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ミステリの祭典

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こうさんの登録情報
平均点:6.29点 書評数:649件

プロフィール| 書評

No.309 4点 ジュリエットの悲鳴
有栖川有栖
(2008/11/25 22:52登録)
 ミステリではない作品も多く阿刀田嵩風な作品も目につきました。個人的には「登竜門が多すぎる」が一番面白かった覚えがあります。逆に表題作が一番つまらなかった印象があります。あまり深く考えずさっと読める作品集だと思います。 


No.308 9点 龍の議定書
多島斗志之
(2008/11/25 22:46登録)
 多島斗志之の処女長編ですが全く流行と一線を画した題材でこの作者らしさがいきなり全開の作品です。
 大手広告代理店部長塔原が「日本で孫文キャンペーンを起こしそれをきっかけに神戸移情閣で中国鄧小平と台湾蒋経国(蒋介石の息子)を会談、握手させる」ことのプロデュースの依頼を受けるところからストーリーが始まります。
 依頼者の女性秘書、塔原の口利きでプロダクションに入った紺野、塔原の娘ゆかりなどがメインキャラクターですが更にはKGB、アメリカ(おそらくCIA)も交えてストーリーは大きく展開してゆきます。
 塔原たちのプランニング、キャンペーンの本当の狙い、そしてラストと本当に読み応えのある作品でした。プロットは良く考えられております。
 難点は過去の海外の謀略スリラー同様時間が立ちすぎてしまい情勢が変わっていることですがそもそもリアルタイムでも日本人の興味をひかなさそうな内容ではありますしその点が気にならなければ大きな瑕はないと思います。構成はしっかりしているので多島斗志之を読んだことがない方には一読をお薦めしたいです。どの作品もあまり面白そうな題材の作品は稀ですが「面白い」と思います。 


No.307 5点 奇妙な人生
スティーブン・ドビンズ
(2008/11/25 22:03登録)
折原一推薦のB級ミステリの一冊です。内乱、暴動が起きている中、主人公は同窓会で友人パチーコ宅に集まりそこで書斎にある美しい若い女性の写真を見つける。その女性をパチーコは破滅させたと語り、目の前にいる給仕している中年女性アントニア・プッチーニを指し示す、という発端から始まるストーリーです。終盤までどこがミステリなのかわからないストーリーが続きますが唐突にある有名トリックが明かされます。ただ明らかにアンフェアであることと、過去にどうやってパチーコがアントニアを破滅させたのか、そして内乱暴動が起きている現在はどう収束するかというメインストーリーと全く無関係な部分でのトリックでありあまり効果的とは言えません。
 また感情移入できる登場人物も皆無であり「奇妙な味」はありますが期待したほどの面白みはありませんでした。


No.306 6点 スイス時計の謎
有栖川有栖
(2008/11/24 02:31登録)
 「あるYの悲劇」は個人的には好きではありません。クイーンもそうですが有栖川有栖もダイイングメッセージの作品は一貫して出来が悪いと思います。(月光ゲームも作品としては好きですがダイイングメッセージの部分はあまり評価していません)有栖川氏もクイーンのダイイングメッセージには批判的だった印象がありますがそれにしてはそういう作品が多いのが不思議です。
 「スイス時計」は展開されているロジックは地味だと思いますが良くできていると思います。ただ現実的には証拠として弱いと思いますし反論可能だとは思いますがこういう世界で火村作品は展開してほしいです。 


No.305 5点 ブラジル蝶の謎
有栖川有栖
(2008/11/24 02:21登録)
 短編集としてオーソドックスな仕上がりだと思います。「蝶々がはばたく」の余韻のある筆致が個人的には一番気に入っています。


