美しき凶器
東野圭吾
(2009/08/04 02:21登録)
<光文社文庫>ノンシリーズ(長編/1992)です。
4人の男女が「美しき凶器」に次々と殺されていくお話です。ジャンルはスリラー&アクション的な感じで謎らしい謎は一切なく、サラッと読める作品でした。
「美しき凶器」とは身長190センチガッツリ体育会系の大女のことを指し、悪者でありながら主役でもあります。ターゲット捜索中、チャライ男たちに絡まれたり、進行方向を間違えたりとグダグダ感が拭えない復讐劇が延々続きます。ただ警察の無能ぶりが半端ないので「最悪のパターンで終わり?」かと思いきや、さすがにタダでは終わりません。どんでん返しではありませんが、気の強い女達の悪あがきが物語を予期せぬ展開へ・・・。
余談ですが、東野圭吾の作品で登場する女性は「美人で気が強い」という設定がやたら多い気がします。なぜでしょうか?「可愛い」と思える女性がほとんど登場しません。


No.26 7点 そして誰もいなくなった
アガサ・クリスティー
(2009/07/31 12:40登録)
<ハヤカワ文庫>言わずと知れた名作(長編/1939)です。
海外ミステリー初体験です。国内ミステリー初体験が『十角館の殺人』だったので、元祖であるこの作品を迷いなくセレクトしました。これは極上のサスペンス物ですね。読んでいる間は推理する隙も与えないほどのスピーディーな展開に魅入られページをめくる手が止まりませんでした。ただフーダニット、ハウダニットを意識して書かれた本格物ではなさそうです。犯人を当てることは難しいですし「本格物愛好者」が好んで読むものではなさそう。
最も褒め称えられるべき点は叙述的な部分なのですが、それがあまりにも巧みに盛り込まれていた為に翻訳者も気付かなかったのか。誤訳がいっぱいあることに泣けました。海外翻訳ものアレルギーになる人の気持ちも少しわかった気がします。正直、本気で楽しめませんでした。でも読んでいる間は「最高(10点)」でした。←1度使ってみたかったフレーズです。


No.25 6点 蝶々殺人事件
横溝正史
(2009/07/28 17:26登録)
<横溝正史自選集1>初期の代表作(中篇/1946)です。
金田一耕助シリーズではありませんが、横溝正史自選集1に収録されていたので読んでみました。遺体の移動トリック(アリバイ偽装工作)がメインの物語です。「読者への挑戦状」付きの本格推理物で、犯人を当てるには「原さくらはどこで殺されたか?」を推理する必要がありますが「入れ物」を利用したミスディレクションやその他多くのダミー解答が盛り込まれている為に難易度は高めです。「犯人当て」の懸賞を行ったそうですが、満足できる解答は一通もなかったそうです。
この作品にて「時刻表に合わせて思考を組み立てる作業が苦手」であることが判明しました。トリックに魅了されなかったのは単に理解できていなかっただけです。「紙と鉛筆を使って時系列を整理しながら読む」ことの重要性を教えてくれた作品でした。でも、それが面倒臭いから「アリバイ崩し」系は嫌いです。ただクロフツの『樽』はいずれ読みます。


No.24 4点 怪しい人びと
東野圭吾
(2009/07/26 09:54登録)
<光文社文庫>ノンシリーズ(短編/1994)です。
記憶にも残らない作品ばかりが集まった駄作品集。東野圭吾の短篇集を読むなら他を読むことをオススメします。
『寝ていた女』が個人的にベストでしたね。『灯台にて』が次点。どちらも奇妙な雰囲気に惹きつけられました。だけど記憶に残りません。


No.23 9点 本陣殺人事件
横溝正史
(2009/07/25 11:11登録)
(多少ネタばれあり)
<横溝正史自選集1>金田一耕助シリーズの代表作(中篇/1946)です。
純日本式の家を舞台とした密室殺人がメインです。現実性に欠けるトリックなので、その描写の理解に苦しみました。これは考え付かないですが、小道具の使い方が素晴らしく、不自然さも感じさせないのでトリックに不満はありません。機械トリックではありますが存在価値は大いにあります。また、日記形式のメタな物語で、文そのものがミスリードを誘っています。その手際の良さが用意周到で巧いです。レッドへリングとしての三本指の男の存在も効果的でした。彼の描写には盲点ともいえる絶妙な言い回し(ミスディレクション)があり、特に読者の心理を突いた「あの一言」が憎たらしいほどに効果を発揮しています。ちなみに作中には多くの海外ミステリーの名が登場します。『本陣殺人事件』自体、海外ミステリーの古典に影響されている節があるので、それらの作品もいずれ読むことにします。
(2009/10/20追記)
唯一無二の密室トリックが楽しめる作品として印象深かったです。中篇らしく無駄をそぎ落としたストレートな本格物なので、横溝正史の本格推理に対する意欲と素養が最も感じられる作品でした。


