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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1535件

プロフィール| 書評

No.1335 6点 クロエへの挽歌
マージェリー・アリンガム
(2022/02/13 22:46登録)
本作をアリンガムの代表作に推す人は、miniさん等かなりいるようですが、個人的には事件全体の構成はよかったもののそれほどかなあと思えました。
『霧の中の虎』や『殺人者の街角』では影の薄かったキャンピオンですが、本作では彼の視点を中心に書かれています。ではそれだけ名探偵として活躍してくれるかというと、なかなかそうなりません。ある理由から、事件の起こった館に行きたがらず、まるで駄々っ子みたいにうじうじしていて、いらいらさせられました。まあそこが、ある意味ミスディレクション的にも使われていたことが、真相解明シーンになってわかるのですが、それでも小説技巧的な意味でキャンピオンの態度を誉めたくはありません。
後、最後に残った機会に関する疑問の解明があまりにあっけない点については、そもそもそんなことがあったっけというぐらいで、さほど気になりませんでした。


No.1334 7点 質屋探偵ヘイガー・スタンリーの事件簿
ファーガス・ヒューム
(2022/02/09 20:56登録)
全12編からなる連作短編集で、連続性がかなり強調され、目次も章立てになっています。第1章『ヘイガー登場』は章題にもかかわらず、ヘイガーが質屋で働くことになった顛末にとどまらない結末をもった話になっていますし、それは第12章『ヘイガー退場』も同じです。この最終章では、それまでに出てきた何人かの登場人物が集まり、事件が展開されます。
原題はただ "Hagar of Pawn-Shop" となっていて、確かにヘイガーは名探偵的な才能を発揮することも多いのですが、必ずしも探偵役とは限りません。クイーン編『犯罪の中のレディたち』にも収録された『一人目の客とフィレンツェ版ダンテ』、それにもう1編『五人目の客と銅の鍵』は暗号ミステリですが、結末にひねりを加えていて、特に後者はヘイガーの推理の後に起こる出来事が話を盛り上げます。そのような二重構造の話は他にもいくつかあり、なかなかバラエティに富んだ作品になっています。


No.1333 6点 オルレアンの魔女
稲羽白菟
(2022/02/06 15:09登録)
日本の古典芸能に対する造詣の深い作者ですが、今回は意外にも舞台をフランスにして、日本人ソプラノ歌手を主役に据えた作品になっています。ただ、オペラなど西洋古典芸能に対する蘊蓄はありません。しかし前作に対するコメントでは横溝正史の世界を連想させると書きましたが、その点は本作でも共通し、作中では「ハリウッドのB級ホラーみたいな」と形容される、不気味な仮面と衣装の人物が登場したり火刑殺人が起こったりと、はったりのきいた事件が展開されます。
犯人を特定する情報はあらかじめ読者に提示されず、パズラーとは言い難い気もしますが、ラストで明かされるプロローグの意味には、感心しました。
登場人物の一人、フランスを代表する女優は、名前からしても明らかに実在の大女優がモデルですが、その人、本名はオルレアンならぬドルレアックなんですよね。話に絡めてくるかと期待していたら、何も言及はありませんでした。


No.1332 5点 消された眠り
ジェレマイア・ヒーリイ
(2022/01/31 23:31登録)
ボストンの私立探偵ジョン・フランシス・カディのシリーズ第3作では、旧友の黒人警察官マーフィ警部補から依頼された事件が語られます。となると人種問題がからんできそうですが、それは、ほとんど警部補が管轄外地域で起こった事件について聞く当地の黒人警察官がいないから、カディに依頼したという点に限られます。殺された女子学生(白人)の逮捕されたボーイフレンドが黒人だという点についても、被害者の両親の拒否感は嫌悪というほどでもありません。
事件の設定からして、逮捕されたウィリアムが犯人でないとしたら、真相はそれ以外考えられないもので、意外性は全くありません。かといって、証拠をいかにして手に入れるかという捜査的興味もさほどではなく、犯人を罠に掛けようとする方法も、常識的に見て適法でないことは明かでしょう。
ただ事件の決着のつけ方には、疑問は感じながらも驚かされました。


