皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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sophiaさん |
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| 平均点: 6.92点 | 書評数: 387件 |
| No.247 | 8点 | そして誰もいなくなる- 今邑彩 | 2020/07/18 21:30 |
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| 「卍の殺人」と同じく海外古典名作(今回は伏せる必要はなさそうですが)の本歌取りに挑戦した作品ですが、これも成功でしょう。元ネタの作品のようにクローズドサークルでもないのに部員10人も殺せるのかと思いきや、連続殺人の軸を途中でずらす手法が実に巧み。クライマックスの犯人との直接対決に入るのが残りページ数からすると早すぎるのではないかという心配もしましたが、その後にもうひとひねりが待っていました。あとがきを読むと、この方の本歌取りの手法に否定的な向きもあるようですが、これは胸を張っていい傑作であると感じました。
以下ネタバレ 測量ボーイさんへ ○○役の人物が死んだと思わせてやはり生きていたこと、最後にやはり署名付きの手紙を残して消えること、だと思います。 |
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| No.246 | 7点 | 金雀枝荘の殺人- 今邑彩 | 2020/07/12 17:16 |
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| あらすじを読むと大変ミステリアスで面白そうなこの作品。実際に読み始めても、不可解な惨劇のあった館で推理合戦を繰り広げるという設定に引き込まれページが進むのですが、終盤になると趣がガラリと変わり、犯人が手当たり次第に人を襲い始める展開になります。期待していたような綿密に練られた殺人劇ではなかったことで一時落胆しましたが、後日談の最終章で物語が上手くまとめられており、評価がV字回復しました。この作品の肝はハウダニットではなくホワイダニットだったのだと納得しました。ただ、先にも述べた通り犯人が終盤に豹変しすぎなので、あの人物が犯人だったという現実感は薄いです。また、隠された血縁関係は読者にはなかなか分からないので、伏線がもう少しあるとよかったです。後は霊感少女の能力をもうちょっと活かして欲しかったと思います。 | |||
| No.245 | 8点 | 紅蓮館の殺人- 阿津川辰海 | 2020/07/04 20:04 |
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| 「紅蓮館の殺人」というよりも「吊り天井の館の殺人」という感じです。絵の論理、額の論理が細かくて通好みでしょう。人物関係等でちょっと偶然が過ぎるのが難点ではあります。犯人の意外性はあまりありません。ラストは苦く切ないです。
以下ネタバレ 葛城が死体に振りまかれた消臭剤に気付いた描写がないように思われるのですが、必要ありませんかね?見落としかと思って必死に探してるんですが見つかりません。序盤につばさのフルネームを何気なくはっきりと書いちゃうところがこの作者の度胸があるところですね。何の引っ掛かりも感じず流しちゃいましたよ。新旧名探偵対決は痛み分けといったところですが、シリーズ化もありそうな、そしてなさそうな終わり方でした。最後に、この作品のあの展開はどうしても西澤保彦の某山荘ものが頭をよぎりますね(笑)読後にいっぱい語りたくなった作品でした。 |
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| No.244 | 7点 | 片桐大三郎とXYZの悲劇- 倉知淳 | 2020/06/29 17:16 |
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| ●ぎゅうぎゅう詰めの殺意 6点
●極めて陽気で呑気な凶器 6点 ●途切れ途切れの誘拐 8点 ●片桐大三郎最後の季節 7点 素晴らしいのは「途切れ途切れの誘拐」ですが、「Zの悲劇」ってこんなのでしたっけ?XやYに対してZは正直言ってあんまり覚えてないんですよね。最初の話の通勤経路の説明でZという言葉が使われるのがまた紛らわしいですし(笑)最終話で急に主観描写になったと思ったら、やはり仕掛けてきました。「最後の事件」のロジックを逆手に取っています。なお、この作品は短編集というか中編集ですが、どの話も内容に比して冗長です。もう少し短くまとめられたのではないかと思います。 |
