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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:887件

プロフィール| 書評

No.747 6点 教室が、ひとりになるまで
浅倉秋成
(2021/06/05 13:13登録)
こういった現実にはあり得ない設定をあらかじめしておいて、その中での理論的推理?を楽しむといった小説は最近時折見かけます。確かに本格物においてそのロジックとオリジナリティーが重んじられると、ネタ切れとなってしまうことは明らかです。
 こういった条件設定をしておけばある意味いくらでも小説が書けることとなりましょう。
 ただしきちんとした魅力のある設定でないと、誰も入りえない密室に超能力で瞬間移動したなんてことになってしまう。なかなか難しいのかもしれません。
 本書はそう言った面では超能力が極めて制限されており、その中での推理といった設定がきちんと守られているのでまずまず。


No.746 4点 ポストカプセル
折原一
(2021/05/27 07:55登録)
折原氏の作品には手紙を使ったお話がいくつかあります。書き手がわからない、極めて不快な内容、そして複雑な展開からのどんでん返しと本格物として一つの地位を築くに十分と思いますが、私はこういった不安や不快感が強い作品はあまり好きではありません。
従って評価もそれなりに下がるのですが、さらにこの作品は連作ものであり一つの推理小説でもありますので、一つずつのお話をしっかりと読んでいないと最後のどんでん返しがよく分からないということとなります。
私はこういった不快感を伴う話をしっかりと読みたくなかったので適当に飛ばして読んだせいで、最後の展開は理解したと言い難いこととなりました。


No.745 6点 推理小説のようにはいかない ミュージック・クルーズの殺人
宮ヶ瀬水
(2021/05/19 19:49登録)
音楽演奏と推理が交錯しながら展開するお話です。話としては好みの内容です。
 連続殺人がクルーズ船の中で起きる、それ以外にも殺人事件が起きる、最後はそれらが関連してくるといった内容はそのまま書いていけばシリアルな内容となりそうですが、それほど深刻な感じは受けません。
 推理はそれなりに出来上がっています。細かく言うとちょっと無理なところもありますが、まあよいでしょう。
 読んだ感じでは続編が出そうなムードですが、出たら読んでみたいと思わせる内容でした。


No.744 6点 その旅お供します 日本の名所で謎めぐり
綾見洋介
(2021/05/15 07:25登録)
 カクテルとちょっとした謎、そして人との触れ合いを交えた連作小説です。
謎は軽くて小さい。お酒が多少飲めるならカクテルのお話はは読んでいれば飲みたくなりそうです。
 何となく亡くなった北森鴻の小説(好きだったのに)にもあったような感じです。
 感じの悪いものではないので、さっくりと読めます。
 時間つぶし程度に読むなら楽しいです。


No.743 6点 遺跡発掘師は笑わない 鬼が島の証明
桑原水菜
(2021/05/04 07:43登録)
 「ほうらい」の続編が出たと思って読みました。ところがなんとこれは11作目ではないか。当然お話は前のシチュエーションからの続きとなっておいますが、読むのにあまり支障はありません。
 今回は桃太郎関連のお話です。登場人物は笑ってしまうような犬、猿、鶏の名前がついた発掘師たち。さらに二十歳そこそこの女性発掘師(犬飼さん)がかすかな東北訛りがあるとの事だが、バリバリの東北弁。無量は相変わらず「っす」を連発。
 親しみがあるというよりはギャグ効きすぎで軽い感じが否めなかった。
 話の内容については個人的には興味深いところなので結構面白いし、登場人物も実はそんなに悪い人はいなかったりして読後感は良いのですが、私の評価としは若干下がってしまいました。


No.742 4点 隠れ家の女
ダン・フェスパーマン
(2021/04/29 17:53登録)
スパイ小説なので名前が暗号だったり本名だったりいろいろ出てきて、外国人の名前を覚えるのが苦手な私にはなかなか大変でした。かなりの長編でなかなか読み進まず読み通すのに時間がかかり、複雑なお話が物忘れしやすい頭にはぐちゃぐちゃになってどうもよく理解できていないところが多々あります。
 それにしても強姦を繰り返す敵役スパイがなぜかやたらに権力があるのがかなり違和感を感じました。
 もう一度読めばもう少し理解できたかもしれないが、もう一度読む気は起きそうにないです。


