皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
Tetchyさん |
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平均点: 6.73点 | 書評数: 1631件 |
No.331 | 3点 | パンチとジュディ- カーター・ディクスン | 2008/08/30 18:56 |
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題名の「パンチとジュディ」はドタバタ喜劇の人形劇の名前に由来する。つまり物語のメインの設定である“L”の正体探しは実は実体のない事件だったということを現している。
つまり、今回のカーがこの作品でやりたかった仕掛けは物語の設定自体がトリックだったというものだが、それがために色々盛り込みすぎて、つくり過ぎたという感が否めない。 作中で扱われている遠距離で起きた2つのストリキニーネによる毒殺の謎が非常に魅力的なのに、これがなんと真相としては単に物語の添え物に過ぎないというのに驚いた。 作品の力の入れどころを間違えているようにしか思えないんだけど・・・。 |
No.330 | 9点 | 白い僧院の殺人- カーター・ディクスン | 2008/08/29 20:39 |
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久々に本を読んで「あっ!」と声を上げてしまった。
各種推理クイズ本にもネタとして挙げられている本書のトリックだが、そんなことはすっかり忘れてしまっていて、18章の最後の一行を読んだときには霧が晴れる思いがした。 しかし、訳が古すぎる。名作なのに勿体無い。 点数はこの驚きに敬意を表して、ちょっとオマケした。 |
No.329 | 8点 | 遠きに目ありて- 天藤真 | 2008/08/28 20:29 |
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身体障害者が主人公というミステリだが、当時友人の仁木悦子氏に触発して書かれたらしい。
そして80年代当時、社会が身障者に対して決して優しくない(雇用問題やノー・バリヤフリー)ことを声高に語るのではなく、あくまでソフトにミステリに織り込んでいる。 しかしそんなことを差っ引いても十分面白い連作短編集だ。 手元に本がないので、題名が解らないが、山に住んでいる乞食のような男が証言者として出てくる1編が妙に印象に残っている。 何故だか解らないのだけど・・・。 |
No.328 | 8点 | Xの悲劇- エラリイ・クイーン | 2008/08/27 18:55 |
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正直、犯人の名前を読んだ時は、最初拒絶反応を起こした。
ちょっとありえないだろう、と。 しかし、後の推理で明かされるロジックの素晴らしい事! 3つの殺人が描かれているが、謎解きのロジックは2番目の殺人が好きだ。 この作品への点数はそれが大半を占める。 あとタイトルの『Xの悲劇』もきちんと意味があって付けられているのが最後の最後で解る。 特段、すごいものではないが、記憶に残るエピソードである。 |
No.327 | 7点 | プレーグ・コートの殺人- カーター・ディクスン | 2008/08/26 21:48 |
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この作品はさすがに世評高いだけあって、楽しめた。
ただやはりあのトリックはかなりアクロバティックで無理を感じた。 でも明かされる人間関係の複雑さはなかなかに面白い。 事件の裏側にこれほど込み入った役割分担があったのには驚いた。 その辺の微妙なバランス感覚を愉しんだ。 |
No.326 | 2点 | 弓弦城殺人事件- カーター・ディクスン | 2008/08/25 19:49 |
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カーの、無駄に長いという悪いくせが出た作品。
屋敷の見取り図はせめて欲しい。 登場人物の配置が全く解らん。 |
No.325 | 5点 | 赤後家の殺人- カーター・ディクスン | 2008/08/24 13:54 |
