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sophiaさん
平均点: 6.92点 書評数: 391件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.291 9点 兇人邸の殺人- 今村昌弘 2021/08/16 00:23
「屍人荘の殺人」と同じくクリーチャーによって人の行動が支配される特殊設定ミステリー。今作は更にホラーサスペンス色が強いです。毎度映画に例えてすみませんが、これは「バイオハザード」ですね。読者を引き付ける力は作を重ねるごとに上がっています。
恒例のクローズドサークルものでもありますが1、2作目とは性質の異なる第3のクローズドサークルです。なぜテーマパークのど真ん中などという雰囲気の出ない開けたところを舞台にするのかと思っていましたが、そうすることでむしろクローズドサークルになるという逆説的な舞台設定です。
殺人事件の解明は、恒例の細かい論理の積み重ねによる消去法推理です。著者にこの辺りの基礎体力がしっかりあるから奇抜な設定も生きるんですよね。しかし「犯人は探偵の敵なのか」の言葉通り、この作品において犯人当てはさほど重要ではありません。目玉は巨人の正体と鍵を取り戻す方法であり、考え抜かれた建物の複雑な構造がそれを下支えしています。そしてそれは読者を驚かせるのみならず人間ドラマにも繋がっていくのです。これぞ館ものミステリーではないでしょうか。
この作品で語られる名探偵論は阿津川辰海の葛城シリーズと似通ったところがあります。葉村の考えは葛城寄り、比留子は飛鳥井光流寄りでしょうか。しかしながら「雨降って地固まる」で最後に二人の信頼関係が深まったのは良かったと思います。「彼を侮るな」には心を打たれました。
もったいないのは終盤のとある伏線です。あそこまで話が進んだ上でのあの描写ではこの人物が××だと教えているようなものでした。あれはいらなかったかも。最後になりますが、未解決の大きな謎が一つありますね。比留子さん、トイレどうしたんでしょうか。

No.290 5点 虹の歯ブラシ 上木らいち発散- 早坂吝 2021/08/05 23:58
「緑」まではまあよかったです。「黄」はちょっと推理不可じゃないですか?一応「青」に伏線のマジックはありましたけど、そこに繋げるのは飛躍な気がします。その後の「橙」で軽くパニックになりまして、最後の「赤」はもう真面目に読む気がしませんでした。これは前作と違い単なる悪ふざけになってしまったと思います。××が客というのも前作ですでにやっていますし。で、結局何歳なのよ?

No.289 6点 アデスタを吹く冷たい風- トマス・フラナガン 2021/07/29 00:29
訳が古臭くて大変読みにくかったです。まず本当にそれが大問題です。まあ面白かったと言えるのはテナント少佐の四編だけですかね。「アデスタを吹く冷たい風」と「国のしきたり」、「獅子のたてがみ」と「良心の問題」はそれぞれ発想が同じではありますが。そして解決がいつも唐突なので推理の過程をもっと描いてくれるとよかったです。「獅子のたてがみ」は状況に無理がありますよね。どうやったらそんな錯誤が生じるんでしょうか。

No.288 7点 うるはしみにくし あなたのともだち- 澤村伊智 2021/07/14 21:27
最終盤のユアフレンドの正体が明らかにされるところはよかったのですが、××さんが開けっぴろげ過ぎであること、そしてスマホが便利過ぎであることに少し醒めてしまいました。登場人物は下衆な人間が多いです。それも生徒以上に親や教師に問題があります。特に犯人の親はあり得ないでしょう。それでも人の親なのか。

以下ネタバレ

犯人は自分で思っているように醜くはないのではないかという私の読みは、スケープゴートの登場で一旦はかわされた形になりましたが、しかしそのスケープゴートの方も最初はあまり醜いという扱いはされてませんでしたよね。この辺りのバランスは作者も苦心したのではないでしょうか。それと「誰にも気付かれないように渡す」の定義が最後までよく分かりませんでしたね。「誰にも」に相手本人も含まれるのかどうかがまず意見の分かれるところだと思いますし、メールがありなら封筒を相手に直接手渡すのもありになりませんか?

