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sophiaさん
平均点: 6.96点 書評数: 359件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.219 6点 猫丸先輩の空論 超絶仮想事件簿- 倉知淳 2019/09/11 21:09
●水のそとの何か 6点・・・作中の小説を元ネタにされてもいまいちピンと来ず
●とむらい自動車 7点・・・タクシー運転手たちの口論長すぎませんか(笑)
●子ねこを救え 6点・・・猫モノなら「失踪当時の肉球は」の方が好き
●な、なつのこ 7点・・・アレとアレとでは重量がだいぶ違うのですぐ気付きそうなものですが
●魚か肉か食い物 6点・・・これはちょっと論理の飛躍。レンゲに持ち替えるのなんかも自然な動作であり、伏線として機能しているのかどうか。旧友に気を遣ってプラマイ0にしようとした、の方が綺麗だった気がしますが。
●夜の猫丸 5点・・・何だこりゃ

全体的にまったり(ダラダラとも言う)としており、「幻獣遁走曲」のテイストに近いのかなあと思います。前作「猫丸先輩の推測」の完成度には遠く及ばない感じです。「超絶仮想事件簿」というサブタイトルの意味も全く分かりませんし。

No.218 7点 犬はどこだ- 米澤穂信 2019/09/03 00:27
二つの依頼に共通点があることは早い段階で読者には分かっているのですが、いかんせん報連相のなっていない二人の調査員たちは気付きません。しかしながら二つの依頼がどう絡み合うのかまでは終盤まで読者にも分からないという構成。絡み合ってからは急加速で面白くなりました。ネットから現実世界に移った鬼ごっこの構図の反転が鮮やか。しかし、最後あっさりしすぎでは?更なる高評価もあり得た作品だと思うのでちょっともったいなかったですね。あと、主人公がなぜ犬捜しを専門にしたいのかがよく分かりませんでした。タイトルに「犬」を入れる程であれば語って欲しかったです。語ってましたっけ?
余談。「鎌手」は「構ってちゃん」ってことかと思ってました(笑)それと「2ちゃんねる(今は5ちゃんねるですが)」という言葉が小説にはっきり出てくるのは新鮮でした。

No.217 8点 猫丸先輩の推測- 倉知淳 2019/08/24 23:35
●夜届く 8点・・・銭湯のエピソードがヒントにもなり、煙幕にもなっています。
●桜の森の七分咲きの下 8点・・・私を含め、もうひとつの可能性の方を考えた読者が多いことと思います。裏切られました。
●失踪当時の肉球は 8点・・・最後の分かるような分からないような歯医者の例えが印象的。
●たわしと真夏とスパイ 8点・・・冷えてないことに気付かなかったのか?という瑕疵はありますが。
●カラスの動物園 7点・・・「桜の森の七分咲きの下」同様の裏切り。
●クリスマスの猫丸 7点・・・何てことはない真相を魅力的な謎に仕立てるのが上手い。

「日常の謎」としてはかなりハイレベルな短編集ではないでしょうか。毎回変わる視点人物も個性的。特に探偵さんはよかった。各タイトルは全部何かの文学作品に因んでいるんですね。「たわしと真夏とスパイ」と「カラスの動物園」は無理やり合わせにいった感じがしますけど(笑)
なお、本作の猫丸先輩の行いは「推理」ではなくタイトルにあるように「推測」であると言われますが、物的証拠はなくとも状況証拠を元にしているので「推理」と言っていい気がします。ただし確認を取っていないという点で「推測」なのかなと。であれば「たわしと真夏とスパイ」は犯人の自白を取っているので「推測」には終わっていないと言えるのではないでしょうか。このようなことまで考えさせられる、なかなかに奥の深い一冊でありました。

No.216 7点 怪物の木こり- 倉井眉介 2019/08/04 21:19
主人公が襲撃の被害者であると同時にリベンジャーであり、警察に真実を隠すことから事態が複雑に展開していき、読み応えがあります。終盤に訳が分からなくなり戸惑っていたら、時系列をずらしたんですね。これは結末に向けて効果的だったと思います。ただ、人物造形の浅さが気になります。例えば、主人公は邪魔者を何人も殺してきたサイコパス弁護士という設定ですが、弁護士としての仕事ぶりも、邪魔者をどう殺してきたのかも具体的に描かれていません。作品のキーワードになっている「脳チップ」も、ネーミングが何とも安っぽいのでもうちょっと考えて欲しかったところです。