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| No.243 | 7点 | 卍の殺人- 今邑彩 | 2020/06/22 19:25 |
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| 探偵役も言及している通り、海外古典名作の本歌取りに挑戦した作品ですが、なかなか健闘していると言ってよいのではないでしょうか。メイントリックは「金田一少年の事件簿」にそっくりなものがありましたが、これが元ネタなのですかね。館の形は必ずしも卍でなくともよい、という指摘が鮎川哲也氏からもされていましたが、「Xの殺人」よりも「卍の殺人」の方が日本的な趣なのでこれでよかったと思います。一応作中でも卍の持つ意味が説明され、ムード作りがされていましたしね。余談ですが、図書館で借りたハードカバーが学研の本のような装丁でびっくりしました(笑) | |||
| No.242 | 7点 | 祈りの幕が下りる時- 東野圭吾 | 2020/06/14 02:09 |
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| 「容疑者Xの献身」と「白夜行」のエッセンスが入っているので、必然的に悪い作品にはなりません。ただし中盤までは刑事たちがひたすら聞き込んで回るだけの展開で退屈に感じました。「どれだけ無駄足を踏んだかで捜査の結果が変わってくる」の言葉通りであります。前作「麒麟の翼」では七福神巡り、今作は橋巡りというものがキーとなり、物語に加賀のホームグラウンド日本橋の地理を取り入れるのが上手いです。
なお、「赤い指」以降色々と後付け設定して、なおかつ松宮というパートナーも出来たわけですが、それと同時に加賀恭一郎という人間が丸裸にされましたので、今後このシリーズがどう展開していくのかが気がかりであります。 |
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| No.241 | 5点 | 夏と冬の奏鳴曲- 麻耶雄嵩 | 2020/06/01 15:55 |
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| これは奇書ですよね。観念的な事ばかりを延々と。毎回肝心なところははぐらかす神父にイライラさせられました。しかもこういう思わせぶりな伏線を張るだけ張って、ちゃんと回収せずに読者に投げっぱなしで終わるリドル的なのは嫌いなのです。登場人物は全員頭おかしいですし。密室トリックは読者を馬鹿にし過ぎですし。最後の最後にメルカトル鮎を出す必要も全くないですし。終盤の「春と秋の奏鳴曲」の上映のときにはやっと面白くなって来たと思ったものですが。というかこの方の作品は神様シリーズ以外基本的に苦手です。 | |||
| No.240 | 6点 | 麒麟の翼- 東野圭吾 | 2020/05/26 17:51 |
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| スラスラ読めたのですが、真犯人の浮上が唐突に過ぎた感があります。もう少し伏線を張れなかったものでしょうか。悠人の妹の思いもどこへやら。肝心の「麒麟の翼」も×××のタイトルでした、ではねえ。 | |||
| No.239 | 8点 | 殺人犯 対 殺人鬼- 早坂吝 | 2020/05/23 16:38 |
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| 久しぶりにスカッと騙されました。読み返すと成程、上手く書かれています。二重人格(?)少女や透明な防火扉などの変な設定もちゃんと意味がありました。この作品において「殺人鬼」が誰を指すのかという問題は付きまとうと思います。自分も初めはアンフェアじゃないか?と思いましたが、それも最終章に効かせるために必要なのだと判断いたしました。余りにも荒唐無稽な話でありますし、文章の軽さや作者が児童養護施設についてあまり分かってなさそうなところなど気になる点もあるのですが、ミステリーとして純粋に面白かったのでこの点数を差し上げます。 | |||
| No.238 | 8点 | 月の扉- 石持浅海 | 2020/04/25 19:00 |
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| 再読です。超現実的な展開になるであろうことはタイトルが示していますし、本編を読み進めれば尚更なので私は問題ありませんでした。むしろそれと現実的な事件をどう融合させてくるのかを楽しみにしていましたので、よくやったと拍手を送りたいです。なかなかの衝撃的な結末ですよね。被害者クズ過ぎる。柿崎さん自分勝手過ぎる。座間味くんいい人過ぎる。 | |||