No.287 7点 神の悪手- 芦沢央 2021/07/11 00:19
●弱い者 6点・・・そんなボランティアが本当にいるんですかね
●神の悪手 9点・・・文字通りの将棋ミステリーで完璧な作品
●ミイラ 5点・・・死生観と詰将棋の関連付けが無理やりに感じます
●盤上の糸 4点・・・何を表現したかったのか分からない。叙述トリックも不要
●恩返し 8点・・・タイトルも伏線

表題作「神の悪手」は一文が短くテンポのある筆致が主人公の心境のめまぐるしい変化とシンクロしており、アリバイ作りと棋士としての矜持がせめぎ合う展開も斬新で、かなり読み応えのある作品に仕上がっています。
将棋をテーマにした連作短編集としてはあまり成功しているとは言えないのですが、何しろ表題作が素晴らしいので、そのためだけにでも手に取る価値のある本だと思います。

No.286 5点 僕が答える君の謎解き 明神凛音は間違えない- 紙城境介 2021/07/04 16:50
相沢沙呼の「medium 霊媒探偵城塚翡翠」とマツリカシリーズをミックスしたような作品。推理の直線アプローチと迂回アプローチの二段構えの構造は前者の特徴です。設定や大まかなストーリー運びは面白いのですが、如何せんひとつひとつの事件があまり面白くありません。ゴチャゴチャしてますし、推理にも飛躍が多いです。というか「つづく」んですか(笑)ならばこの作品単体での評価は難しいのですが、暫定的にこの点数にしておきます。

以下ネタバレで疑問や不満

第1話 親友の二人が学年が違うという設定にした意味はあるのか。
第2話 犯人が落ち葉を体に付けて教室に入ってきた可能性がなぜ無視されているのか。あと校内の見取り図が欲しい。
第3話 逢引きが真相なら鍵を持っていればレンチはいらなかったのではないか。窓から見えない死角で飲食ぐらいは出来たのではないか。

No.285 9点 六人の嘘つきな大学生- 浅倉秋成 2021/06/30 23:45
人や社会の表と裏、善と悪の二面性にスポットを当てた青春就活ミステリー。ミステリーを読み慣れている人なら第一部終盤に用意されている反転は何となく読めるのではないでしょうか。そして「まだページが半分ぐらい残ってるけど、第二部で何を描くんだろう」などと思うわけですが、第二部でも構図はさらに二転三転していくのです。第一部は過去、第二部は現在という構成ですが、第一部の随所に現在からの振り返りを挿入することが第一部の補完となり、第二部へ向けての伏線にもなっているという実にテクニカルな作品です。8点か9点か迷いましたが、「教室が、ひとりになるまで」を超えなおかつ今回は著者得意のSF要素を使わずにこれだけの物を読ませてくれましたので9点といたします。

No.284 7点 人魚の眠る家- 東野圭吾 2021/06/16 00:04
脳死と植物状態の違いも分かっていなかった私ですのでこの作品は大いに勉強になりました。目次の各章サブタイトルで物語の大まかな流れが分かってしまうにも関わらず、続きが気になって一気に読まされるのはこの作者の力だと思います。ただし、中盤の募金活動のくだりはサプライズを狙い過ぎたあまり本編から浮いてしまった気がします。あれがないと大方の予想通りの起承転結になってしまうので、アクセントの意味でも入れたくなる気持ちは分かるのですが、あの一途な人物がああいう回りくどいことをするのにはやはり違和感がありました。

No.283 8点 オーブランの少女- 深緑野分 2021/06/06 19:14
●オーブランの少女 8点・・・時代や民族などの背景を隠したのが巧み
●仮面 7点・・・気分が悪い(笑)
●大雨とトマト 7点・・・洒落が利いていてコンパクトにまとまった好編
●片想い 8点・・・なぜか急に朝ドラに
●氷の皇国 8点・・・展開の読めない一大叙事詩

