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sophiaさん
平均点: 6.92点 書評数: 384件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.244 7点 片桐大三郎とXYZの悲劇- 倉知淳 2020/06/29 17:16
●ぎゅうぎゅう詰めの殺意 6点
●極めて陽気で呑気な凶器 6点
●途切れ途切れの誘拐 8点
●片桐大三郎最後の季節 7点

素晴らしいのは「途切れ途切れの誘拐」ですが、「Zの悲劇」ってこんなのでしたっけ?XやYに対してZは正直言ってあんまり覚えてないんですよね。最初の話の通勤経路の説明でZという言葉が使われるのがまた紛らわしいですし(笑)最終話で急に主観描写になったと思ったら、やはり仕掛けてきました。「最後の事件」のロジックを逆手に取っています。なお、この作品は短編集というか中編集ですが、どの話も内容に比して冗長です。もう少し短くまとめられたのではないかと思います。

No.243 7点 卍の殺人- 今邑彩 2020/06/22 19:25
探偵役も言及している通り、海外古典名作の本歌取りに挑戦した作品ですが、なかなか健闘していると言ってよいのではないでしょうか。メイントリックは「金田一少年の事件簿」にそっくりなものがありましたが、これが元ネタなのですかね。館の形は必ずしも卍でなくともよい、という指摘が鮎川哲也氏からもされていましたが、「Xの殺人」よりも「卍の殺人」の方が日本的な趣なのでこれでよかったと思います。一応作中でも卍の持つ意味が説明され、ムード作りがされていましたしね。余談ですが、図書館で借りたハードカバーが学研の本のような装丁でびっくりしました(笑)

No.242 7点 祈りの幕が下りる時- 東野圭吾 2020/06/14 02:09
「容疑者Xの献身」と「白夜行」のエッセンスが入っているので、必然的に悪い作品にはなりません。ただし中盤までは刑事たちがひたすら聞き込んで回るだけの展開で退屈に感じました。「どれだけ無駄足を踏んだかで捜査の結果が変わってくる」の言葉通りであります。前作「麒麟の翼」では七福神巡り、今作は橋巡りというものがキーとなり、物語に加賀のホームグラウンド日本橋の地理を取り入れるのが上手いです。
なお、「赤い指」以降色々と後付け設定して、なおかつ松宮というパートナーも出来たわけですが、それと同時に加賀恭一郎という人間が丸裸にされましたので、今後このシリーズがどう展開していくのかが気がかりであります。

No.241 5点 夏と冬の奏鳴曲- 麻耶雄嵩 2020/06/01 15:55
これは奇書ですよね。観念的な事ばかりを延々と。毎回肝心なところははぐらかす神父にイライラさせられました。しかもこういう思わせぶりな伏線を張るだけ張って、ちゃんと回収せずに読者に投げっぱなしで終わるリドル的なのは嫌いなのです。登場人物は全員頭おかしいですし。密室トリックは読者を馬鹿にし過ぎですし。最後の最後にメルカトル鮎を出す必要も全くないですし。終盤の「春と秋の奏鳴曲」の上映のときにはやっと面白くなって来たと思ったものですが。というかこの方の作品は神様シリーズ以外基本的に苦手です。

No.240 6点 麒麟の翼- 東野圭吾 2020/05/26 17:51
スラスラ読めたのですが、真犯人の浮上が唐突に過ぎた感があります。もう少し伏線を張れなかったものでしょうか。悠人の妹の思いもどこへやら。肝心の「麒麟の翼」も×××のタイトルでした、ではねえ。

No.239 8点 殺人犯 対 殺人鬼- 早坂吝 2020/05/23 16:38
久しぶりにスカッと騙されました。読み返すと成程、上手く書かれています。二重人格(?)少女や透明な防火扉などの変な設定もちゃんと意味がありました。この作品において「殺人鬼」が誰を指すのかという問題は付きまとうと思います。自分も初めはアンフェアじゃないか?と思いましたが、それも最終章に効かせるために必要なのだと判断いたしました。余りにも荒唐無稽な話でありますし、文章の軽さや作者が児童養護施設についてあまり分かってなさそうなところなど気になる点もあるのですが、ミステリーとして純粋に面白かったのでこの点数を差し上げます。

No.238 8点 月の扉- 石持浅海 2020/04/25 19:00
再読です。超現実的な展開になるであろうことはタイトルが示していますし、本編を読み進めれば尚更なので私は問題ありませんでした。むしろそれと現実的な事件をどう融合させてくるのかを楽しみにしていましたので、よくやったと拍手を送りたいです。なかなかの衝撃的な結末ですよね。被害者クズ過ぎる。柿崎さん自分勝手過ぎる。座間味くんいい人過ぎる。

