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ミステリの祭典

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方舟

作家 夕木春央
出版日2022年09月
平均点8.37点
書評数46人

No.46 5点 take5
(2026/03/28 07:18登録)
本書に対する私の書評は8点です。
3年前に初読し、他に機会を得ない
そのため8点のままです。

直前お三方の書評がのべ5回されて
1.10.10.10.10点です。
1の方に対するご指摘の意味を込めて
複数回されている書評と見ますが、
結果的に評価操作の矛盾が生じます。

評価には様々な方法があります。
絶対評価、相対評価、個人内評価等
書評に点数をつける行為そのものに
矛盾を感じるきらいはありますが、
絶対評価は不可能という前提までは
私たちは共有できると思います。

ある一人の方のこれまでの読書体験を
相対的に鑑みた結果、点数がつくなら
その相対評価は個人内なら矛盾しない
ただし、他者との相対性に目がいくと、
途端に違和感を感じる。なぜなら本来
自分の中で相対評価していた行為が、
絶対基準に則る行為と混同するからです。

そういう意味では、私に有り得ない
とんでもない評価をする方がいても、
そういう人だとして、その方の他の
書評は私の参考にならないなあという
スタンスがよいのではないでしょうか。

長々と書いてしまい恐縮ですが、
私の今回を含む直接書評でない3つ
5.10.10を除いた書評平均点に
近づくための点を入れてしまいました。

繰り返しますが本書は素晴らしい
私の中では8点の作品です。
かつて飢餓海峡を高評価した後に
別の方に個人的には分からない
低評価を受けて残念に思った経験が
ある故に10点の方の理解はできます。

蛇足になります。複数回書評するのは、
時を経て再読した際に読者論に基づき
評価が変わった場合でしょう。しかし
一人一回と思う方もいらっしゃるでしょう。

No.45 10点 ぴぃち
(2026/03/21 19:47登録)
ペッパー警部さんへ

疑問に思われているようなミステリは、他にもたくさんあります。疑問が解消されないといって、採点を1点にするのは、どうかと思います。考え直すことを望みます。よろしくお願いいたします。

No.44 10点 ぴぃち
(2026/03/21 19:31登録)
極限状況での犯人捜しと倫理的選択を描いた本格ミステリ。
通常の本格ミステリでは、犯人を捕まえることが目的だが、犠牲者にするために犯人を見つける存在という設定が斬新。
叙述トリック、構造の逆手利用、読者の認識そのものを裏切る仕掛けが組み合わされた完成度の高い作品。

No.43 10点 ROM大臣
(2026/03/13 12:24登録)
ペッパー警部さんへ

蟷螂の斧さんから、ペッパー警部さんの疑問についての回答が示されています。
ご確認ください。

ペッパー警部さんの採点のし直しが確認でき次第、削除します。

No.42 10点 ROM大臣
(2026/03/13 12:19登録)
クローズドサークル、タイムリミット、生贄の選択という要素を組み合わせた、完成度の高い本格ミステリ。
閉鎖空間で、友情や恋愛関係も崩れていき、自分が生き残りたい、誰かを犠牲にしたくないという葛藤がリアルに描かれている。どうせ犠牲になるのならば、犯人がなるべきという考えが生まれ、犯人探しが始まる。
倫理的テーマの重さ、伏線回収の爽快感、ラストの衝撃と、単なるパズル型ミステリではなく、人間の心理ドラマとしても読みごたえがある。

No.41 1点 ペッパー警部
(2026/02/20 20:57登録)
 よく練られたストーリーで、多くの人がこの作品を高く評価するのは納得できるところです。ただし、もっとも基本的な点がどうしても理解できないため、採点するとなると低くせざるをえません。
 あまりにも基本的なことなので、どこかに書いてある説明をわたしが読み落としている可能性もあります。その場合には改めて採点し直しますので、どなたか指摘していただきたいと思います。

(以下、ネタバレを含みます。)

 わたしが理解できないのは、「僕」がこの文章をいつ・どのような方法で記したのかという点です。
 素直に読めば「僕」が生き残ったとは考えられないので、「僕」の死後に残された文章を誰かが発見したということになるのでしょう。でも、その文章は「僕」によっていつ・どのような方法で書かれたのでしょうか?

