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ミステリの祭典

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あびびびさんの登録情報
平均点:6.33点 書評数:669件

プロフィール| 書評

No.529 5点 ナイン・テイラーズ
ドロシー・L・セイヤーズ
(2016/03/15 10:34登録)
題材にされ ているのが、馴染みのない教会の鐘の鳴鐘術で、登場人物も30名を超え、何度登場人物の欄を見たのか分からないが、やはり一番のマイナスポイントは、この作家との相性の悪さだろうと思う。

それは、蘊蓄、引用の多さであり、普通に喋っている時に引用文を多用する文章にあると思う。時代背景を丁寧に説明してくれているのはありがたいはずなのだが、すらっと読めないところが不満。

中盤からは読みやすくなり、解決編も納得のいく流れだったが、今思えば、多少読み飛ばしても影響がなかったかもしれない。


No.528 7点 ジェゼベルの死
クリスチアナ・ブランド
(2016/03/07 11:24登録)
衆人の中の殺人事件。実にセンセーショナルな殺人だったが、密室にしろ、首切りにしろ、プロットがしっかりしていたので、読後感も良かった。

寡作な作家だけに、一冊、一冊が強烈な印象を受ける。


No.527 7点 積木の塔
鮎川哲也
(2016/03/07 11:12登録)
この作者の王道と言うか、時刻表、アリバイトリックの極みのような作品。個人的に印象深かったのは、高校まで住んでいた徳山市(現・周南市)がかなりの部分かかわっていたこと。作者の街の描写を懐かしく読んだ。徳山市は、戦災後、東京のように立派な街になることを祈願し、東京と同じ町名にしたことである。銀座、新宿、御幸通りなど、そのままである。

今回は鬼貫警部が博多、徳山と出張し、粘り強い捜査を見せた。これが実に楽しい。


No.526 9点 ブラッド・ブラザー
ジャック・カーリイ
(2016/03/07 10:59登録)
ジェフリー・ディヴアーの後継者と言われる作風は、サイコパスの不気味さと現実感をよく表現していると思う。ジェフリーなら上下巻になりそうだが、さらっと400ページにまとめ、スピード感を重視したあたり好感が持てる。

次の作品が待ち遠しい作家がまたひとり増えた。


No.525 8点 緑のカプセルの謎
ジョン・ディクスン・カー
(2016/02/28 00:09登録)
ミステリというジャンル自体がオカルトなのかもしれないが、その上に題材がオカルトでは興味が薄れてしまう。自分とカーとの相性の悪さはそのあたりにあったと思うが、この作品は本格中の本格だった。

緑のカプセルというイメージから毒殺事件は間違いないのだが、あちこちに散りばらめた伏線の数々と寸劇の重要さ…特に撮影フィルムの謎。もともと容疑者が少なく、犯人の意外性は皆無だが、納得のいくフィナーレだった。


No.524 7点 天使と罪の街
マイクル・コナリー
(2016/02/23 11:42登録)
マイクル・コナリーに外れなし…。確かこれで5作目だけど、それは強く実感している。ただ、相手がモンスター級の殺人者というのも共通項(今までの作品がたまたまそうだったのかも?)で、これが少し残念な気もする。




No.523 8点 頼子のために
法月綸太郎
(2016/02/11 20:45登録)
半身不随のために、「観念」の化け物に…。「頼子のために」という題が吹っ飛んでしまったような気がする。

親も子も、その愛は異常である。初めは、登場人物は普通の精神だと思っていたが、この事件にかかわった人間は尋常ではない…読み終わってそう思った。だから、ずっと物語に緊張感があり、違和感があった。

法月さんは2作目だが、もっと読みたくなった。


No.522 7点 しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術
泡坂妻夫
(2016/02/11 20:25登録)
ずっと気になっていた本。予備知識が膨らんで、読む前にこの小冊を10分ほど調べた。表紙、裏表紙、作者紹介、ノンブル、他隅々まで…。しかし、どこにも異常は見られなかった。しかし、なおかつ、どこかに仕掛けがあるのだろうと、物語を読んでいる最中にも表、裏と調べた。

