home

ミステリの祭典

login
makomakoさんの登録情報
平均点:6.18点 書評数:862件

プロフィール| 書評

No.722 7点 致死量未満の殺人
三沢陽一
(2020/11/01 08:47登録)
非常に綿密に考えられた本格推理小説です。
 こういったお話には登場人物がいかにも非人間的で嫌いといった評価がよくありますが、このお話では初めのうちは多少の違和感がありますが、まあ許容範囲でしょう。殺された弥生がいかにも嫌なやつなのはお話の性格上やむを得ない。
 話の内容は実にこみいっており、まず初めに犯人が自白してしまう。当然これで終わるわけはないのですが、その後精緻な検証が登場人物たちによって行われます。これがなかなか微に入り際にわたっているので、まさに数学の問題を解いているような感じにもなります。
 本格推理が好きな方には実に興味深く、そうでない人には何ともめんどくさいということとなりそう。
 私は本格物が好きなので、こういった小説に久しぶりに出会えたといった感じで興味深く読みました。


No.721 5点 心霊探偵八雲1/赤い瞳は知っている
神永学
(2020/10/31 07:26登録)
 推理小説よりもオカルトの方に振れているお話です。
 作者が書いているように、初めは全然評判にならなかったのに、なぜか当たりだして現在は10作を超えるシリーズとなっています。
 そんなに面白いかというと私の好みとしてはそこまではと思うのですが、読んでいくと大変読みやすく(最初は決して読みやすくはないのです)最後まですらすら読めてしまいました。
 不思議な小説ではあります。
 このシリーズにのめり込むことはないように思いますが、次のお話も読んでみたいといった気になりました。


No.720 6点 探偵少女アリサの事件簿 今回は泣かずにやってます
東川篤哉
(2020/10/31 07:19登録)
 東川氏のユーモアミステリーは最近キャラクターをどんどん増やしているようです。
 探偵少女アリサもその一人。
 氏は純粋推理としては問題があるが、そこをユーモア小説だからこんなもんで許してね、といったお話なのでかえって大胆なトリックが出てきたりして毎回楽しませてくれます。
 今回もその系統のお話ですが、ちょっとユーモア度が足りないかな。
 この子を主人公とすればまだ何作も書けそう。次回を期待しましょう。


No.719 5点 田舎の刑事の好敵手
滝田務雄
(2020/10/31 07:12登録)
 このシリーズは初めて読みました。
 脱力系ミステリーとのことです。
 初めのほうはまさに脱力が行き届き、ばかばかしくてこんなことで大丈夫かと心配になるほどでしたが、読んでいくにしたがって登場人物のバカらしさにも慣れてきて次第に普通に読めてくるから不思議です。
 途中からは普通のミステリーとなり、黒川鈴木巡査部長の鮮やかな?推理が展開されます。
 ちょっと読むには良いかもしれません。
 お話になれたので、違う作品も読んでみようかな。


No.718 6点 閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室
木元哉多
(2020/10/11 13:05登録)
 このシリーズ初めて読みました。どれが第1作かわからなかったので、適当に買ったらシリーズ2番目でした。
 どこから読んでもよいとのことです。実際一話完結の話のようなので一作目を読んでいなくても問題ありませんでした。
 なかなか奇抜な設定。
 でもとても読みやすく、漫画チックでもあるが、結構本格でもある。
 作者はかなり才能がありそうな感じがしました。
 私も作者のがちがち本格も読んでみたい。


No.717 7点 ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ扉子と空白の時
三上延
(2020/09/20 07:57登録)
 ビブリア古書堂の事件手帖シリーズも扉子が生まれて新しいシリーズとなったとされていますが、このお話には扉子はほとんど関係ないただのスパイス程度の扱いです。
 珍しく3つの中編が一つのお話となっており、内容は栞子と結婚した夫が中心で、以前のシリーズと変わりがありません。単に主人公が年を重ねた時のお話です。
 今回は私もよく知っている横溝正史にちなんだお話なので、より親密な感じがしました。
 話としてよくできており、面白かった。
 ビブリア古書堂の事件手帖シリーズが今でも人気があるので、もう一度書いてみましたというより、書き残したテーマがあったのでしっかり書きましたといった感じです。
 


No.716 5点 准教授・高槻彰良の推察3 呪いと祝いの語りごと
澤村御影
(2020/09/12 07:43登録)
 第2弾と一緒に買ったのでそのまま読み続けました。
 お話としては2つの中編とおまけとして主人公の子供の頃のお話があります。
 表紙が漫画チックなのに加えて、本な内にも登場人物のイラストがあり、これがさらに本シリーズの少女趣味とお遊びをあおっているように感じます。小説として発表するよりアニメにした方がよさそうになってきました。
 おじさんの趣味では、主人公の設定が良いので、もうちょっとシリアスにしたほうが面白そうなのですが。
 まあこのお話もこれぐらいでお付き合いは終了としようか。