No.741 6点 麻倉玲一は信頼できない語り手
太田忠司
(2021/04/28 22:42登録)
この書評は多少のネタバレ気味です。すみません。


死刑が廃止され死刑囚で処刑されなかった最後の人物麻倉が孤島の私立拘置所に収監されている。主人公は麻倉の告白本を書くように依頼されて孤島に訪れる。
そこで麻倉本人から彼が犯した殺人の数々を聞くこととなる。どれもこれも悪逆非道で救いようがないのだが、麻倉本人は反省どころか当然のことと思っている。次第に監視している側の人物も実は麻倉に恨み骨髄の人物であることがわかってくる。結局麻倉は絞首刑となるのだが、その後に監視員たちがこれされ麻倉が犯人であることがわかる。
こんなお話なんですが、これって絶対無理ですよねえ。
はじめから怪しげなお話なんですが、それにしても絶対無理だなあと思って読んでいると、それなりに納得できる結論となりました。
作者は同郷の作家さんで応援しているのですが、時にとんでもないどんでん返し(本格推理のように見せておいてほんとはファンタジーだったといったような)を書かれるのでこれもその内かと心配したのですが、それほどでもなくまあほっとしました。


No.740 7点 紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人
歌田年
(2021/04/28 22:23登録)
紙鑑定士という本当にそんな商売があるのかという設定が、興味を引いて読みました。
結の鑑定は中心ではなく、模型の鑑定が重きをおいているお話でした。
この鑑定事務所へ全くお門違いの浮気調査の依頼があり、手がかりはプラモデルの写真のみ。模型の専門家土生井は1枚の写真から事件解決まで推察してしまう。薀蓄がすごいね。まだページがいっぱい残っている。これは連作ものかと思いきや次の依頼は超難関で、これが結局最後まで続くお話となる。お話の構成としては若干違和感があります。
次々と話が展開していくが読み手が混乱するということはなく、興味津々で読み進めるといった内容です。あまりに土生井の推理が的確過ぎてちょっと違和感があるぐらいです。
ちょっと詰め込み過ぎではありますが。読後感もよくなかなかの作品と思います。
是非シリーズ化してほしいですね。


No.739 6点 博物館のファントム
伊与原新
(2021/04/18 09:48登録)
題名や文庫本の表紙のデザインからファントムという怪物が出てくるのかと思いきや、博物館にこもっている変人博物学者のことでした。
 作者も書いているように薀蓄の塊のようなところもあり、学名などがどんどん出てきます。私はこういったお話は決して嫌いではないのでそう気になりませんでしたが、呪文のような学名が苦手の人にはあまりお勧めできないかも。


No.738 6点 エラリー・クイーンの冒険
エラリイ・クイーン
(2021/04/11 12:38登録)
 エラリークイーンの短編がぎっしる詰まった作品集です。
 氏の精緻な構成は短編にも十分活かされていると思います。事件の提示、登場人物が現れる、意外な展開といった一発トリックがいかにうまくいっているかということになりますが、評判の高い(様です)「ガラスの円天井付き」などは私には合いませんでした。誕生石など全然興味がないもののお話なので。
 でも全体としては十分楽しめました。


No.737 9点 蒼海館の殺人
阿津川辰海
(2021/03/13 07:59登録)
 前作ではちょっと長すぎて、終わりの方がくどい印象を受けました。でも作風は気にいていましたので次回に期待などど書評に書いていたのですが、次作は期待にそぐわぬ素晴らしい作品でした。本当に久しぶりに本格物の傑作長編を読めました。
 前半三分の一ぐらいまでは登場人物の紹介や関係が精緻に記されているのです。本格好きのものにとってはいかにも何かありそうな雰囲気です。
 読み進むと定番シチュエーションの嵐の密室となってきます。本の扉には館のシチュエーションや内部構造などがついており、これを使ったトリックも考えることになるのかとワクワクしてくる。さらに人間関係が思ったよりさらに複雑で、事件の解決方法もいくつか提示されます。話は非常に精緻で込み合っており、完全に作者に翻弄され他ところで、とんでもない一言が出てきて唖然としてしまう。
 結果はまた全く異なるところへ到達するのですが、最後まできちんと話ができ上っており、感服しました。
 多少の減点は作者の才能がありすぎるためか、色々と頭が回りすぎて、話が迂遠で区止めに感じられるところです。
 本格好きならぜひ読んでみてください。きっと満足しますよ。