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人を殺す部屋とか昔の毒針仕掛け箱の話などガジェットは非常に面白いのだが、いかんせん冗長すぎた。シンプルなのに、犯人が意外なために犯行方法が複雑すぎて、犯人を犯人にするがためにこじつけが過ぎるような印象を受けた。
第1の殺人ベンダーの毒殺方法は非常に面白く、これぞカー!といった感じだが、やはり犯人の協力者であるベンダーがトリックを労してまで「後家の部屋」に入ろうとした根拠が強引であるという思いが拭えない。過去に過ごした4人が全て絶命しているという部屋にいくら友人の頼みとはいえ、自ら進んで入ろうとするだろうか? 拍子抜けしたのが、H・M卿が最後に真相を話すにいたって、どの辺で犯人がアーノルドであると解ったという問いに、初めて会った時にと答えた事。それだったら第2の殺人を食い止められただろう!! |
No.324 | 7点 | 第三の銃弾<完全版>- カーター・ディクスン | 2008/08/23 21:40 |
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登場人物たちがそれぞれ何らかの嘘をついていることで殺人計画が予想外の方向転換を余儀なくされた結果、2発の銃声に3種類の銃弾が発生するという奇妙な事件を招く。
この、どうにもすわりが悪い状況設定を最後に論理で解き明かしていくのは素晴らしい。 今回の作品の特徴として、新たな事実が発覚するにつれ、また新たな謎が生まれる畳み掛け方が絶妙だった。 銃声2発に対し、犯人から発射された銃弾は1発→現場で発見された別の銃の意外な持ち主→遺体から摘出された銃弾がその2丁の拳銃のどれでもない第3の銃弾だった→第3の銃の意外な発見場所→奇妙な窓の足跡→第2の殺人の発生、と謎また謎の連続である。 犯人も意外で、云う事ないのだが、窓の足跡については蛇足であると感じた。他者へ疑惑の目を向けるための工作だったが、開かない窓から脱出する足跡という謎は魅力的だったものの、その存在を十分に納得させるだけの論理性は薄弱だと感じた。 これさえなければ私の中でカーの代表作となる作品になっただろう。 |
No.323 | 7点 | エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン | 2008/08/22 15:20 |
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アメリカの東半分をエラリーが犯人を追って駆け回る云わば「動のクイーン」が本書のウリとなるだろうか。
T型の十字架に磔にされた首のないT型の死体という今までにないショッキングな見立て殺人が、本作の、シリーズから一歩抜け出ようとする作者の強い意志を感じるのはよいとしても、首なし死体の首のない理由がごく単純だったのが、ちょっと残念。 しかし今回も挑戦は敗北。あの太字の一行に「参った!」と唸らされた。それでもやはり不満はある。 なぜトマス・ブラッドは犯人とチェッカーをやるために、家族のみならず、執事ら使用人らも含めて人払いしたのか? またスティヴン・メガラの殺害について、桟橋にあったボートを盗んで犯行に及んだ事までは解っているが、どうやってその桟橋まで犯人は侵入できたのか?まだ警察はブラッドウッド界隈を見張っており、メガラが犯人をおびき寄せるべく、警察に警護を解くようにいった事実は、この犯人は知りようがないではないか。つまりこの犯人はそれまでブラッドウッドのどこに潜んでいたのかが全然解らない。 この辺が曖昧なままで終わってしまった。それだけが残念! |
No.322 | 8点 | ギリシャ棺の秘密- エラリイ・クイーン | 2008/08/21 17:40 |
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今のところ、クイーンの国名シリーズではこれがベスト。
トライアル&エラーがテーマでシリーズ中最長だが、それが作者の自信を窺わせるし、確かに面白かった。 あと、エラリーが大学卒まもないせいか、妙にチャラい(笑)。 今回も内容的に色々な不満があるが、今回は鮮やかに騙されたので良しとしよう。 |
No.321 | 7点 | オランダ靴の秘密- エラリイ・クイーン | 2008/08/20 13:44 |
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本作においては最後犯人を2人まで絞り込む事ができたが、最後の最後で間違えてしまった!