No.237 7点 隻眼の少女- 麻耶雄嵩 2020/04/14 18:58
驚愕を通り越して悪ふざけの一歩手前の作品。時を超えて推理が何度もひっくり返るのがすごいようでもあり、うんざりするようでもあり、さすがに訳が分からなくなりました。真犯人の動機も酷いですし、○○の携帯で連絡を取るとか○○術とかもう滅茶苦茶です。伝承も旧家もどこかに吹っ飛んでしまいました。ただ、本格ミステリーとしては高評価は出来ませんが、一種のバカミスと割り切れば、静馬とみかげにまつわる物語は面白かったと言えます。後は1985年バージョンだけでもいいので屋敷の見取り図が欲しかったですね。渡り廊下や生け垣がどこにどう存在するのかイメージしにくかったので。

以下ネタバレで疑問点

ライターの論理がよく分からないんですよねえ。「右側から中を覗くには左眼だけでしか見えないのです」とありますが、左眼ではなく右眼ではないんですかね。

No.236 7点 九度目の十八歳を迎えた君と- 浅倉秋成 2020/04/06 17:32
思っていたよりは地味な話でしたが、伏線がこれでもかと散りばめられており、興味を持って読めました。最初にたどり着いた仮説と最終的な真相の間にインターバルが欲しかったです。

No.235 10点 64(ロクヨン)- 横山秀夫 2020/03/28 16:44
斜め読み不可の複雑精緻な大作で、読むのにかなり時間をかけてしまいましたが、それだけの価値のある作品でした。警察ミステリーの到達点と言っても過言ではないでしょう。もっと早く読んでおけばよかったです。警察の内紛劇ばっかりでロクヨンあんまり関係ないじゃないかと思わせることが布石なのですね。最後はロクヨンに帰ってくるんじゃないかという漠然とした予想はしていましたが、それでも終盤の急展開にはやられました。事件も家庭の問題も安易にハッピーエンドにまとめなかったのがまたいいですね。残された余白によって物語に深みが出たと思います。

No.234 9点 medium 霊媒探偵城塚翡翠- 相沢沙呼 2020/03/17 21:12
翡翠タンハアハア・・・じゃなくて、
これは究極のリドルストーリーですね。読者は騙されたのか否かすら判然としません。前3章を別アプローチで振り返る構成にしびれました。香月と翡翠の関係性には、今村昌弘の「屍人荘の殺人」シリーズの葉村譲と剣崎比留子の関係性を重ね合わせて読みました。それ故に最終章は衝撃的でしたよ。ラブコメ要素がちょっとあるだけでラノベだ何だと批判する読者へのアンチテーゼのようにも感じました。

No.233 7点 罪の声- 塩田武士 2020/02/28 13:07
グリコ・森永事件が起きたのは70年代ぐらいのイメージでしたが80年代なんですね。割と最近でびっくりしました。まあそれはさておき、犯人グループの人数が多く事件の顛末もかなり複雑であるため読むのが難儀でしたが、2人の主人公俊也と阿久津が交わり始めた辺りからぐっと面白くなりました。俊也の「追う者と追われる者」の葛藤がよく書き表されています。
調査の糸が都合よく繋がり続け、しかも何だかんだで取材に協力的な人ばかりなので話がとんとん拍子に進みますが、それもあの入り組んだ世紀の大事件の全容を解明するという主題である以上は仕方がないのでしょう。
ひとつ気になった点を。事実に沿った話なので突っ込むのは野暮かもしれませんが、小2の弟はともかく中3の姉は自分がやっていることの意味が分からなかったのでしょうか。

No.232 7点 竜が最後に帰る場所- 恒川光太郎 2020/02/21 01:54
●風を放つ 5点・・・何か起きそうで何も起きない。
●迷走のオルネラ 5点・・・何これ。
●夜行の冬 7点・・・「秋の牢獄」の世界観に似ている。ラストがちょっと分かりにくい。
●鸚鵡幻想曲 9点・・・「白昼夢の森の少女」にも2編あったメタモルフォーゼもの。前半を読んでいて後半こんな話になるとは全く予想できませんでした。
●ゴロンド 8点・・・壮大な話。手塚治虫の「火の鳥」のよう。

何と言っても「鸚鵡幻想曲」です。これですよ、これ。私はこの作者にこういうのを求めているんです。下手に縛りのある連作短編より、ワンアイディアで作れる独立した短編の方が向いてますよ絶対。「迷走のオルネラ」は現実的な世界観でのぶっ飛んだ話でどうも受け入れられなかったです。