No.304 5点 モロッコ水晶の謎
有栖川有栖
(2008/11/24 02:14登録)
 「ABCキラー」はそもそもオリジナルの「ABC」が好きではないのもあるのですがそれをひねっているとはいえありがちな落ちで好きではありません。
 「モロッコ水晶」はこのロジックをありとするかどうかで評価がわかれそうですが個人的にはありだと思いました。ただし犯人以外でも無差別殺人(というか誰でも良かった殺人)であれば他にも犯行可能な人物がおりクイーンのように「実現可能な人間はこの人間しかいない」とゆうロジックとは違う点が気になります。他の人間を消しこむには枚数の制約があるのかもしれませんが中編とはいえそメインがこの「ロジック」のみなのは少し寂しいです。


No.303 6点 鳥人計画
東野圭吾
(2008/11/24 02:00登録)
 「魔球」以上にスポーツミステリとして成功している作品だと思います。薀蓄の部分も含めスポーツを全面に出して作品を成立させておりそういう点では力作だと思います。「鳥人計画」の実現性はともかくとしてお話として楽しめましたがこのメインとなるストーリーと殺人がばらばらな印象を受けてしまいます。おそらくこの作品を評価する方は殺人のトリックより「楡井」の造形や「鳥人計画」のストーリーを評価するのではないかと思います。ミステリとしての単純な評価ではやや低いかもしれませんが個人的には作者の初期の意欲作として評価したいです。


No.302 5点 依頼人の娘
東野圭吾
(2008/11/24 01:42登録)
ノン・ポシェットだからかあまり評判にならない短編集ですが個人的にはそんなに悪くないと思います。
 本格的構成に一ひねりを加えてる作品もあり個人的には「罠の中」は良かったと思います。
 設定もあまり読者に訴えるものはないですが少なくとも本格を意識した作品群でありまあまあでした。「殺人現場は雲の上」よりは全然いいと思います。


No.301 4点 夜明けの街で
東野圭吾
(2008/11/17 00:02登録)
 部下と不倫する中年男性の視点で語られる東野作品では珍しい作品でした。「秋葉」という女性を描写するためなのでしょうが結局この作品の真相、動機(?)を踏まえると不倫の描写がやはりくどい感じです。一種のミスディレクションの狙いもあるのかもしれませんがページ配分と狙いが合っていない気がします。


No.300 6点 ガリレオの苦悩
東野圭吾
(2008/11/16 23:51登録)
 ガリレオシリーズの短編集も三冊目になりましたが作品世界がシリーズキャラクターに合った題材が選ばれているのは流石です。
 個人的には「操縦る」が一番気にいっています。他作品も相変わらずトリックの解明を見せられて納得するだけでしたが内海刑事がシリーズキャラクターに加わり良いアクセントになっていると思います。ただ作品上女性ならではの視点からポイントに気づくことが多かったですが実際の捜査でそこまで男性捜査陣が「女性的視点」を見落とすことはない気もしました。
 容疑者Xの献身辺りから作者の狙いが大きなトリックから心理的なものにシフトしてきた気がします。それはそれで良いのですが大技系もたまには期待したいです。


No.299 6点 聖女の救済
東野圭吾
(2008/11/16 23:41登録)
 最初から犯人がわかっていてどんなトリックで殺人をおかしたか、の一点の作品ですが確かに個人的に初めてみたトリックとはいえこんなこと実現可能なのか、というよりこれを実現する女性というのがイメージしにくいです。あまりやられた感じはしませんでした。
 ストーリーが長くても読ませる力はいつも通りですがさすがに今回は少し長いとおもいました。
 警察が無能で湯川が解き明かす、という単純なストーリーではなく草薙刑事も内海刑事も丹念な捜査を行っていくストーリーには好感もてました。


No.298 6点 スウェーデン館の謎
有栖川有栖
(2008/11/16 23:28登録)
 トリックも地味ですが良くできた作品だと思います。大きな衝撃はなくても作品の作りは丁寧ですので火村作品にはこのレベルは維持して頂きたいと個人的には思っています。


No.297 2点 ペルシャ猫の謎
有栖川有栖
(2008/11/16 23:25登録)
 表題作がとにかくひどいです。〇〇を利用する作品は前例もありますが〇〇とみせて実は、という有名作があるのにも関わらず今更真相は〇〇でした、という落ちでは短編とはいえ到底納得できなかった覚えがあります。「悲劇的」も「猫と雨と助教授と」も火村ファンならいいのかもしれませんが個人的には認められません。他作品も全体として低調です。最近の法月作品や東野作品のガリレオシリーズは作品のばらつきがあっても作品世界、コンセプトにあったものに登場していると思うのですが火村作品は一貫してないと思います。