No.1331 5点 細工は流々
エリザベス・フェラーズ
(2022/01/28 23:23登録)
『私が見たと蠅は言う』の作者として名前だけはずいぶん昔から知っていたエリザベス・フェラーズですが、読んだのは今回の本作が初めてです。結果…う~ん、今一つのれませんでした。いや、真相自体は鮮やかに決まっていますし、ミスディレクションもかなり効いているとは思うのです。意味不明な原題(”Remove the Bodies”)とは全く違う邦題も、読み終えてみるとなるほどという感じ。ただその小説スタイルが、合わなかったということでしょう。
会話の途中、誰かが重要なことを言おうとする直前に邪魔が入り、情報提供が遅れるのが執拗なまでに繰り返されるのには、いらいらさせられます。その他にも全体的に変に細かい技巧に走りすぎている感じがするのです。ジョージ(苗字不明)の耳が聞こえないふりも、巻末解説やkanamoriさんの評では褒めていますが、そんなことをする必要があるとは思えませんでした。


No.1330 6点 大庭武年探偵小説選Ⅱ
大庭武年
(2022/01/24 23:20登録)
第Ⅰ巻ではがちがちな「本格派」ぶりを見せてくれた大庭武年ですが、本作では謎解き系作品は収録11作(内1作は未完、他にミステリ関係と限らないエッセイが8編)のうち2作だけです。
そのうちひとつ『カジノの殺人事件』は戯曲形式で、人間関係が事件を複雑にしています。個人的には倍くらいの長さのじっくり書き込んだ小説にしてもらいたかったと思えます。もう1作、『歌姫失踪事件』は走行中の自動車からの人間消失という不可能興味の作品。トリックは一読だけでは不可能に思えたのですが、巻末解題に載っていた挿絵を見て、納得。1930年台当時の自動車の構造を利用しているのです。
他にも倒叙ものの『小盗児市場の殺人』がミステリ系では気に入りました。巻末解題ではおまけの1作のように書かれている『三吉積罪物語』は時代物の犯罪小説と言っていいでしょう。『港の抒情詩』は完全に恋愛小説ですが、悪くありません。


No.1329 6点 学生の死体
J・R・ハランド
(2022/01/18 20:39登録)
訳者あとがきによれば、教師出身の女性作家のデビュー作だそうです。ちょっと調べてみた限りでは、他に2冊あることぐらいしかわかりませんでした。J・Rもどんな名前のイニシャルなのかわからず。
本作は最初の160ページぐらいは全くミステリという感じがしません。その部分最後のパーティのシーンでは険悪な様子はあるものの、殺人にまで発展するとは思えません。それが第9章になると、そのパーティを主催した学生ピーターが失踪し、さらに3週間後、池から首なし死体が発見されることになります。このあたりの書き方はあっさりしすぎで、期待感が盛り上がりません。
三人称形式ですが、一貫して主役の40歳ぐらいで教員養成コースに入学したケイトの視点から語られます。殺人事件を捜査する警部は見るからに有能そうで、したがってラストもどうなるかは見当がつきますが、後半はなかなか楽しめました。


No.1328 7点 シェーン贋札を追う
ブレット・ハリデイ
(2022/01/15 13:00登録)
マイアミ空港で、最終便に乗ろうとしていたシェーンが、ルーシイ・ハミルトンからの電話に呼び出され、彼女に仕事を辞めると宣言されるところから始まる作品です。本作では特に何度も窮地に立たされながら、冷静に対処するシェーンですが、この秘書からの通告はショックだったようです。
しかしそれにしても、これはひどい。
いや、作品内容や翻訳文章のことではありません。ポケミス裏表紙のあらすじのことです。まあ、「贋札」と誘拐事件が絡んでくるのは確かですが、細かい点は全然違っています。どうしたらこんなミスが起こるのやら…
無関係そうな二つの事件がどうつながって来るのかというところが最大の謎になっていて、その点に関するミスリーディングもなかなか冴えています。スーツケースの入れ替わりだけは、いくらなんでも無理があるだろうと思えましたが、そこを除けば、複雑な事件をきれいにまとめています。