ババ抜きで2枚残ったカードを眼の前に提示され、最後にババを引いてしまった、そんな感じだ。 しかし今回は納得行きます。天晴、クイーン! しかし、犯行に使った白衣、ズボンならびに靴、そして決定的なのはマスクまで残しているのだから、そこから唾液や髪の毛を採取し、鑑定すれば犯人はロジックを駆使せずとも絞り込めると思うのに、今回もそういった動きは皆無。 つまりクイーンって、本当にロジックで解き明かすミステリなのだなぁ。 もうそういう物なんだと思って、次回から読もう。 |
No.320 | 7点 | 孤独の歌声- 天童荒太 | 2008/08/20 00:04 |
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連続するコンビニ強盗、連続する若い女性の死体遺棄事件。
これらの事件を、捜査する朝山風季とシンガーを目指す芳川潤平、そして完璧な家族を目指すサイコキラーの謎の男の3人を軸に話は展開する。 後に『家族狩り』、畢生の傑作『永遠の仔』を物する作者の、天童荒太名義でのデビュー作(文庫解説によればその前に別名義でデビューしているらしい)。 文庫改稿版で読んだので、発表当時とはいささか文体が改めてられているようだが、この作品から既に読者の心まで響く信条描写力が備わっている。 しかし、展開は非常によどみないが、どうも2時間サスペンスドラマ的な感じと、どこかから借りてきたようなチープな感じが拭えない。 コンビニを舞台にした日常性、つまり誰しもが経験する恐怖を扱った手腕は買えるんだけど。 |
No.319 | 6点 | 暁の死線- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/18 20:16 |
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アイリッシュ作品の中でも人気の高い本書は『幻の女』同様、タイムリミットサスペンス物だが、私は世評ほど面白いとは思わなかった。
別に殺人の容疑を晴らすのはクィンの指紋を消せばいいのであって、犯人を捜す必要はないと思うのだがどうだろう? この導入部にどうも引っ掛かりが感じて十分楽しめなかった。 内容的にはまたも連作短編を読んでいるような作風で、申し分ない面白さがあるとは思うのだが・・・。 |
No.318 | 8点 | 幻の女- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/17 14:34 |
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有名な冒頭の一文に代表されるように、アイリッシュの美文に酔うが如く、物語を味わった。
主人公の無実を晴らす為に自身のみならず、親友まで協力して証拠を探すが、幾度となく徒労に終わる。 それらはヴァリエーションに富んでおり、あたかも連作短編のようだ。 そして最後の衝撃の真相に、読中引っかかっていた不自然さが腑に落ちる気がした。 しかし後日読み返すと、この真相にも諸手を挙げて賛同しかねる箇所があったので、評価はさらに下げた。 また、私的な感想を云えば、最後に幻の女の正体が判る事は、蛇足だったのではないだろうか。幻の女は最後の最後まで幻の女であって欲しかった。 |
No.317 | 6点 | フランス白粉の秘密- エラリイ・クイーン | 2008/08/16 20:53 |
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読者への挑戦状以降、怒濤の如く繰り広げられるエラリーの論証を読んだばかりで、しかも想定していた犯人と違っていたこともあり、正直戸惑っている。
以下、グチにも似た感想(思いっきりネタバレ)。 正直、私は犯人はゾルンだと思った。 被害者であるフレンチ夫人は口紅を塗りかけた途中で殺されていたからだ。しかも死亡推定時刻は深夜0時。そんな就寝するような時間に口紅を塗るならば、それは恋人、もしくは浮気相手に会う、もしくはお客に会うぐらいしかないからだ。 そして深夜に会うとなればやはり恋仲だろう。そしてゾルンはフレンチ夫人と密通しているという事実がある。 そしてゾルンは重役の1人だからアパートに出入りしていても何のおかしくもない。明朝の会議に出席するのに、百貨店の中から出社すればいいだけのことである。 とまあ、こんな感じに推理を組み立てた。 