home

ミステリの祭典

login
魔剣天翔
Vシリーズ

作家 森博嗣
出版日2000年09月
平均点6.52点
書評数21人

No.21 6点 nukkam
(2024/02/21 13:05登録)
(ネタバレなしです) 山田風太郎の「魔界転生」(1967年)を意識したようなタイトルの本書は2000年発表のVシリーズ第5作の本格派推理小説で、しかも珍しい航空ミステリーです。私の読んだ講談社文庫版の裏表紙で「アクロバット飛行中の二人乗り航空機。高空に浮かぶその完全密室で起こった殺人」と粗筋紹介されていたのでフライト・ショーが始まると事件が起きるのは今か今かとわくわくしながら読めたのですが、もしも予備知識なしで読んでいたら前半の展開は少し退屈だったかと思います。探偵役の瀬在丸紅子の登場場面が非常に少なく、捜査関係者から事件概要を説明してもらうと解決まではあっという間です。紅子が「これが正しいと主張するつもりは私にはありません。(中略)この形なら辻褄が合う、というだけのことです」と述べているように、それほど論理的に構築された推理説明ではありませんが説得力は十分だと思います。

No.20 5点 ボナンザ
(2022/11/06 13:30登録)
意外にもシンプルなトリックをキャラクターで覆っている。

No.19 6点 メルカトル
(2020/09/24 22:32登録)
アクロバット飛行中の二人乗り航空機。高空に浮ぶその完全密室で起こった殺人。エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣をめぐって、会場を訪れた保呂草と無料招待券につられた阿漕荘の面々は不可思議な事件に巻き込まれてしまう。悲劇の宝剣と最高難度の密室トリックの謎を瀬在丸紅子が鮮やかに触き明かす。
『BOOK』データベースより。

本シリーズは初ですので、誰が探偵なのかすら知らないまま読み始めました。正直全体的に冗長な感が否めません。特に伏線となる描写もないまま、余分とも思えるエピソードがあったりして、水増し感が感じられます。その割に解決編がいかにも呆気なさ過ぎてなんだか盛り上がらないですね。終盤のある人物の独白が島荘ばりで最も読み応えがありました。それにしても動機はどうなってるんでしょう。単なる読み落としですか。トリックとしては面白いと思いましたけど、わざわざそんな突飛で派手なシチュエーションで殺人を犯すかなという気もします。

これまでも再三書いてきましたが、どうも森博嗣の文章には感情が篭っていないというか、血が通っていない感じがして仕方ありません。だからグッと来るものが無いんじゃないでしょうかね。誰にも感情移入できませんでしたしね。ファンにとってはそこが良いんじゃないか、って事になるのかも知れませんけど。

No.18 6点 E-BANKER
(2017/03/04 15:39登録)
「夢・出逢い・魔性」に続くvシリーズの第五作。
2000年発表。

~アクロバット飛行中の二人乗り航空機。高空に浮かぶその完全密室で起こった殺人事件。エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣をめぐって、会場を訪れた保呂草と無料招待券につられた阿漕荘の面々は不可思議な事件に巻き込まれてしまう。悲劇の宝剣と最高難度の密室トリックの謎を瀬在丸紅子が鮮やかに解き明かす!~

相変わらずというかvシリーズも五作目となり、元々異形のミステリーだったものが、更に「異形化」してきたな・・・って感じ。
今回の謎は何と「空中密室」!!
曲芸飛行を行っているコクピット内で発生する密室殺人。
しかもあろうことか銃殺、しかも背中から、っていうとびっきりの謎だ。
いったいどういうトリック?って思いながら読み進めていたが、事件の顛末が語られるばかりで、なかなか瀬在丸の推理に行き着かない流れ。
「おいおい、もうページがないぞ!」って思ってると、やっと真相解明へ。
そして明かされるのが、アノ(どの?)真実。

正直、「えー!」って思わされた。
これって、斉藤さんは気付かなかった、っていうことなんだよね・・・
すげぇリスクがあるように感じるけどなぁー
っていうか、もうアッサリしすぎだろう。「肩透かし」って捉える読者も多いだろうな。

一番のサプライズは例のダイイングメッセージか?
何だか実にもったいつけといて、意味はコレかよ!!
「国文科」出身は別に関係ないと思いますけどね・・・

いやいや・・・これはもしかして「シャレ」で書いたのか? それとも大真面目なのか?
ますます捉えどころのない世界へ向かい始めた感のある作品だった。

No.17 7点 Tetchy
(2016/11/22 23:46登録)
正体不明の美術専門窃盗犯であった保呂草潤平に危機が訪れるのが面白い。
また本書ではサブストーリーとして小鳥遊練無の恋にも触れられている。
今回は女装をせずに物語に登場する。憧れの存在の前では逆にその行為が恥ずかしくてできないということなのだろうかと思っていたが、最後にやはりそれは彼女に成長した自分を見せたかったこと、そして冒頭の会話のシーンから察するとやはり彼女の前では一人の男でありたかった、関根杏奈を恋人として迎える一人前の男になったことを見せたかったのだろう。