| No.237 | 7点 | 隻眼の少女- 麻耶雄嵩 | 2020/04/14 18:58 |
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| 驚愕を通り越して悪ふざけの一歩手前の作品。時を超えて推理が何度もひっくり返るのがすごいようでもあり、うんざりするようでもあり、さすがに訳が分からなくなりました。真犯人の動機も酷いですし、○○の携帯で連絡を取るとか○○術とかもう滅茶苦茶です。伝承も旧家もどこかに吹っ飛んでしまいました。ただ、本格ミステリーとしては高評価は出来ませんが、一種のバカミスと割り切れば、静馬とみかげにまつわる物語は面白かったと言えます。後は1985年バージョンだけでもいいので屋敷の見取り図が欲しかったですね。渡り廊下や生け垣がどこにどう存在するのかイメージしにくかったので。
以下ネタバレで疑問点 ライターの論理がよく分からないんですよねえ。「右側から中を覗くには左眼だけでしか見えないのです」とありますが、左眼ではなく右眼ではないんですかね。 |
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| No.236 | 7点 | 九度目の十八歳を迎えた君と- 浅倉秋成 | 2020/04/06 17:32 |
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| 思っていたよりは地味な話でしたが、伏線がこれでもかと散りばめられており、興味を持って読めました。最初にたどり着いた仮説と最終的な真相の間にインターバルが欲しかったです。 | |||
| No.235 | 10点 | 64(ロクヨン)- 横山秀夫 | 2020/03/28 16:44 |
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| 斜め読み不可の複雑精緻な大作で、読むのにかなり時間をかけてしまいましたが、それだけの価値のある作品でした。警察ミステリーの到達点と言っても過言ではないでしょう。もっと早く読んでおけばよかったです。警察の内紛劇ばっかりでロクヨンあんまり関係ないじゃないかと思わせることが布石なのですね。最後はロクヨンに帰ってくるんじゃないかという漠然とした予想はしていましたが、それでも終盤の急展開にはやられました。事件も家庭の問題も安易にハッピーエンドにまとめなかったのがまたいいですね。残された余白によって物語に深みが出たと思います。 | |||
| No.234 | 9点 | medium 霊媒探偵城塚翡翠- 相沢沙呼 | 2020/03/17 21:12 |
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| 翡翠タンハアハア・・・じゃなくて、
これは究極のリドルストーリーですね。読者は騙されたのか否かすら判然としません。前3章を別アプローチで振り返る構成にしびれました。香月と翡翠の関係性には、今村昌弘の「屍人荘の殺人」シリーズの葉村譲と剣崎比留子の関係性を重ね合わせて読みました。それ故に最終章は衝撃的でしたよ。ラブコメ要素がちょっとあるだけでラノベだ何だと批判する読者へのアンチテーゼのようにも感じました。 |
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| No.233 | 7点 | 罪の声- 塩田武士 | 2020/02/28 13:07 |
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| グリコ・森永事件が起きたのは70年代ぐらいのイメージでしたが80年代なんですね。割と最近でびっくりしました。まあそれはさておき、犯人グループの人数が多く事件の顛末もかなり複雑であるため読むのが難儀でしたが、2人の主人公俊也と阿久津が交わり始めた辺りからぐっと面白くなりました。俊也の「追う者と追われる者」の葛藤がよく書き表されています。
調査の糸が都合よく繋がり続け、しかも何だかんだで取材に協力的な人ばかりなので話がとんとん拍子に進みますが、それもあの入り組んだ世紀の大事件の全容を解明するという主題である以上は仕方がないのでしょう。 ひとつ気になった点を。事実に沿った話なので突っ込むのは野暮かもしれませんが、小2の弟はともかく中3の姉は自分がやっていることの意味が分からなかったのでしょうか。 |
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| No.232 | 7点 | 竜が最後に帰る場所- 恒川光太郎 | 2020/02/21 01:54 |