No.1327 4点 卑弥呼の密室
獅子宮敏彦
(2022/01/12 23:40登録)
タイトルの「密室」は不可能犯罪の意味だというので、歴史的要素を加えたパズラーかと思っていたのですが、まるで違っていました。確かに卑弥呼自身は密室状態で殺されますし、現代における事件も、密室殺人が二つ出てきます。しかし、序章の後、第一章・第二章から派手なアクションを繰り出してきます。それもハードボイルドのリアルなものではなく、かなり安っぽい荒唐無稽さです。最後にはマシンガンや爆弾まで出て来て、スペクタクルなクライマックスになっています。
同じように歴史的テーマを扱っていても、最近読んだ森雅裕の『画狂人ラプソディ』の北斎秘話にはなかなか説得力があったのに対して、大ボラもいいところです。巻末には邪馬台国関係の本が参考文献として多数挙げられていますが、『魏志倭人伝』等公式の歴史は、時の権力者の都合で嘘だらけなのが当然という基本姿勢の伝奇スリラーでした。


No.1326 7点 窓際のスパイ
ミック・ヘロン
(2022/01/06 23:45登録)
タイトルは、いわゆる「窓際族」と同じ意味を持っているのですが、一般的な窓際族よりもないがしろにされている連中です。「泥沼の家」で落ちこぼれ用のつまらない仕事をしている、「遅い馬」(原題直訳)である登場人物たちの日常や内面がかなりじっくり描かれていてテンポが遅く、最初のうちはちょっと退屈な感じです。しかし誘拐された青年がどんな人物かがわかるあたりからは、驚かされるような展開で、おもしろくなります。
プロローグ(「プロローグ」とはされていませんが)をこれだけきっちり書き、さらにその記憶を一応の主人公リヴァー・カートライトが何度も思い出すシーンが挿入されていれば、そこに何かあるなとはすぐに感付きますが、なるほど、そこまで関わっていましたか。
誘拐事件の決着部分だけは、確かにひねってはいるのですが、むしろオーソドックスなパターンにした方がよかったかなと思いました。


No.1325 7点 匿名原稿
スティーヴン・グリーンリーフ
(2022/01/03 23:58登録)
タイトルどおり『ハムラビ法典を讃えて』と題された小説の匿名原稿の作者探しを、マーシュ・タナーが旧知の出版社社長に依頼されて調査を開始したところ、問題が次々に起こり最後には殺人までも、という事件です。原題はシンプルに、"Book Case"。
そんな内容ですから、様々な作家の名前が出てきます。ハメット、チャンドラー、ロス・マク、またタナーが、名前を「ハマーでしたかしら?」と間違われるシーンもあります。そんなハードボイルド系だけでなく、事件の説明を集めた関係者の前で開始する部分では、自分が「立派にポアロの役をつとめることができるだろうかと、ちょっと不安になった」りもします。ただしパズラー的な読者への伏線提示は最初から無視しています。
そのシーンの後、最後に内輪で原稿の作者を指摘する部分があるのですが、この真相は見当を付けやすいものの、推理には説得力があります。


No.1324 5点 画狂人ラプソディ
森雅裕
(2021/12/30 23:45登録)
1985年度横溝正史ミステリ大賞で佳作になった作品です。
タイトルの「画狂人」というのはもちろん葛飾北斎のことで、東京藝術大学美術学部卒業という経歴の作家らしい題材ですが、真相が明らかになってみると、その扱いはどうなんだろうと疑問に思えてしまいました。探偵役の二人組は美術学部の学生で、最初美術史の教授が殺されるものの、その後の展開はむしろ音楽学部の不祥事が中心になってきます。乱歩賞を受賞した『モーツァルトは子守唄を歌わない』など、この作者は音楽系の方が書きやすいのでしょうか。主要登場人物たちの多くがバイク(それもドゥカティやハーレー)、ジープを乗り回すという、独特な車両への偏愛も示されます。まあ、作者の好みによる設定というだけではなく、四輪駆動であることが伏線になっているところも、あります。
犯人の計画がごちゃごちゃしすぎで、解決がすっきりしないのが一番の不満でしょうか。


