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ミステリの祭典

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血染めのエッグ・コージイ事件
別題「血のついたエッグ・コージィ」/ウィルキンズ警部

作家 ジェームズ・アンダースン
出版日1988年06月
平均点7.22点
書評数9人

No.9 6点 ミステリ初心者
(2023/03/17 20:55登録)
ネタバレをしております。

 非常に濃厚な推理小説でしたw 
 500を超えるページ数に、多すぎる登場人物で、序盤は人物を覚えるのもストーリーを追うのも大変でしたw ただ、軽く読み返してみても、あまり無駄なページがないです。やや本題に入るのが遅くてテンポが悪い感じもありますが、すべての要素がストーリーに絡んでいます。
 事件の夜が始めってから、一気にミステリ的になって楽しくなりました。あまりにも複雑すぎましたがw 
 大団円…とまで行かないまでも、ラストの展開は同情できる犯人に対しては救いがあるような気がするため、終わり方も爽やかであるのもいいところですね。

 推理小説的には、やはりドンデン返しの真犯人が一番の魅力でした。途中で主観の文章がある人物が犯人だったため、自然と心理的に犯人から外しておりましたw のちのウィルキンズ警部の解説によると、自分の見逃していた伏線も多くあって感心しました。
 あとは、カノン砲をつかった大胆(やや馬鹿ミスw)なトリックも魅力でしたね! ウィルキンズ警部はカノン砲から血痕を発見していたと後から言ってましたが、これはヒントとしてほしいところでしたね(書いたらバレてしまうのですがw)。
 ドンデン返しが素晴らしい一方で、犯人当ては難易度が高すぎて私には無理なように感じました。館に泊まるほぼすべての人間が事件の夜に秘密の行動をしており、嘘つきが多すぎる点、二人の死体に二人の殺害犯、犯人に不幸な・幸運な偶然が起こりすぎている点、どこまで読んだらいいのかわからない本(挑戦状がない)点があります。ウィルキンズ警部が詩でヒントを出しますが、そこからデウルーが真相にたどり着いたようなのですが、あの時点では到底無理なように思えますw 私は警部の詩が登場した時点で先を読むのをやめ、時間を掛けて事件の夜のタイムテーブル的な物を作ってしまいましたw その時間があれば、今頃別の作品をもう一冊読み終えられたところですが;;

 総じて、かなり良く練りこまれた本格推理小説ですが、犯人当ては楽しめませんでした。クイーン国名シリーズとしてではなく、クリスティーの小説だと思って読めばかなり楽しめる本でした。

No.8 8点 人並由真
(2020/04/14 03:35登録)
(ネタバレなし)
 想像を上回る傑作!
 クライマックスの謎解きでは、(中略)の意外性で顎が外れる快感を、久しぶりにたっぷり味わった。
 かたや事件の真相が明かされるなかで比較的早めに明かされるトリック(いちばんでかい方ではない)は、国内の某名作の<あの名シーン>を思い出した。

 殺人が起きるまでがけっこう長く、凡庸な作家が書いていたら確実に欠伸が出まくるところだが、多様な登場人物の描き分けの上手さと程良いギャグのスパイスで、まったく退屈しない。扶桑社版で500ページ以上の長さだが、実質一日で読み終えた。
 こちらの勘違いでなければ、宇野利泰の翻訳って結構毀誉褒貶あったと思うのだが(誤認でしたらすみません)、少なくとも本書においては全体の読みやすさ、そしてあるポイントにおいて、舌を巻く見事さである。さすが超Aクラスのベテラン!

 笑わせ方が全体的にやや田舎っぽいが、それもまた味(ウィルキンズ警部の警棒のエピソードとか、昭和のマンガ的な天然さで愉快であった)。
 後半でのある人物たちのトッポい描写などは、赤川次郎の快作『女社長に乾杯!』のラスト(大好きなのだ)までも想起させた。

 ウィルキンズ警部シリーズの二作目もいずれ読むだろうけれど、そっちを読了するまでには、未訳の三作目もぜひとも翻訳してほしい。
 ホックの「コンピューター検察局」、デアンドリアのニッコロウ・ベイネデイッティ教授もの、ウィリアム・モールのキャソン・デューカーもの、ニコラス・メイヤーのホームズパスティーシュ……に続いて
<「二冊目で翻訳とめないで、あともうひと声、最後の一冊を出せや!」と言いたいシリーズ>
がまた増えた。こんなのが数を増しても、あんまり嬉しくないが。
(英語Wikipediaによると、作者アンダースンは、くだんのシリーズ3作目を上梓したのち、2007年に亡くなったらしい。残念。)

