皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
Tetchyさん |
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平均点: 6.74点 | 書評数: 1617件 |
No.317 | 6点 | フランス白粉の秘密- エラリイ・クイーン | 2008/08/16 20:53 |
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読者への挑戦状以降、怒濤の如く繰り広げられるエラリーの論証を読んだばかりで、しかも想定していた犯人と違っていたこともあり、正直戸惑っている。
以下、グチにも似た感想(思いっきりネタバレ)。 正直、私は犯人はゾルンだと思った。 被害者であるフレンチ夫人は口紅を塗りかけた途中で殺されていたからだ。しかも死亡推定時刻は深夜0時。そんな就寝するような時間に口紅を塗るならば、それは恋人、もしくは浮気相手に会う、もしくはお客に会うぐらいしかないからだ。 そして深夜に会うとなればやはり恋仲だろう。そしてゾルンはフレンチ夫人と密通しているという事実がある。 そしてゾルンは重役の1人だからアパートに出入りしていても何のおかしくもない。明朝の会議に出席するのに、百貨店の中から出社すればいいだけのことである。 とまあ、こんな感じに推理を組み立てた。 しかし、今回の真相は違った。 フレンチ夫人は娘の麻薬常習を直すため、あえて麻薬組織の男と会って娘に一切関わるなと忠告して、殺されたというものだ。 そしてこれを立証するのに、麻薬組織が取引場所の連絡として利用した本の件がある。 これはフレンチ百貨店内の書店の主任が麻薬密売組織の手先の1人であり、その連絡方法として曜日の頭の2文字と同じ綴りを持つ著者の書物の背に鉛筆で取引場所を書いて、他の手先がそれを探し出して、その本を買って情報を手に入れるというシステム(このシステムにも疑問が残る。後で述べる)というもので、それをフレンチの秘書のウィーバーが見つけ、副本をこっそりと持ち去り、フレンチのデスクに置いていたという物だ。そしてそれは5週間に渡る連絡先であり、いつもこの部屋に出入りする人物ならば、それが次回の麻薬取引について致命的であることに気付くだろうから、いつも出入りしている重役連中、秘書は容疑者から除外されるというもの。 これが全然納得行かない。 フレンチが置いていた本は、夫人が殺されて血痕が付いたために処分されたのではなかったのか? そのために代わりの本としてちぐはぐな本が置かれ、それが件の麻薬取引に使われた本だったのではないか? そして今回私が推理した点でどうしても噛み合わなかったのがこの点。 犯人が血痕の付いた本を処分しているのに敢えて麻薬取引連絡用の本を代用して置いたのかが全くわからなかった。どこか私は読み違えているのだろうか? 血痕のためにフェルトを交換したブックエンドに支えられていた本とこれは別物なのか? つまり今回の犯人追及は消去法によって単純にそれら色んな状況を考慮して容疑者の対象から外れた者で残った者は誰か?というだけに過ぎない。 そしてそれを決定付けるのが題名にもなっている「白粉」すなわち指紋検出用の白い粉である。 これなんかそれこそ百貨店でも手に入るのではないだろうか? そんなに特別な物なのだろうか? かてて加えて、捜査方法についても2,3つ疑問がある。 まず、現場に残された煙草の吸殻を見て、エラリーがその特徴的な銘柄から、所有者であるバーニスが現場にいたと示唆する点。 これは現在ならば、早計という物だろう。DNA鑑定はなかったにしろ、唾液から血液鑑定をして人物を特定するのがセオリーだ。 次に鑑識による指紋の調査において、現場にクイーン警視の指紋が残されていたと云うシーンだ。 これは明らかにおかしいのでは? 指紋による人物の特定方法が確立されていたのならば、捜査官は自分の指紋を現場につけないよう手袋をするが常識である。これは犯罪を題材に扱いながら、クイーンが、実際の警察の捜査状況を全く知らなかったのではないだろうか?それともこれが当時は常識だった? 3番目は殺害場所の特定方法について。 今回の被害者は致命傷である部位が、損傷したら多量の出血を伴うのに、現場には血痕がさほど残っていなかった事で、他の場所で殺されて、発見現場に遺棄されたことになっている。殺害現場として目星をつけたアパートに行くのだが、全くルミノール反応を使った捜査が行われないのだ。 この辺の事情に関してはクイーンの作品を読むのにこだわらない方がいいのか? 読んでいると単純に事実から真実を導く論理的解決のみが行われており、通常捜査のセオリーが全く出てこないのだが。 そして腑に落ちないのは、本を麻薬取引の連絡として利用した点。上にも述べたがあのシステムはちょっと無理があると思う。 情報交換として利用された本はジャンルも版型も違う。百貨店の広大な本屋の中でただ曜日の頭文字と同じという手掛かりだけで1冊の本を探し出すというのはかなり骨だし、相手が見つける前に誰かがそれを買ってしまう恐れがあるだろう。 作者は連絡を取る前日の夜に情報記入をしており、他の誰かが買って持っていかれるのにも慎重を期していると書いていたが、素直に頷けない。1930年当時は現代ほど本はなかっただろうが、それを差し引いても、これは帰納法に基づく推理の典型的なミスではないか? 主人公同様、蒐書家の作者が本を使ってこんな犯罪を考えましたと、披露したかったようにしか思えなかった。 とまあ、ぐだぐだと長く書いたが結局は悔しさのあまりのグチにしか過ぎないのだろうな。 次作にてリベンジ! |
