皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
レッドキングさん |
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平均点: 5.28点 | 書評数: 934件 |
No.234 | 5点 | 帽子収集狂事件- ジョン・ディクスン・カー | 2019/07/30 18:58 |
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原タイトルは「マッドハッターミステリー」。マッドハッター!おお あの「きちがい帽子屋」か! で、「アリス」「あわてんぼうウサギ」「セイウチ親爺(当然フィル博士)」と、いかにもあの登場人物達になぞらえたキャラが出てきて、これに「首をお刎ね!」の「ハートの女王」なんかがそろってたら、まんま「不思議の国のアリス殺人事件」だった。
自作自演犯罪や過失の隠蔽、不倫、思いつめた金銭欲求といった複数者のちっちゃな行為の偶然の重なりが「霧の倫敦の不可能殺人」を演出してしまう。 ところで乱歩、なぜこれ「世界推理小説ベスト10」だかに入れたんだろう。これに、被害者が最後に目撃された場所と死体が発見された場所の「移動不可能性」でも描かれてて、あの場所移動トリックが絡めてあったとかならばともかく、これではカーの代表作というには、ちともの足りない。 想像するに、「ポーの世界最初のミステリー原稿」ネタが、乱歩の心の琴線に触れたのではないかと・・・。 |
No.233 | 4点 | 中途の家- エラリイ・クイーン | 2019/07/26 08:43 |
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「もしAが女ならばAは口紅を持ってる」「もしAが女ならばAはパイプを吸わない」・・こんなのロジックとして「あり」か? 最初から一番くさい奴が犯人で終わったが、一歩前のダミー犯人の方が面白かった。
「・・僕らは推理小説の中の登場人物ではないし・・」には笑った。明らかに「三つの棺」の「わしらは皆、推理小説の中の登場人物なんだから・・」への返しネタ。 ところで、あの凶器の指紋だが、あんなもん残ってたら我が日本の裁判では、間違いなく有罪の「疑い得ない」証拠とされてしまうだろう。弁護士が必死に由来の「ロジック」で反証してみても。 |
No.232 | 5点 | ナイルに死す- アガサ・クリスティー | 2019/07/14 10:16 |
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この原作小説よりも、映画「ナイル殺人事件」の方が面白い。
「人間関係トリック」によるアリバイトリックは見事。だがこれのヴァリエーションであること明らかな「不連続殺人事件」の方がもっと面白い。 |
No.231 | 4点 | 闇からの声- イーデン・フィルポッツ | 2019/07/14 09:29 |
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探偵が「怪物像」に気付き、犯人が気付かれたことに気付いたかも知れない、ってあたり実にサスペンスしていた。
そういえば「ミステリー」と「サスペンス」の違いについて、テレビかなんかでやってたなあ。「犯罪を廻る謎があって解いて行くのがミステリー」「最初から明白に犯罪に沿って顛末を描いて行くのがサスペンス」・・。でもこれミステリでもあるよなあ。両方の要素ともに良く出来てたら、それは凄い作品なんだろな。 ※こんな殺人トリックを考案した。壁に掛かってる普通の風景画の上下をひっくり返すと恐ろしい幽霊の絵に見えるっていう騙し絵の仕掛けを作り、それを心臓病持ちのターゲットに遠隔操作で見せてショック死させ、その後、絵の上下を元に戻しておく・・・ |
No.230 | 5点 | 赤毛のレドメイン家- イーデン・フィルポッツ | 2019/07/14 09:12 |
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いかにも英国通俗小説に出て来そうなヒロイン。こんなの出しちゃったらミステリでは当然に・・・。
乱歩がこれを「探偵小説NO.1」みたいに推したってのは分からんではない。彼、これのトリックとか以上に小説自体に嵌ってしまったんだろうな。当時の日本人にとって、あんな欧州風景や西洋美女への憧憬たるやさぞかし強かったことだろう。 |
No.229 | 6点 | 夜長姫と耳男- 坂口安吾 | 2019/07/13 22:58 |
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(採点と評は「都会の中の孤島」に対してのみ)
坂口安吾晩年の暗い短編小説。不器用で直情型の男が、陰惨な殺人事件の犯人に間違えられてしまい、冤罪のまま死刑判決を受けてしまう。他の登場人物には真犯人が分かっているのに助けようとはしない。そして読者も、この冤罪の男にやがて死刑が執行されてしまう事を疑わない。暗く恐ろしく、でもどうしようもないなという思いを残して。 |
