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ミステリの祭典

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あびびびさんの登録情報
平均点:6.33点 書評数:669件

プロフィール| 書評

No.489 9点 猛き箱舟
船戸与一
(2015/09/05 17:23登録)
30年ぐらい前、ボートレース住之江の選手控室にこの本が置いてあった。それを見て、「さすがにベストセラー!」と、興奮したのを覚えている。最初のページをめくった時から広大なアフリカの物語に引き込まれ、徹夜して読んだ。その後も興奮冷めやらぬ状態だった…。

冒険小説の魅力をすべて詰め込んだ歴史的一冊だと思う。


No.488 8点 監獄島
加賀美雅之
(2015/09/05 16:30登録)
文庫上下で1200ページ超。解決編で300ページ超と、とてつもなく長い。2000枚の力作だ、しかし、ほとんど中だるみなく読み切れた。

いろいろなトリックは偶然も入れての展開だが、語り手の男は解明の度に、「驚愕した」、「戦慄した」のオンパレードである(笑)

真犯人については序盤のミスリードが大きく効いており、そこまでは踏み込めなかった。しかし、孤島での本格的な本格は、読んでいて楽しい。


No.487 6点 血染めのエッグ・コージイ事件
ジェームズ・アンダースン
(2015/08/31 15:35登録)
オールダリー荘で深夜に殺人事件が起きる。その時間帯である午前二時すぎには、関係者全員が暗闇の廊下や階段にいて(それぞれの用事で?)、ぶつかったり、逃げ回ったりしていたという。本格の舞台設定ではあるが、そんなユーモラスな展開に緊張感が薄れるという面がマイナス点…。

さらに、近くの池に死体が運ばれていたというトリックが思わず吹き出してしまうほど大胆な?仕掛け。最後まですらすら読めるが、苦笑しながら本を置いた。


No.486 7点 ヴァイオリン職人と天才演奏家の秘密
ポール・アダム
(2015/08/30 18:00登録)
ヴァイオリンの造詣が深く、歴史的な背景も興味深い。その時代にいるような感覚で読んでしまうが、途中でハッと気づき、これは現代進行の物語なんだと頭を切り替える。そんなことが何度もあった。

宝石をちりばめた装飾・小型バイオリンを巡る殺人事件があり、その謎を追って物語が進んでいくが、犯人は取ってつけたようなもので、やはりヴァイオリンを巡るイタリアの歴史がおもしろかった。


No.485 8点 三幕の殺人
アガサ・クリスティー
(2015/08/23 13:52登録)
すべては第一の殺人からの謎になる。これは賛否両論だろうが、デビットスーシェのポアロシリーズを見ると、犯人役の俳優が好演したこともあり、必然的になった。

しかし、アガサ・クリスティはいろいろなアイデアを使う。大胆かつ繊細で、本当に楽しめる作家と再認識した。


No.484 6点 毒蛇の園
ジャック・カーリイ
(2015/08/20 17:53登録)
惨殺された地元ラジオ局のレポーター、酒場で殺害された精神科医とその犯人で服役中刑務所内で毒殺される受刑者、そして殺されたあげくに火をかけられた高級娼婦…。異常に毛深い殺人者と、ルーカスと言う謎の人物の区別がなかなかつかず、ストレスを感じたまま読み進めたが…。

内容はジェットコースターだったが、結末は想定内というか、どんでん返しと言うほどではなかった。しかし、確かに次の作品を手に取ってみたい作家ではある。


No.483 7点 折れた竜骨
米澤穂信
(2015/08/15 17:06登録)
本格と言うより、ファンタジーの要素多し。外国ものだから名前やら、国の事情やらを覚えるのに少し時間がかかるが、意外性もあり、終始楽しめた。

日本人作家が書いたものだから驚きも倍増したが、これが地元(イギリス)の作家だったら評価はどうなったのだろう?


No.482 6点 迷走パズル
パトリック・クェンティン
(2015/08/12 18:12登録)
主人公の舞台プロデューサー、ピーター・ダルースが、アルコール依存症の治療で入院。その病院は精神病患者がほとんどで、正気か、狂気かと言う見極めが難しく、フーダニットがより混迷を極めた。作者は1912年生まれと言うが、まったく古さを感じなかった。

ダルースがある意味、エルキュールポアロのヘイスティング役になり、いい味を出していると思う。ここで出会ったアイリスと夫婦になるのだが、いまいち線が細かった彼女も、悪女パズルあたりではずいぶんたくましくなっていた。しかし、二人の出会いが精神病院とは意外だった。


No.481 6点 他殺岬
笹沢左保
(2015/08/12 17:38登録)
足摺岬を視点とした殺人事件、そして誘拐。まさに火曜サスペンス劇場だったが、当時の推理小説の王道でもあった。

切れ目なく謎があるし、スピード感もあって読みやすかった。自分はこんな流れは嫌いではなく、その当時なら+2点をつけたかも知れない。


No.480 8点 エコー・パーク
マイクル・コナリー
(2015/08/12 16:46登録)
刑事ハリー・ボッシュは、あのダーティー・ハリーとかぶってしまうほどの大胆さ。謹慎中でも勝手に捜査をするところも同じである。