 これだけの分量のある文章を、「タイムリミット」が来てから書いたというのは無理ですから、折を見て少しずつ書き溜めたと考えるのが普通でしょうが、そのような場面は記述されていないように見えます。
 記述方法についても、たとえば洞窟の中に紙やノートがあって、それにペンや鉛筆で書いたと考えることもできますが、水没した原稿を誰かが見つけてくれる保証はありません。スマホを使ってこれだけの長文を作成するのも大変ですし、洞窟の中は電波が届かないため外部に発信ができません。水没したスマホに残っていたデータを誰かが見つけたという設定なのであれば、その旨を記述してほしいところです。
 いっそのこと、AIか何かを使った自動記録装置のようなものを想定してもいいのでしょうが、21世紀初頭の技術水準では現実的ではないと思われます。

 これらが解決しないと、作品の前提が成立していないことになるため、読後感はどうしてもすっきりしません。この問題さえクリアできればなかなかの作品だと思うので、疑問が解消するといいのですが…。

No.40 10点 肥し
(2026/01/20 23:16登録)
驚愕の大どんでん返しと、緻密なロジックが融合したミステリ史に残る名作。
かなり評判になった作品であり、期待値を超えられるか不安だったが想像以上のクオリティだった。生き残るために殺人者を犠牲にするという前代未聞の設定と、犯人を特定する鮮やかな論理、最後に全てが覆される衝撃はどれも一級である。余りにも救いがないオチにも唸らされた。

No.39 10点 バード
(2025/08/06 07:24登録)
(ネタバレあり)

非常に評判が良い本作。前評判が良い作品はハードルが高くなり、結果肩透かしな印象を受ける事も多いですが、本作は国内本で過去一レベルでした。
衝撃のラストで売り出している作品では、ロジックが弱く減点となる作品が多い傾向にあると思っていますが、本書は分かりやすい強みであるラストの反転の他に、ロジック面でも強固な強みを持つというのが、私の感想です。衝撃の反転と優秀なロジック面を両立した本作には、出し惜しみせず満点を贈呈いたします。(国内ミステリでは2作目の10点。)


///以下この作品の持つ強みについて///

<強み1:衝撃の反転>
本作は散々衝撃のラストと謡われているので、叙述トリックを警戒しながら読む人が多いのではないか。その警戒網は破れた網だといわんばかりに、叙述トリックに頼らず件の反転を実現した点がとにかく素晴らしい。
また、本作の反転は理不尽なものではなく、非常にシンプルなある一つの技だけで達成されているのも高評価ポイント。だから、無茶とは思わずに、純粋に仕掛けに感嘆できた。これが一つ目の強みである。


<強み2:作品を魅せるロジック面の工夫>
上記で述べた反転の美しさだけであれば、本書は10点には到達しなかっただろう。加えてロジック面の工夫が作品をより魅力的にしていると私は感じた。本書のロジック面の工夫は、探偵の脆弱なロジックで物語を破綻させないための守りの工夫と、犯人の類を見ない強烈なロジックで作品の個性を強める攻めの工夫の二本柱からなる。

■守りの工夫(探偵の脆弱なロジックに対して)
本書の探偵役が犯人を同定するロジックは一見鋭いようで、冷静に考えると相当に穴があり、後述の例のようにいくらでも別解を考えられてしまう。
別解をつぶしきれていないロジックは本書に限らず他の作品でもよく散見されるが、別解から目をそらさせる工夫がなされるのが普通で、この工夫の出来で物語の説得力が大きく変わる。
本書では命がけの時間制限が存在する舞台設定とすることで、完璧なロジックを作る余裕を登場人物と読者から奪う事に成功している。探偵のロジックが脆弱でも問題ない状況を設定する事で、それが作品の欠点となることを防げているのである。

(探偵の脆弱なロジック例)
容疑者二人から犯人を絞るのにスマホの耐水性に関するロジックを用いたが、たとえ耐水性のスマホを持っていたとしても人によっては水に濡らしたくないという心理が働きうることを考えれば、論理として穴があると言える。

