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sophiaさん
平均点: 6.95点 書評数: 357件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.257 5点 真夜中のたずねびと- 恒川光太郎 2020/10/23 00:36
どの話も途中までは面白いのですが着地がいまいちです。現実的なサスペンスを描きたいのか、死者が蠢くようなホラーを描きたいのか、どっち付かずになってしまっています。どの話もあまり印象に残りませんし、各タイトルも的を射てはいません。この方はファンタジー色が強い作品じゃないと本領が発揮されないように思います。

No.256 6点 僕の神さま- 芦沢央 2020/10/18 18:33
小学生版の「本と鍵の季節」といったところですが、この二人がなぜ仲が良いのかあまり分からないです。目玉エピソード「夏の「自由」研究」は論理の飛躍が気になりました。

No.255 9点 マツリカ・マトリョシカ- 相沢沙呼 2020/10/11 21:12
各人の推理が次々に披露される現代の密室談義が面白く、近年になくほぼ一気読みしてしまいました。この作品は犯人も動機もほぼオープンにされているようなものですが、密室トリックが皆目見当が付かないというものです。真相は一度ボツになった推理の応用になっているというのが実に高度でした。
ちなみにこの作品は前二作を読んでから読むのがお勧めです。シリーズのレギュラーメンバーみんなに見せ場があり、どうも物足りなかった前二作でコツコツと積み上げたものは全てこの作品の為のものだったのだと思わされました。特に主人公の成長が嬉しいです。

No.254 6点 マツリカ・マハリタ- 相沢沙呼 2020/10/06 23:53
全編通してのテーマであり、最後に明らかになる「一年生のりかこさん」の怪談および松本梨香子の正体の切れ味がどうもよくありません。情報を錯綜させすぎたせいでしょうか、年表でも作らないと事のあらましが掴みにくいかもしれません。初めの2話の時点では前作を超えたかと思いましたが、結局同じくらいの評価になりました。

No.253 6点 マツリカ・マジョルカ- 相沢沙呼 2020/09/18 00:21
ミステリー小説としては中身が薄いです。そもそも扱う事件自体が「こんな事件があったんじゃないか」という推測に基づくものが多く、実体が見えにくいので読み応えに乏しいです。あまり事件に関係のない叙情的な描写も多いですしね。それでも最終話のサプライズで幾分取り返したかと思いましたが、伏線となった彼女との思い出部分を読み返してみると、フェアとはちょっと言い難い気がします。怪談が事件につながったのは1話目だけですね。3話目のゴキブリ男は少しは事件に絡めてほしかったです。ただ全体としてこういう緩い作品も箸休めとしてはいいのかなと思ったりもします。6点が付けづらい流れですが、まあ5点に近い6点ということで(笑)

No.252 7点 罪人の選択- 貴志祐介 2020/09/11 23:44
●夜の記憶 4点・・・習作にもほどがある。
●呪文 6点・・・竜頭蛇尾。「Nintendo」には笑いました。
●罪人の選択 8点・・・二段構えのデスゲーム。さすがは表題作。面白い。
●赤い雨 8点・・・今の世相にマッチしたパンデミックもの(?)サスペンスとしても一級品。後半法廷ミステリになっちゃいましたが。

著者の短編集は初めて読みました。後半2つがよかったです。「夜の記憶」は加筆修正した方がよかったのではないかと思いますが、本格デビュー前の作品とのことで、そのまま載せることに意義があったのですかね。それと関係ありませんが、著者の作品の主人公は本当によくセックスをしますよね(笑)

No.251 5点 火のないところに煙は- 芦沢央 2020/09/04 23:59
連作短編ですが、消化不良の話が多くてやきもきしますし、かと言って最後に1話1話に立ち戻って保留した謎を鮮やかに解き明かしてくれるわけでもありません。がっかりです。1話単位で少しでも面白いと思えたのは「誰かの怪異」ぐらいでしょうか。

No.250 5点 透明人間は密室に潜む- 阿津川辰海 2020/08/29 15:12
ネタバレあり

●透明人間は密室に潜む 6点
マンションの伏線は良かったと思いますが、やはりこれは無理があるでしょう。顔かたちや声は何とか誤魔化せても、会話を乗り切れない。そして探偵が許せない。殺人を阻止することもできたのに泳がせたことは倫理にもとる。そんな人物に最後犯人を説教する資格はありません。
●六人の熱狂する日本人 4点
これはつまらない。「虹の色」と言うなら全メンバーの色をちゃんと提示してほしい。アイドルオタクたちがなぜ当のアイドルを犯人に仕立てようとして盛り上がるのかが分からない。証言台に立つところを間近で見たいから?そんな馬鹿な。悪乗りが過ぎて、読むのがきつかった。
●盗聴された殺人 5点
何の音なのかという謎にあまり興味が持てない。調査対象者が調査員と、という設定は都合よすぎないですか?過去を振り返る構成にする必要もあまりない気がします。
●第13号船室からの脱出 5点
ライアーゲーム?ひねりすぎでよく分からない。再読して理解しようという気にもなれない。