どうしても解決できない失踪事件があり、目星をつけた男を13年間も追い続けてきたが、尻尾を出さない。そんな時にある殺人鬼が偶然に逮捕される。そしてその殺人鬼が、ボッシュが追いかけてきた失踪…殺人事件を告白するのだが…。

俳優のトミーリージョーンズがこの作品の権利を買ったそうだが、なぜか映画化されていない。久しぶりに読み応えのある作品で、単行本上下を一日で読んでしまったが、映像では見栄えのする謎ではなかったのかも知れない。


No.479 6点 ファイナル・カントリー
ジェイムズ・クラムリー
(2015/08/03 19:48登録)
殺人、麻薬、詐欺…。あらゆる犯罪が登場し、その中で老練探偵のミロが最後まで信念を持って戦う。アメリカの日常に潜む悪は桁がちがうし、根が深い。

とてもそんな国には住めない…と戦きながら読むしかない。


No.478 7点 プレーグ・コートの殺人
カーター・ディクスン
(2015/07/08 19:03登録)
作者の圧倒的勝利。解説の方が、「まず真相は解明できないだろう」とあったが、読者の私は相手の言いなり。白い粉の成分を調べなかった鑑識、傷口から発見できなかった殺害方法など、言いたいことはたくさんあるが、石造りの部屋の中の殺人、誰も手を触れることのできない密室で殺人を演出するのだから、これくらいは我慢すべきだろうと思う。

ミステリの王道を楽しめたので、満足感は十分だった。


No.477 7点 11枚のとらんぷ
泡坂妻夫
(2015/07/03 18:24登録)
全編マジックショーを見ているようで楽しめたが、〇〇症による犯人断定はうーんと唸ってしまった。しかし、その後、さらに意外な展開が…。

いろいろな奇術の種明かしをしてくれたのはおもしろかったが、袋の中に入った人間が脱出し、観客の後ろから登場して驚かす定番の奇術。それをやり遂げるにはマジッククラブのほぼ全員の協力が必要…には思わず笑ってしまった。不思議を演出するには、手間も暇もかかる。


No.476 6点 殺し屋 最後の仕事
ローレンス・ブロック
(2015/06/28 11:33登録)
依頼人が指定したホテルを出て、他のホテルを予約するなど、プロに徹したはずの殺し屋ケラーだったが、なかなか殺害オッケーが出ない。不信感を募らていると、案の定、相手の罠にはまり、要人暗殺の犯人にされてしまった。

この事件は全米に轟き渡り、ケラーの顔写真がマスコミに晒される。そのなか、必死の逃亡生活を送るケラー。復讐?再生?この窮地をどう切り抜けるのか?


No.475 5点 照柿
高村薫
(2015/06/18 01:06登録)
気温35度の夏、溶鉱炉の火、滴り落ちる汗、臙脂色の風景。男と女の愛憎…。この本を読んでいると絶対爽快な気分にはならない。

合田刑事も重い人間。何を考えても悪い方に行く。ただ、色々な描写は凄い。たとえば工場の溶解炉の能力、耐久力など、本職でもそこまでは知らないだろうと思う。

思えば「マークスの山」もこんな感じだった。重厚な物語だと思うのだが、同じような幼年期を送った人間は、別な本を読みたい。


No.474 3点 斜光
泡坂妻夫
(2015/06/13 18:20登録)
懐かしく、日本独特の推理小説と前半は期待したが、一番行ってはいけない方面に物語が進んでしまった。事件を捜査する刑事も、事件を傍観する主人公的男もいい味を出していたのだが、後半の迷走ですべてパー…。

自分にはそんな感じの一冊だった。


No.473 5点 カッコウの卵は誰のもの
東野圭吾
(2015/06/07 23:32登録)
淡々と始まり、淡々と終わったと言う感じで、ひねりも驚きもなかつた。犯人にしても、~そう言われればそうかな~的な感じで、認識せざるを得なかった。

それでも、読まなければよかった…とは思わせない作者の力量はやはりすごい。題名が、全体的な格上げに成功しているような感じである。


No.472 7点 死はわが隣人
コリン・デクスター
(2015/06/06 00:54登録)
「ウッドストック行き最終バス」、「キドリントンから消えた娘」と、この作家の有名作を読んだが、まったく自分には合わなかった。それから図書館で目にしたこの作品、最終的な挑戦で手に取り、読んだが…。

ある程度作風を理解していたせいか、今回は障害(途中放棄)なく、一気に読めた。主人公のモース主任警部は相変わらず好きにはなれないが、今回の事件捜査の進行、犯人像は共感できるものであり、英国風ミステリを堪能できたような気がする。


No.471 6点 真夏の方程式
東野圭吾
(2015/06/06 00:39登録)
湯川准教授がひと夏に経験する物語。少年との出会いがローカル電車の中という定番さが郷愁を誘う。相変わらずマイペースで、講釈たれだが?純粋な男だけに、子供とは合う…。

事件は回想シーンが主で、魅力的な海辺の街とはほとんど関係ないが、それでもしっかり読ませてくれる。作風はまったくちがうが、自分にとってはクリスティーのように外れのない作家である。


No.470 7点 俳優パズル
パトリック・クェンティン
(2015/06/03 16:27登録)
全体的に小粒な感じだが、そこがまた良し。ミスリードがうまいし、本格推理小説という気がする。「二人の妻をもつ男」が凄すぎて、どうしても比較してしまうが、この作家も本格派として好みである。

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