メルカトルかく語りき メルカトル鮎シリーズ |
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作家 | 麻耶雄嵩 |
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出版日 | 2011年05月 |
平均点 | 6.08点 |
書評数 | 25人 |
No.25 | 4点 | 蟷螂の斧 | |
(2022/05/28 11:52登録) フーダニットに係るアンチミステリー短篇集としての価値はあると思います。ただし、採点は面白いか、面白くないかを基準にしました。 ①死人を起こす 3点 2階からの転落死と、その1年後の他殺事件との関連は?・・・こじつけっぽい展開 ②九州旅行 6点 被害者はキャップの付いたマジックを握っていた。ダイイングメッセージを残そうとした?・・・最後の一行 ③収束 5点 冒頭の3つの殺人事件がどのように収束するのか?・・・答えでもあるが答えでもない ④答えのない絵本 3点 理科準備室で教師が殺害された。容疑者は生徒20名・・・消去法。このロジックには瑕疵がありますよね。20人のアリバイが正しいとしている点ですかね。メルカトルが出した結論は依頼者に配慮したものとは思いますけれど(苦笑) ⑤密室荘 5点 メルカトル所有の別荘「密室荘」の地下室に死体が。犯人は銘探偵メルカトルか助手の美袋しかいない・・・ギブアップ?(笑) 助手の美袋曰く「ミステリは結局解決次第だからな。つまらない解決では意味がない」(②九州旅行より)読者の気持ちをよくぞ代弁してくれました(笑) |
No.24 | 6点 | mediocrity | |
(2021/12/21 05:26登録) <少しネタバレあり> ①『死人を起こす』 1年前の殺人は、恐怖症+アルコールでありうる話かもしれないが、突飛すぎていまいち。当日の殺人の解決は私には完全にすべっているように思えた。3点。 ②『九州旅行』 設定も結末も非常に面白かった。8点。 ③『収束』 冒頭の3つの殺人事件はどこに行ってしまったのかと思ったら、最後にそのからくりが。傑作だと思う。9点。 ④『答えのない絵本』 試み自体はつまらなかった。この結末で書けと言われれば、ほとんどの推理作家は楽に書けるのでは。普通は構想時点で却下するでしょう。ただし、推理自体は良かったので4点。 ⑤『密室荘』 前作以上に評価するポイントがない。セメントの用途も中盤でバレバレ。まあ前作の続きのおまけ作品ということにして点数は付けない。 平均して6点で。 |
No.23 | 9点 | じきる | |
(2021/03/21 15:26登録) これは凄まじい。 ロジックと不条理が高度に融合した、唯の問題作に終わらないミステリの極北。 |
No.22 | 6点 | ミステリーオタク | |
(2021/03/17 00:52登録) メルカトルと美袋のための第2短編集。 《死人を起こす》 なかなか魅力的な短編ミステリに訳の分からない殺人事件をくっつけて、ぶち壊しているところが作者らしい。 《九州旅行》 あまり面白くなかった。オチも古い。 《収束》 また、こういう中途半端なミステリを書きやがって・・・ この話では登場人物たちの身長がポイントの一つになっているが、メルの身長が180センチ以下らしいのは少し意外だった。190位あるかと思ってた。 《答えのない絵本》 またまた訳の分からない話を書きやがって。 でもこれは凄い。緻密に組み立てていったロジックタワーを完成と同時に叩き壊して前代未聞の虚数解にいざなうのだから。 といってもマヤの悪ふざけだな。 《密室荘》 もういいよ。犯人は下弦の壱だ。 長年、自分の脳内でのメルカトルのヴィジュアルイメージは不敵な笑みを浮かべた阿部寛だったが、一昨年「シャーロック」というTVドラマを見てからディーンフジオカに変わった。しかしシャーロックの続編が見たい・・・あんな奴がホントの守谷であるわけがない!家族で守谷役を当てっこしたのに・・ おっと本作とは無関係な話でした。 思うのだが、摩耶にはミステリ界のピカソという形容が相応しいかもしれない。 |
