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ミステリの祭典

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toukoさんの登録情報
平均点:6.16点 書評数:241件

プロフィール| 書評

No.121 7点 制服捜査
佐々木譲
(2010/02/01 21:08登録)
作者の他作品も含めて、逸脱の仕方と解決方法が若干ワンパターン気もしましたが、駐在警官のジレンマは胸に迫ってくるものがありました。


No.120 6点 死の泉
皆川博子
(2010/02/01 21:01登録)
吉川英治文学賞を受賞し、97年の週刊文春ミステリー・ベスト10の第1位作品ということで、期待して読んだのですが……期待しすぎるともしかしたらガッカリな作品かも?

日本人作者による作品なのですが、ドイツ語を翻訳したという体裁だし、作者とされている人物と名前のかぶる「ギュンター」・グラスのドイツ文学史上における金字塔的作品「ブリキの太鼓」とナチスと成長を止めた少年のお話、というのもかぶっているので意識してるのかな? などと思ったのですが、まったく関係なかったようで、どちらかというと江戸川乱歩の「孤島の鬼」のような猟奇的見世物小屋+メロドラマに一昔前の耽美な少女漫画的エッセンスをふりかけたって感じの作品でした。
とにかく、古城にまつわる伝説、ナチの人体実験や陰謀や秘宝、カストラート、美しい双子、美少年たち、狂気の美女とベッタベタなネタがこれでもかとてんこ盛り。
しかも、語り手が変わる2部は陰鬱な1部とはうって変わって復讐活劇ドラマと化し、終盤は昔の香港映画か日活映画のようなチープなドタバタアクションに!?

重厚長大な印象に臆せず、冒頭の文学臭にも惑わされず、そして本格的なミステリも期待せず、気楽に読んでみると、サービス精神旺盛なので、意外と楽しめる作品だとは思います。
(以下ネタバレかもしれないので注意)








ある人物の入れ替えトリックは面白かったんですが、エピローグのどんでん返し(というか作品のメタ化)は、狂気も芸術への執着心も表面的にしか感じられないお約束通りの描写しかない悪役に魅力がないため、私には蛇足に感じられてしまったなあ。


No.119 8点 警官の血
佐々木譲
(2010/01/30 12:47登録)
戦後から現在に至る警官一族の物語。
時代の波に翻弄される部分はあっても、祖父・親・孫と芯になる性格やスタンスはぶれていないのがよかったです。
孫の代にでやっと解き明かされた祖父の死の真相は、冒頭から思わせぶりたっぷりにひっぱっていたわりに意外性はなかったけれど、ラストでなるほど、こう使うためかと、ミステリとしてではなくエンタメとして納得。
もっとも、謎でひっぱる部分がなくても、十分に楽しめる作品だとは思います。

個人的に作品の舞台に馴染みの場所が多くて入り込みやすかったので+1点


No.118 5点 グラン・ギニョール城
芦辺拓
(2010/01/15 23:41登録)
カーの作品を読んだのは中学生くらいの頃だから、よく覚えてないんですけど、いくらなんでもここまで紙芝居な世界だったかなあ……パスティーシュとして出来がいいのか悪いのか私にはよくわからないのですが、個人的にはノスタルジーを喚起させられて感涙に咽んだり、稚気や仕掛けに喝采したりは出来ませんでした。


No.117 5点 黒祠の島
小野不由美
(2010/01/15 23:27登録)
道具立ては派手だし、設定もおどろおどろしいのに、単調で盛り上がりに欠けます。。
トリックは凡庸とはいえ、書きようによってはもっと面白くなりそうなのに、派手な登場人物の沢山出てくるラノベや長編ホラーで名の売れている作家にしては、登場人物の誰も印象に残らないは、まったく怖くもないのでは拍子抜け。


No.116 5点 堕天使拷問刑
飛鳥部勝則
(2010/01/06 22:35登録)
評判だけで現物はどれも見たことないのですが、ゲームからはじまってアニメや映画にもなっているホラー学園土着ミステリのヒット作「ひぐらしのなく頃に」みたいなのを狙ったんでしょうか。
苦手なラノベ調なので、読み進めるのが苦痛な部分もあったのですが(個人的にはもうちょっとリアルタッチで書いて欲しかったなあ)、ラストは思いがけず感動してしまいました。