No.715 6点 准教授・高槻彰良の推察2 魁夷は狭間に宿る
澤村御影
(2020/09/12 07:31登録)
 「学校には何かいる」、「スタジオの幽霊」、「奇跡の子供」の3編が収録されています。
 かなり題名から見りうよりかなりおふざけ要素が強いが、多少の推理の要素もあります。
 少しずつ主人公の謎が解明はされていきます。シリーズ化第2弾としてはこんなもんでしょうか。
 軽くて暇つぶし程度なら読んで悪くないが、心に残るといったものではないようです。


No.714 6点 准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき
澤村御影
(2020/09/05 07:32登録)
 表題からすると本格推理モノのように見えますが、本の装丁はいかにも怪しげです。民俗学者の推察となっており、確かに民俗学的要素はありますが、推理の内容は助手として働く大学生のウソを見抜く能力といったオカルト的なものにかなり寄りかかっており、本格推理とは言えない内容ではあります。
 でもまあ推理が主体の小説ではありますので、それなりの謎が出てきます。
 さらに私でも探偵より先に大体の謎がわかるといった快感?も味わえました。要するに多少本格物を読んだことがある人には簡単に謎がわかってしまうといった内容なのです。本格推理小説でほとんど犯人がわかったことがないわたしでもわかるのです。すごいでしょ。
 内容は読みやすく嫌味な感じもないため軽い暇つぶし型の読書には最適です。
 結構売れているのか続編が何作か出ています。
 続編も読んでみようかな。


No.713 5点 雪の香り
塩田武士
(2020/08/25 21:49登録)
純愛ミステリーの傑作と後ろ表紙に銘打ってあります。
 まあ相手の女性には何か謎があり主人公はその女性が好きでたまらないのですから、そのように表現してもよいのでしょうが、ミステリーとしてはちょっと弱い。
 謎の解決も最後にどっとわかるようになってはいるのですが、本格推理のように読者が読んでいって推理するといったものではありません。
 読んで不快なことはないのです。ただ主人公の女性が個人的に全然好みでなく、よくこんな奴と付き合えるなあといった性格なので。
 これが素敵な女性だったら大分感じも違うのですが、こんなトンデモ女では。私にとってこれがかなりのマイナスでした。
 こんなちゃらんぽらんな女性に魅力を感じる方だったらかなり評価は上がるかもしれません。


No.712 6点 光秀の定理
垣根涼介
(2020/08/23 13:04登録)
 ちょうどNHKの大河ドラマで麒麟が来るをやっている(今はコロナで休憩中です)が、この作品は光秀の生涯を描いたものではありません。
 信長につかえ始めるまでと、なぜ光秀が本能寺の変を起こしたかについての考察のような内容となっています。それ以外のところはすっぽりと抜けている。だから光秀の生涯を知りたいといった方には肩透かしを食うこと請け合いです。
 確かに新しい考え方ではありますが、歴史小説としてはちょっと弱く、推理としてはそれほどでもないかな。
 悪くはありません。歴史小説が好きなら読んでダメということはないと思います。


No.711 7点 秘仏探偵の鑑定紀行
深津十一
(2020/08/14 21:20登録)
 仏像に触ると作成時の様子がわかるという特殊能力を持っている新米仏師の織田君と、ちょっと変わった歴史学者の八代准教授の二人で仏像の謎に挑むという推理小説とSFを混ぜ合わしたような設定です。
 仏像の謎に関して仏教的推察がちりばめられており私の好みのお話でした。
 SF的な解決ではなく、むしろ作成過程がわかるからこそ謎ができるといった設定はなかなか面白い。
 作者のほかの作品も読んでみよう。



No.710 7点 忘れられた花園
ケイト・モートン
(2020/08/10 14:58登録)
 3つの時代とお話が交錯する。次々と時代が変わるので記憶力の怪しい私には苦手の部類の入る展開でした。
 名前の一覧があったらよかったのに。一部の登場人物の名前が単純すぎて(ネル、リル、ヒューなど)区別をつけて覚えにくかった。まあトルストイの戦争と平和ほど複雑多彩なのも困るのですが。
 はじめのうちはちょっと退屈、でも読んでいくと次第にお話に引き込まれます。上下に分かれているけど上巻だけでやめないように頑張ろう。

 純粋な推理小説ではないので、お話の途中で謎のかなりの部分がわかってしまい(いやな読者になったものです)、訳者があとがきに述べているような矛盾も多少気になりましたが、良しとしましょう。
 作者のほかの作品も読んでみたい気にさせられました。