No.1323 6点 コンバット・ゾーンの娘
リンダ・バーンズ
(2021/12/28 16:32登録)
赤毛のカーロッタ・シリーズ第2作。前作は未読ですが、それがバーンズのデビュー作なわけではありません。それ以前、1981年からマイケル・スプラッグ・シリーズ4作を発表していたそうです。カーロッタはバレーボールをやっているという設定ですが、これはバスケットボールは高校の臨時コーチまで引き受ける、パレツキーのヴィクを明らかに意識していると思われます。
原題は “The Snake Tattoo” で、邦題とは全然違いますが、これはカーロッタが依頼される2つの事件のうち、どちらをタイトルに採るかということです。邦題は高校生に依頼される少女失踪事件の方と考えていいでしょう。原題はカーロッタが警察官だった頃の上司ムーニー警部補から依頼された件の目撃者娼婦のことです。
2つの無関係な事件が並行して描かれますが、どちらも意外性の求め方がちょっと中途半端に思えました。


No.1322 6点 煙草屋の密室
ピーター・ラヴゼイ
(2021/12/21 23:50登録)
表題作等全16編を収録、全体で400ページ弱なので、だいたい短めの作品ばかりです。
ラヴゼイというと謎解き系の作家のイメージが強いかと思われますが、この短編集はいわゆるパズラー系の物は全くありません。最終的にパズラー的なオチのあるものは、多少ありますが。
その1つ、原題ではこの作品が表題作に採用されている『肉屋』は、奇妙な味と見せかけて、最後に納得のいく(フェアプレーについては弱いですけど)真相を明かしてみせる作品です。ストーリー展開はともかく真相だけなら本当にパズラー系と言えるのが、『パパに話したの?』。『アラベラの回答』はあいまいすぎて意味がよくわかりませんでした。最後の邦訳表題作は、なるほどと感心していたら最後に連続どんでん返しで、巻末解説では「皮肉がこめられている」と書かれていましたが、むしろ悲しさ、むなしさの漂う結末だと思えました。


No.1321 6点 女騎手
蓮見恭子
(2021/12/18 09:33登録)
2010年度横溝正史ミステリ大賞で、大賞に次ぐ優秀賞を受賞した作品です。応募当時のタイトルは『薔薇という名の馬』、作中問題となる馬はホナミローゼスで、基本的にこの馬をめぐる謎がストーリーの中心にあります。
巻末の選評を読むと、選考委員4人中3人がディック・フランシスとの関連について述べていますが、実際一人称の主人公紺野夏海の家には、フランシスの小説がずらっと並んでいる設定です。ただ、イギリスの競馬について知識がなくてもすんなり入っていけるフランシスに比べると、日本の競馬(特に専門用語)についての説明はうるさい感じがしますし、登場人物も最初に多数そろえすぎて、覚えにくいところはあります。謎解き的には、なんとなく『興奮』を思わせるようなアイディアを基にしています。ただ、ラストで語られる夏海の父親の信念は、彼自身の実際の行動とは無関係じゃないかと思えてしまいました。


No.1320 7点 俺の拳銃は素早い
ミッキー・スピレイン
(2021/12/13 00:02登録)
古代ローマのコロッセオと現代の都会とを比較したりして、素早くて巧みじゃなきゃおまえは死んじまうぜ、なんていう講釈から始まる本作。しかし実際には、ハマーの拳銃さばきはちっとも素早くないと思える内容でした。
だからと言って作品自体がもたついて退屈なわけではありません。銃をまだ抜いていなかったからこそ命が助かる件にはなるほどと思わせられましたし、後半、銃は要らない、素手で倒してやると殺し屋に飛びかかっていくところも楽しめます。さらにハマーが先に発砲しなかったから成り立つ、犯人の悲鳴をハマーの哄笑が覆い隠してしまう狂気じみたラスト・シーンには異様な迫力があります。
ローラの扱いについては、後の作品のことを考えると、こうならざるを得なかったのだろうなと思えました。
ちなみに読んだのは原書なので、人並由真さんが書かれている一人称「僕」の違和感は感じずに済みました。