わずか240ページ余りの小説である。読んでいるうちに仕掛けが判明した。凄い…と思った。マジシャンが人々を驚かすには、それだけの努力と時間が必要だと思った。しかし、しかしである。

自分は、この仕掛けが犯人に直結するものだと思っていた。その分、期待はずれだったが、と言って、低い点にするべきではないと思った。ストーリー自体、水準以上あると感じたからだ。

この物語がもっと重厚で謎が深く、上下の文庫だったら、どのような展開になっていたのだろう(笑)


No.521 5点 タイタニックを引き揚げろ
クライブ・カッスラー
(2016/02/05 22:35登録)
このサイトの「重鎮」と思われる3名の方が評価して4点の平均点…。確かにミステリではなく、引き揚げ時に最大級の嵐が来たり、ロシアが絡んだりで、誰もが考えそうな事件が起こるところは陳腐ではある。

引き揚げメンバーの中にロシアのスパイがいて、二人の作業員が殺されるのだが、主人公であるダーク・ピットが、その犯人を想定しながらそのまま見逃し、窮地に陥るなど、納得のいかないシーンもある。

ただ、アメリカ大統領が莫大な予算を計上して、なぜあのタイタニックを引き揚げるのか、その必要性に免じてこの点数。


No.520 8点 デス・コレクターズ
ジャック・カーリイ
(2016/02/05 22:16登録)
事件を追う異常犯罪専従の刑事カーソンは、30年前に死んだ大量殺人犯の絵画が鍵だと知る。殺人鬼ゆかりの品を集めるコレクターの世界に潜入し、複雑怪奇な事件の全容に迫って、パリまで出張する…。

有名人の殺害を教唆したチャールズ・ミルズ・マンソンの事件に似ているが、教組が裁判所で殺されたのにもかかわらず、その根は生きていた。それは有名な?殺人犯の残した凶器や絵画などをコレクトする人間の心理を利用した、悪魔のような事件だった。

ジェフリー・ディヴァーの後継者と言われる作家だが、こちらの方がクドクなくて好きかも…。


No.519 7点 死角 オーバールック
マイクル・コナリー
(2016/01/22 18:01登録)
事件に対して、動機がみすぼらしい様な気がするが、その分、人間心理の浅はかさを感じる。やってしまった!後悔先に立たず的なところが共感を呼ぶ。

ハリーボッシュがますます独善的で、嫌な奴になりつつあるのも、年齢的に仕方がない。この事件を解決していなければ、彼は立ち直ることができなかっだろう。しかし、その紙一重のところが緊張感ありで、面白い。


No.518 6点 NかMか
アガサ・クリスティー
(2016/01/19 12:31登録)
英国情報部の依頼を受けたトミーは、コードネームをNとMという二人の謎のドイツのスパイを探るため、二人が住んでいると思われる海辺保養地の下宿「無憂荘」に、住人として潜り込むことになった。

その下宿には、自分に依頼が来なかった妻のタペンスが先回りして、別名で潜り込んでいた。ここから夫婦二人のスパイ探しが始まる。全体的にユーモラスな流れで、緊迫感には欠けるが、作者も楽しんで書いているようで、軽妙なタッチには好感が持てる。

ただ、誰がスパイなのか、薄々感じる物語の流れではあった。


No.517 9点 鷲は舞い降りた
ジャック・ヒギンズ
(2016/01/09 06:34登録)
ここが、「冒険小説の祭典」なら文句なしの10点満点だろう。「深夜プラス1」よりも味わいがあり、映像的想像力を逞しくさせる。

イギリスを憎むイギリス人女性スパイから、チャーチル首相がある海岸別荘で静養する…という情報が入る。これを知った悪名高いヒムラーが、襲撃部隊を結集させ、初めてドイツの部隊が英国の海岸に舞い降りる。