とはいえ、中学1年生の美少年主人公たちの言動や自意識が早熟すぎるのは、妙にリアルなオカルトマニアの背伸びした高校生か痛くて青臭くて頭の悪い大学生みたいなので、ラノベ的なディフォルメによるキャラ立ちの成果というのではなく、ご都合主義や薄気味悪さを感じさせたり、エヴァンゲリオンの綾波を思わせる美少女はじめ、どのキャラもユニークさ(萌えも?)を狙ったはずなんだろうけど、むしろ類型的すぎるあまり没個性になっていたり、特定の老人だけは「ワシは○○じゃ」などとお約束の記号的老人喋りをしたりしているような世界なのに、方言がないのが特徴の地域であるなんて設定にしているので伏線とまぎらわしかったりと、なんだか中途半端で雑な印象。
一生懸命今風のダークアニメタッチにしているのは窺えても、肝心のキャラのインパクトは薄くて各キャラのかきわけもイマイチな上に、全体的に地味で理屈っぽく、ホラーやオカルト系知識の活用も自己満足的で下手なので、メインターゲット層にも爆発的にウケるということはなさそうだし、そっち狙いで成功しているのは表紙のイラストだけかも!?

本筋やトリックはそれなりに面白かったので、ちょっともったない気が。


No.115 6点 七人の中にいる
今邑彩
(2010/01/05 23:21登録)
他のこの作家の既読作品同様、登場人物が生命の危険のある状況のわりに暢気なのが気になるものの、シンプルでオーソドックスですが、サスペンスフルな展開で楽しめました。

それにしたって、ここまで、大半の読者が感情移入出来ず応援も出来ないであろう主人公はないですよね……強引にいい話で終わらせようとしているラストが、むしろ後味悪くしている気も……。


No.114 7点 硝子のハンマー
貴志祐介
(2010/01/04 22:36登録)
前半はミステリとして普通に楽しめ、後半も似たような感じの「青の炎」が個人的には楽しめなかった私でも、今回は構成に工夫があるのと犯罪をおかす少年の描写に距離感があるためか、面白く読むことができました。
防犯知識の薀蓄とところどころで見せる探偵のヒロインへの劣等感や探偵と犯人の相似性も面白かったです。

しかし、他の方々も指摘しておられますが、この作家は、純粋ミステリより他ジャンルのものの方が面白いと私も感じてしまいました……でも、他作家のミステリ作品に比べて決してつまらなくはなかったので、それなりな点数にしておこうかと。


No.113 8点 半身
サラ・ウォーターズ
(2010/01/04 22:25登録)
犯罪者とその被害者の物語ではなく、ビクトリア朝時代の英国が舞台の抑圧された環境にある「女たち」が、それぞれに形は違えど、ポストモダン的な意味での「外部」を狂おしく切なく求める物語……ではないかと私は読みました。
こんなフェミニズム色の強い話なのに、弱者からの告発のような俗っぽい社会派にありがちな視点は超克しているのがよかったです。前近代的な舞台設定とは裏腹に、明らかに21世紀の文学であるという新しさは感じました。

気づいてくれと言わんばかりに冒頭からあからさまなヒントがちりばめられているので、ミステリファンならフーダニット、ハウダニット、ホワイダニットまで丸わかりの恐れがある上に、感傷過多で少女趣味な老嬢(と訳文にはありましたが、日本では通りのいいオールドミスと訳せばいいのに……)の独白が主ですので、読む人を選びそうではありますが、「未来世紀ブラジル」を連想させたダークなエンディングは個人的には好み。


No.112 7点 果断
今野敏
(2009/12/30 01:04登録)
前作(隠蔽捜査)とは違いミステリ要素もあるし、警察小説の体もなしています。
スピーディで読みやすく面白い。