No.215 6点 幻獣遁走曲 猫丸先輩のアルバイト探偵ノート- 倉知淳 2019/07/30 22:54
●猫の日の事件 5点
●寝ていてください 5点
●幻獣遁走曲 7点
●たたかえ、よりきり仮面 7点
●トレジャーハント・トラップ・トリップ 6点

初めの2話をその後の3話で取り返した感じです。「日曜の夜は出たくない」は割と硬派な本格ミステリー短編集でしたが、本作は誰も死にませんしプロットも複雑なものはなく、ライトな味わいの短編集となっています。アメトークの読書芸人の回でとある芸人さんが本作をお薦めしたそうですが、そういう観点からだと思われます。まあ時にはこういうのも悪くないんじゃないでしょうか。余談ですが、創元推理文庫新版のあとがきによりますと、本作のジャンルは日常の謎ではなく「非日常の謎」なのだそうです。何はともあれ、次作「猫丸先輩の推測」に期待しておきます。

No.214 8点 殺戮にいたる病- 我孫子武丸 2019/07/21 23:35
十数年ぶりの再読です。タネが分かっていると再読にはあまり堪えないですかねえ。点数は初読時の衝撃に対する点数です。娘の名前は軽いミスディレクションですよね?しかし岡村孝子はこんな内容の作品に散々引用されて迷惑じゃなかったんでしょうか(笑)

No.213 8点 大誘拐- 天藤真 2019/06/19 21:21
「皆殺しパーティ」を読んだのを機会に再読。オチだけは覚えていましたが、途中の経過など完全に忘れていました。これ要は刀自の人脈が凄いという話に落ち着きます。犯人グループと警察とマスコミの三者の攻防は微に入り細に入り、読むのがなかなか大変です。通好みの作品になるのではないでしょうか。

No.212 7点 皆殺しパーティ- 天藤真 2019/06/11 03:28
ネタバレあり

○○殺人をテーマにしたプロットは悪くないですし、事件が次々と起きて飽きさせない構成力もさすがです。しかし問題点もいくつかあります。登場人物のほとんどが途中退場することで、最終的に誰が犯人なのかは自動的に見当が付いてしまいましたし、誰が裏切ってもおかしくない状況でしたので、犯人の意外性も薄れてしまいました。さらに誰と誰が実はできていたということが続き過ぎですし、特に英吾と○○がというのは話が上手すぎます。英吾という人物が便利に使われ過ぎているんですね。この辺りを考慮すると7点ぐらいの評価が限度になります。

No.211 7点 鏡の中は日曜日- 殊能将之 2019/06/05 23:08
綾辻行人の館シリーズへのオマージュのようですが、特に水車館と迷路館の影響が濃く感じられます。構成が非常に凝っており、一気に読ませる力があります。殺人事件の方は何てことないんですが、メインテーマは別のところにあり、そこをどう評価するかといったところでしょうか。私が新本格に傾倒していた十数年前にこの作品を読んでいればもう少し高い評価をしたかもしれません。お寺の場所を尋ねられるくだりの漢字表記がちょっと引っかかりますかね。タイトルの由来は何となく分かるような気もしますが、作中で言及が欲しかったところです。

No.210 9点 奇術探偵 曾我佳城全集- 泡坂妻夫 2019/05/30 19:41
単行本を読みました。タイトルから想像していたのとは違ってHowよりもWhyが柱になった作品が多い印象です。全22話玉石混交ではあるんですが、奇術という著者ならではのテーマでこれだけの作品を取りそろえたところは評価に値します。白眉は「ビルチューブ」です。他には「シンブルの味」「消える銃弾」「花火と銃声」「真珠夫人」も出来がいい。佳城の推理は冴えていますが、伝説の奇術師の手並みを見せてくれる話がもっと欲しかったところです。ラストはどう評価したものか。伏線となったあるエピソードもねえ。「湖底のまつり」然り、この方の叙述トリックはあざとくてどうも苦手なんですよね。