No.316 | 8点 | ローマ帽子の秘密- エラリイ・クイーン | 2008/08/15 13:27 |
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このような古典海外本格ミステリをこの年になって読むことに躊躇いがあったが、いやいや面白かった。
国名シリーズ第1作なので、恐らく事件・話自体はかなりシンプルな物であるだろう。 しかし純然たる読者との知的ゲームとしては十分に堪能できた。 おまけに犯人、その他の謎について当てることが出来たのも点数に加味されている。 |
No.315 | 4点 | トレント最後の事件- E・C・ベントリー | 2008/08/14 12:05 |
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論理一辺倒という左脳的文学の本格ミステリに恋愛という情の右脳的要素を盛り込んだことで歴史的の価値のある本書。
しかし21世紀の今、何かを期待して読むと、かなり辛いものがある。 登場人物の微妙な綾まで書かれているので、私にしてみれば、一つ一つの事実を拾うより、行間を読むことで犯人が解ってしまった。 |
No.314 | 8点 | ニューヨーク・ブルース- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/11 22:50 |
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アイリッシュ短編集もこれで最後。
標準作が揃った短編集だという印象だったが、最後の最後で突出した作品に出逢えた。 「さらばニューヨーク」、「ハミングバード帰る」、「送って行くよ、キャスリーン」の3編が秀逸。 「さらば~」は前の「リンゴふたつ」をアレンジしたような作品だが、アイリッシュには珍しく、最後の結末の処理が読者の想像を引き立てる。 「ハミングバード~」はたった15ページなのに物語は濃密。最後が哀しい。 「送っていくよ、~」は名作『幻の女』をあえて捻らずに語った正統派作品とでも云おうか。登場人物それぞれが抱える悲哀や信条が胸を打つし、何より題名が読後に心を打つ。 手に入りにくいアイリッシュ諸作品。埋もれさせるには勿体無い。 どうにかならないだろうか、各出版社。 |
No.313 | 7点 | わたしが死んだ夜(創元文庫版)- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/10 19:39 |
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本作のような短編集を読むとアイリッシュはサスペンス・スリラーの手法を用いて都会小説を書いてきたという思いがする。
「高架殺人」は高層ビルひしめく都市の間を縫うように走る高架列車で起きた殺人。 「わたしが死んだ夜」は都会にしか存在しない浮浪者が殺人に関与しているし、「リンゴひとつ」は1つのリンゴが都会で生きていくのに明日の食事さえも摂れるかわからない人たちの手を次々と渡っていく。 「コカイン」も都会の膿が生んだ麻薬が引き起こす事件。 「葬式」は冒頭の買い物から逃亡劇へと移るシーンで路地裏の複雑さを描いているし、「妻が消えた日」も群衆の中の孤独を描く。 本作でのベストは「リンゴひとつ」と「日暮れに処刑の太鼓が鳴る」の2編。 そして「死ぬには惜しい日」は評論家の豊崎氏が教科書に乗せて欲しい短編だと云っていた作品。 確かに意外な結末は「あっ!」となるが、もしそうなると、中にはトラウマになる学生も出てくるのではないだろうか。 |
No.312 | 7点 | シルエット- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/09 19:19 |
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アイリッシュ短編集。
本作では「秘密」がベスト。かつて殺人を犯したことのある夫の上司が死ぬという事件が起きて・・・というベタな展開だが、やはりこの作家、物語の肉付けが巧い!夫が失業して得たバイトが半身裸になって商品の宣伝をドラッグストアのショーウィンドウで実演するもの。それを見て妻が涙するなんて、滑稽なんだけど、泣かせます。 準ベストは「生ける者の墓」。生きながら埋葬され、そこでわずかばかりの酸素で死を克服する団体という設定がまずすごい。なんか本当にありそうである。 他の作品も設定はどこかで見たことあるものの、アイリッシュの手にかかると一味変った作品に仕上がっているのがよく解る。 名シェフの技をご賞味あれ。 |
