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ミステリの祭典

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あびびびさんの登録情報
平均点:6.33点 書評数:669件

プロフィール| 書評

No.409 5点 黒衣の女
折原一
(2014/08/26 20:19登録)
叙述作品はあまり読まないのだが、読後の違和感を整理するのが大変。素直に驚けないと言うか、今まで必死に読んでいたのは何だったのか?と首をひねってしまう。

でも、根っから嫌いなわけではなく、また時間を置いて読んでみようかと言う気にはなる。ある意味、チャレンジ精神かも。


No.408 4点 大穴
ディック・フランシス
(2014/08/24 18:08登録)
シッド・ハレー登場。義父から、競馬場乗っ取りグループがいると聞かされ、その真意を探ってほしいと頼まれる。その義父は、ハレーの正体を隠すために、「娘の婿だが能無しだ」と、家に招待した主犯夫婦を欺くが、ハレーはそのふたりに虐待される。義父の真意を計りながら、ハレーは必死に耐え、その後調査を開始するが…。

さぞかし、結末は胸のすく反撃シーンがあるのだろう…と期待して読んだが、相手グループに捕まり、また虐待される。そして気を失っている時に警察が駆けつけ、目を覚ましたら病院のベッドだった。読み手のもやもや感は晴れず、ストレスが残っただけだった。


No.407 8点 破門
黒川博行
(2014/08/23 23:19登録)
疫病神シリーズ。高村薫さんの「大阪弁の会話を書かせたら右に出るものはいない」との評はまったくその通りで、今回もスピード感ある軽妙な喋りで独特の世界を作っている。

今まで疫病神シリーズはすべて読んでいるが、まったく筆力が落ちていないし、裏社会を知り尽くしているような物語の進行は誰もまねできないと思う。

kanamoriさんが書かれたように、直木賞はシリーズナンバーワンの「国境」で受賞していたはずだが、「人間が書けていない」とか、「抜群におもしろいが、文学賞としてはどうか」などと、高尚な選考作家が目の敵のように落としてきた。北方謙三さんが、「国境のころから強く推していたから、今度の受賞でほっとした」というのも同感である。

次の作品が待ち遠しい。


No.406 6点 動機と機会
土屋隆夫
(2014/08/22 16:38登録)
30年間殺人事件0の地方都市で、その式典が行われる直前に殺人事件が起こった…表題作を始め、中編書きおろしを含めた傑作珠玉集。

細かいトリックが多く、派手さはないが、逆にそれがリアルで楽しめた。


No.405 7点 破戒裁判
高木彬光
(2014/08/22 15:58登録)
島崎藤村の「破戒」がベースになっている。番記者が見た裁判の行方を追う形になっていて、初めは弁護士・百谷泉一郎の存在感が希薄だったが、徐々に裁判を支配する様は興味津々だった。

改めて裁判の仕組みと言うか、その背景が分かりやすく書かれており、一気に読み切れた。


No.404 6点 盲目の鴉
土屋隆夫
(2014/08/16 18:46登録)
この作者は、時間をかけて丹念に作っているのだろう。本当にブレがなく、本格推理小説にすべてを注いでいるような感じを受ける。

細かいトリックはいずれも成功率50%くらいで、偶然的要素も必要だと思ったが、この作品は映像化すれば魅力半減で、やはり活字で読みたい。格調高い文章がそう思わせる。

いつもながら、小諸市あたりが関係するのも自分的には好ましい。


No.403 5点 ブラック・コーヒー
アガサ・クリスティー
(2014/08/13 10:06登録)
クリスティ初の戯曲。「ねずみとり」ほどのロングランはなかったものの、らしさが随所に出て来る。

高名な科学者が新たな原子力を開発し、数式となって一枚の書面に収められている。それを狙われていると感じた科学者は、ポアロに調査を依頼するのだが、ヘィスティングとともに到着したときには彼は殺され、書類も奪われていた…。やがてジャップ刑事も来て、オールキャストとなり、いつもの推理劇となつた…。


No.402 5点 複数の時計
アガサ・クリスティー
(2014/08/13 09:57登録)
いつもどおり、犯人は以外で、クリスティらしい結末だったが、犯行現場にあつた複数の時計の意味があまりにしょぼかった。まして、その部屋に死体を置く意味が分からなかった。

それでも犯人については仕掛けも動機も意外さもクリスティらしさが見られた。


No.401 7点 慟哭
貫井徳郎
(2014/08/13 09:48登録)
デビュー作にしては重厚な文章だと思ったが、日時のずれや、過去を明かさない寡黙さでだいたいのストーリーが掴める。あとはいつ露見するか、我慢比べのような感じになった。

(ネタばれ?)だからラストも衝撃ではなかった。むしろ、そんなに子供を愛していたのか?という疑問が脳裏をかすめた。


No.400 9点 兄の殺人者
D・M・ディヴァイン
(2014/08/11 12:56登録)
ミステリの魅力のほとんどを備えている良質のミステリだと思った。これほどの読後感はめったに味わえない。犯人についてはだいたいの見当がつくのだが、その背景が読み切れなかった。

しかし、生まれながらの悪人はほとんど改悛することはないんだなと、現代の複雑怪奇な事件をいろいろ思い浮かべてしまった。


No.399 5点 パンドラ・アイランド
大沢在昌
(2014/08/03 18:45登録)
元警視庁・捜査一課の刑事が退職し、小笠原諸島近くの閉鎖的な島で保安官として働くことになった。刑事時代のいろいろなしがらみから抜け出すために島に来たのに、着任したとたんに事件が起こる…。それはアメリカ統治時代の遺失物絡みだった。