ですが、どのキャラも第一印象との落差狙いが強引かつパターン化しているので、二作目にしてすでにマンネリズムを感じてしまったかも。
前作では清新だった主人公のキャラクターも、思い込みをひっくり返すという展開にしたいためのご都合主義に感じられてしまった内面の極端にひがみっぽい部分が、ときに鼻につきました。
主人公のキャラや作風にほれ込んでしまえば、むしろそのマンネリズムや極端さこそが待ってました! って感じで心地よくなりそうではあるんですが、そこまでいってないので。。

ところで、通常の天才やエリートキャラのように人の8割努力すれば10できてしまい、10やれば12や15できるなんてのと違い、この主人公はいつでも全力投球、15努力して15のことをやるんだ! という、あたかも不器用な松岡修造?のような部分は嫌いじゃないんですが、そりゃまったく余裕も持てないし、家族も本人もいつか倒れるよね、と思わず嘆息。

ともあれ、相殺して前作と同点数にしておきます。


No.111 6点 女王様と私
歌野晶午
(2009/12/27 20:30登録)
うわキモッ!

ただでさえキモい設定が、トリックのおかげでさらにキモくなっているので、毒を食らわば皿までもって感じで、ここまでいくと楽しめました(笑)。
あ、でも、こういうのって、本人が自覚ないのにキモイのはいい意味でも悪い意味でもスゴイのが多いけど、キモイ作品を書こうとして狙い通りキモくなっているだけだから、読みやすいのかも?


No.110 4点 ブードゥー・チャイルド
歌野晶午
(2009/12/27 20:24登録)
冒頭で大半の読者にはネタバレしてしまいそうなのはいくらなんでも……。
約10年前の作品なので、その頃だったらまだ「もった」のかな? うーん、でもその頃の方が、この手の話題はよくニュース種になっていたような気がするんですが……。
その上、すべての謎に意外性がなく、名探偵役なんて出さないでも、妙にひねくれた考え方をする主人公以外なら普通にわかりそう。
これなら謎解きはメインにせず、リアルなえげつなさもある思春期の少年少女の心理を掘り下げでもすれば、まだしも読める作品になったんじゃないかと思うんですが、そっちも中途半端で、読み物としても面白くなかったなあ。


No.109 5点 ある閉ざされた雪の山荘で
東野圭吾
(2009/12/26 00:11登録)
先に複数の後発作品で、類似トリックを読んだことがあるのですが、もしかしてこれが元祖なのでしょうか?
でも、今さらクローズド・サークルという含羞からか、あえてそうしているのかもしれませんが、キャラや設定があまりにも作為的……というかヘボなので、読み物としてあんまり面白くないんですよねえ……その点が残念。
東野氏にとっては青臭い恥の部分なんでしょうが、作者に恥ずかしがられると、読んでる方も気恥ずかくなるう。
そんな照れ具合が味なのかもしれませんが、なんだかんだ言っても、どうせ書くんなら、もっと臆面なくてもいいのに~。


No.108 7点 隠蔽捜査
今野敏
(2009/12/25 23:55登録)
このサイトで高得点を取っている作品にしては、推理要素は皆無に等しかったので、意外でしたが、個人的には楽しめました。
いわゆる警察小説ともちょっと違うように感じましたが、かといって、官僚小説や企業小説的というのでもないし……ノーブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)がテーマの、大変よく出来たキャラクター小説なんだろうなあ。
ともあれ、ラストのカタルシスのある大団円にいたるまでスカッとさわやかな現代の清涼剤的エンターティメント。


No.107 6点 殉教カテリナ車輪
飛鳥部勝則
(2009/12/21 21:12登録)
学芸員が死んだ画家を調査する動機が弱いし、奥さんに似ていたのは単なる偶然で、何の伏線でもなんでもなかったのですねえ。
随所でご都合主義が鼻につくかなあ……こういう題材ならば、相当強引な展開にしても、不自然にならないよう書くことができそうなのに、薀蓄とミステリをうまく結び付けられなかったという印象です。
道具立てが派手なので、期待したわりには、いい意味でも悪い意味でも、シンプルなミステリでした。