No.21 | 7点 | レッドキング | |
(2020/02/04 22:00登録) ・「死人を起こす」 ある異常な恐怖症を根拠とした「殺人」のロジック。実は犯人候補が無限大状態である事を隠したとんでもない犯人指摘。5点 ・「九州旅行」 殺人者によるアリバイトリック作成中の現場に友人を放り出すとんでもない探偵の話。6点(あの後、美袋どうなったんだ?) ・「収束」 高さと位置のロジックから、三つの正解候補を挙げて、結論を出さないまま作品のみならず読者も「シュレーディンガーの猫」状態に放り出すとんでもないミステリ。7点 ・「答えのない絵本」 閉ざされた舞台で起きた殺人。容疑者は20人。だがメルカトルのロジック(「Aを行った」のは「Bという状況」を利用する為で、その「Bという状況」を知るには「Cという状態」が必要で、「C状態という条件」を満たす人物Xとは・・)の行き着いた果ては・・ああ、げにとんでもない結論。エッシャーの騙し絵の三次元移植の無意味さにも似た・・これやっぱり採点不能 ・「密室荘」 密室状態の家に他殺死体と二人の人物AとB。「殺人が行われた」「犯人はAかB以外にあり得ない」「AもBも犯人ではない」「犯人は存在しない」「ゆえに殺人は存在しない」「したがって死体はあってはならない」・・・受け入れるか拒否するしかない、究極のアンチミステリ・・・これも採点不能 ※以前「答えのない絵本」単体で採点しましたが、削除して、作品集全体・・平均ではなく・・として採点。7点。 |
No.20 | 5点 | ボナンザ | |
(2020/01/23 23:16登録) 基本的にどの作品全く解決する気がない。 メルカトルの傍若無人ぶりは元からだが、美袋もだいぶ対応力が上がっている気がする・・・。 |
No.19 | 5点 | 測量ボ-イ | |
(2019/08/31 14:52登録) う-ん、これは何とも。 氏に対する予備知識ない人が読むときっと驚くでしょうね。 まあ麻耶氏ならではではあります。 |
No.18 | 8点 | 邪魅 | |
(2017/03/25 07:09登録) 流石麻耶雄嵩氏ともいうべき怪作 どの短編も好きですね やはり氏の作品は良い 一番好きなのは収束と答えのない絵本の二作ですね 収束はまずその企みに驚かされます 全てが明らかになって分かる最初の不可解とも言える殺害シーン、その意味が分かるところはまさに圧巻、凄まじいです 答えのない絵本も秀逸ですね どの推理にも説得力があり、最終的に行き着いた答えは前代未聞ながらに説得力は抜群です 密室荘もにやりとさせられました 最後まで楽しむことが出来ました |
No.17 | 7点 | 青い車 | |
(2016/02/03 21:28登録) 本格ミステリーらしい極めて論理的な推理を展開しているのに、それらをすべてぶち壊すとんでもない趣向が炸裂しまくる空前絶後の短篇集です。単品で見るとめちゃくちゃなだけに思えますが、これだけ怪作ばかり集まると逆に称賛したくなります。個人的ベストは『答えのない絵本』です。 以下、各話の感想です。 ①『死人を起こす』 意表を突いた名推理の楽しめる好篇かと思いきや、ラストのメルカトルの暴挙が凄まじいです。この短篇集らしい幕開け。 ②『九州旅行』 美袋のマンションでたまたま殺人が起きていたという設定がご都合主義だという感想をよそで見かけましたが、麻耶さんがやるとなぜか許せてしまえます。しかし、この作品もラストがとんでもないです。 ③『収束』 プロローグの謎が魅力的で、身長に関するメルの推理も実に冴えています。ストレートな傑作となる素質のある作品ですが、これは解決できてないですよね…。 ④『答えのない絵本』 消去法によるフィルタリングで気持ち良く犯人が絞られていくのが快感です。ロジックの極北を見せられるような作品で、自殺説、事故説、全員犯人説など他の可能性をすべて排除した結果に辿り着いた答が前代未聞。一番の問題作でもあります。 ⑤『密室荘』 メルと美袋しかいない状況下で死体が出現…。ショートショートといっていいほどの短さで、端的にこの短篇集の方向性を集約したような締めです。 |