No.709 6点 薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理
塔山郁
(2020/07/24 14:48登録)
 薬剤師が探偵となる小説は時々見かけますが、この作品も一応その中に入るものでしょう。
 愛想はないがまじめで一途な毒島薬剤師とホテルマン水尾君のちょっとほんわかとしたところがスパイスとなっているが、推理小説としてはかなり弱い。
 まあ半分ほんわか、ちょっと推理といった頃でしょうか。
 すぐ読めて悪くはありませんが、とても素晴らしいというほどではないようです。


No.708 5点 オリジン
ダン・ブラウン
(2020/07/24 07:39登録)
我々はどこから来てどこへ行くのか。こんな深刻なテーマが解決されたというすごいお話。
 これを聞いたユダヤ教やイスラム教の指導者が死んでしまう。なぜかキリスト教の指導者は無事。
 おいおい大丈夫ですかね?こんな壮大なテーマで。と心配しつつ読みました。解決されたとする内容はなかなか出てこない。最後になって公表されるが、これが何ともしょぼい(ネタバレとなるので詳しくは書きませんが)。この程度の説ならすでにいくらでもあるでしょ。はやった映画にもなっているよね。
 こんな話を聞いて宗教指導者が愕然とするかなあ。仏教指導者なら全然動じずそれもありとするかもしれませんが、なんせキリスト教の国のお話ですからそんなことはおくびにも出てきません。
 最後に機械文明がとんでもない事にもなるといったところはなかなか面白かったですが、全体としてメインテーマの解決が大したことがないためパッとしませんでした。


No.707 4点 ウサギの天使が呼んでいる
青柳碧人
(2020/07/11 17:08登録)
こういった作風を好みの人には良いのかもしれませんが、私にはあまりあいませんでした。
 変人の名探偵は昔からいっぱいあるのですが、登場する人物は駒であり、心が全くない。殺人事件が起きても誰も何ともない。
 短編集なのでまあ何とか読めるが、これが長編となったらきっとうんざりしてしまうでしょう。
 


No.706 7点 退職刑事1
都筑道夫
(2020/07/04 07:04登録)
 日本の安楽椅子探偵のはしりとなった作品ということですが、私は初めて読みました。
 発表年代を見ると私が学生時代の頃。内容は結構古臭いなあ。私の若い頃ってこんなにタバコ吸ったり、戦前の話が話題になったりしたのかなあとも思ったのですが、よく考えると中学時代にバスの中でおじさんたちが「中尉殿」なんて呼びながら話していたのですから、こんなものかもしれません。
 お話の内容はかなり理論的で骨組みがしっかり考えられている。作者が余計なものは削り落としたというが、結構色っぽいところはあってそれはそれでよろしい。
 何冊も出ているようだからもう少し読んでみましょう。


No.705 5点 メゾン・ド・ポリス 退職刑事と迷宮入り事件
加藤実秋
(2020/06/28 07:29登録)
 このシリーズもそろそろマンネリ化してきたようです。
新しい未解決事件が提示され、それと伴って新しい事件が発生する。新しいほうは解決したが、未解決事件はもよもやのまま。たぶん次の作品へ持ち込むつもりなのでしょう。
 こういったシリーズものは登場人物のキャラクターで読ませるところが大きいのですが、さすがにキャラクターだけで続けていくことには限界があるようです。当然作者もそれを考えていると思いますが、今回は次へ繰り延べ感が強くあまり感心しなかった。


No.704 6点 ミステリなふたり
太田忠司
(2020/05/30 18:24登録)
このシリーズは読み過ごしていたため、初めの作品が手に入らず、はからずも発表された逆の順番で読むこととなりました。
 うーん、初めはこんな感じなんだ。
 どの作品もそれなりに工夫されていた。かなり良いなあと思っていたが最後の方に来て景子の態度があまりに悪く(普通の人にこんな態度でいたら誰でも気分が悪いでしょう)さらに最後の作品は後に出るアラカルトの最後の作品と類似ですよねえ。
 こちらが先に発表されたのだからこちらから読めば問題ないが、たまたま逆に読んだためちょっと興ざめしてしまった。発表順に読めば問題なかったのですがね。でもアラカルトで興ざめとなるか。


No.703 2点 困った死体は瞑らない
浅暮三文
(2020/05/27 17:41登録)
 異色の短編集です。
 はじめのお話が豆腐で頭蓋骨を割られたお話、つぎがプールの中で焼死したお話。
 当然ばかばかしいお話なのです。
 これだけでお付き合いするのは大変そうだが、異色の作品と思って読んでみました。
 登場人物が実にいやらしい。これだけでも読む気が失せてしまいます。
 解説にも波長が合う人は楽しめると書いてあったが、私は全然波長が合わず楽しくも何ともなかった。

862中の書評を表示しています 141 - 160