No.228 | 7点 | 不連続殺人事件- 坂口安吾 | 2019/07/13 22:28 |
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「葉を隠すなら森の中」 ある一つの殺人の目的を隠すためには、不要な連続殺人を起こして、そこに紛らわせてしまえばよい。その目的に4人の死体が必要ならば、さらに多くの死体を作って、もっと多くの役者を集めて何の目的かワケわからぬ様にしてしまえばよい。だが限られた舞台の中で多くの連続殺人が起これば、全ての犯行が可能だった人物が絞られて来てしまう。しかし犯行が単独者でなく複数者で行われたとしたら・・・。目的の「不連続」と犯人の「不連続」。共犯者の「人間関係トリック」が、不慮の事故によってあからさまに演じざるを得なくなり、逆にあぶり出される結果に・・・。犯人が自分を摘発した探偵にラストに贈る言葉「汝、賞賛あるべし」が最高にカッコイイ。
(以下、ロコツにネタバレ) 40年前のATG映画「不連続殺人事件」を池袋の名画座で見た。故:内田裕也追悼特集の一本で、映画の出来自体はいかにも貧乏くさい昭和日本映画だが、「ピカ一」を演じた若き内田裕也と「あやか」の夏純子が見事に役に嵌ってて、以来、坂口安吾の小説読んでも、「ピカ一」の偽悪的かつ詩的なセリフことごとくが内田裕也の口調に脳内変換され「あやか」の顔が全て夏純子にイメージされてしまう。そしてそれが実にいいのだ。 |
No.227 | 3点 | 最悪- 奥田英朗 | 2019/07/11 17:02 |
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これも面白かった。でも後味悪くて、何よりミステリではないのでオマケしてもこの点数だけれど。 |
No.226 | 4点 | 邪魔- 奥田英朗 | 2019/07/11 17:00 |
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「奪取」のこと書いてて、主婦が自転車を懸命にこいで行くこの作品のラストを思い出した。後味が良くなくミステリの要素は薄いけれど面白かったんで2点ほどオマケ付けちゃう。 |
No.225 | 4点 | 奪取- 真保裕一 | 2019/07/11 16:19 |
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「文句なく面白い!」という世評通り、文句なく面白い。苦い味のエンドも含めて傑作映画「大脱走」並みに面白いので、ミステリではないけれども4点おまけにあげちゃう。
追記:そっか!奪取ってdashにかけてんのか、今気づいた。 |
No.224 | 5点 | 悪意- 東野圭吾 | 2019/07/06 20:29 |
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全てが一人称叙述か手記で、当然に読む者を誘導するためのもの。殺人のアリバイトリックと見せかけて、探偵によるトリック見破り自体を逆手に取り、自己の目的のための物語作りへと巻き込んで行く。物語をほのめかされると疑いたくなるが、自力で解読した物語は信じてやまない探偵のサガ。犯人の意図通りに誘導された物語の破壊と再構築。この探偵刑事ってあの「卒業」の学生だった奴だね。なんかやな奴にひねたなあ。 |
No.223 | 4点 | 死にいたる火星人の扉- フレドリック・ブラウン | 2019/06/29 17:13 |
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これ日本語タイトルの勝利だね。原タイトルだったら読まなかったし。最初のトリック、探偵と同様に「闇からの声」の変形を予想していた。
※こんな殺人トリックを考案した。壁に掛かってる普通の風景画の上下をひっくり返すと恐ろしい幽霊の絵に見えるっていう騙し絵の仕掛けを作り、それを心臓病持ちのターゲットに遠隔操作で見せてショック死させ、その後、絵の上下を元に戻しておくという・・・ |
No.222 | 4点 | 理由- 宮部みゆき | 2019/06/27 22:27 |
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むかし、中古マンションを購入しようと、あっちこっちの部屋を内覧したことがあった。その中に、未だ家族が住んでいて、父親の恨めしそうな視線や女の子の淋しそうな表情の方が印象に残ってしまった部屋があった。人生ってキツイな、お互いに・・・と、あまり関係のない話になってしまった。 |
No.221 | 7点 | 火車- 宮部みゆき | 2019/06/27 21:57 |