古今東西を舞台にして少女を主役に立てた粒揃いの短編集。初めの2つを読んだ時点ではいわゆるイヤミス集なのかなと思っていましたが、「大雨とトマト」はコメディタッチで、そして「片想い」は女学生の切なくも爽やかな青春を描いてきました。著者の作風の多彩さには感心するばかりです。「氷の皇国」は「オーブランの少女」と構成が似てしまっているのですが、間に毛色の違う話を挟んだことであまり気にならないようになっています。収録順もよかったですね。著者は近年は専ら長編を書いておりそちらも傑作揃いなのですが、是非またこういう短編集も書いてもらいたいものです。

No.282 4点 密室殺人ゲーム・マニアックス- 歌野晶午 2021/05/23 02:12
「2.0」で既にげんなりした部分はあったのですが、毒を食らわば皿まで(?)の精神で3作目にも手を出しました。結果やはりと言うべきか、1作目から順調にクオリティが下がっていって、今作終了後にはもう草も生えない状態となりました。まずゲームの存在が世間に知れ渡ってしまったのが興醒めなんですかね(例えるならば、デスノートの存在を知るのはキラだけであってほしかったというような)。
「王手飛車取り」のコロンボは「出題者の用意した解答ではなくても矛盾がなかったら正解として認めろ」とキレましたが、今作のコロンボは「制作者の意図を汲み取り、制作者が用意した結末に向かうのがゲーム」と随分大人なことを言います(別人だから不思議はないのですが)。「密室殺人ゲーム」はどうあるべきなのか、この命題に読者の私も振り回されたシリーズでした。

No.281 7点 ○○○○○○○○殺人事件- 早坂吝 2021/05/17 23:32
文庫版を読みました。タイトルだけは当てることが出来ました。どうしようもなく下品でアホな作品ですが、「ミステリマニアの主人公がアレを疑わない理由」という隠し問題を設定するなど、実は高度なことをやっているんですね。漫才コンビの笑い飯を初めて見たときのような衝撃を受けました。この作者の「思い付いたら書く」という精神は大いに評価したいです。

No.280 5点 天使の屍- 貫井徳郎 2021/05/14 00:08
自殺するほどのことかと思ってしまうのは20年以上前の作品だからでしょうか。それと優馬がどういう子なのかよく分からなかったので、回想シーンでも随所に挿入して描いてくれるともっと父と子の問題に感情移入できたと思います。

No.279 6点 密室殺人ゲーム2.0- 歌野晶午 2021/05/08 01:52
続編を作るようなものではないですね。前作との関連性が判明した中盤がピークでした。しかもこれは実質的に前作のリブートのようなものですし、各出題も前作の二番煎じです。最後どうなるのかだけを期待して読み進めましたが、またしても消化不良の終わり方でした。やはり前作だけで綺麗に完結させた方が良かったと思います。
「相当な悪魔」の犯行当日の生配信で出題者が堂々と嘘を吐いているのはいいんですかねえ。このゲームのフェア-アンフェアのラインが未だによく分からないんですよ。

No.278 7点 スケルトン・キー- 道尾秀介 2021/04/22 23:50
この手の作品としてはネタばらしが随分早かったので心配しましたが、失速することなく最後まで緊迫感を維持できています。ある意味でこの作品の肝だと思いますが、反転の芸が細かいですねえ(笑)綾辻行人の某作品のアレみたいなものですが大変分かりにくく、恐らく多くの読者はしばらく気付きません。そして頃合いになったところで分かりやすいやつが出てきてまさかと思いページを戻る、作者の狙い通りの読み方をさせられるでしょう。いや、久しぶりに騙されました。ジャンルはサスペンスにしましたが、取りようによってはクライムかもしれません。

No.277 5点 月と蟹- 道尾秀介 2021/04/18 00:26
「球体の蛇」を純文学寄りと評しましたが、本作はもはや純文学の域ではないでしょうか。「球体の蛇」に増して心情描写が多く、終盤になってやっと面白くなってきたと思ったら特に何もなく終わりました。直木賞より芥川賞の方が合っているような気さえします。手紙の犯人など予想通りでしたが、さしたる理由もなかったことの方に驚きました。昭和の終わりの時事ネタが主人公世代の自分には懐かしく感じられたのですが、そもそもなぜ時代設定を昭和にしたのでしょうか。