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| ●風を放つ 5点・・・何か起きそうで何も起きない。
●迷走のオルネラ 5点・・・何これ。 ●夜行の冬 7点・・・「秋の牢獄」の世界観に似ている。ラストがちょっと分かりにくい。 ●鸚鵡幻想曲 9点・・・「白昼夢の森の少女」にも2編あったメタモルフォーゼもの。前半を読んでいて後半こんな話になるとは全く予想できませんでした。 ●ゴロンド 8点・・・壮大な話。手塚治虫の「火の鳥」のよう。 何と言っても「鸚鵡幻想曲」です。これですよ、これ。私はこの作者にこういうのを求めているんです。下手に縛りのある連作短編より、ワンアイディアで作れる独立した短編の方が向いてますよ絶対。「迷走のオルネラ」は現実的な世界観でのぶっ飛んだ話でどうも受け入れられなかったです。 |
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| No.231 | 8点 | 教室が、ひとりになるまで- 浅倉秋成 | 2020/02/16 00:03 |
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| あらすじからは予測できないSFミステリー。設定がとても面白いです。この設定で引き込まれない人はいないでしょう。最初は「デスノート」かと思いましたが、「ジョジョの奇妙な冒険」の「スタンド」や「HUNTER×HUNTER」の「念能力」に着想を得ているのかもしれません。調べたらこういうSF的な作品が得意な作家さんのようですね。能力のヒントを自伝にさりげなくちりばめているところがとても上手い。主人公が何か隠している風な描写だったのもやはり意味がありましたし、バイト先の先輩や路上ミュージシャンなどサブキャラクターたちに最後世界をひっくり返される構成も効いています。ただ、文章がところどころ軽くて変なんですよね。もっと硬質な筆致でいいと思うんですけど。あと、〇〇〇〇〇の自殺の理由が遺書を読んでもよく分かりませんでした。 | |||
| No.230 | 6点 | 南の子供が夜いくところ- 恒川光太郎 | 2020/02/12 00:17 |
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| 前作「草祭」の南国バージョンといったところ。相変わらず各エピソードの関連性が薄い。どの話も面白くなりそうでいまいちならず、雰囲気を楽しむ作品に帰結しているのも同じ。「草祭」よりは引き込まれたのですが。連作短編全体を通した大きな流れと大きなオチが欲しい。ふむう。 | |||
| No.229 | 5点 | 草祭- 恒川光太郎 | 2020/02/07 20:51 |
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| これはよく分かりませんでした。あくまで雰囲気を味わう作品なのでしょうか。5つの話は別個に成立し得て、「美奥」という地名で無理やりまとめた連作短編集という感じがします。「風の古道」や「神家没落」と似た話もありますし、「天化の宿」などはすごく面白くなりそうでならず残念。どうもこの作家さんの限界が見えてきたような。このまま読み続けて行っていいものかどうか。「夜市」や「秋の牢獄」や「銀の船」のような起承転結がはっきりしており切れ味の鋭い話が読みたいのですが。 | |||
| No.228 | 5点 | 十二人の死にたい子どもたち- 冲方丁 | 2020/01/30 22:59 |
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| 人の動きをただただ複雑にしたばかりで、謎が解けたときの爽快感がない。「ミステリー畑ではない人が頑張って作ったパズル」の域を出ない。解決編の話の流れがとても分かりにくい。真犯人(と呼びます)の名指しを最後に回すためでありましょうが、探偵役が不合理な話を敢えて進めていくので読者はいたずらに混乱させられます。しかもその肝心の真犯人の名指しのキレ味が悪い。9番のパートナーを特定する根拠も弱く、階段から突き落とした犯人を特定する論理もよく分からない。2人が屋上に一緒にいた理由も説明されていない。そして謎と作品のテーマがいまいち絡み合っていない。4番の喫煙とかゼロ番の運搬手段とかはそもそもがどうでもいい謎。過去に本屋大賞を獲った作家さんですが、ミステリーは書き慣れていないのが露わです。あと最後まで登場人物の名前が覚えられなかった。演出とはいえカタカナ表記はやめてほしかった。
追記 映画も観ましたが、原作で描写不足だったところが補足されておりよかったです。 |
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