No.7 7点 ボナンザ
(2016/04/17 00:22登録)
期待を上回る傑作。
どたばたしたユーモラスな展開が上手く本格趣味に結びついている。

No.6 6点 あびびび
(2015/08/31 15:35登録)
オールダリー荘で深夜に殺人事件が起きる。その時間帯である午前二時すぎには、関係者全員が暗闇の廊下や階段にいて(それぞれの用事で?)、ぶつかったり、逃げ回ったりしていたという。本格の舞台設定ではあるが、そんなユーモラスな展開に緊張感が薄れるという面がマイナス点…。

さらに、近くの池に死体が運ばれていたというトリックが思わず吹き出してしまうほど大胆な?仕掛け。最後まですらすら読めるが、苦笑しながら本を置いた。

No.5 5点 蟷螂の斧
(2014/04/12 09:21登録)
高評価で期待し過ぎたのか、残念。まず題名が活かされていないというよりあまり意味がなかった。殺人までと解決篇、それぞれ長すぎる。単純な事件であるが、パズラーを喜ばすため、現場に多くの人物を登場させた?。複雑にし過ぎの感。登場人物が多すぎ覚えきれない(苦笑)、そして裏のある人物が多すぎる。1人で十分。探偵役の視点が3人以上に移ってしまっているため集中できなかった。過ぎたるは及ばざるがごとしの感。なお伏線がほとんどなく犯人像は唐突な感じを受けた。等々あまり感心するところがありませんでしたがユーモアセンスは買っています。「証拠が問題」が楽しめたので、「殺意の団欒」(ユーモアミステリー?)は読もうと思っています。

No.4 7点 kanamori
(2010/08/06 21:09登録)
黄金時代の探偵小説を再現してくれた”オールダリー荘”シリーズの第1弾。
伯爵の荘園屋敷のパーテイに集まった色々の思惑を秘めた招待客のなかで発生する殺人事件。いかにもクラシック・ミステリの常道の設定で、スパイや強盗が絡む複雑な事件を、ユーモアを交えた明るめの雰囲気で描いています。
バカミス風の豪快トリックも面白いが、延々と続くすごい分量の解決編には感嘆。作者の本格ミステリに対する愛情がにじみ出ている逸品です。

No.3 7点 nukkam
(2009/03/24 18:54登録)
(ネタバレなしです) 英国のジェームズ・アンダースン(1936-2007)が1975年に発表した本書は舞台を1930年代に設定しているだけでなく、プロットも1930年代の黄金時代本格派推理小説を意識したかのように謎解きの面白さが満載です。雷鳴轟く夜に起きる犯罪、暗闇の中にうごめく人々とあやふやなアリバイ。そして全員を一個所に集めての、しかもどんでん返しの連続が何章にもまたがる謎解きの場面。トリックや手掛かりよりも物語性や人間描写やリアリズムを重視した作品が主流になりつつあった時代に敢えて逆行したような作品です。時代遅れの作品と批判するのは簡単ですが、謎解きの面白さに満ち溢れた作品であることは間違いありません。豪快なトリックも印象的です。なお文春文庫版も扶桑社文庫版も表紙にエッグ・コージイの絵や写真が載っているのはとてもよい気配りだと思います(名前だけではよくわからなかったので)。

No.2 9点 あい
(2008/11/18 16:35登録)
とても楽しめた。複雑に事件が絡み合う中で何回ものどんでん返しや、例のとんでもトリックが非常に良かった。後味も悪くない作品。ただ題名からか、エッグ・コージィから犯人が割り出されなかったのが残念

No.1 10点 こう
(2008/05/22 00:10登録)
 ジェームズ・アンダースンは日本で紹介されている作品はほぼ全て本格作品の作家ですが他の作家とちがうのは作品に漂う明るさで非常に好きでもっと訳してもらいたい作家です。ジェシカおばさんの事件簿のノベライズも三冊でていますがこちらは未読です。
 この作品は昔文春で血のついたエッグ・コージィのタイトルで紹介されておりこちらを読んだので今のものは訳がちがうかもしれません。
 田舎屋敷にあつまった客の中で殺人事件が起こり登場人物は変な人間ばかりで怪しく最後に探偵役が一室に登場人物を全員集めて真相を解き明かすという昔懐かしいスタイルを味わえます。
 最後の真相部分はとにかく長いですが一気に読ませます。また今まで見たこともない爆笑トリックが臆面もなく堂々と提示されこれは本当に笑ってしまいました。ヒントとして見取り図もありますが絶対わからないというか考えられないトリックを出しています。非常に面白い作品です。読んだ4冊はいずれも最高です。 

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