No.209 6点 盤上の向日葵- 柚月裕子 2019/05/18 00:43
刑事の佐野・石破パートと容疑者のプロ棋士・上条桂介パートが交互に進行していく形ですが、途中から後者の比重が圧倒的に大きくなって、佐野・石破は桂介の足跡をなぞるだけになってしまっています。しかもその桂介も東明に振り回されているだけにしか思えなかったです。佐野のプロ棋士になれなかったコンプレックスや石破の型破りなキャラクターをもっと活かしてほしかったですし、何より桂介をもっとしっかりと話の中心に据えてほしかったです。終わってみれば真剣師の東明という男の生き様が面白かっただけの作品になってしまいました。終わり方も好きじゃないですねえ。救いがないですよ。

No.208 9点 魔眼の匣の殺人- 今村昌弘 2019/05/08 19:43
前作と同じくクローズド・サークルものの傑作ですが、今回の話は論理クイズのようでちょっと難しかったです。この作品の良さは初めて読んだときよりも再読したときの方が分かるかもしれません。
中盤までオカルト話ばかりで、人為的な殺人事件はいつ起こるのかと気を揉んでおりましたが、後半に差し掛かってついに起きた事件以降伏線のオンパレードで一気にスピードアップ。そして解決編後、最終盤のもうひとひねりは三津田信三の某作を思い出しました。手記に隠された伏線が見事。
一番に死ぬだろうなと思った人がやはり一番に死んだのは少し笑えました。

No.207 7点 日曜の夜は出たくない- 倉知淳 2019/04/16 00:21
このシリーズは長編の「過ぎ行く風はみどり色」しか読んだことがありませんでしたが、創元推理文庫の新版が出たのを機に、短編集にも手を出してみました。泡坂妻夫の亜愛一郎シリーズのような描き方ですかね。島田荘司ばりの大技物理トリックもあり、センチメンタルな話もあり、昔話の謎解きもあり、バリエーション豊富で飽きさせません。中でも「一六三人の目撃者」が秀逸でした。そして最後のサプライズ。あの話やあの話で感じた違和感はこのためだったのかと感じさせられました。残りの短編集も読むのが楽しみです。あ、「海に棲む河童」の最後の標準語訳は不要だったと思います。あれは冷めました(笑)

No.206 5点 赤い指- 東野圭吾 2019/04/06 00:53
これはちょっとオチが読めましたかねえ。氏の作品を多く読んでいる人ほど分かってしまうのでは。氏の名作はこの類のものが本当に多いですからね。しかし加賀恭一郎シリーズってシリーズにする必然性があまりない気がします。刑事が主役だから加賀恭一郎にするか、みたいな。そう感じるのはこれまでの作品で加賀恭一郎という人物につかみどころがあまりなかったからですが、この作品では家庭環境を描いたりして人間味を演出しています。これもシリーズを続けていくための布石なのでしょうね。

No.205 10点 ベルリンは晴れているか- 深緑野分 2019/03/23 17:16
ネタバレあり

「戦場のコックたち」で圧倒された緻密な描写はこの作品でも健在です。さらに「戦場のコックたち」は兵隊目線でしたが、今回は市民目線での戦争+ミステリー小説です。日本人がこれを書けるのは本当にすごい。しかもこういう雰囲気の作品にこの手のトリックを仕込んでくるとは。
現在パートと過去パートが最後につながって終わりますが、その交点の置き方もいい。ラストシーンは希望を感じさせるものでしたが、そこは現在パートではなく過去パートであることを強く意識しなければなりません。現在パートである人物に指摘されたアウグステの「老人のような目」が俄然意味を持ってくるからです。それは戦争というものの深い罪を表すにこの上なく効果的でしょう。本屋大賞にノミネートされていますが、ミステリー好きのみならず多くの人に読まれることを願います。