しかし、今回の真相は違った。 フレンチ夫人は娘の麻薬常習を直すため、あえて麻薬組織の男と会って娘に一切関わるなと忠告して、殺されたというものだ。 そしてこれを立証するのに、麻薬組織が取引場所の連絡として利用した本の件がある。 これはフレンチ百貨店内の書店の主任が麻薬密売組織の手先の1人であり、その連絡方法として曜日の頭の2文字と同じ綴りを持つ著者の書物の背に鉛筆で取引場所を書いて、他の手先がそれを探し出して、その本を買って情報を手に入れるというシステム(このシステムにも疑問が残る。後で述べる)というもので、それをフレンチの秘書のウィーバーが見つけ、副本をこっそりと持ち去り、フレンチのデスクに置いていたという物だ。そしてそれは5週間に渡る連絡先であり、いつもこの部屋に出入りする人物ならば、それが次回の麻薬取引について致命的であることに気付くだろうから、いつも出入りしている重役連中、秘書は容疑者から除外されるというもの。 これが全然納得行かない。 フレンチが置いていた本は、夫人が殺されて血痕が付いたために処分されたのではなかったのか? そのために代わりの本としてちぐはぐな本が置かれ、それが件の麻薬取引に使われた本だったのではないか? そして今回私が推理した点でどうしても噛み合わなかったのがこの点。 犯人が血痕の付いた本を処分しているのに敢えて麻薬取引連絡用の本を代用して置いたのかが全くわからなかった。どこか私は読み違えているのだろうか? 血痕のためにフェルトを交換したブックエンドに支えられていた本とこれは別物なのか? つまり今回の犯人追及は消去法によって単純にそれら色んな状況を考慮して容疑者の対象から外れた者で残った者は誰か?というだけに過ぎない。 そしてそれを決定付けるのが題名にもなっている「白粉」すなわち指紋検出用の白い粉である。 これなんかそれこそ百貨店でも手に入るのではないだろうか? そんなに特別な物なのだろうか? かてて加えて、捜査方法についても2,3つ疑問がある。 まず、現場に残された煙草の吸殻を見て、エラリーがその特徴的な銘柄から、所有者であるバーニスが現場にいたと示唆する点。 これは現在ならば、早計という物だろう。DNA鑑定はなかったにしろ、唾液から血液鑑定をして人物を特定するのがセオリーだ。 次に鑑識による指紋の調査において、現場にクイーン警視の指紋が残されていたと云うシーンだ。 これは明らかにおかしいのでは? 指紋による人物の特定方法が確立されていたのならば、捜査官は自分の指紋を現場につけないよう手袋をするが常識である。これは犯罪を題材に扱いながら、クイーンが、実際の警察の捜査状況を全く知らなかったのではないだろうか?それともこれが当時は常識だった? 3番目は殺害場所の特定方法について。 今回の被害者は致命傷である部位が、損傷したら多量の出血を伴うのに、現場には血痕がさほど残っていなかった事で、他の場所で殺されて、発見現場に遺棄されたことになっている。殺害現場として目星をつけたアパートに行くのだが、全くルミノール反応を使った捜査が行われないのだ。 この辺の事情に関してはクイーンの作品を読むのにこだわらない方がいいのか? 読んでいると単純に事実から真実を導く論理的解決のみが行われており、通常捜査のセオリーが全く出てこないのだが。 そして腑に落ちないのは、本を麻薬取引の連絡として利用した点。上にも述べたがあのシステムはちょっと無理があると思う。 情報交換として利用された本はジャンルも版型も違う。百貨店の広大な本屋の中でただ曜日の頭文字と同じという手掛かりだけで1冊の本を探し出すというのはかなり骨だし、相手が見つける前に誰かがそれを買ってしまう恐れがあるだろう。 作者は連絡を取る前日の夜に情報記入をしており、他の誰かが買って持っていかれるのにも慎重を期していると書いていたが、素直に頷けない。1930年当時は現代ほど本はなかっただろうが、それを差し引いても、これは帰納法に基づく推理の典型的なミスではないか? 主人公同様、蒐書家の作者が本を使ってこんな犯罪を考えましたと、披露したかったようにしか思えなかった。 とまあ、ぐだぐだと長く書いたが結局は悔しさのあまりのグチにしか過ぎないのだろうな。 次作にてリベンジ! |
No.316 | 8点 | ローマ帽子の秘密- エラリイ・クイーン | 2008/08/15 13:27 |
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このような古典海外本格ミステリをこの年になって読むことに躊躇いがあったが、いやいや面白かった。