No.276 6点 球体の蛇- 道尾秀介 2021/04/08 22:36
読んでいる最中は「ラットマン」のような過去の事件の反転を目指した作品なのかなと思っていましたが、それとはまたちょっと違うリドルストーリーでした。一応ミステリーではありますが、主人公の心情描写がメインで純文学寄りなのですかね。「球体の蛇」というタイトルはあまり的を射ていないように思います。

No.275 6点 逆ソクラテス- 伊坂幸太郎 2021/04/06 00:34
ノスタルジックで切ない前半の2つ「逆ソクラテス」「スロウではない」がよかったですね。後半の話はちょっと物騒でした。こういう連作短編集の常として、そして特に伊坂幸太郎という作家の特性を考えると、最後にそれまでの話に登場した人物を再登場させて締めるのだろうなと予想はしていたのですが、あの人物ですか。うーん、あの人物は違うんじゃないですかねえ。そんなに改心するようなことがありましたっけ。最後をもっとふさわしい人物が締めていればプラス1点というところでした。他にも複数の話に登場する先生がいますが、この先生を使い回す必然性があまり感じられませんでした。リンクをもっと効果的に使って欲しかったです。

No.274 7点 密室殺人ゲーム王手飛車取り- 歌野晶午 2021/04/02 21:30
五人のキャラが立っていて掛け合いが面白かったです。現実世界も巻き込んで話が広がっていくのは予想の内でしたが、それでもやはり驚きが待っていました。問題なのはやはり終わり方です。オフ会にはちょっと醒めましたし、訳の分からないゲームも不要でしょう。Q7後の独白パートでサプライズと同時に終わっていれば綺麗だったのではないでしょうか。

No.273 6点 蒼海館の殺人- 阿津川辰海 2021/03/21 18:48
災害を犯行計画に取り入れてきたところなどは「紅蓮館」より優れた点なのですが、事件の全容があまりにも複雑すぎましたね。そう犯人の思惑通りに事が運ぶとは思えませんし、状況設定や推理も穴だらけ、更には攪乱戦術を用いすぎたことで結局何が真実であったのか読者の頭に残りにくくなってしまったと思います。そして犯人の意外性を出そうとし過ぎたあまり、問題編と回答編で完全に別の人格になってしまっています。中盤あたりでは9点、10点の予感を感じていただけに残念です。なお今作で葛城は前作の痛手から立ち直ったという体ですが、むしろ逆にもっと深い傷を負ったのではないですか?

以下ネタバレでこの作品の大きな傷(?)

196ページの中ほどの文章で、あの人物の身代わりの線は完全に否定してあるように思えるのですが。

No.272 6点 雨の降る日は学校に行かない- 相沢沙呼 2021/03/15 23:55
「教室に並んだ背表紙」が割とよかったので、似た系統と思われる本作にも手を出してみましたが、こちらは更にミステリー要素がありません。そして「教室に並んだ背表紙」のように各エピソードの関連性があまりないので(一部を除き舞台が同じ学校なのかも不明)、連作短編集としての厚みという点では落ちますかね。ただ、各タイトルを聞いて話の中身を思い出せるのはこっちだろうなと思います。「死にたいノート」と「プリーツ・カースト」の卵の殻にヒビが入ったような終わり方が好きです。

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sophiaさん
ひとこと
世評の高い物を中心に読んでいっています。採点に際してはストーリー性や読み易さも重視します。ジグソーパズルのような複雑な作品やオチのない話、リドル・ストーリーは苦手です。
好きな作家
最近だと米澤穂信 今村昌弘 方丈貴恵 知念実希人あたりを好みます
採点傾向
平均点: 6.92点   採点数: 391件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(31)
米澤穂信(16)
道尾秀介(14)
伊坂幸太郎(13)
綾辻行人(13)
島田荘司(12)
倉知淳(10)
泡坂妻夫(9)
恒川光太郎(9)
アガサ・クリスティー(9)