No.22 6点 天使の耳
東野圭吾
(2009/07/11 14:08登録)
<講談社文庫>交通事故をテーマとした作品集(短編/1991)です。
テーマ範囲は狭いですが堅苦しさは感じさせず、どの作品も印象深いです。「犯人は誰?」「トリックは?」などの意外性ではありませんが、どの作品もラストに急展開があり、ブラックな結末の意外性を演出していました。
同作家の短編『犯人のいない殺人の夜』と雰囲気が似ているので気に入ったならば、それも読むことを強くオススメします。


No.21 8点 ある閉ざされた雪の山荘で
東野圭吾
(2009/07/08 15:05登録)
(ネタばれ気味)
<講談社文庫>変則的クローズドサークル物(長編/1992)です。
読む以前から「現実or作り物」の答えはなんとなく察していて「くどいなぁ」と思いながら読んでいたのですが、想定範囲外の真実が用意されていたことに驚きました。「現実or作り物」の答えをなんとなく悟らせながらも、一筋縄ではいかない複雑なプロットで物語を構築していた点は称賛に値します。完成度は『仮面山荘殺人事件』より高く、前回のようにギャグで終わっていません。また、オーソドックスな本格的クローズドサークル物とはあえて距離を置きつつ、独自の構想力で本格物を作り上げようとする姿勢は今作でも徹底されていて、作者の執念が感じられました。最終的には捻りの利いた結末が待ち受けているわけですが、今回は読者に十分予測できるように伏線をキッチリ張っていて、論理性に満ちた解答がなされていました。


No.20 4点 回廊亭の殺人
東野圭吾
(2009/07/06 10:58登録)
<光文社文庫>「悲劇の女」をテーマに描いた物語(長編/1991)です。
毎回アグレッシブに多分野に渡って挑戦してくれるのは嬉しいことですが、今回は憶病な東野圭吾氏の顔が浮かびました。結末部分の演出に関してですが、同作家の短篇集で同じプロットの作品を読んだことがありまして、そちらの方がラストの締まりは良かったです。また、この作品ではダイイングメッセージも扱われていますが、それも魅力に欠けていました。短篇でサラッと使う分には良いですが、それだけで犯人を特定するには無理があります。本格色は出てる方ですが、褒めるべき点が見つからなかったです。




(ネタばれです)
ラストは考えもしないサプライズが用意されていました。しかし、驚愕することはなく「だから何?」って感じでした。途中で気付いたわけではないのですが、その人にスポットを当てるのは「逃げ」ですね。そもそも出番少ないし、私的には「空気」な存在でした。


No.19 7点 江戸川乱歩短篇集
江戸川乱歩
(2009/07/03 14:27登録)
<岩波文庫>江戸川乱歩の傑作選です。
「奇妙な味」というジャンルがどんなものなのかを知れたことが一番の収穫でした。江戸川乱歩の作品では「変態妄想癖が激しい登場人物が繰り出す悪趣味な愚行」がそれにあたるのかな。本格推理を意識して書かれた『二銭銅貨』『D坂の殺人事件』『心理試験』は正直つまらなかったです。それらよりも「奇妙な味」に該当する『屋根裏の散歩者』『人間椅子』『鏡地獄』などの作品の方が楽しめました。以下それぞれの感想です。
『屋根裏の散歩者』・・・有栖川有栖の短編で似たのがあったのを思い出しました。本格的センスでいえば有栖川有栖の方が上ですね。でもどちらも捨てがたい。
『人間椅子』・・・タイトル通り過ぎて笑えた。ニヤニヤしながら読んでいましたが、終盤あたりで背筋から「ゾワッ」とする何かを感じずにはいられなかったです。ラスト数行のオチも利いていました。
『鏡地獄』・・・ジャニーズの嵐さんも番組で「鏡」を使った実験を幾度もやってましたね。ワクワクしながら観ていた人も多くいたでしょう。球体を使った変態プレイと似た実験もしていたけど身体への影響はないのかな?鏡の魔力は現代でも健在ということですね。
(2009/8/19追記)
新潮社『江戸川乱歩傑作選』の方が代表作だけを読む分には優れているので、この短篇集はあまりオススメできませんが、十分に楽しめることは確かです。


