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ミステリの祭典

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こうさんの登録情報
平均点:6.29点 書評数:649件

プロフィール| 書評

No.109 6点 珊瑚色ラプソディ
岡嶋二人
(2008/06/04 22:41登録)
 結婚を控えた主人公が海外から帰国したとき婚約者は盲腸で倒れ記憶喪失、そして一緒にいた筈の女友達は行方不明で現地の人はその婚約者が女友達ではなく男と一緒にいたと証言する、というアイリッシュの幻の女に少し似たストーリーからスタートするサスペンスです。
 この婚約者が受けた理不尽な行為もこの作品の真相のためならありかな、と個人的には納得しました。
 また変なたとえですが一人分の空きしかない船の前で二人溺れていたらどうするか、というのに似た究極の選択のストーリーもあります。
 作品としては主人公カップルに感情移入しやすい作風に仕上がっており決して明るい内容ではないのですが楽しく読めました。


No.108 7点 コンピュータの熱い罠
岡嶋二人
(2008/06/04 22:25登録)
 結婚相談所のオペレーターのヒロインがその身辺で起きる殺人事件に立ち向かってゆくサスペンスストーリーがテンポ良く進んでゆきます。
 今では当たり前のコンピュータの話もリアルタイムで読んだ方には新鮮だったと思いますし自分が読んだ10年前でも凄いなあと思った記憶があります。コンピュータに興味がなくても楽しめます。(99%の誘拐、クラインの壷同様に)
 殺人事件の方は日本で20年以上前の作品とは言え同じ場所で何人も死んでもほとんど事故死で片付けられるものなのかは疑問ですがそういう謎が解明されてゆく所は読み応えがありました。岡島作品の中でも秀作に入ると思います。 


No.107 7点 赤い指
東野圭吾
(2008/06/04 22:11登録)
 倒叙形式で進む少年犯罪に巻き込まれた家族の話に老人介護問題を絡めた秀作です。手紙、さまよう刃とつながっているテーマがあるのではないかと思います。
 ミステリとしては小振りですが最後の部分は伏線が効いていて流石でした。
 また加賀恭一郎とその父親のストーリーが久々に語られ、加賀の不自然な行動の理由が最後に明かされるこちらのサイドストーリーも楽しめました。
 ただ犯人の性格設定、また崩壊しているその家庭が描かれており考えさせられるテーマ、作品とはいえ読んでいて楽しい作品ではありません。
 作品の出来としては良いのですが本格色の強い作品が近年減っているのが残念です。  


No.106 3点 ダイイング・アイ
東野圭吾
(2008/06/04 21:53登録)
 主人公が記憶喪失となりその記憶を取り戻そうとする話自体は珍しくありませんが(今までで最も気に入っているのはラドラムの暗殺者ですが)自分自身の過去の行動に対しての疑問が徐々に解明されてゆく所は面白いです。また記憶を取り戻した時点で読者に主人公の性格が明らかにされる所も見事です。性格変化というよりも部分的な記憶喪失なので性格は一貫しているはずなのでしょうがあえて記憶を取り戻した直後にその性格を露わにさせる所はなかなかうまいと思います。
 主人公の勤め先が「茗荷」なのは意図的とは言え少しやりすぎな気がします。普通の名前でも良い気がします。
 最後の部分はSF、ホラー的要素が強く個人的にはもう少しすっきりした落ちが良かったです。「狂人の行動」というのであればそれはそれでありがちではありますがまだ納得できますがほとんど超常現象の様ですから。
 またラストまで考えてのタイトルなのでしょうが個人的にはホラー的要素は好きではありませんでした。 


No.105 7点 ゲームの名は誘拐
東野圭吾
(2008/06/04 21:28登録)
 狂言誘拐を倒叙形式で進め、後半のどんでん返し、そしてラストまでテンポ良く進みます。
 単なる誘拐物に一ひねり加えている所は流石東野圭吾と思います。
 ただ誘拐された共犯のヒロイン(?)の性格づけというか年齢設定はやはり無理があると思います。そしてその父親の行動も少し無理があるかなと思います。
 (少しネタバレぎみですが) 主人公が冷静沈着でありその知的ゲームの対戦相手としてはこの父親はつりあいが取れているとは思いますがこの父親も「被害者の父親」であることは間違いないのですから割り切ったストーリー通りの行動を取れるかちょっと疑問に感じます。
 最後のラストは東野作品らしい軽い伏線の効いたおちですが
ストーリー上はやはり殺そうとするのが自然かなと思います。
 個人的にはそういう多少の不満はありますが本格的要素もあるので気に入っています。その後容疑者Xの献身までそういうタイプの作品を待たされるとは思いませんでしたが。