■攻めの工夫(犯人の類を見ない強烈なロジック)
面白いミステリが持つ要素の一つに、その小説特有の強烈な個性がある。衝撃の反転と並ぶ本書の個性は、ロジック(以下合理性)以外の要素を極限までそぎ落とした犯人像ではないだろうか。ロジカルなキャラは本作に限らず相当数挙げる事ができるが、それらキャラのほとんどは、合理性以外の要素とセットで魅力を作るキャラか、感情や偶然を軽視して足元をすくわれる負けキャラ、のどちらかのタイプと思う。つまり本書犯人のような、合理性オンリーで完勝するキャラは結構特異なキャラと感じた。この特異な犯人像が個性となり、作品の魅力upに大きく貢献しただろう。

ちなみに私は読み終わって下記で震えました。↓
エピローグの通信は、犯人が生き残るための行動と関係なく、一見すると行う必要の無い非合理的な行動である。しかし私はこの描写も合理性オンリーな犯人像の描写と捉えた。というのもこのタイミングでは、犯人が生き残るためにやれることは全て終わっており、彼女の中には既に次の問題が設定されている。その問題とは「好きになりかけていた柊一君が私を愛してくれなくてムカつくから、仕返しをするにはどうするのが最も効果的か?」である。この問題に対する解として最後の絶望の通信を始めたのである。

No.38 8点 斎藤警部
(2025/07/23 00:10登録)
そこには深い池がある ・・・ どなた様もやたらに高評価だなと恐れ慄いていたら、そういった次第でしたか。 これはもう、予想外どころの騒ぎではありませんね。

"(前略)だから、犯人が死ぬのが正しい。 ―― なんだか妙である。 この計算は本当に正しいのか?"

冒頭、"数の合わなさ(?)" に先ずはロックオン。 数字の違和感はすぐ解消され、代わりに気持ちのちぐはぐ感が支配を始める。
粗くて軽い文章だなと思っていたが、ある地点で一気に染み渡った絶望も恐怖もリアリティどっぷり。 絶望、恐怖、不快感、疑惑、この期に及んであろうことか恋愛上の嫉妬。 そして何気に芽生える友情、いや、隣人愛。
感情より状況や論理がもたらすサスペンスとスリルの圧が凄くて、本当に息苦しい。


【次パラグラフの '前々半あらすじ' 的なものは、未読の方は飛ばした方が良いかも知れません】

時の弾みで『箱舟』なる地下遺構(地下三階まで)に自然の力で封じ込められた、大学時代からの友人男女3名ずつ6名 + 主人公(男子)の聡明な従兄1名 + 運命を共にする事となった見知らぬ家族3名 = 計10名。
周囲に人の気配は無く、携帯電話も通じない環境の中、地震の影響で入口は「巨大な岩」に塞がれ、地下三階に充満した「水」は地下二階、地下一階とその水位を上げつつある。 計算によれば地下一階まで侵食しつくすのは一週間後。 それまでに「巨大な岩」を除去すれば脱出可能の様だが、岩の位置と、遺構内部で発見された、岩の除去になんとか使えそうな道具とに鑑み、最少でも、道具を操作する人物 "一人" だけは遺構内部に取り残すしかないという事態になりそうだ。 この "一人" を選択し道具の操作をさせるのが遅くなればなるほど "一人" が「水」に呑まれて溺死する可能性は高くなる。
そんな中、まさかの動機不明な殺人事件が起きる。 一方で、犯人を特定し、強制的に "一人" にさせれば良いのでは、との黒光りする期待が高まる。 幸い、遺構内の或る部屋からは「拷問道具」がふんだんに見つかった。  


プロローグ配置の妙は、◯◯◯◯エピローグの存在に吹き飛ばされた。

結末真相、或る意味有名ハードボイルドミステリ(群)のパロディ/オマージュ(合せてパロマージュ?)かと思わなくもない。 具体的に語るとネタバレに繋がるので止しておく。

しかしですね、真相解明に於いてこれほど『動機』が本格推理の核心部分を占領するケースも珍しいのでは? うっかりキチガイ呼ばわりしたくなるけれど、それとは違う、陳腐な言い草だが "斬新" 極まりない、周囲への影響大き過ぎの『動機』。 人間くさいような、アタマ良過ぎるような、冷た過ぎるような、◯◯を重んじ過ぎのような。 振り返れば伏線も強烈だ。 これはもしや、動機が弱い強い云々といった一部の(新)本格ミステリ批判への渾身のパロディ回答なのか?!