No.18 7点 変身
東野圭吾
(2009/06/28 10:06登録)
<講談社文庫>東野圭吾の代表作(長編/1991)です。
人間の奥底に潜む闇が精神を蝕んでいき、殺戮に至るまでの過程が繊細に描かれていて、猟奇性に満ち「人間が何より一番怖い」と思わさる描写の連続がゾクゾク感を増幅させていました。ただ、ラストは消化不良に終わっている感じが否めません。少しインパクトに欠けていたかもしれません。恋愛要素を加えていた点で救われた心地があり、またそれが消化不良の原因でもあります。最悪のパターンで終わったとしても私は全然かまいません。小説だから。
ちなみに映画化もされていて、そちらも楽しめます。特に玉木宏がドSに変貌していく姿は必見です。ヒロイン役は蒼井優が演じてます。


No.17 8点 仮面山荘殺人事件
東野圭吾
(2009/06/25 12:52登録)
<講談社文庫>変則的クローズドサークル物(長編/1990)です。
ラストは大きく期待を裏切られました(良い意味で)。これはアンフェア。読者によっては怒りで床に叩きつけられたり、燃やされたり、ぶん投げられたりするタイプの作品です。しかし、どんでん返し部分でいえば、今までで一番成功した作品でした。このようなプロットの作品がどれだけ存在するかは不明ですが、最初に読んだのが東野圭吾で良かったです。それにしても〇〇さんは愛されていますね。『仮面山荘殺人事件』というタイトルもシャレてます。
同作家の『ある閉ざされた雪の山荘で』もクローズドサークルを扱った作品なのでぜひ読み比べてほしい。彼の本格に対する考え方がわかります。


No.16 5点 宿命
東野圭吾
(2009/06/19 23:41登録)
<講談社文庫>東野圭吾の代表作(長編/1990)です。
勇作と晃彦の二人をめぐる「宿命」の真相は正直「ありがちでは?」と感じました。ラスト10ページは期待値を下回るドンデン返しで、最後まで胸の鼓動を高鳴らせるような展開は皆無でした。結末は読者の感性次第ってことですね。ただ二人の間で揺れ動く美佐子の心の葛藤は上手く描けていました。「勇作よ、抱いてしまえ」と何度思ったことか・・・
当然、登場人物と一緒に推理しながら結末を辿るというものではなく、あくまで人間ドラマに重点を置いた作品でした。だったら単なる物語を膨らませるだけのオマケとして殺人事件を取り入れるのはやめてほしいですね。私はどうしても殺人事件の犯人やトリックに期待する性分なのでこのような作品には抵抗があります。


No.15 7点 犯人のいない殺人の夜
東野圭吾
(2009/06/17 16:01登録)
<光文社文庫>ノンシリーズ(短編/1990)です。
『浪速少年探偵団』や『殺人現場は雲に上』などの短編集に比べれば、どのタイトルも印象深い。光文社出版の東野作品は駄作が多くてオススメできないのですが、この作品だけは別格です。東野作品を読み始めるきっかけには相応しく、軽くて丁度良いです。
毎回のように捻りある結末を用意してくる東野圭吾らしいスタイルの作品を何篇も味わえるという意味では長編を読むよりも効率よく東野圭吾の良さを実感できるはずです。あまり本格色はないですが、その分気構えすることなくすんなり溶け込めて素直に楽しめました。


No.14 4点 殺人現場は雲の上
東野圭吾
(2009/06/02 14:09登録)
<光文社文庫>ユーモア推理小説(連作短編/1989)です。
登場人物のキャラにユーモアがあるだけで(特に「ビー子」)珍事件の数々は憶測だけの推理で解決といったパターンが多く、さらにバカらしくアホらしいトリックもなく無難な感じの仕上がりで、ミステリとしてどこにユーモアがあったのかよくわかりません。これは東野圭吾の作品としてオススメできないです。


No.13 5点 ブルータスの心臓−完全犯罪殺人リレー
東野圭吾
(2009/05/30 11:34登録)
<光文社文庫>タイトルの通り完全犯罪を扱った作品(長編/1989)です。
といってもその計画は最初の段階で何者かの手によって破たんしてしまうので、「その裏側に潜む真相は何か?」がメインになります。冒頭の怪現象が後に明かさせる真相の重要な鍵となっているところが『鳥人計画』と似ていました。
永末拓也の視点による描写はスリリングで楽しかったです。ただ警察の調査に関してですが、彼らが追っている真相は読者が既に知り得ている内容の為、読んでいて退屈でした。倒叙ミステリだから仕方ないですがせめてロジックで追及してほしい。警察による科学調査中心の運任せな真相追及はつまらないです。そこがメインではないのはわかりますが・・・
最後の真相にしても論理性は皆無でしたね。意外性も特になかったです。

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