No.736 6点 聖女の救済
東野圭吾
(2021/02/27 21:47登録)
 トリックが好きで、といった方には評価が高いのでしょう。
 なんせ登場人物は少なく、ほとんど初めから犯人がわかっているのにどうやってが、なかなか分からない。作者は一つのトリックだけで長編を書いてしまったのです。
 結果がわかると、まあこんなことはほとんど考えにくいのですが、なるほどと思ってしまう。ある意味お話としては全く単純。それを最後まで読ませてしまうのはさすがです。


No.735 4点 死者はよみがえる
ジョン・ディクスン・カー
(2021/02/21 13:48登録)
この作品はサイトの書評でも評価がかなり分かれています。私にはあまりあわなかった。
登場人物がそれほど多くなく、どう考えてもその中の誰かが犯人でないとおかしいのですが、全く怪しい人がいないなあ--、と思っていたら色々後付けのエピソードが出てきて、犯人がいそうな感じともなってきます。さらに最後は絶対無理そうな展開となり、博士の長々とした講釈が始まります。
 こんなのあり?
 このお話のテンポももう一つだったが、我慢して読んできたのにこれはちょっとねえ。
 これじゃあそりゃあ犯人がわかるわけないでしょう。
 この作品に高い評価を与えている方もあるので、やっぱり好みの問題なのでしょうね。


No.734 7点 フォックス家の殺人
エラリイ・クイーン
(2021/02/11 16:15登録)
 このお話は10年以上前にあった女性の死亡事件ですでに有罪確定している夫の罪の見直しをエラリーが依頼されるといった内容。
 10年以上たっているのだからエラリー得意の細かいことまで検証するといっても無理なことが多いように思うが、なぜか登場人物の皆さん印象が強烈であったせいか事件の詳細までよく覚えている。まあ都合の悪そうなところは忘れたということにもできるので、お話を書く方は都合がよいかもしれない。
 登場人物は少ない。
 犯人探しとしてはとても限られた人物だけなので簡単そうなのだが、なかなかそうはいかない。
 さすがクイーンといったところではありますが、結論から言うとちょっと肩透かしな感じを受けました。こういった結論しかないのではないかとも思っていたのですが。
 もちろん推理小説として立派なもので、読みやすく楽しめることは請け合いでしょう。


No.733 6点 湖の男
アーナルデュル・インドリダソン
(2021/02/06 19:56登録)
アイスランドの小説は初めて読みました。名前になじみがなく、男か女かわからない。親子兄弟なのに全然違う名前なのはどうして?地名もやたら長くてとても覚えられないなど初めはかなり戸惑いましたが、しばらくすれば慣れてそれほど読みにくくはありませんでした。
以前にスウェーデンの小説を読んだときも感じたのですが、北欧の人たちは親子関係が薄いのでしょうかイタリアのような家族主体といった感じが全くありません。
気候が寒くて暗い冬が長いせいか、全体に重苦しい雰囲気です。登場人物たちもすべからく暗い雰囲気をまとっています。
お話は初めはどうもしっくりこないのですが、中盤からはがぜん面白くなります。犯人探しといった感じは少なく、冒険小説的でもありませんが、翻訳がよいせいもあり興味深く読むことができました。
ただやっぱり全体として暗い感じは否めず、人物がみなあまり快活でなく運もよくない。
メインストーリに関係ないところも暗いのです。この辺りをもっと明るくしたらもっと楽しく読めそうですが。


No.732 6点 鏡館の殺人
月原渉
(2021/01/25 21:04登録)
 作者の本格物を追及する姿勢は評価しています。
今回はとてもできそうもない密室が出てきましたが、トリックはなんと禁じ手の一つではありませんか。他の方もおっしゃっているようにこれは綾辻氏の館シリーズにかなり影響を受けた内容のようです。館シリーズもある意味で禁じ手を使っているのですが、お約束として館に何らかの仕掛けがあることが前提のようになっているので、まあ許せるのですがね。
 ところで探偵役のシズカさんは残酷な殺人シーンとなると冷たい喜びがあるような、相当に冷酷でいやなところがあります。
 作者は大きなトリックを仕掛けてきそうですので、いずれシリーズのすべての犯人はシズカさんでしたなんて作品が出てくるかも。