あるいはまた、古くはキンダコに象徴される、狭い解決には最適だけど、人が求める本当の解決には無力な「非実力派探偵」の在り様への切実な峰打ち乃至問い掛け、あるいはやはりパロディ、といった意味合いの空気感もちょっと見える。 ひょっとして、バァクリィの後継者を狙っていたりしないのかな。
てか、犯人と探偵(と××)の関係も本当に斬新スーパーソニックシャンペインスーパーノーヴァ過ぎる!!


アリスアリスさんの、さり気なくもいちいち突き突きの文庫解説、いちいち全文最高でした。
パチさんご指摘の様に、登場人物たちが徹底して "可能性" を試さなかったのは、小説の詰めの甘さとして結晶しちゃってる気はします。
また人並由真さんおっしゃる通り、リーダビリティは異様に高いです。 ですがこいつが曲者で、この結末の破壊的衝撃波に心ゆくまで圧倒される為には、敢えて読書スピードを抑えて、読み始めから読み終わりまで(間に他の本を挟むなりして)数日設けた方が良いのではとも感じます。 私はそうしました。

本作、なにしろ結末は手放しで絶賛してしまいますが、小説の最後でいきなりナニがハネ上がった感は強く、中盤に(ロジック展開は良かったのだけど)もっと緻密なスリルが充満していたなら、、 文句なしに9点は越えたと思いますね。

”でも、そうはならなかったから、残念だけど、もういいかなって。”

何より、最後まで残されて、最後には棄てられた、アレの可能性と、それを決めた犯人の心。 怖るべき、考え落ちと後悔と絶望の沼 ・・・・・・・・・ これほどまでに罪深い "エピローグ" が、この世にありますか?

No.37 7点 パチ
(2025/07/14 01:40登録)
読みやすくて刺激のあるエンタメ小説でした。
気になったのは、作品の主題を語るため、最後のどんでん返しのために駆け足で進みすぎて、なんでこの可能性を試さないの?と思ってしまうところが多々ありました。

殺人事件が起きたことで、全員の意識がそこへ行ってしまった……
だけでは片付かないほどの極限状態なので、もっとあらゆる悪あがきはして欲しかったです。
出口を塞ぐ岩をどうにかしてどける方法の試行錯誤、鉄扉を外して岩を削る、岩の横を掘る、など試しもせずに早々に諦めてしまうし、
簡易的な地図と、土砂崩れで封鎖した非常口の不鮮明な映像を見ただけで、地下3階の捜索を断念するのも不自然。
別の道があるかもしれなし、押せば土砂をどかせるかもしれない(もちろん、それをされると物語的には不都合ですが)。
あと、10名もの人が地震のあとに行方不明になっていて、世の中は騒ぎになって捜索はされてるだろうし、救助が来る期待を語る人が一人くらい居てもいいと思う。

別にその結果駄目でした、でも構わないけど、悪あがきしている描写が少なすぎる。
中盤以降にやっと家族の父親が少し悪あがきするくらいしかない。
あまり行動が描写されないトラブルメーカーっぽい男性キャラが1人いますが、こいつが上記で挙げたような行動を一切せずに、何日間も黙って過ごして、物語的に必要なときだけちょこっと描写されるのも、なんとも物足りない。


主題部分の「犯人を犠牲にして助かること」への葛藤はくどいくらいに描かれているわりに、そうせざるを得ないくらいの状況であることへの説得力が不足しているので、ややモヤモヤが残る作品でした。

No.36 9点 よん
(2025/06/20 13:57登録)
地下施設に閉じ込められた9人が、脱出のために1人を犠牲にせざるを得ないという極限状況。「誰を犠牲にするか」という選択は、現代的な「トロッコ問題」の変奏である。この「命の選別」が、社会的価値基準に依存する危険性を露呈している。
本作は、どんでん返しを超え、「読後の倫理的葛藤」こそが真の衝撃となる作品である。人物描写の簡素さや設定の非現実性は、むしろ「思考実験」としての純度を高め、人間の生存本能と倫理の矛盾を浮き彫りにしている。

No.35 10点 タケ3世
(2025/03/03 12:59登録)
柊一は大学時代の友人や
従兄らと共に、
地下建築「方舟」に
閉じ込められる。
地下水が流入し、
水没までのタイムリミットは、
一週間。
誰か一人を犠牲にすれば
脱出できる、その矢先、
殺人事件が発生する。
クローズドサークルの新境地といえる。
謎解きの先にある結末は、
あまりにも衝撃的。
その背後にある犯人と、
ほかの登場人物の心理も
しっかり描かれているので、
余計に胸が締め付けられる。

No.34 10点 JIDAMA
(2024/12/31 11:03登録)
The shock of this ending has never faded and is still lingering in my heart. I absolutely love this bad aftertaste.