No.16 | 7点 | 風桜青紫 | |
(2015/12/29 11:29登録) 『翼ある闇』、『夏と冬の奏鳴曲』、『隻眼の少女』の行き着く先は「推理できないことを推理する」になるわけです。この趣向は『死人を起こす』や『九州旅行』でもおぼろ気にその影が見えてくるんだが、『答えのない絵本』に至って逃げようなく突きつけられます。カタルシスがとりあげられることによってカタルシスが生まれ、不思議な痛快さがある一方、拒否感も生じる、なんとも不気味な読後感。メルカトルすら無意識のうちに「推理できないことを推理する」ことになる『収束』、推理を導くため登場人物がそれぞれの推理の核であるはずの「視点」を排除してしまわなくてはいけなくなる『密室荘』。ほぼ仕掛けだけで話が成立してしまっていると言っていい、とんでもない短編集。 |
No.15 | 7点 | 505 | |
(2015/10/11 19:53登録) オーソドックスなミステリを期待して読むと挑戦的で攻撃的な作品のオンパレードに眩暈必至。読者を選ぶ一冊とも言えるだろう。麻耶雄嵩のコメントに在る通り、「メルカトルは不可謬ですので、彼の解決も当然無謬」という体裁を採っているため、その言葉が孕む意味と危険性に対して真正面に取り組んでいる。そのために、こういった実験的な作品が生まれたことは必然と言える。不条理なミステリであるが、ロジックは効いている。そこを妥協しなかった作者の気概は流石である。 『死人を起こす』では、メルカトルがどう物語を終わらすのかが鍵となるのだが、読めない展開運びに夢中になる。伏線の張り方もあり、真相は唖然となるばかり。アクロバティックな推理もありならがも、それを支える証拠の部分にはもうある意味流石の域と言える。これを〝粋〟と評するには躊躇うが。解決に対して、ここまで大胆に攻めたことに意義がある。 『九州旅行』は、ダイイング・メッセージの不完全さ+キャップの着いたマジックという些細な謎から展開されていく。なぜ、被害者はそんなマジックを手にしていたのか。そこから導かれる流れはユーモアを交えつつも、非常にスムーズ。トリックも面白いが、なんといっても結末に尽きる。美袋三条の性格とメルカルトの人を喰ったような人間性を端的に表現している作品。 『収束』は、倒叙ミステリだと思いきや、そこから覆されるパワーのある作品。手がかりのミスディレクションも効いており、そこから導き出されるのも見事いう他ない。構成力という点では、本書の中でも白眉であり、冒頭の倒叙ミステリ風に仕立て上げた部分は、驚愕的な真相を支えている。冒頭の部分を含めた物語の見せ方、そしてメルカルトならではの解決方法が絶妙に合わさっている怪作。 『答えのない絵本』は、本書でベストと言える作品。容疑者の数はなんと20人。そこから導き出された犯人とは…。被害者の状況と犯行時刻の絞り込みが丹念に描写されており、実によく出来ている。その描写の補強も入念にされており、付け入る隙を感じさせない。メルカルトの圧巻の推理によって、どんどんと容疑者が消去されていく様は爽快と言わざるを得ない。怒涛の論理である。そして、あれほどまでに積み上げたロジックの行く先が鮮烈的であり、困惑的。麻耶雄嵩の狙いを徹底的に表現したと言えば、聞こえはいいものであるが、あまりにも破壊的な作風であり、問題作である。 『密室荘』は、読者サービス満載な1篇。密室状況で起こった殺人事件。犯人は必然的にメルカルトか美袋の2人に絞られる、という物語であるが、この話こそ本書の幕引きに相応しいと言えるであろう。犯人が探偵か、それとも語り手か。そういった状況に意図的に追いこんだ作者の答えは、意外にもしっくりくるものとなっている。ある意味、本書の流れからすると、当然の帰結と言えるかもしれない。全編を通して、〝実験的短編集〟という文句に偽りはなし。銘探偵ならではという点を考慮すると、納得するのも難しくないか。それでも、空前絶後な短編集であることに変わらない |
No.14 | 4点 | ia | |