No.1319 8点 悪魔の死
アンネ・ホルト
(2021/12/08 21:00登録)
ノルウェーの女性作家によるシリーズ第3作。
主役のハンネ・ウィリヘルムセン(綴りはWilhelmsenなのでヴィルヘルムセン表記の方が、正しいのでしょうが)は、前作の事件後警部に昇進していて、まだデスク・ワークに慣れず、自分で外をとび回って上司から小言を言われたりもしています。
児童保護施設の所長(女性)が刺殺される事件で、多少厳格すぎるにしても悪魔とは程遠い人物設定です。それがこのタイトル(原題”Demonens Død”ですから、ノルウェー語を知らなくても邦題が直訳なのは明か)というのには、意味があるわけです。
ある意味、このラストには『火刑法廷』を連想してしまいました。「悪魔」と言ってももちろんリアリズム系の作品なので、ホラーとは無関係ですが、それほどの衝撃的反転性を持っているということなのです。その結末に至る後半のストーリー展開も見事で、なんともやるせない気持ちにさせられました。


No.1318 4点 白虹
大倉崇裕
(2021/12/05 17:26登録)
主人公五木の罪悪感とか警察組織の硬直性とか、誇張されすぎてはいるものの、山岳ミステリとしての雰囲気や、殺人事件に至る流れなど、大げさだからこその迫力も感じられ、登場人物たちも魅力的でなかなかおもしろいと思っていたのです。
ところが、帯に書かれている「驚愕の真相」に至り、なんだこれということになってしまいました。意外性と言ってもあまりに唐突で、五木が命を狙われるところなど論理的にも無理が出て来てしまっているのです。もっとストレートなアクションを中心にした方がよかったかもしれません。細かい点ですが、「故人」(第10章末)は漢字を読めば意味は明らかですが、聞いただけではわかりません。
なお、タイトル(「はっこう」)については、「日暈とも言う。太陽や月の周りに、巨大な光の輪が見える」現象で、「凶事の兆しとも言われている」と説明されていて、五木の閃きのことを指しています。


No.1317 4点 日曜哲学クラブ
アレグザンダー・マコール・スミス
(2021/11/29 23:28登録)
「寄り道だらけの知的な冒険」と作品紹介には書かれている女性哲学者イザベルのシリーズ第1作です。
そんな主役設定だけに、上品ではあるのですが、読んでいて、人間に対する見方が極端な紋切り型に感じました。作中の実例を挙げると、政治家はガンジーやマンデラなど「ほんの数人」を除けば「どうしようもなく大きくふくれあがったエゴ」の塊ばかりだという考え。人間の意外な一面を見せてくれ、だからこその意外性を演出する作家に親しんでいる者にとっては、不快感がどうしても拭えませんでした。
ところが、全体の8割近くなってあまりに突然、鼻や唇にピアスをしたチョイ役若者の登場を皮切りに、人は見かけによらないこともあり、第一印象に固執するのは危険だという主張が出て来て、以降はその考え方に基づいた真相解明になっていました。手がかりは明確なので、一応「本格派」と言えるのかなあ。


No.1316 6点 黄色の間
M・R・ラインハート
(2021/11/26 23:10登録)
ラインハートは1958年に死去していますが、晩年には執筆量は急減して、1945年の本作の後発表された長編は2作だけのようです。
途中までは、これは傑作ではないかと思いながら読み進んでいたのです。別荘での身元不明の女の死体発見に続き、山火事、ある人物のショック死、容疑者逮捕など様々な出来事が起こり、ともかく飽きさせません。主役の二人、キャロルとデイン少佐との視点の描き分けも堂に入ったもので、どうまとめて来るのかと期待していたのですが。
確かに事件全体の流れは相当複雑ではあるものの、納得できるようにできています。しかし、そのまとめ方がちょっと釈然としないのです。なんといっても、探偵役が入手した手がかりはすべて読者に開示することという意味でのフェアプレイが守られていません。完全にサスペンス調であれば問題ないのですが、構成がパズラー風なだけに、どうしても多少不満が出てきます。

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