home

ミステリの祭典

login
鏡館の殺人
ツユリシズカシリーズ

作家 月原渉
出版日2020年08月
平均点5.80点
書評数5人

No.5 5点 虫暮部
(2023/11/18 12:29登録)
 館は館でもあっちの館か……冷静に考えると、登場人物を一人浮かせる有効な手法ではある。こっちを先に読んでいればもっと高評価出来ただろう。
 総体的に “館の中の小さな世界だから成立した事件” と言う感が強い。しかし崖崩れは偶然であり、本来なら即座に警察沙汰だからね。そのへんの箱庭っぽさの為の設定をもう少ししっかりすべきでは。犯人が無知だから却って大胆になれた?

No.4 6点 ミステリ初心者
(2021/02/10 19:34登録)
ネタバレをしています。

 舞台は明治の富豪の館。クローズドサークルで、見立て殺人と密室。文の読みやすさが半端ではなく、登場人物も適度でありキャラクター設定がかぶっていないので理解がしやすい。読了まで一瞬のような感覚でした(笑)。
 すこし怪奇な感じもあり、死んだと思われた主人公の姉がずっと鏡に映っていたり、鏡に引きずられて死んでいる死体だったり、手鏡に"ころす"の文字が書かれていたりします。
 全ての謎が明らかになった後、読後感が良いのもいいですね。
 シズカのシンプルな罵倒、「死ね」が初登場?しましたね。今までで一番おもしろかったです。前作で満月にへべれけになるところを見せていましたが、今作ではまた従来のシズカになっていましたね。前作の雇用主のほうが馬が合っていたのでしょうかね。

 推理小説的要素は、3つの事件と桐花関連の叙述トリック(なのか?)がありました。
 松太郎、クララ殺しは、隠し通路という禁じ手(笑)が用いられているので、考えるに値しません。
 もっとも良い点は、通路の存在と一方通行の特性が明かされた後の理詰めでした。真昼が罪を自白しますが、シズカがそれ以前に真昼には犯行が行えなかったことを明かすのはフェアでした。真昼の服を着替えてない→返り血を浴びていないロジックは見事で、犯人が存在しなくなる→結合双生児で澄花と同じアリバイを持っていると思われた桐花が実は手術によって一人で行動できるという驚きの展開でした。
 桐花は、読者(私)には、初めは幽霊…しかしシズカは見えている?…から、結合双生児…になって、最後には普通の人になるという、3回もの想像と実際の違いを味わいました(笑)。叙述トリックならではの驚きですが、3回は初めてです。
 私は、強烈な個性を持っている桐花のことだから、まあ犯人なんだろうと勘で考えましたが、どうしてもトリックを見破ることができませんでした。


 以下、好みではない部分。
・刺殺では返り血を浴びるため、着替えるのは必須ということはわかりましたが、その死体を運ぶ際も血が付きませんか? 胴体もたなければ大丈夫かな?
・密室が密室ではない(笑)。密室状態が完璧すぎたことと、クララの発言から、うっすら嫌な予感がしました(シズカが密室にノータッチなのも(笑))。安易に密室を出すと、犯人が密室を作る必要性について考えないといけないので、書きづらいのでしょうかね(笑)。
・桐花関連はすこし強引さを感じます。桐花単体で行動できたことや犯人だったことはまあ良いとして、澄花がそうとうアレじゃなければ小説として成立しない気がしますが。
・かなりの人間が犯人に協力してしまっています。
・クララ殺しについても返り血問題で論理的な犯人当てになってますが、そもそも複数犯人は好みではありません。

 雰囲気、読みやすさ、クローズドサークルと私の好みのシリーズなので、これからもシリーズが続いてほしいですね。

No.3 6点 makomako
(2021/01/25 21:04登録)
 作者の本格物を追及する姿勢は評価しています。
今回はとてもできそうもない密室が出てきましたが、トリックはなんと禁じ手の一つではありませんか。他の方もおっしゃっているようにこれは綾辻氏の館シリーズにかなり影響を受けた内容のようです。館シリーズもある意味で禁じ手を使っているのですが、お約束として館に何らかの仕掛けがあることが前提のようになっているので、まあ許せるのですがね。
 ところで探偵役のシズカさんは残酷な殺人シーンとなると冷たい喜びがあるような、相当に冷酷でいやなところがあります。
 作者は大きなトリックを仕掛けてきそうですので、いずれシリーズのすべての犯人はシズカさんでしたなんて作品が出てくるかも。

No.2 6点 まさむね
(2021/01/09 22:43登録)
 ツユリシズカシリーズ第四弾。このシリーズは、本格ど真ん中を貫いているし、何よりも作者の意気込みが感じられるので好きです。第四作目が発刊されたことは素直に嬉しい。
 本作も本格路線を継承。グイグイと読まされましたね。これはフェアと言えるか…と思った点が無くはないのですが、ギリギリでセーフか。
 ちなみに、シズカのロシア語による「毒」が強まっているような気がして、それはそれで面白い。このシリーズ、続けてほしいなぁ。

No.1 6点 nukkam
(2020/11/02 21:34登録)
(ネタバレなしです) 2020年発表のツユリシズカシリーズ第4作の本格派推理小説です。これまでのシリーズ作品中でも最も綾辻行人の館シリーズを意識して書かれたのではという内容で、48の鏡が配置された本館と別館から構成された館という舞台は某作品を連想する読者もいるのではないでしょうか(見取り図はあればもっと演出効果があったと思います)。新潮文庫版で300ページに満たない作品ながら謎解きは充実、シズカの推理説明は時にくどさを感じさせながらも丁寧です。反則ではと思われる設定があって好き嫌いが分かれそうですが、それについても「自分の目から見てあきらかであった(中略)件を、事件の最後まで触れなかったのには理由がございます」とアンフェアではないかとの読者の疑念を晴らそうとシズカは最後の最後に説明しています。

5レコード表示中です 書評