そのドイツ兵の面々(アイルランド、英国人も一人ずつ)が実に魅力的であり、正義はこちらにあるのではないかという錯覚に陥ってしまった。これは歴史的名作だと思う。


No.516 5点 サマー・アポカリプス
笠井潔
(2016/01/03 12:22登録)
宗教的歴史の薀蓄は、「カラマーゾフの兄弟」で懲りている(世界的名作に対して失礼だが)。4分の1を読み飛ばしてしまった。ただ、「黙示録」の意味がなんとなく理解できたのは収穫だった。

自分の読解力からすれば奇書に近いが、それでも殺人現場や犯人の推移に対しては本格を感じたし、語り継がれるミステリだと思った。ただ、密室や殺害方法に対しては、苦笑するしかなかった。


No.515 7点 ビロードの悪魔
ジョン・ディクスン・カー
(2015/12/17 02:32登録)
悪魔と契約し、過去に行き、事件の中心人物に乗り移る…自分にとって最も嫌いなパターンだったが、案外楽しく読めた。主人公の男気が物語を活性化し、イギリスの歴史的背景も楽しめた。

ビロードの悪魔と呼ばれる犯人がいるものと思ったが、なんと、正義を貫く主人公がそう呼ばれていた…。


No.514 8点 仮面舞踏会 伊集院大介の帰還
栗本薫
(2015/12/11 21:13登録)
「ぼくらの時代」は、その時代に読んだのなら楽しめたと思うが、違和感があったし、むりな設定な様な気がした。しかし、このサイトで断トツの評価のこの作品、すなわち、栗本薫さんの代表作を読まなければ…という気持ちで読んだ。

結果はベリーグッド、いい推理小説だった。初心者にはインターネットのあやふやな世界観は今でも変わらないが、当時よりも理解できたかなと思う。


No.513 8点 わが子は殺人者
パトリック・クェンティン
(2015/12/06 21:34登録)
妻が3年前に自殺…の真相は殺人事件が起きた時に見当がついていた。息子が父親を嫌う理由…これがポイントだったが、息子が父親にその真相(手紙)を知らせていれば何も起こらなかったかも…と言っても仕方がないか。

殺人は動機が重要だが、これは少し見え透いている。自分的には「ふたりの妻を持つ男」の方が好みだなあ。


No.512 10点 ビッグ・ボウの殺人
イズレイル・ザングウィル
(2015/12/06 18:50登録)
久しぶりに歴史的な名作に出会った…という興奮。事件、密室、エンディングと完璧である。自分はそう感じた。特に、エンディングの素晴らしさ。登場人物が少なく、薄々感じる犯人だったが、その独白で自殺せざるを得ないという状況。これは見事としか言いようがない。
 
久しぶりの10点満点。9点にしようかと思ったが、自分の度量のなさを反省し、急きょ変更。しかし、作者はロシア系ユダヤ人で、ユダヤ関連の作品が有名。ミステリはこの一冊だけだったという事実。これも凄い。



No.511 7点 幽霊の2/3
ヘレン・マクロイ
(2015/11/29 23:14登録)
だれが犯人でも驚けない、意外性がないという物語。この作品は、真相が明かされるまでの作者の絶妙な筆致、これを味わうべきだと思った。

ヘレン・マクロイという女流作家をよくぞ復活させてくれた…という感謝しかない。この作品の中で、「ミステリなんか誰でも書ける」と、言うくだりが印象に残っている。つまり、文学的には評価されないジャンルだったわけだ。

文学界では、売れない純文学を大衆小説の上りで保護するという暗黙の了解があったらしいが、ジャンルを問わず、いいものは残るのではないか。


No.510 7点 終決者たち
マイクル・コナリー
(2015/11/25 14:01登録)
ハリー・ボッシュが3年の探偵家業のち、ロス市警に復職。エリート部署とされている未解決事件班に配属された。17年前に起きた少女殺人事件を、以前の相棒であるキズ・ライダーと再捜査する。

捜査するうちに、当時の市警が圧力をかけていたことが判明し、当時の本部長だった宿敵・アーヴィン・アーヴィングの影もちらついてきて、俄然捜査は白熱するが、その中には、ハリー・ボッシュを復職させた新・本部長の思惑が潜んでいた…。

なかなかバランスの取れた一冊。犯人も好み?だった。

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