物語後半で明かされる関根朔太と西崎勇輝、そして関根杏奈出生の秘密は非常にオーソドックスな真相だろう。
名もない女性の持つ人生の覚悟の前に保呂草は屈する。
関根杏奈がスカイ・ボルトは人の命を奪うほど価値があるものなのかという祖父江七夏の問いに対して頷き、その後にこのように云う。
「人の命なんて、大したものではない。命をかけるものが、あるからこそ、人は生きているんです」
この言葉はそのまま彼女の母親の生き様に繋がる。自身の人生を捨て、命を関根朔太の作品を描き続けることが彼女にとって自分の命よりも大事だったことなのだ。奇しくも2人は同じ覚悟を持って人生を生きていることに気付かされる。ここに2人の強い絆を感じた。

そんな背景が明らかになっていく本書の全く不可思議な事件の真相は航空ショーのように実にアクロバティックだった。たった2人しか入ることの出来ない飛行機のコクピットという極限的に狭い密室殺人でこのようなすっきりとした解答が得られる森氏のミステリスピリットは非常に素晴らしいと思うのだが、また今回も犯人の動機が不明なまま終わるのが不完全燃焼でがっかりである。
多分森氏が「人が人を殺す理由は他人には到底わかるものではないから敢えて書かない」というスタンスを崩さない限り、私は彼の作品を高く評価することはしないだろう。前にも書いたがそれは我々が生きる社会の中では至極当たり前であるが、せめて作り物の物語の中くらいははっきり答えが出てもいいではないかと思うからだ。割り切れない世の中を生きているからこそ答えのある世界を欲しているのだ。

さて本書の隠されたテーマは全ての章題に付せられた「形」というキーワードか。森氏はエッセイでも述べているように無類の飛行機好きでその形に機能美を超えた美しさを感じているようだ。その心情は本書のプロローグで遺憾なく開陳されているが、本書では飛行機の形だけでなく、家族の形、過去の形、友人たちの形と人と人を繋いで形成されるものを指しているのではないだろうか。保呂草が冒頭に述べる多少の演出を交えた形が本書の物語であり、最後に瀬在丸紅子の笑顔を求める形と述べている。つまりそれらの形がその人の生き様を、人生を作る。即ち人生とは形の集合体であるということだろうか。
そうであるならばまだ形は変わっていく。今回の形はこの事件が起きた時の形だ。シリーズが最終作に至る時、どんな形を描くのだろうか。その形こそがこのシリーズの最大のミステリなのかもしれない。

No.16 5点 虫暮部
(2016/08/05 18:52登録)
 西崎勇輝を後ろから撃ったら、死体を引き出したって座席の入れ替わりはどうせばれるでしょう。寧ろ適切な位置に移して飛行機ごと燃やしちゃうべき。もしくは2番機に拳銃発射装置のダミーを設置しておくとか。そもそも飛行機の中で殺す必然性があるのか。なんか犯人の考えに筋が通っていないような。
 “パイロットの間では隠せなかったはず”のことをなぜ倉田は黙っていたのか。
 父殺しに協力した弟は許すのか。
 斯様に、森博嗣はミステリのこと良く判っていないんじゃないの、と思わされるポカは多いが、“ダイイング・メッセージは下らない駄洒落である”という伝統は正しく注いで、じゃなくて継いでいるようだ。

No.15 6点 白い風
(2015/11/15 23:29登録)
トリックは気付けそうで気付けなかったね。
ただこのシリーズは紅子さんが犯人の動機に興味がないせいかどうも動機の説明がなさすぎ。
今回もその点はあっさり過ぎちゃってどうも全体的に感情移入がしにくい。
紅子さんにはそんなつもりはなくても元夫の同僚婦警に対する扱いもあんまりいい気はしない…。
口に入れたヒューズもビミョウ…。
まっ、このまましばらくは続きのVシリーズは読むつもりだけどね(笑)