No.311 | 7点 | 裏窓- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/08 23:04 |
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表題作はヒッチコックの映画であまりにも有名だが、本編を読むとヒッチコックが大胆にアレンジを加えて映画化したのが解る。
いやあ、この作品を映画化するとは!とビックリした。 この表題作の他、「いつかきた道」、「じっと見ている目」、「ただならぬ部屋」がよかった。 「ただならぬ部屋」はアイリッシュには珍しく密室殺人を扱った本格ミステリとなっている。 本作品集はそれぞれ物語に起伏があり、読み応えがあったが、もう少し抜きん出た作品が欲しかった。 |
No.310 | 7点 | 死の第三ラウンド- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/07 20:18 |
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アイリッシュは本当にアイデアの宝庫だなとこれを読めば解る。
表題作はボクシング試合中の射殺事件を扱ったもので、映画『スネーク・アイズ』を想起させる。 「消えた花嫁」はよくある失踪物だが、名作『幻の女』の元ネタのような作品。 本格ミステリ色強い「検視」と「街では殺人という」。 しかしこの中では「墓とダイヤモンド」が面白い。冒頭の老女の孤独さがそれ1つで短編となっており、そこから悪漢たちのクライムノヴェル、そしてアイリッシュ特有のアイロニー溢れる結末と鮮やか。 ドラマや映画のネタにしたい話をお探しの方は読んでみては? |
No.309 | 8点 | 晩餐後の物語- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/06 19:05 |
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元々長編自体が連作短編集のような作りのこの作者だから、短編集そのものはお手の物だと思っていたら、やはりその通りだった。
8作品のうち平凡な設定であるのは「盛装した死体」と「ヨシワラ殺人事件」の2作品のみ。 前者はアイリッシュには珍しい本格ミステリで借金の返済に困った男が仕掛ける完全犯罪を扱っている。倒叙物で刑事が執拗に犯人を追い詰めるさまはアイリッシュの長編にも通ずるものがある。 後者は日本に停泊中に吉原を訪れた水兵が巻き込まれる殺人事件。恐らく作者が日本を訪れたときに強く印象が残ったのであろう、なかなかに細かく日本が描写されている。しかしところどころ勘違いしている内容もある(番犬の代わりにコオロギを買っているなんていうのは聞いたことが無いし、結末の切腹も西洋人にとってやっぱり日本といえばこれになるのかとがっかりした)。 その他6編では表題作「晩餐後の物語」は7人の男が乗り合わせたエレベーターが事故で地下まで墜落し、その中で起きた殺人事件についての復讐譚という内容。最後のどんでん返しもなかなかなのだが、エレベーターが落ちるときはバウンドするというのと乗客は即死しないという点が引っかかった。 次の「遺贈」は夜、疾走するスポーツカーのカージャックという内容。展開が読めたが、死体が何者かを明らかにしないのが逆に新鮮。 「階下で待ってて」はいつも階下で待っている男という設定が都会の一シーンを切り取る彼らしい作品。 次の「金髪ごろし」の地下鉄の入り口にある新聞売り場を中心に繰り広げられる形もその例に漏れない。 「射撃の名手」の詐欺師が陥る犯罪事件も短編にしては濃厚な内容である。アイリッシュらしい強引な設定ながらも最後の一行にも気を配るあたり、余裕が感じられた。 「三文作家」は原稿を落とした作家の代わりに作品を仕上げることになった作家の話。これははっきり云って最後のオチからしてミステリではない。恐らく作者自身の経験から生まれた作品だろう。 今回の中でのベストは「金髪ごろし」に尽きる。それぞれの客に金髪美女殺されるという見出しの新聞に対するそれぞれの事情。最後に出てくる実業家が洩らす一言は果たして真実なのか?都会派小説というか、群衆小説というか都会の一角で新聞売り場を中心に描いた小説はアイリッシュの洒落た感覚で物語を紡ぎだす。新聞を買うそれぞれの客のドラマが描かれる。題名の金髪ごろしはこれらの人間たちを描写する1つの因子に過ぎないところがいい。だからこそ逆に最後の言葉が余韻を残す。事件は解決されないながらも最も印象の残る作品となった。 次点では「階下で待ってて」か。純な日常の出来事がやがて国際的スパイ組織の陰謀と繋がっていくというのは派手派手しいが、短編でここまで読ませることに賛辞を送りたい。題名もなかなかである。 上に書いたように、それぞれ趣向を凝らした作品群。一気に読むのが勿体無い、そんな気にさせてくれた。 |