国名シリーズ第1作なので、恐らく事件・話自体はかなりシンプルな物であるだろう。 しかし純然たる読者との知的ゲームとしては十分に堪能できた。 おまけに犯人、その他の謎について当てることが出来たのも点数に加味されている。 |
No.315 | 4点 | トレント最後の事件- E・C・ベントリー | 2008/08/14 12:05 |
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論理一辺倒という左脳的文学の本格ミステリに恋愛という情の右脳的要素を盛り込んだことで歴史的の価値のある本書。
しかし21世紀の今、何かを期待して読むと、かなり辛いものがある。 登場人物の微妙な綾まで書かれているので、私にしてみれば、一つ一つの事実を拾うより、行間を読むことで犯人が解ってしまった。 |
No.314 | 8点 | ニューヨーク・ブルース- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/11 22:50 |
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アイリッシュ短編集もこれで最後。
標準作が揃った短編集だという印象だったが、最後の最後で突出した作品に出逢えた。 「さらばニューヨーク」、「ハミングバード帰る」、「送って行くよ、キャスリーン」の3編が秀逸。 「さらば~」は前の「リンゴふたつ」をアレンジしたような作品だが、アイリッシュには珍しく、最後の結末の処理が読者の想像を引き立てる。 「ハミングバード~」はたった15ページなのに物語は濃密。最後が哀しい。 「送っていくよ、~」は名作『幻の女』をあえて捻らずに語った正統派作品とでも云おうか。登場人物それぞれが抱える悲哀や信条が胸を打つし、何より題名が読後に心を打つ。 手に入りにくいアイリッシュ諸作品。埋もれさせるには勿体無い。 どうにかならないだろうか、各出版社。 |
No.313 | 7点 | わたしが死んだ夜(創元文庫版)- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/10 19:39 |
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本作のような短編集を読むとアイリッシュはサスペンス・スリラーの手法を用いて都会小説を書いてきたという思いがする。
「高架殺人」は高層ビルひしめく都市の間を縫うように走る高架列車で起きた殺人。 「わたしが死んだ夜」は都会にしか存在しない浮浪者が殺人に関与しているし、「リンゴひとつ」は1つのリンゴが都会で生きていくのに明日の食事さえも摂れるかわからない人たちの手を次々と渡っていく。 「コカイン」も都会の膿が生んだ麻薬が引き起こす事件。 「葬式」は冒頭の買い物から逃亡劇へと移るシーンで路地裏の複雑さを描いているし、「妻が消えた日」も群衆の中の孤独を描く。 本作でのベストは「リンゴひとつ」と「日暮れに処刑の太鼓が鳴る」の2編。 そして「死ぬには惜しい日」は評論家の豊崎氏が教科書に乗せて欲しい短編だと云っていた作品。 確かに意外な結末は「あっ!」となるが、もしそうなると、中にはトラウマになる学生も出てくるのではないだろうか。 |
No.312 | 7点 | シルエット- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/09 19:19 |
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アイリッシュ短編集。
本作では「秘密」がベスト。かつて殺人を犯したことのある夫の上司が死ぬという事件が起きて・・・というベタな展開だが、やはりこの作家、物語の肉付けが巧い!夫が失業して得たバイトが半身裸になって商品の宣伝をドラッグストアのショーウィンドウで実演するもの。それを見て妻が涙するなんて、滑稽なんだけど、泣かせます。 準ベストは「生ける者の墓」。生きながら埋葬され、そこでわずかばかりの酸素で死を克服する団体という設定がまずすごい。なんか本当にありそうである。 他の作品も設定はどこかで見たことあるものの、アイリッシュの手にかかると一味変った作品に仕上がっているのがよく解る。 名シェフの技をご賞味あれ。 |