(2015/02/19 23:11登録) 先人が思いついたけどあえてやらなかった事をやってしまった感。 もやっとする終わり方ばかりでスッキリしない。 メルカトルの万能的なキャラは好きだけど、この本では、作者の都合ですぐねをあげて推理放棄してばかり。弱体化してる気がする。 所詮コマだなと思った。 美袋君の方はピンチに陥ったり人間くさくて良かった。 |
No.13 | 7点 | アイス・コーヒー | |
(2014/07/20 12:52登録) メルカトルと美袋による連作短編集。どれも破壊的なトリックと結末が仕掛けられた異色作だ。 「メルカトルと美袋のための殺人」に比べると各々のストーリーの奇抜さは薄れるが、一方短編集としての完成度は高くなっている。中でも気に入ったのは「九州旅行」だが、ロジックの独創性としては「収束」も傑作。 読み終えてみると、つくづくメルが「真相を究明する名探偵」ではないことが分かる。作中で本人が語っている通り「不条理を不条理でなく」する「銘探偵」なのだ。(「答えのない絵本」では必ずしもそうとは云いきれないが。) 「死人を起こす」でも「答えのない絵本」でも、メルは自分の依頼に関して最前の解決を導いている。彼にとって真相を究明することが解決なのではなく、事態を収束させることが解決なのだ。そのためには手段を選ばないし、納得のいく結末も放棄する。 また、相変わらずロジックに重点が置かれているところも好感が持てる。内容が内容だけに気やすくおすすめ出来る本ではないが、メルカトル入門書としては悪くない。 |
No.12 | 9点 | いいちこ | |
(2014/07/07 16:36登録) あとがきによると「答えのない絵本」のプロットを最初に思い付いたらしい。 これ自体が奇想なのだが、この作品を発表するにあたり、中途半端に中長編に増量せず、かといって短編集に混ぜる遊びの変化球ともせず、手を変え品を変え魔球を投げ続ける短編集にしてしまう。 このあたりが余人の追随を許さない、著者ならではのド奇想と言える。 「答えのない絵本」の徹底した論理性もさることながら、本作の白眉は「収束」。 アイデアとしては思い付くのかもしれないが、ミステリとして昇華し切った巧みなプロットと、高い構成力には脱帽。 ミステリに対する相当な問題意識と深い洞察がなければこのような作品は出てこない。 本作はアンチミステリのある分野における極北というべき作品であり、同様の趣向のミステリで本作を超える余地はまずないのではないか。 評価がわかれる作品であるのは間違いないが、その存在価値に鑑みて9点を献上 |
No.11 | 6点 | E-BANKER | |
(2014/06/23 22:23登録) お馴染み“メルカトル鮎”と“美袋”コンビによるシリーズ。 「本格ミステリーとは何か?」と問いかけるような、なんとも挑戦的な作品が並ぶ作品集。 ①「死人を起こす」=現場見取り図なども挿入され、ロジック重視の端正な本格ミステリーかと思いきや・・・。「何じゃこりゃ!この結末は!」と思うこと請け合いのラスト。“列車の音”の件は本当にそうなのだろうかという疑問が湧いたし、「アゲハ蝶」もなぁ・・・分からんでもないけど・・・ ②「九州旅行」=てっきりトラベルミステリーもどきの話かと思いきや・・・。美袋に小説のネタを提供するために、自ら偶然(?)にも殺人現場へ突入するメルカトル。途中はホームズばりに物証から推理を行う展開も見せたが・・・結果は突然の「終了」。 ③「収束」=冒頭に登場する謎の三場面。終盤になってやっとその意味が分かるのだが、ここでも明快な回答は示されない。そして、殺人を止めようとする美袋に対するメルカトルの何とも皮肉の効いた台詞・・・これはキャラの勝利だな。 ④「答えのない絵本」=高校の校舎で起こる教師殺人事件。袋小路の部屋で起こった準密室殺人に対する容疑者は何と20人(!)。しかも全て高校生。それを消去法で大胆に減らしていくメルカトルなのだが、ラストは凡そ本格ミステリーとは思えないようなもの! これは・・・ある意味スゴイ真相だ。 ⑤「密室荘」=ある意味これが最もブッ飛んだ作品になるだろう。なにしろ、メルカトルが○○そのものをなかったことにしようとしているのだから・・・ここまで挑戦的いや挑発的なミステリーもないだろう。 以上5編。 