No.308 | 4点 | 夜は千の目を持つ- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/05 20:28 |
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通常アイリッシュ=ウールリッチの物語はその設定の特殊さえ、普通に考えれば荒唐無稽な感じがするが、それを詩のような美文、人物描写で物語を紡ぐ事で自然にその設定に溶け込めているが、今回はその魔法が効かなかった。
“予言を阻止すべく警察が捜査・護衛に当たる”。 この作品の要とも云うべき設定で実は私はかなり引いてしまった。 通常、警察とは事件が起きてから捜査に乗り出すものである。 ここのリアリティの無さでこの小説の内容には没頭する興味を80%は失ってしまった。 |
No.307 | 7点 | 黒いアリバイ- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/04 20:47 |
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逃げた黒豹が次々と人間を襲う。
こう書くと単なるパニック小説のように思えるが、さすがはアイリッシュ、そんな風には書かない。 犠牲になった人々の背景をしっかり描き、あたかも連作短編のように物語を紡ぐ。 だから逆に意外な真相が非常に戯画的に映る。これが非常に残念だ。 しかし何故この題名なのかが解らない。原題もそのままだし。 |
No.306 | 7点 | 黒いカーテン- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/03 19:18 |
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実にアイリッシュらしいサスペンス溢れる幕開け。
たった200ページ足らずなのに、物語は二転三転する。 とにかくページを捲る手がもどかしいのだが、最後はなんとも消化不足。 色んな謎が棚上げされた形で物語は終わる。 期待していただけに残念! |
No.305 | 10点 | 暗闇へのワルツ- ウィリアム・アイリッシュ | 2008/08/02 20:22 |
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まさかアイリッシュがこんな悲恋の物語を書こうとは思わなかった。
とにかく花嫁、ボニーの造型が素晴らしい。 時には天使のような、時には状況の犠牲になったか弱い乙女のような、そして時には人生の酸いも甘いも経験し尽くした売女のような女として描かれ、しかもそれが全て違和感なく1人の女性としてイメージが分散しない。 恋は惚れた方が負けである。しかしアイリッシュは最後までその愛を貫くことで人間は変わる、そんな美しくも儚い物語を綴った。 |
No.304 | 8点 | ぼくのミステリな日常- 若竹七海 | 2008/08/01 20:10 |
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みなさんが云うように、正直な感想を云えば、各短編それぞれの謎のクオリティと、物語としての面白さには出来不出来の差がはっきりあり、全てが手放しで賞賛できるものではない。
しかし、この一種未完成とも筆足らずとも思える短編が最後になって一枚の絵を描く時、それらが単なるある1つの事件を告発する材料に過ぎないことが解る。 そういった意味で云えば、やはりこの短編集は普通の短編集にはない1つ秀でた何かを持っているのは認めざるを得ない。 最後、私はゾクリと来たのだが、意外とそういう感想がないのに驚いた。 そんでもって作中で出てくる「ぼく」のニックネーム、「ちいにいちゃん」がどうしても解らないのだが、誰か解る人いるだろうか? |
No.303 | 6点 | 赤毛のレドメイン家- イーデン・フィルポッツ | 2008/07/31 20:38 |
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かの江戸川乱歩が『Yの悲劇』、『ナイン・テイラーズ』と並んで名作10傑として選んだだけに評価が先行している感は否めない。
彼自身、これを翻案にして『緑衣の鬼』を書いているくらいだからよほど気に入ったのだろう。 しかし、今読むとやはり古めかしく感じてしまう。 読んだのは当時大学生の頃で、あの頃はまだミステリ初心者だったから面白く読めたのかもしれない。 印象に残っているのは主人公の刑事が夕焼けか朝焼けをバックに事件の当事者の婦人と出会うシーン。 あのシーンの描写はさすがアメリカ文芸の大家だなと思わせる鮮烈さを感じた。 |
No.302 | 6点 | 闇からの声- イーデン・フィルポッツ | 2008/07/30 19:00 |
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本格物の『赤毛のレドメイン家』とは違い、最初から犯人が解っていて、それを証拠立てて犯人を追い詰める、刑事コロンボシリーズに代表される倒叙型サスペンス物。
