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ミステリの祭典

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画狂人ラプソディ

作家 森雅裕
出版日1985年08月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2023/02/01 22:01登録)
(ネタバレなしです) 森雅裕(1958年生まれ)のデビュー作は有名な「モーツアルトは子守唄を歌わない」(1985年)だとずっと私は思っていましたが本書のワニの本版の作者による巻末エッセーを読むと同じ1985年発表の本書が僅差ながら出版が早く、こちらがデビュー作でした。作者が学生時代に着手したということもあり、青春小説要素の濃い本格派推理小説です。「ニヒルでクールでストイックな男」でありたい学生を主人公にしているためかドライなハードボイルド風なところもあります。殺された芸術大学の教授が研究していた葛飾北斎に絡む謎解きもありますが、巻末エッセーで作者が「あれもこれもと欲張って盛り込んだ」と述べているように学究一本鎗の作品ではありません。バイクや四輪駆動車の描写には並々ならぬ力が入っています。主人公がある証拠品からアリバイトリックを推理しますがその時点ではアリバイのある容疑者が誰なのかがわからないという設定がなかなかユニークで、ここをもっとフォーカスした謎解きにしてほしかったですね。

No.1 5点
(2021/12/30 23:45登録)
1985年度横溝正史ミステリ大賞で佳作になった作品です。
タイトルの「画狂人」というのはもちろん葛飾北斎のことで、東京藝術大学美術学部卒業という経歴の作家らしい題材ですが、真相が明らかになってみると、その扱いはどうなんだろうと疑問に思えてしまいました。探偵役の二人組は美術学部の学生で、最初美術史の教授が殺されるものの、その後の展開はむしろ音楽学部の不祥事が中心になってきます。乱歩賞を受賞した『モーツァルトは子守唄を歌わない』など、この作者は音楽系の方が書きやすいのでしょうか。主要登場人物たちの多くがバイク(それもドゥカティやハーレー)、ジープを乗り回すという、独特な車両への偏愛も示されます。まあ、作者の好みによる設定というだけではなく、四輪駆動であることが伏線になっているところも、あります。
犯人の計画がごちゃごちゃしすぎで、解決がすっきりしないのが一番の不満でしょうか。

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