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フー?・・「犯人は誰?」ではなく「彼女は何者?」のフー。文庫本約600頁の中で、ずっとそのフーであるヒロインが読者に現前する場面が、最後のわずか数頁というのが凄い。
水商売のネエちゃんに「人生論」語らせるのは愛嬌としても、弁護士に長々と「社会時評」ウンチクさせる場面はちとウザい。こういったあたりで眉に唾付けたくなるんだよな「社会派」とかいうやつ。 それはともかく、あのラストシーンが良いので点数は1~2点のオマケ付き。 |
No.220 | 5点 | ルームメイト- 今邑彩 | 2019/06/21 07:01 |
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同じルームメイトものとしては「二の悲劇」よりも面白い。
ところで、もしも「一人称」だけで多重人格物を叙述されて、登場人物のみならず叙述者自体さえも怪しくなったら、ミステリとしての解読は難しくなるかなあ。 ※追記。これ文庫版では最終章を「仮封印」し、作者が思わせぶりに「読んだら気分悪くなるわよ、それでよかったら・・」みたいに書いてるけど、あんなこと書かれたら余計に読むよ。 |
No.219 | 4点 | 二の悲劇- 法月綸太郎 | 2019/06/20 23:54 |
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タイトルの「二」だが、名と実の分離としての「二」、二人称の「二」、それから双子の「二」。
名前のネタは「日常の謎」短編ミステリ位であっさりまとめられてたほうが良かったようにも思える。にしても、葛(カツ)-清(キヨ)-葛(クズ)なんてよく見っけてきたなあ。 一人称の叙述が、叙述トリックもしくはワトスン君的な「不完全な三人称」としての謎提示の表現ならば、ミステリは「完全なる三人称」の描写として解決する。ここでは登場人物の一人を二人称で描写することによって、あるダミー解決の伏線の効果を狙ってるんだろうけれども、結果はいまいちかな。 で、双子ネタだけど・・それはさすがに「なんたらミステリ十戒」レベルのしろもんじゃないの? |
No.218 | 7点 | 一の悲劇- 法月綸太郎 | 2019/06/15 17:08 |
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身代金誘拐殺人ものだが意外にも密室のオマケ付き。明らかに原尞「私が殺した少女」に次韻しているから、とても素直には読めず、フー・ホワイ・ハウにも用心深く構えてしまう。結果「真犯人これしかないだろう」って所に正解できた。あのアリバイトリックには満足。
にしてもタイトルの「一」だが、ダイイングメッセージに絡めたあのネタ、ありゃ少し無理だよ。 |
No.217 | 6点 | 頼子のために- 法月綸太郎 | 2019/06/12 22:38 |
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娘を殺した犯人に復讐した父親の「手記」が第一章に置かれていれば、どうしたって「叙述トリック」を疑いたくなり、驚きへの期待値も上がる。で、驚きの真相は、おおよそ想定内だった。
叙述のままに身を任せ素直に驚いて貰える「ハードボイルド探偵物」と違い、捻りに捻った展開を期待される「新本格物」の作者って大変だなあ。 にしてもこの話、「親-子」の愛も「男-女」の愛も、結局は「自己-愛」には及ばないって怖い結論になる。 |
No.216 | 6点 | 私が殺した少女- 原尞 | 2019/06/11 23:35 |
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少女誘拐殺人に巻き込まれた探偵の一人称語りの小説。実際に起こった様に見えた出来事が、フーダニット進行に釣られながら、全く別の物語へと反転して終結する。話自体は見事で面白い。ただ主人公に魅力がない。不必要なまでの不愛想仏頂面と、ひねくれた形容表現の悪たれ多弁。ハードボイルド探偵のお約束なんだろうが、何か日本語の文体風土に合わん。これが「むせび泣くアルトサックスBGM」のシャープでクールな映像物ならば絵になるんだろうが。
「人間のすることは全て間違っていると考える方がいい・・・」このセリフはなかなか。 |
No.215 | 4点 | オリエント急行の殺人- アガサ・クリスティー | 2019/06/05 10:44 |
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被害者でなく容疑者達の「ミッシングリンク」解明の話。これほど、名優を揃えて映像化して映えるミステリってないんじゃないか。名優達に演じられる「それぞれの役割を演じている容疑者達」、素晴らしくならないわけがない。
ミステリ小説としては・・・映像作品の「無難な台本」「読んで損のない原作」。それにしても「全世界のあらゆる階層からなる容疑者・・」って、「白人の、上流から、せいぜい下の上の階層」ってところじゃん。 |