探偵役の元刑事リングローズと犯人のバーゴイン卿との心理戦はけっこう読まされる。 『赤毛のレドメイン家』よりも面白く読めた。 この元刑事が事件を手がける発端となる「闇からの声」の正体は、読んだ当時は、ちょっと無理があるなぁと思ったが、野沢雅子氏や大竹のぶ代氏が現役として頑張っている今、かなり説得力のある真相だと考え改めた。 |
No.301 | 7点 | 骨の城- アーロン・エルキンズ | 2008/07/29 20:39 |
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スケルトン探偵ギデオン・オリヴァーシリーズ13作目。ここまで来るとよくもまあ骨でネタが続くものだと感心する。
今回の舞台は『断崖の骨』でも舞台になったイギリスで初めてシリーズで舞台が重複してしまった。 今回は妻のジュリーがある富豪が開催する研究発表会に同行したギデオンがそこの博物館々長に浜辺から出てきた骨の鑑定を依頼されると、その骨が実は数年前以内にバラバラにされた死体のものだということが解って・・・というもの。 シリーズもこれくらいになると、もはやギデオンがスケルトン探偵だということはつとに有名になってしまっており、登場人物が骨を持ち出して鑑定を依頼するというパターンになっている。 つまりギデオン行くところ白骨あり、ではなく、ギデオン来たりて白骨差し出すといったところか。 今回は地元刑事のマイク・クラッパーの造形が秀逸。ホント、この作家の描くキャラクターは印象的なものばかりだ。 13作目にして新たに死体に関する知識も得られ、また骨が事件に密接に絡んでいるのもいい。 そしてなにより今回は犯人を言い当てる事が出来たのがなお良かった。 |
No.300 | 7点 | 水底の骨- アーロン・エルキンズ | 2008/07/28 21:01 |
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スケルトン探偵ギデオン・オリヴァーシリーズ、なんと第12作目である。
今回の舞台はハワイ島でハワイの地で牧場を始め、一財を成したスウェーデン移民の子孫の間に残された遺産問題が今回のテーマになっている。 例によって骨が絡んでいるのはこのシリーズの定石(というよりこれがなかったら主人公がギデオンである意味がない)で10年前に墜落した飛行機から出てきた遺骨の鑑定を頼まれる。 本作では前作に感じた骨の鑑定と事件との乖離性は感じなかったものの、やはり少々ネタ切れかなと思った。 特に目新しい趣向が凝らされていたり、斬新な設定が導入されていたり、シリーズの大転換が起こるような事件も発生しないけれど、逆にこのマンネリズムが楽しい。 |
No.299 | 6点 | 断崖の骨- アーロン・エルキンズ | 2008/07/27 19:15 |
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前作でジュリーと知り合ったギデオンは本作において新婚旅行でイギリスへと行く。この辺り、シリーズ物の定石である。
で、そこで3万年前の人骨を見るために博物館を訪れるが、なんと展示されていた人骨は別の骨で、いつの間にか盗まれていた。 近くで発掘作業をしている旧友ネイトの許を訪れたギデオンは、彼の学生から相談があると持ちかけられる。しかし彼は約束の時間には現れず、後日死体となって発見される。 折りしも発掘調査の査問が行われており、そこでネイトが提出した骨はなんと無くなったとされた3万年前の人骨だった。旧友の冤罪を救うためにギデオンが乗り出す。 本作は傑作『古い骨』の1つ前の作品にあたり、総じて地味な印象を受ける。しかし物語においてギデオンが猛犬に襲われるというサスペンスを加味しているところは次作に繋がる構成が見られる。 骨の鑑定家ギデオンが、白骨は好きでも死体はダメだという事実が発覚するのが面白い。 |
No.298 | 7点 | 暗い森- アーロン・エルキンズ | 2008/07/26 20:36 |
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スケルトン探偵ギデオン・オリヴァーシリーズの第2作目だが、本書こそ真の第1作目とも云うべき作品。
本作で最愛の妻ジュリーとの出会いが描かれる。 本作では本国アメリカのワシントン州の国立公園を舞台にしており、そこに絶滅したネイティヴ・アメリカンの生き残りがいる可能性が高まる。それは行方不明になったハイカーの死体から出てきた凶器が一万年前に絶滅したはずの種族の物だと判明したからだ。 本作では後のシリーズを彩るエイブ・ゴールドスタインやジョン・ロウが既に登場して、もうキャラクターが確立されている。 そしてギデオンのキャラクターすら本作にて完成されている。なにしろジュリーを見て皮膚の下の骨格の美しさに惹かれる、そんな変な学者なのだ。 今回の事件の真相は、実は登場人物表を眺めていると解ってしまった。しかし、シリーズの開幕に相応しい佳作であることには間違いない。 |