No.33 9点 たかだい
(2024/12/15 18:04登録)
やがて水没してしまう地下施設、土砂と岩で塞がれた出入り口、岩を退かすには1人がこの場に残って機械を操作するしか方法がない。そんな状況下、閉じ込められたメンバーの1人が殺された。そして、全員が思う。この犯人を犠牲にするべきだ、と
あらすじを読んだだけで期待値が爆上がりする小説というのも久しぶりでしたが、実際に読んでみて期待値以上の出来栄えに満足でした
タイムリミットが迫る中、犯人探しに奔走し、メンバー同士の不和も起き、終始ハラハラさせられる構図は読んでいて楽しいです
そんな中、ラストまで気が抜けない仕掛けも施されており、読み終えた時の呆然とした感覚たるや…ミステリー小説を読んでいてこんな余韻を味わったのは初めてかもしれません

No.32 7点 nukkam
(2024/09/16 05:54登録)
(ネタバレなしです) 作者にとって第3長編作品となる2022年発表の本書を私は講談社文庫版(2024年)で読みましたが、「各方面から激賞を受ける」と評価されているのも納得の本格派推理小説です。フィナーレでこれほど劇的効果を上げた作品は某国内作家の(やはり第3長編の)1967年発表の本格派推理小説が匹敵するぐらいではないでしょうか。極限状況下という舞台と論理性豊かな謎解きを巧妙に組み合わせています。巻末解説を書いた有栖川有栖でなくとも色々と感想を語りたくなるような作品です。

No.31 8点 いいちこ
(2024/05/31 17:55登録)
すでに各所で散々批評されているとおり、叙述そのものは、文筆家としてあまりにも稚拙・拙劣と言わざるを得ない。
それゆえに、特殊きわまる舞台設定・状況にもかかわらず、緊迫感・リアリティがまるでなく、違和感だけを感じる読書が続く。
一方、終盤で展開される探偵による真相解明は、非常に堅牢かつロジカルで、よくできている。
そして、エピローグで明かされる真相は、近年まれに見る抜群の奇想。
以上のとおり毀誉褒貶が非常に激しい作品だが、これらを総合すると「きわめてよくできたライトノベル」というような印象を受けた。
8点の下位としたい。
この内容で平均的な作家が執筆していれば、さらに高い評価としたことは間違いない

No.30 10点 hsiyehmeipo
(2024/04/14 21:25登録)
エピローグまでは、正直高評価の割に微妙と思ってしまったが、
エピローグの破壊力が抜群すぎた。

No.29 7点 E-BANKER
(2024/01/28 14:04登録)
2022年度の各種ミステリーランキングを席巻した本作。いつ手に取ろうかと熟慮していたわけですが、新年早々手に取ることになるとは・・・(たまたまです)
果たして評判どおりの面白さなのか? どうしてもハードルが上がるのでツライところかもしれませんが・・・
単行本は2022年の発表。

~九人のうち、死んでもいいのは・・・? 死ぬべきなのは誰か・・・? 大学時代の友達と従兄弟と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人の家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。翌日の明け方、地震が発生し扉が岩で塞がれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入し始める。いずれ地下建築は水没する。そんな矢先に殺人が起こった。誰かひとりを犠牲にすれば脱出できる。生贄にはその犯人がなるべきだ。犯人以外の全員がそう思った。タイムリミットまでおよそ一週間。それまでに僕らは犯人を見つけなければいけない~

そういうことか・・・なるほど。
エピローグまで読んで、やっと皆さんのご意見や評価の理由がよく分かりました。
エピローグの前だったら、ロジックのよく効いた出来の良いミステリーくらいの評価だったでしょう。
本作のカギは、ロジックによるフーダニットではなくて、あくまで“ホワイ・ダニット”=動機だったわけだ。
作中の探偵役である翔太郎の口では、動機なんて分からないしどうでもいい、と敢えて言わせておいてのこの反転。