No.231 8点 教室が、ひとりになるまで- 浅倉秋成 2020/02/16 00:03
あらすじからは予測できないSFミステリー。設定がとても面白いです。この設定で引き込まれない人はいないでしょう。最初は「デスノート」かと思いましたが、「ジョジョの奇妙な冒険」の「スタンド」や「HUNTER×HUNTER」の「念能力」に着想を得ているのかもしれません。調べたらこういうSF的な作品が得意な作家さんのようですね。能力のヒントを自伝にさりげなくちりばめているところがとても上手い。主人公が何か隠している風な描写だったのもやはり意味がありましたし、バイト先の先輩や路上ミュージシャンなどサブキャラクターたちに最後世界をひっくり返される構成も効いています。ただ、文章がところどころ軽くて変なんですよね。もっと硬質な筆致でいいと思うんですけど。あと、〇〇〇〇〇の自殺の理由が遺書を読んでもよく分かりませんでした。

No.230 6点 南の子供が夜いくところ- 恒川光太郎 2020/02/12 00:17
前作「草祭」の南国バージョンといったところ。相変わらず各エピソードの関連性が薄い。どの話も面白くなりそうでいまいちならず、雰囲気を楽しむ作品に帰結しているのも同じ。「草祭」よりは引き込まれたのですが。連作短編全体を通した大きな流れと大きなオチが欲しい。ふむう。

No.229 5点 草祭- 恒川光太郎 2020/02/07 20:51
これはよく分かりませんでした。あくまで雰囲気を味わう作品なのでしょうか。5つの話は別個に成立し得て、「美奥」という地名で無理やりまとめた連作短編集という感じがします。「風の古道」や「神家没落」と似た話もありますし、「天化の宿」などはすごく面白くなりそうでならず残念。どうもこの作家さんの限界が見えてきたような。このまま読み続けて行っていいものかどうか。「夜市」や「秋の牢獄」や「銀の船」のような起承転結がはっきりしており切れ味の鋭い話が読みたいのですが。

No.228 5点 十二人の死にたい子どもたち- 冲方丁 2020/01/30 22:59
人の動きをただただ複雑にしたばかりで、謎が解けたときの爽快感がない。「ミステリー畑ではない人が頑張って作ったパズル」の域を出ない。解決編の話の流れがとても分かりにくい。真犯人(と呼びます)の名指しを最後に回すためでありましょうが、探偵役が不合理な話を敢えて進めていくので読者はいたずらに混乱させられます。しかもその肝心の真犯人の名指しのキレ味が悪い。9番のパートナーを特定する根拠も弱く、階段から突き落とした犯人を特定する論理もよく分からない。2人が屋上に一緒にいた理由も説明されていない。そして謎と作品のテーマがいまいち絡み合っていない。4番の喫煙とかゼロ番の運搬手段とかはそもそもがどうでもいい謎。過去に本屋大賞を獲った作家さんですが、ミステリーは書き慣れていないのが露わです。あと最後まで登場人物の名前が覚えられなかった。演出とはいえカタカナ表記はやめてほしかった。
追記 映画も観ましたが、原作で描写不足だったところが補足されておりよかったです。

No.227 6点 雷の季節の終わりに- 恒川光太郎 2020/01/20 00:11
「穏」の世界観は面白かったですが、全体の構成があまりよろしくないのかなあと。茜パートはもっと早く始めて欲しいですし、最後の最後にトバムネキが主人公みたいになるのがちょっと。この作者は短編の方が向いているような気がします。

No.226 8点 煙の殺意- 泡坂妻夫 2019/11/24 00:18
ジェノサイドあり、カニバリズムあり、死体の解体描写ありで、なかなかにブラックな短編集でした。亜愛一郎シリーズのようなファニーな雰囲気を想像していたので衝撃を受けました。「狐の面」と「歯と胴」だけがややいまいちで、後は全部面白かったです。「閏の花嫁」はトラウマになりそうです。

No.225 7点 秋の牢獄- 恒川光太郎 2019/11/16 17:40
●秋の牢獄 8点
●神家没落 7点
●幻は夜に成長する 6点

何と言っても表題作でしょう。そうなった原因が何か存在して、それを解決することで解放されるというような展開を想像していましたが違いました。原因は不明。出口は見えているもののその先がどうなるのか分からない。絶望→希望→絶望→達観と経てからの終わり方が素晴らしかった。
しかし次の「神家没落」もそうですが、この方の作品の主人公は異常な状況を理解して受け入れるのが早くないですか?もう少し困惑したりパニックになったりするものじゃないのかなと思うのですが、敢えて淡々と描くのがこの方の特長のような気もしますね。

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sophiaさん
ひとこと
世評の高い物を中心に読んでいっています。採点に際してはストーリー性や読み易さも重視します。ジグソーパズルのような複雑な作品やオチのない話、リドル・ストーリーは苦手です。
好きな作家
最近だと米澤穂信 今村昌弘 方丈貴恵 知念実希人あたりを好みます
採点傾向
平均点: 6.92点   採点数: 384件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(31)
米澤穂信(16)
道尾秀介(14)
伊坂幸太郎(13)
綾辻行人(13)
島田荘司(12)
倉知淳(10)
泡坂妻夫(9)
恒川光太郎(9)
アガサ・クリスティー(9)