No.296 2点 まほろ市の殺人 冬
有栖川有栖
(2008/11/16 23:15登録)
 これはシリーズのコンセプトありきなのでしょうが読んだときひどすぎと思った覚えがあります。値段、枚数の制約があるのはわかりますが有栖川有栖作である限り期待した内容とはとうてい言えません。有栖川有栖ファンでも読む必要ないと思います。


No.295 5点 もつれっぱなし
井上夢人
(2008/11/09 23:15登録)
 会話だけで構成された作品集で男女間で一方(ほとんどの話では女性)が提示した命題をもう一方(ほとんどが男性)が証明するスタイルが一貫しており試みは面白いと思います。
 ただロジカルなストーリーというより相手を納得させることに主眼が置かれており結果的につまらない作品もあるかと思います。個人的には冒頭の「宇宙人の証明」が一番つまらなかったです。話のオチがある作品の方が好きですので後半のものは比較的良かったと思います。
 いずれにしろさらっと読めると思います。


No.294 3点 幻想運河
有栖川有栖
(2008/11/09 23:04登録)
 作者の狙いどおりの作品だとは思います。裏表紙にしっかり断り書きがかいてあっても有栖川作品だからと手にとったものの個人的には合わなかった覚えがあります。論理的な説明、解決を作者に期待する読者には到底合わない作品でしょう。間違いなく異色作でしょう。成功作、失敗作かはわかりませんがあとは読者の相性だと思います。


No.293 8点 恐怖のブロードウェイ
デイヴィッド・アリグザンダー
(2008/11/09 22:54登録)
 ブロードウェイの世界を舞台としたリッパー物で切り裂きジャックをモチーフとしていると思われる作品です。
 所謂サイコサスペンス、リッパーものの先駆的作品でサスペンス一辺倒と思いきや犯人指摘の手がかりや最後の展開などは本格的要素がしっかりしており面白かったです。古い作品で描写も第二次大戦後の風俗なので古めかしさはありますが面白かったです。


No.292 4点 海のある奈良に死す
有栖川有栖
(2008/11/05 23:03登録)
 これもシリーズキャラクターを出している意味が良く分からない作品だったと思います。サブリミナルも使用してほしくなかったです。またどうみても「20代にしか見えない40代女性」等は現実味が乏しくこの人物が作品に大きく係わってくるのですが個人的には引き込まれませんでした。
 法月作品が個人的には作品世界が本人に合っている気がするのですが有栖川作品のこれと「ダリの繭」は火村と世界が合ってないかなと個人的に思いました。ただミステリの出来はともかく世界観的には「ダリの繭」よりましかな、とも思います。


No.291 3点 ダリの繭
有栖川有栖
(2008/11/05 22:56登録)
 有栖川作品は基本的に登場人物を突き放さない描写というか筆致が好きで新本格で最も好きな作家ですが残念ながら出来不出来の差が激しい作家だと思います。
 せっかくのシリーズキャラクターが配されているのにこの作品の世界に出してしまってもったいないと思った覚えがあります。まだ作品世界だけでいうと「海のある奈良に死す」の方がましかな、と個人的に思います。この作品の内容なら短~中編ならともかく長編はきついと思います。


No.290 8点 孤島パズル
有栖川有栖
(2008/11/05 22:47登録)
 前作よりロジックも良くなっていますし作品設定がこれもCC物でありいうことなしです。犯人がわかってもその人物の印象が変わらないのは前作同様ですし作品の雰囲気は好きですが前作以上に救われない話で少しカタルシスに欠けた覚えがあります。「マリア」登場の作品ですが「信長」「望月」の出番がほとんどないのはシリーズファンとしては残念でした。
 第5作目はあまり待たずに発表されてほしいものです。

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