No.104 8点 クラインの壷
岡嶋二人
(2008/06/03 01:25登録)
 岡島作品では井上、徳山両者の作品への割合で作風がガラッと変わりますが純粋井上作品では井上夢人作品よりこの作品の方が気に入っています。
 サスペンスとして一級品だと思います。個人的にはラストはあれしかありえないかなと思います。


No.103 5点 変身
東野圭吾
(2008/06/03 01:11登録)
 こういう題材ではカタルシスを得るのは難しいのは仕方ありませんがそれでも一気に読ませる力を感じました。
 ミステリとは関係ありませんが人格の変容と共に一人称が突然変化するところなどはうまいと思いました。


No.102 6点 秘密
東野圭吾
(2008/06/03 01:07登録)
 正直今でもこの作品でやっと東野人気が高まったのが驚きです。本人のエッセイを読むまで知りませんでした。確かに泣かせる話ではありますが純粋なミステリではなく個人的にはそれ以前の作品の方が気にいっています。
 ただ最後の部分の伏線はうまく張られておりそこは流石だなと思いました。 


No.101 6点 奇跡の男
泡坂妻夫
(2008/06/03 00:59登録)
 これも無難な泡坂妻夫らしい短編集でした。いかにもロジックがチェスタトン風なのは奇跡の男と狐の香典だと思います。但し表題作の奇跡の男はトリックに無理があると思いました。
 それでもどの作品も無難にまとまっています。


No.100 7点 手紙
東野圭吾
(2008/06/02 01:43登録)
 テーマが犯罪者の家族を扱っており非常に重いです。恐らく実際の犯罪者の家族も主人公同様に差別を受けているのだろうな、と考えさせられますし、この本を読んでからも自分の周りに犯罪者の家族の方々がいれば本人は悪くなくても自分は避けるのではないか、と考えさせられます。
 ミステリではありませんが力作です。
 さまよう刃では一転被害者の家族を扱っておりこちらもお薦めです。


No.99 6点 さまよう刃
東野圭吾
(2008/06/02 01:34登録)
 テーマは重く娘を殺された父親の復讐の話ですが手紙では犯人の家族を扱い、この作品では加害者の人権に対し報われない被害者の家族をうまく書いていると思います。
 20年前の海外作品でHデンカーの復讐法廷という力作がありますがそれを思い出します。ただいかにもアメリカ的結末のその作品に比べさまよう刃の方がテーマを掘り下げている気がします。
 父親に娘を殺した犯人を殺させてやれよ、と読者に思わせる書き方は凄いです。ミステリではないですが考えさせられる作品でありテーマだと思います。実際の個人的な復讐を作者が容認しているわけではないでしょうが作品を離れて考えさせられる作品だと思います。ただ読んで楽しいかというと楽しくはないです。


No.98 6点 流星の絆
東野圭吾
(2008/06/02 01:17登録)
 14年前起きた殺人事件で両親を失った三人兄弟が実質的な主人公で彼らが犯人と思しき人物を追い詰めようとするストーリーです。
 味覚が一つキーポイントになっており絶対味覚(?)みたいなものが存在するのか、とも思いますがそういう前提で話を進めているのでそれはそれでよいのかなとも思います。
 大掛かりなトリックはなく、真相は小振りですが話しは相変わらず面白いです。結末は少し甘ったるいですが。


No.97 6点 使命と魂のリミット
東野圭吾
(2008/06/02 01:09登録)
 相変わらず一気に読ませるストリーテリングの力を感じます。但し犯人の人格を掘り下げているのは良いのですが悪人になりきれない部分がわかりやすく、事件の結末は予想通りでした。
 東野作品は特にサスペンスでは書きたいテーマを選んで書いていることが伺えますがテーマの掘り下げ方としては天空の蜂には及ばないかなと思います。
 サスペンスとしては正直物足りないですが楽しめました。 