いやぁーこれはかなりスゴイことになっている。 いずれも舞台設定は本格ミステリーそのものなのに、用意された仕掛け、プロットは本格ミステリーを根底からひっくり返すようなものなのだ。 こういう作品をそこら辺の凡庸な作家が書くとこっぴどく批判されそうだが、作者が書くとそれなりに意味のある深い作品に思えてくるから不思議なもの。 こういう作品が好きかと聞かれると困るのだが、メルカトルという特異なキャラを有する作者ならではの作品なのかもしれない。 例えていうなら、「ゴールマウスを大きく越えると思わせて、グイっと落ちてくるブレ球のフリーキック」というところか。 (分かりにくい例え・・・) |
No.10 | 4点 | haruka | |
(2014/05/30 01:37登録) 作者の狙いはわかるが、はっきり言って面白くない。 |
No.9 | 3点 | ムラ | |
(2013/04/08 08:15登録) (軽いネタバレあり) 評価が難しい所だが個人的には楽しめた。メルカトルの真実も正義もゴミ箱に捨てちまえな感じが好き。論理主義ではありそうだけど。 全体として、論理的に犯人がいなかったり、死んだ奴を無理やり犯人にしたりとメルカトルが奇抜なところが目立つが、あくまでもトリック自体はセオリー的でありふれてるのがちと残念な所。 奇抜な探偵が王道ミステリを解決する物語だから、それでいいとは思うのだけど。 |
No.8 | 5点 | mozart | |
(2012/12/30 10:10登録) 最近になって麻耶氏の作品を少しずつ読み進めているところですが、本作もこういう(ある意味すっきりしない)結末の短編を集めたものとして、それなりに存在理由はあるかと思います。もちろんメルカトルの奇人ぶりは相変わらずで、最初の頃はそのブラックさを嫌悪していたものの、徐々に自分が虜になっていくようで、ちょっと怖いかも。 |
No.7 | 6点 | yoneppi | |
(2012/08/19 09:39登録) たしかに問題作。不可謬なメルカトルだから許される。 |
No.6 | 8点 | simo10 | |
(2012/02/21 21:50登録) --ネタばれ含みます-- メルカトル&美袋コンビ短編集第二弾(たぶん)。以下の五話で構成されます。 ①「死者を起こす」:前半の事件は事故か殺人かという問題で、メルカトルが見事に解決。後半の事件に関しても見事な推理を披露するメルカトルだが…。しばらく何が起こったのか理解できませんでした。残りの作品を読んで、こんな不条理な結末もありなんだなと思いました。 ②「九州旅行」:不謹慎にも、新作の構想を練るために実際の殺人事件現場に足を踏み入れる美袋だが、ノリの良さがウケる。ダイイングメッセージの不完全さの理由を紐解くという形だから、結果的にはワイダニットものに含まれるのかな。 ③「収束」:聖域で殺人を行うのは、また殺されるのは誰か?というフーダニット。殺人事件が起きることを推理し、犯人と被害者を三通りに絞り込むメルカトルだが、どのパターンになるかは発生するまで分からないと言う。読者にのみ事件発生現場の様子が綴られるが…。これまた読者には意地悪な結末だけど、この作品に関してはこの方がハマっているかも。ただどうして3人ともカテジナ書を入手していたのかが分からない。 ④「答えのない絵本」:変則的クローズドサークルにより、オタク教師殺害犯は20人の生徒の中に絞られる、というフーダニットもの。ロジック全開で犯人候補がサクサクと絞り込まれていくが…。著者の陰謀により解決不可能空間に招かれたメルカトルだが、解決が不可能であることを看破したメルカトルの勝利!と勝手に解釈しました。 ⑤「密室荘」:完全な密室空間の内側に美袋とメルカトルと他殺体のみが…。著者の陰謀により殺人犯はどちらかしか有り得ない空間に追い込まれたメルカトルだが、強引に収束させたメルカトルの勝利!と勝手に解釈しました。 これほど不条理かつロジックの効いた短編集は初めてです。受け入れがたい人は多いと思いますが私はアリだと思います。 ちなみにこれまでの作品では記号同然だった事件関係者が、本作品では詳しく描かれているので非常に読み易いです。 |