総評
「紅蓮館の殺人」の高評価も考え直したくなるぐらいの出来。短編は向いていないのでしょうか。若くして頭角を現した作家さんですが、正直言ってまだ粗さが目立ちます。不自然なところを不自然ではなく感じさせる技術が欲しい。

No.249 8点 女王国の城- 有栖川有栖 2020/08/17 17:03
これも本来もっと早く読んでいないといけない作品でしたが、諸事情により今更になって読了しました。前三作はだいぶ昔に読んでいます。隠された拳銃の論理はとても面白いのですが、動機面が思っていたよりも雑でしたかねえ。十一年前の事件も含めて、被害者間のミッシングリンクがもう少し何かあるのかなと思っていたんですけど。それと時折マリア視点になるのには特に意味はなかったようで、これは「双頭の悪魔」の名残ですかね。しかしやはりEMCメンバーの絡みは面白い。前三作も読み返したくなりました。三作とも持っていたのになぜ売ってしまったのだろう。

以下ネタバレ

ニシさんへ

マリアがイヤリングの片方を落としたのは、千鶴が穴に入る前ではないですか?

No.248 5点 失はれる物語- 乙一 2020/08/09 19:18
プロットは悪くないのですが、何でそういう風にするのかなと思うところが多いです。「手を握る泥棒の物語」はオチがもったいない。「得意げな表情」と書いてしまわない方が良かった。「失はれる物語」はタイトルを歴史的仮名遣いにした意図が分かりませんし、「しあわせは子猫のかたち」は子猫を殺す必要性がありません。「マリアの指」はマリアの家や大学から近い等々力陸橋の方を選ぶのが自然だと思うのですが。
あと全体を通して思うのはやはり文章の拙さです。氏の作品を読むのは十数年ぶりですが、こんなに下手だったっけと感じました。赤ペンを入れたくなるレベルで、気になってなかなかテンポよく読み進められませんでした。アラフォーの現在、少しは上達されていることを願いますが。

No.247 8点 そして誰もいなくなる- 今邑彩 2020/07/18 21:30
「卍の殺人」と同じく海外古典名作(今回は伏せる必要はなさそうですが)の本歌取りに挑戦した作品ですが、これも成功でしょう。元ネタの作品のようにクローズドサークルでもないのに部員10人も殺せるのかと思いきや、連続殺人の軸を途中でずらす手法が実に巧み。クライマックスの犯人との直接対決に入るのが残りページ数からすると早すぎるのではないかという心配もしましたが、その後にもうひとひねりが待っていました。あとがきを読むと、この方の本歌取りの手法に否定的な向きもあるようですが、これは胸を張っていい傑作であると感じました。

以下ネタバレ

測量ボーイさんへ

○○役の人物が死んだと思わせてやはり生きていたこと、最後にやはり署名付きの手紙を残して消えること、だと思います。

No.246 7点 金雀枝荘の殺人- 今邑彩 2020/07/12 17:16
あらすじを読むと大変ミステリアスで面白そうなこの作品。実際に読み始めても、不可解な惨劇のあった館で推理合戦を繰り広げるという設定に引き込まれページが進むのですが、終盤になると趣がガラリと変わり、犯人が手当たり次第に人を襲い始める展開になります。期待していたような綿密に練られた殺人劇ではなかったことで一時落胆しましたが、後日談の最終章で物語が上手くまとめられており、評価がV字回復しました。この作品の肝はハウダニットではなくホワイダニットだったのだと納得しました。ただ、先にも述べた通り犯人が終盤に豹変しすぎなので、あの人物が犯人だったという現実感は薄いです。また、隠された血縁関係は読者にはなかなか分からないので、伏線がもう少しあるとよかったです。後は霊感少女の能力をもうちょっと活かして欲しかったと思います。

No.245 8点 紅蓮館の殺人- 阿津川辰海 2020/07/04 20:04
「紅蓮館の殺人」というよりも「吊り天井の館の殺人」という感じです。絵の論理、額の論理が細かくて通好みでしょう。人物関係等でちょっと偶然が過ぎるのが難点ではあります。犯人の意外性はあまりありません。ラストは苦く切ないです。

以下ネタバレ

葛城が死体に振りまかれた消臭剤に気付いた描写がないように思われるのですが、必要ありませんかね?見落としかと思って必死に探してるんですが見つかりません。序盤につばさのフルネームを何気なくはっきりと書いちゃうところがこの作者の度胸があるところですね。何の引っ掛かりも感じず流しちゃいましたよ。新旧名探偵対決は痛み分けといったところですが、シリーズ化もありそうな、そしてなさそうな終わり方でした。最後に、この作品のあの展開はどうしても西澤保彦の某山荘ものが頭をよぎりますね(笑)読後にいっぱい語りたくなった作品でした。

No.244 7点 片桐大三郎とXYZの悲劇- 倉知淳 2020/06/29 17:16
●ぎゅうぎゅう詰めの殺意 6点
●極めて陽気で呑気な凶器 6点
●途切れ途切れの誘拐 8点
●片桐大三郎最後の季節 7点