No.96 7点 誘拐作戦
都筑道夫
(2008/05/31 00:46登録)
 これも都筑道夫面目躍如の作品です。その名の通り誘拐物ですが裏表紙に書いてある通り美女誘拐に成功し完全犯罪を成し遂げた真犯人がその経緯を原稿に起こして伝えるというスタイルです。奇数章と偶数章では明らかに違う書き方をしており、誘拐作戦の行方と犯人は誰かが最終章で明かされます。また原稿が書かれた動機(?)も明らかにされます。
 発端の部分がかなり成功の確率が低く誘拐作戦の実現性は疑問がわきますがストーリー自体は面白いです。
 また最後の部分は泡坂妻夫や作者の「猫の舌に釘をうて」につながる所があります。
 昭和30年代の話で古いのはどうしようもありませんが個人的には楽しめました。


No.95 8点 首つり判事
ブルース・ハミルトン
(2008/05/31 00:28登録)
 無実の罪で殺された死刑囚が冒頭に登場し次の章で死刑にした判事の周りに浮浪者風の男が現れて、という構成の復讐物です。この浮浪者が誰か、ということについても事件の真相も当然最後に明かされますが論理的手がかりはなく本格作品ではありませんがスリラーとして楽しめました。
 作風としてバリンジャーの歯と爪やアルレーのわらの女を連想しました。(わらの女はそもそも復讐物ではないので少し違いますが)
 読者が論理的手がかりから真相を当てる読み物ではないですが一気に読ませるスリラーとしては非常に気に入りました。


No.94 6点 迷路
フィリップ・マクドナルド
(2008/05/31 00:17登録)
 屋敷で起きた殺人事件の検視法廷の証言記録のみを休暇中の探偵(ゲスリン大佐)が書簡として受け取り、遠方の地で犯人を指摘する書簡を送り返す構成です。
 こういった手記、書簡のみの構成の作品は今でこそ珍しくないですが狙い自体は悪くないと思います。
 ただ趣向は良いのですがフェアプレイで有名なマクドナルドの作品なのに犯人指摘の謎解き部分は腰くだけの感があります。


No.93 6点 殺人四重奏
ミシェル・ルブラン
(2008/05/28 22:22登録)
 いかにもなフランスミステリ。人気絶頂の映画女優が途中で死体で発見され、犯人は誰か、という単純な話でメインキャストは他に4人しかいません。自分が殺したと皆が自白する展開からどんでん返しが起こり、更に最後に皮肉な結末が用意されています。
 ただトリックは科学捜査が進んだ現代では通用しないものなのでやはり時代を割り引く必要はあります(1956年作)。
 短いですし一気に読めます。ただ衝撃に乏しい感じがありまあまあ楽しめたかなという感じです。


No.92 9点 殺しへの招待
天藤真
(2008/05/28 22:10登録)
 個人的には天藤作品では一番気に入っています。殺人予告状が5人の夫に届くがどの妻が書いたかが見当もつかない。その内殺人事件が起き最後にどんでん返しが、というお話です。
 手紙を疑うのは現代読者では当然なのでしょうがそれだけで真相がわかるかどうか。またなぜ手紙がわざわざ5人に出されたかという動機も含めて非常にうまくまとまっています。
 初版のあとがきに法律上の瑕が指摘されていますがそのあとがきどおりでそれも作品を壊すことなく成立させており問題ないと思います。(現在の全集のあとがきで触れられているかはわかりません)
 天藤作品はいずれも大掛かりなトリックはありませんが心理トリックを巧みに使う端整な作品が多いです。個人的には駄作は一冊もないと思います。


No.91 7点 ある閉ざされた雪の山荘で
東野圭吾
(2008/05/28 21:52登録)
 仮面山殺人事件の時点でこの作品のプロットも考えていたのでしょう。皮肉の利いた仮面山荘殺人事件の方が気に入っています。この作品の方が不徹底な気がしますし最後は少し尻すぼみ感がありますがある意味東野作品でもこの作品や仮面山荘のようなこてこての作品をまた書いてほしいなあと思います。


No.90 9点 仮面山荘殺人事件
東野圭吾
(2008/05/28 21:46登録)
 真相の所で判明する所謂プロバビリティの殺人の動機またそれが結末に結びつく所はうまい構成と思います。
 前例も後発例もあり発表から20年経つと評価もしづらいですが個人的には楽しめました。
 心理描写は微妙ですがいわゆる騙りでありこれ以上うまくは書けないと思います。また実際に上手くいくかというと困難だとは思いますが満足した記憶があります。タイトルには問題あると思いますが。 

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