No.106 7点 闇の底
薬丸岳
(2009/12/10 22:38登録)
主人公と先輩刑事たちの関係になぜか「坊ちゃん」を連想したり、犯人逮捕時のくだりにはなんだか「羊たちの沈黙」を思い出してしまいました(笑)。
犯人はほぼ二択、意外性はあまりないだけに(もう1人の方だったら救いがなさすぎ)、天使のナイフと比較すると、サプライズ度が足りないなあ……などと思いながら読んでいたのですが、犯人の計画の内容とラストはひねりがある(不謹慎にもシャレてるなあ、うまく決めたなあなどと感じてしまいました;)と感心。
ただし、幼女強姦致死のようなあまりにも深刻な内容と、売れ線エンタメのお手本のような読みやすさや作劇上の技巧がミスマッチな感がなきにしもあらず?
しかも、相乗効果ではなく両方薄まっているような感じがしてしまって。。

他の方の評にもありましたが、題材のショッキングさに依存していない直球のミステリ作品も読んでみたいです。


No.105 6点 そして誰かいなくなった
夏樹静子
(2009/12/10 22:24登録)
(ネタバレの危険性あり)




ミステリに関しては記憶力におおいに難がある私でも、主人公の背後関係のモデルになった有名事件をわかりやすく書きすぎているからか、タイトルとは別のクリスティの有名作品の動機をどうしても思い出してしまい、細かいところはともかく全体の仕掛けは序盤から予想がついてしまいました。
それを回避するには、何も最初から最後まで主人公の一人称になんかしなければいいだけのような……すると作者はむしろ既読の読者には手の内あかした上で、トリックで悩んでもらいたかったのかな?

それでも、この作品は、まったく予備知識がない方が、さらに楽しめるんじゃないかと思います。


No.104 7点 天使のナイフ
薬丸岳
(2009/12/02 22:59登録)
(若干ネタバレ要素あり)



少年犯罪見本市? と言いたくなるほど主人公の周囲に元少年犯罪者が集まっていますよね……そんなご都合主義はさすがに鼻につくものの、アップ・トゥ・デートかつセンセーショナルな題材、大衆のルサンチマンのすくい上げ方、加害者・被害者双方の立場への目配り、決着のつけ方等、大変バランスがよく、これは売れるでしょう~。

ただ作者の個性があまり見えてこなかったので、他作品も読んでみたいです。


No.103 7点 そして誰もいなくなる
今邑彩
(2009/11/30 22:04登録)
「そして誰もいなくなった」を模した連続殺人を、密室状態ではなく、現代日本において再現出来ただけでも拍手。
細かいつっこみどころは多いけれど、これだけの大技を成功させたんだから許容範囲。
(ところで、この人の書く若者は、他作品でもそうだったので、アメリカのスプラッタ映画の殺され役の学生たちのように、追い詰められていてもなーんか危機感がなく、脇が甘いのが基本なのかも……笑)。
ひねりのあるラストもうまく決まっていたと思います。

本筋には全く、関係ありませんが、ブルセラだのボディコンだのと90年代初頭の風俗を扱っているわりに、女子高生の会話はじめスケバンだのジャズ喫茶だのと70年代風俗や流行語が出てくる方にも、なんでやねん! とつっこみながら読んでました(笑)。


No.102 6点 摩天楼の怪人
島田荘司
(2009/11/30 21:41登録)
読者が推理で到達できるような真相じゃないのにも関わらず、薀蓄も仕掛けも物足りなかったです。
個人的に島田氏には、本格の枠にこだわらないのなら、もっともっとはっちゃけて、最低限、合理的なオチがつくトンデモ系スレスレのホラーみたいなのを書いて欲しいのに、近年、全体に小粒になってきてますよね……以前はどんだけすごかったんだ、という話になるんですが。。
せっせと勉強したであろう知識の使い方も常識的というか優等生的でつまらないので、資料を足がかりに独善的でいいから、独自の奇想ワールドを構築して欲しいものです。

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