素晴らしいのは「途切れ途切れの誘拐」ですが、「Zの悲劇」ってこんなのでしたっけ?XやYに対してZは正直言ってあんまり覚えてないんですよね。最初の話の通勤経路の説明でZという言葉が使われるのがまた紛らわしいですし(笑)最終話で急に主観描写になったと思ったら、やはり仕掛けてきました。「最後の事件」のロジックを逆手に取っています。なお、この作品は短編集というか中編集ですが、どの話も内容に比して冗長です。もう少し短くまとめられたのではないかと思います。

No.243 7点 卍の殺人- 今邑彩 2020/06/22 19:25
探偵役も言及している通り、海外古典名作の本歌取りに挑戦した作品ですが、なかなか健闘していると言ってよいのではないでしょうか。メイントリックは「金田一少年の事件簿」にそっくりなものがありましたが、これが元ネタなのですかね。館の形は必ずしも卍でなくともよい、という指摘が鮎川哲也氏からもされていましたが、「Xの殺人」よりも「卍の殺人」の方が日本的な趣なのでこれでよかったと思います。一応作中でも卍の持つ意味が説明され、ムード作りがされていましたしね。余談ですが、図書館で借りたハードカバーが学研の本のような装丁でびっくりしました(笑)

No.242 7点 祈りの幕が下りる時- 東野圭吾 2020/06/14 02:09
「容疑者Xの献身」と「白夜行」のエッセンスが入っているので、必然的に悪い作品にはなりません。ただし中盤までは刑事たちがひたすら聞き込んで回るだけの展開で退屈に感じました。「どれだけ無駄足を踏んだかで捜査の結果が変わってくる」の言葉通りであります。前作「麒麟の翼」では七福神巡り、今作は橋巡りというものがキーとなり、物語に加賀のホームグラウンド日本橋の地理を取り入れるのが上手いです。
なお、「赤い指」以降色々と後付け設定して、なおかつ松宮というパートナーも出来たわけですが、それと同時に加賀恭一郎という人間が丸裸にされましたので、今後このシリーズがどう展開していくのかが気がかりであります。

No.241 5点 夏と冬の奏鳴曲- 麻耶雄嵩 2020/06/01 15:55
これは奇書ですよね。観念的な事ばかりを延々と。毎回肝心なところははぐらかす神父にイライラさせられました。しかもこういう思わせぶりな伏線を張るだけ張って、ちゃんと回収せずに読者に投げっぱなしで終わるリドル的なのは嫌いなのです。登場人物は全員頭おかしいですし。密室トリックは読者を馬鹿にし過ぎですし。最後の最後にメルカトル鮎を出す必要も全くないですし。終盤の「春と秋の奏鳴曲」の上映のときにはやっと面白くなって来たと思ったものですが。というかこの方の作品は神様シリーズ以外基本的に苦手です。

No.240 6点 麒麟の翼- 東野圭吾 2020/05/26 17:51
スラスラ読めたのですが、真犯人の浮上が唐突に過ぎた感があります。もう少し伏線を張れなかったものでしょうか。悠人の妹の思いもどこへやら。肝心の「麒麟の翼」も×××のタイトルでした、ではねえ。

No.239 8点 殺人犯 対 殺人鬼- 早坂吝 2020/05/23 16:38
久しぶりにスカッと騙されました。読み返すと成程、上手く書かれています。二重人格(?)少女や透明な防火扉などの変な設定もちゃんと意味がありました。この作品において「殺人鬼」が誰を指すのかという問題は付きまとうと思います。自分も初めはアンフェアじゃないか?と思いましたが、それも最終章に効かせるために必要なのだと判断いたしました。余りにも荒唐無稽な話でありますし、文章の軽さや作者が児童養護施設についてあまり分かってなさそうなところなど気になる点もあるのですが、ミステリーとして純粋に面白かったのでこの点数を差し上げます。

No.238 8点 月の扉- 石持浅海 2020/04/25 19:00
再読です。超現実的な展開になるであろうことはタイトルが示していますし、本編を読み進めれば尚更なので私は問題ありませんでした。むしろそれと現実的な事件をどう融合させてくるのかを楽しみにしていましたので、よくやったと拍手を送りたいです。なかなかの衝撃的な結末ですよね。被害者クズ過ぎる。柿崎さん自分勝手過ぎる。座間味くんいい人過ぎる。

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sophiaさん
ひとこと
世評の高い物を中心に読んでいっています。点数はミステリーとしてのみならず、読み物として面白いかどうかを考慮して付けています。ジグソーパズルのような複雑な作品は苦手です。
好きな作家
米澤穂信 今村昌弘 方丈貴恵 知念実希人
採点傾向
平均点: 6.95点   採点数: 357件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(31)
米澤穂信(16)
道尾秀介(14)
綾辻行人(13)
伊坂幸太郎(13)
島田荘司(12)
倉知淳(10)
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