No.204 4点 叙述トリック短編集- 似鳥鶏 2019/03/14 02:06
●ちゃんと流す神様 6点・・・終わってみれば最初の話が一番マシという実に萎えるパターン。
●背中合わせの恋人 5点・・・勘違いの経緯に工夫がない。本当にただの思い込み。そして話が無駄に長い。
●閉じられた三人と二人 3点・・・これは酷い。
●なんとなく買った本の結末 4点・・・いや、通話記録は?作中作の作者の力量不足のせいにして逃げないで。
●貧乏荘の怪事件 4点・・・途中で呼び名が変わるから違和感しかない。倒れた酒瓶の論理もおかしい。
●ニッポンを背負うこけし 5点・・・ここまでの各章の人物描写でもっと丁寧に伏線を張っていないと驚けないです。微かな違和感を感じさせて来ないと。
●あとがき 採点不能

こんなタイトルの本を出されて叙述トリック好きとしては読まないわけにいかない、そう思って手を出したのですが失敗でした。冒頭の「読者への挑戦状」で上げに上げたハードルを全く越えられていません。ほとんどの話が酷いですし、伏線が足りていないため「やられた」と思えません。全編通して仕掛けられている叙述トリックに関して特にそう思います。主要人物の人物描写をあまりしていないのは敢えてのことだと思われますが、それは揚げ足取りを避けるための逃げの手段。攻めの姿勢を見せて欲しかった。「あとがき」による解説も野暮なような。結局、叙述トリックというものは宣言してから仕掛ける物ではないなと再認識しただけのことでありました。

No.203 9点 ボッコちゃん- 星新一 2019/03/07 00:04
著者の作品には従前より興味はあったものの、作品の数が多いためどれを読めばいいのか分からずにいましたが、最近読んだ米澤穂信「本と鍵の季節」に星新一の代表作のような触れ込みで本書のタイトルが出てきたので読んでみました。とても50年近く前の作品とは思えません。ショートショートというジャンルを少し軽く見ていました。ただし前半に比べると後半はキレが落ちた気がします。「ボッコちゃん」「包囲」「不眠症」「生活維持省」「鏡」「人類愛」「ゆきとどいた生活」「妖精」「おみやげ」が特にお気に入り。最後に「ボッコちゃん」あるあるを。博士の家に強盗入り過ぎ。金庫開けようとしすぎ。

No.202 6点 沈黙のパレード- 東野圭吾 2019/03/02 18:43
ミステリーランキングで高評価なのでかなり期待して読んだんですが、意外と大したことない?多くの人を巻き込んだせいで、犯行の工程が無駄に細かくなっています。アリバイトリックはあれで成立しているんですかねえ。その気になれば別のところからも調達できるような物をフェイクに使うことが有効なのか。歌手の卵の凋落の経緯は陳腐ですし、登場人物のキャラ造形も類型的で没個性。こういうところは初期の作品の頃から変わってないですよね。終盤の囚人のジレンマ的なところは少し面白かったです。まあそこだけですかね。

No.201 7点 本と鍵の季節- 米澤穂信 2019/02/25 19:23
図書委員の男子高校生二人の友情(?)物語。謎解きは基本的に松倉君が主導権を握っているのですが、堀川君の方も単なるワトソン役には収まらず、後半の話では松倉君を上回る冴えを見せます。地味ではありますが、日常の謎という括りで見ればどの話も高い水準にあって楽しめると思います。

No.200 7点 ホワイトラビット- 伊坂幸太郎 2019/02/05 21:59
ギミックを成立させるために行った二つの場面の時間軸の微妙なずらしが見事。「レ・ミゼラブル」へのオマージュであろう作者の視点からの注意書きが要所で挿入されるのも最初は鬱陶しかったですが、時間軸のずれたこの作品を読みやすくするのに効果を上げています。なかなか新しい趣向で楽しめました。

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sophiaさん
ひとこと
世評の高い物を中心に読んでいっています。点数はミステリーとしてのみならず、読み物として面白いかどうかを考慮して付けています。ジグソーパズルのような複雑な作品は苦手です。
好きな作家
米澤穂信 今村昌弘 方丈貴恵 知念実希人
採点傾向
平均点: 6.96点   採点数: 359件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(31)
米澤穂信(16)
道尾秀介(14)
綾辻行人(13)
伊坂幸太郎(13)
島田荘司(12)
倉知淳(10)
アガサ・クリスティー(9)
泡坂妻夫(9)
恒川光太郎(9)