No.731 4点 東海道五十三次殺人事件 歴史探偵・月村弘平の事件簿
風野真知雄
(2021/01/23 08:04登録)
歴史を専門とする探偵と恋人の捜査一課の女性が活躍する、猟奇でしかも歴史に関連したような連続殺人のお話です。こういった設定は私にはとても興味がわき期待して読んでみました。
なるほど事件は歴史、ことに浮世絵などが関連しており、犯人もトリックもとてもユニークなものでした。犯人と思われる人が見つかり解決と思いきや全く違う方向に転換、さらに真犯人がわかってからもさらに話は転換。本格物とすれば最高の展開なのです。
それならこんな低い評価ではないと思うのですが、はっきり言って私はこのお話ではあまり楽しめなかったのです。
犯人は確かに以外なのです。ところがその登場が話が大分過ぎたあたりで全然関係ないところからひょっこり現れます。伏線のようなものはほとんどなく意外というよりインチキの感じがします。探偵とその恋人も設定はとても良いのです。でも描写があまりにさらりとしており愛着がわきにくい。もうちょっとかわいく書かれていたら好きになりそうなのに。作者は歴史小説などを書いておられたとのことですので文章がたどたどしいわけではないのですが、上手とはいいがたく趣が少ない。
筋立ては良いのですからもっと素晴らしい本格になったと思うのです。残念です。


No.730 6点 犬神館の殺人
月原渉
(2021/01/19 21:06登録)
首なし館の殺人でもうこのシリーズはないかと思っていましたが、嬉しいことに続編が出ました。さらにそのまた次も出ているようですので、とても楽しみです。
ところでこの作品について。
前作と大分感じが異なってかなりシュールな雰囲気です。
本格は同じトリックが許されないため突き詰めていくとネタ切れとなり、無理に新しいトリックを作ろうとすると、現実とはかけ離れたお話となってしまうのは避けられないのかもしれません。
事実本格推理小説が一時衰退したのはこういった状況が打開できなかったからなのでしょう。
 作者は本格推理小説にこだわった作品を新しく読ませてくださる作家さんとして期待しておりますが、この作品ではあまりに密室にこだわりすぎて、登場人物がまるで将棋の駒のような印象を受けてしまいます。とんでもない建物ととんでもない発想の人物が登場して、人の命など密室の理論が成立するためにはどんどん切って構わないといった印象を受けてしまいます。
 本作では読んでいてそのあたりが気になりました。


No.729 7点 ビッグ・ボウの殺人
イズレイル・ザングウィル
(2021/01/17 09:03登録)
 中編というべき比較的短いお話の中のほとんどが、密室の推理にあてられているといってよいでしょう。
 100年以上前にこんな密室を考え出したことは誠にすごいことです。十分に楽しめました。
 そして私の常ですが、密室のからくりは見破れず、犯人も全く分からずでした。
 
以下ややネタバレ

密室の回答は二つ示されます。二つ目が正解で、これが錯覚を利用した密室の最初とされるものなのだそうです。
私には初めに示された回答のほうが穴がなくてすっきりしましたね。これも錯覚を利用したといえばそうなのですが、ありうる方法なのではないでしょうか。
最終回答は実は医学的には成り立たなさそうに思えてしまいます。
いくら即死でも出血がほとんどないのはあり得ない。首を切って死に至らせるには動脈を記っての失血死か首の骨の中にある神経ごときっての即死かのいずれかと思いますが、神経ごと切るには剃刀では難しそうだし、剃刀の達人だったとしても相当に勢いよくやらないと無理であろうから、このシチュエーションでは必ずきずかれてしまいそうです。またどんなにやっても心臓が少しの間は動いているのでやっぱり大量に手が飛び散るものと思いますので、やっぱり気付かれるのでは。

ああ。こんなこと言っていないで、古典的作品に敬意を表すべきなのでしょう。


No.728 7点 サーチライトと誘蛾灯
櫻田智也
(2021/01/10 09:47登録)
 私は小説を読む際に登場人物の性格や周囲の雰囲気を感じながら読む傾向にあるので、短編の推理小説はあまり得意ではないのですが、この作品はなかなか楽しめました。
 はじめはちょっと変わった虫好きの男が変な推理をするなあといった感じでしたが、読んでいるうちにひょうひょうとした感じがだんだん好ましく思えるようになり、結構楽しめました。
 こういった連作型の短編だと主たる登場人物が同一であるため、お話に入りやすくなってくるからなのでしょうか。
 

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