うーん。なかなか思い付けないミステリーの組み立て方かもしれない。
繰り返しになるけれど、エピローグ前ならば何となく収まりの悪さが気になっていた部分が、実は大いなる「欺瞞」につながっていたということだから・・・

こういう本格ミステリーへのアプローチのやり方もあるのかと感心させられた。
普通、動機メインだったら、登場人物の人となりをもうちょっと掘り下げる必要があるだろうけど、本作のプロットだったら、ある意味人物は記号的でいいんだからなあー
いやいや、本当に感心させられた。
新年そうそう感心させられた。←クドイって・・・

No.28 8点 ミステリ初心者
(2023/07/21 18:23登録)
ネタバレをしております。

 かなり評判がいい作品なので、読むのを楽しみにしておりました! 文庫化までとても我慢できませんでしたね!
 まずは解決編前までよみ、そこからは既読の方に少しずつヒントをもらっていろいろ考察する読み方をしました。難易度が高い作品であったため、これは大正解でしたw 隅から隅までこの作品を味わいました

 やや特殊な状況でのクローズドサークルです。謎の地下施設に、水位が上がってきて、タイムリミットがあります。一人を犠牲にしてそれ以外が助かるという人狼ゲームめいた趣向がありました。
 クローズドサークルなので当然読みやすいですが、さらに極限まで無駄がないです。ほぼすべての文が犯人当てあるいはドンデン返しにつながっております。なんとも侘び寂びを感じますねw(ちょっと違うか…?)。その為、解決編前まで一気に読み終わることができました。
 また、最近の推理小説によくある、漫画的な容姿と性格をした超人的能力の美少女が事件を解決!なんてこともなく、文章はあくまで純粋な推理小説です。ラブロマンス的な表現も最小限でした(これは、もうすこしあったほうがラストが映えたかもしれませんがw)。漫画的キャラクターやギャグっぽいのも嫌いではないですがw

 推理小説的要素について。
 有栖川有栖さんの帯の文の通り、論理的な犯人当てとドンデン返しが楽しめます。本来はあまり両立しない印象のあるこの二つですが、ドンデン返しが犯人当てを全く邪魔しておりません。どちらも高い水準であり、理想の推理小説と言えます。
 私は、ヒントをもらいながらでしたが、犯人当てについては当てる事ができました。不満もあるのですが後記でw しかし、どれだけヒントをもらっても、ドンデン返しの展開だけは予想できませんでした;; 頭のどこかで、無意識に、地下三階を通って非常口までダイビングするのは不可能と思い込んでいたようです;; なんというアホでしょうか…;;

 不満点について
 まず、論理的犯人当ては難易度が高すぎます! この本全体として、重要な部分はもっと重要らしくわかりやすく書いてほしかったですw 何でもないような一文が、のちにとても重要だったりしますね…。ウェスなんて、欠片がすこし扉に付着するヒントぐらいあってもいいのにw
 さやかが部屋変更しましたが、あれって小説的にははじめから別々の部屋で寝ていた方が良くないですか? 犯人はさやかの変更後の寝室を知っていたようですが、私は知らないのではないか?知っている人物のほうが犯行が楽なんじゃないかとめちゃくちゃ考えましたw
 あとはまあ、若干の胸糞というか、犯人だけが生き残る作品は心がもやもやしちゃいますねw

 総じて、最近の質の高い推理小説のトレンド?の犯人当てとドンデン返しを両立した作品の中でもトップクラスに質の良い作品であり、かつ、無駄なキャラ付けや話がでてこない本格推理小説の正統進化系を見た気がしますw ドンデン返し~っときくと、安易でどこかでみたような叙述トリックがちょっとついているだけの作品もたたありますが、この作品はチープな叙述トリックに頼らずに真っ向から驚かせてくれました。叙述トリックは大好きですけどねw

No.27 9点 mozart
(2023/06/21 18:00登録)
率直に感服しました。タイムリミットのあるクローズドサークルでの連続殺人という「ど直球」のミステリー展開で目が離せなくなり、最後の反転で度肝を抜かれそういうことだったのかとカタルシスに至るという実にまっとうな感想でした。

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