柴田錬三郎賞の作品らしいが、新宿鮫シリーズに比べると切れ味、重厚感ともに見劣る。それは仕方がないが、新境地とまでは行かないかも知れない。


No.398 6点 穴の牙
土屋隆夫
(2014/08/02 16:42登録)
人々が犯罪に走るとき、待ち受けている穴があり、必ず深みにはまっていく。そんな感じの短編集だった。笑ゥせぇるすまんの喪黒福造的な短編集で、自分的には各編ともおもしろく読めた。

雑誌「宝石」の懸賞で短編部門の1位に(罪深き死の構図)なったのが推理作家デビューだというが、そのせいか短編集がけっこうありそうだ。


No.397 8点 天狗の面
土屋隆夫
(2014/07/31 10:41登録)
「探偵小説は割り算の文学である。そこにいささかの余りがあってはいけない」、作者の長編デビュー作である。長野県の過疎地が舞台のせいか、途中、横溝正史を読んでいるような気になった。

読者よ…と何度も語りかける作者の優しさの中に、本格推理小説にかける情熱を感じた。あっと驚くトリックはなかったが、いずれも納得のいく進行で、読み終わった後はすがすがしい気持ちになった。


No.396 6点 ハロウィーン・パーティ
アガサ・クリスティー
(2014/07/26 00:51登録)
残り少なくなったのに、また安易にクリスティを読んでしまった。何冊か仕入れてきて、他の作品がもう一つの時は、ついつい手に取ってしまう。

この作品は79歳の時、一年間で一冊というペースを維持し、しかも読者にはクリスマスプレゼントの趣だったらしい。高齢のせいか?あまり切れ味はない。今までの手法を各種詰め込んで仕上がったような結末で、特に感想はないが、まあ平均作で、他の作家の駄作を読むよりは…という気がした。


No.395 7点 マギンティ夫人は死んだ
アガサ・クリスティー
(2014/07/21 15:13登録)
村の掃除婦と下宿人ひとりを相手に生活していたマギンティ婦人が殺された。貯め込んでいたタンス預金目当ての犯行とみられ、すべての要素を満たしていた無職の下宿人が逮捕される。しかし、その事件を担当したスペンス警視が長年の刑事としての勘で彼は無罪…との思いがどうしても拭えなかった。それでポアロの元へ個人的に事件再捜査の依頼に訪れる。

ちょうど暇を持て余していたポアロは村のホテルへ投宿へし、周辺の家を訪ね歩き、情報を収集するが、マギンテイ婦人が新聞の日曜版で、「往年の悲劇に登場した女主人公は今いずこに…」という記事を読み、インクをひと瓶買ったことを知るー。

(ネタばれ?)またしても犯人は予想外だったが、なるほど犯行のチャンス、アリバイ作りは盲点を突いていた。


No.394 4点 追撃の森
ジェフリー・ディーヴァー
(2014/07/17 11:58登録)
登場人物が出そろったところでどんでん返しらしきものはわかったが、それにしても「追撃の森」が長すぎる。淡々と読むしかなく、ハンドブレーキを掛けたまま、終盤を待った。

殺し屋・ハートにより、その奥に潜む巨大犯罪組織?を暗示させられたが、この作者にしてはおとなしすぎる結末だった。


No.393 8点 赤の組曲
土屋隆夫
(2014/07/12 11:29登録)
格調高い推理小説を楽しんだと言う読後感。寡作の作家だったらしいが、それだけにブレがない。

事件÷推理→解決、すなわち常に本格を意識して書いていたらしいが、それよりも登場人物のひとりひとりが実に魅力的で感情移入してしまう。まだ2作目だが、東京が事件現場ながら、ずっと住んでいた小諸、上田あたりが関連するのも実に楽しい。


No.392 7点 倒錯の死角−201号室の女−
折原一
(2014/07/09 17:23登録)
(ネタバレ含む)この作者は初めて。倒錯のロンドを読んでいなかったので新鮮味があった。結末は怒涛のごとくで、頭の中を整理する必要があったが、狂人が狂人でなく、唯一正常に見えた人物が傾いていたのは予想外。それが叙述トリックの面白さだとは思うが…。


No.391 7点 愛国殺人
アガサ・クリスティー
(2014/07/08 22:44登録)
悪人が悪人ではなく、善人が善人ではなく…。人間社会の複雑さを浮き彫りにさせる作品だったが、決め手は題名どおりの「愛国殺人」だった。

ミステリを読み始めて10年余り。このサイトを知ってから有名作ばかり読んで来たので、読んで後悔する作品はほとんどなかったが、それでも自分に合わない本の後には必ずクリスティーを読んで満足感を得た。

もう50冊に近いから心細くなっている。


No.390 6点 不安な産声
土屋隆夫
(2014/07/04 01:38登録)
一人旅の友としてこの本を電車、バスの移動中に読んだ。力作である。9年ぶりの書き下ろしらしいが、その気迫が読み手に伝わってくる。ただ、人工授精が題材の推理劇だが、今となっては結末が分かりやすい。

どんでん返しも、どんでん返しでなくなってしまう。結末はこれしかないと言う感じで、それを確認するだけの物語になった。その点が残念でならない。

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