No.14 8点 ∠渉
(2015/02/11 15:31登録)
まぁ、相変わらずの良作である。「空中密室」がなかなかのインパクトだったので、Vシリーズの中ではミステリィとしてのウケがイイ方の作品なのかな。
各務亜樹良が初登場である。主要キャラがだいたい揃って、みんなそこそこ出番があるので、ファンとしては読みがいがある。とくに保呂草は一気にハードボイルド調に。なんか日本人が描くハードボイルドって絶対にハンフリー・ボガートみたいにはならないし、たまにエディ・マーフィみたいな、嘘だろ!? みたいなのもいるけど、その点保呂草潤平はかなりツボなキャラクタだし、エンジェル・マヌーヴァを巡るサイドストーリーはかなり楽しく読めた。森博嗣はハードボイルドが一番巧いんじゃないか。そして紫子ちゃんは一番出番少なだけど一番カワイイというお得なキャラだろう。いや、単純に可愛らしかった笑。
あと印象に残ったのは、今のところ森作品では最初で最後になっているダイイング・メッセージの登場でしょうか。こういうところは森博嗣のわざとらしさというか、いわゆるアンチみたいな使い方ですが、そんなところにキュンとしてしまう森ファンなのでした。

No.13 6点 まさむね
(2013/12/23 23:43登録)
 「アクロバット飛行中における銃殺」という謎が魅力的ですし,サスペンス的な側面もイイ感じで,当初の想定以上に楽しめました。
 トリックは,よくよく考えれば分かり易いのかもしれませんが…,あまり考えずにサクサク読み進めてしまったなぁ…。ちょっと悔しい。

No.12 5点 TON2
(2012/12/17 16:07登録)
講談社NOVELS
 アクロバット飛行チーム内での連続殺人と、幻の秘宝の謎についての話です。
 私にとってこのシリーズは、トリックよりも、登場人物のキャラを楽しんでいます。

No.11 4点 ムラ
(2011/09/20 04:33登録)
小鳥遊と紫子の関係がとてもよかった作品。
暗号は紅子に発言でやっと気がついた。

No.10 7点 yoneppi
(2009/10/29 22:15登録)
最初は馴染めなかったVシリーズだけどこれは満足できた。生理的に受け付けなかった練無にも好感が…。
ダイイングメッセージは余計な気も。脅迫状の暗号は結構難しかった…。

No.9 6点 vivi
(2008/01/17 02:25登録)
トリック自体には、やや難点があります。
動機もまたしかり。

ただ、Vシリーズのキャラクタの出揃った感じもして、
読んでいく中のスリルもあります。

キャラ読みとしての心はくすぐられるけど、
ミステリ読みとしては、いまいちな評価です。

No.8 7点 サハリ
(2005/07/18 14:42登録)
ミステリーだな〜っと思えた作品だった。
ただ、保呂草さん逮捕されるんじゃないかとはらはらさせられました。いいのかこんなことして?
各務亜樹良の考え方かっこいいな〜っておもった。

No.7 8点 ぴかちゅ〜
(2005/06/05 23:04登録)
いつになくスピード感と緊張感があって楽しめました。
ほろ君何者、っていう感じもなかなか。

No.6 9点 yamato
(2004/07/30 17:41登録)
いままで森作品というだけで惰性で読んできましたが、ようやく報われたかと・・・。
5,6作目で一気にVシリーズに引き込まれました。
逆にこれがないとやばかったですね・・・。
そういった意味での評価です。

No.5 7点 もよもよ
(2004/01/10 02:28登録)
私も、トリックがまともで安心しました。このシリーズではひさびさに「ミステリ」を読んだ気分を味わえました。保呂草さんのお仕事の話もかなり面白い。

No.4 10点 なりね
(2003/12/28 21:48登録)
これと次作はかなり面白かった。S&Mシリーズ並に来た。
準レギュが増えてきたのが吉と出るか凶と出るか。

No.3 6点 モトキング
(2003/12/25 16:44登録)
率直に…。
このシリーズも5作目にして、やっと、まともなトリックを用意したな、という感想。
個人的に、このパイロット入れ替えのトリックは非常に良かったですね。
読者の目を逸らさせるのが上手い。
ちょっと無謀すぎる保呂草の猪突猛進ぶりが、恐らくミスリードなのでしょう。
みんな心配したことでしょうし(笑)
何か、この辺りから、保呂草がどんどん大胆な犯罪者になってくるな〜。
それほど手放しで素晴らしいとは思わないけど、久々に致命的な突っ込みどころが無く、正直嬉しいので、この点数。

No.2 6点 ばやし
(2003/12/21 13:41登録)
飛行機の専門的なことはわからないけど登場人物の感情が今までの作品の中では一番よく出てるんじゃないかなって気がします^^あたし的にはこの作品ですっかり祖父江刑事の好感度がアップしました★

21中の書評を表示しています 1 - 20