皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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ALFAさん |
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| 平均点: 6.62点 | 書評数: 290件 |
| No.37 | 6点 | 海浜の午後- アガサ・クリスティー | 2026/10/15 08:22 |
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| 戯曲は演じられてナンボだから、文字で読むにはちょっとアレなんだが・・・
あまり精密に読み込もうとせずに流しながら情景を思い浮かべるのがコツかな。 「海浜の午後」はコメディタッチが楽しい。舞台で見たらオチもきっと受けるだろう。 お気に入りは「ねずみたち」。 わけの分からない状態から次第にフォーカスが合って戦慄すべき「わけ」が分かっていく過程がスリリング。 劇場で見たいなあ。 |
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| No.36 | 9点 | 葬儀を終えて- アガサ・クリスティー | 2026/10/10 13:27 |
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| 再読したがやはり高評価になる。(以下ネタバレあり)
豪荘な館、開示される遺言書、それぞれの思惑を持つ遺族たち・・・ 絵に描いたような本格のテンプレだが実はかなり実験的な作品。 目的にたいして大仕掛けすぎる犯行、きわどいトリック、犯人のキャラと犯行手口のギャップ。 普通ならやらないよね・・・ そう、この犯人は「普通」ではないのだ。 本来なら使用人ではないはずの身分や、自分は鑑賞眼を持ちながら絵の解らない雇い主に仕える鬱憤、そして繰り返される古い自慢話のお相手・・・ 煮詰まった怨念を身の内に抑制的に閉じ込めて自らも気付かない物静かな人物。そういう犯人を作者は作り上げた。 だから、この人物にとって、自分が軽蔑する雇い主を斧で殺すことも、大胆なトリックで館に乗り込むことも、換金の難しい名画を横取りして自分の起業を夢想することも少しも矛盾はないのだ。事業のための金がほしかったなどというのは表面的な(自覚する限りの)理由にすぎない。表層の動機ではロジックは通らないが、犯人の心の奥底と照らし合わせると腑に落ちる犯行となる。 この作品は「犯人はロジカルに行動する」という古典的な「本格」のルールでは書かれていない。実験的というのはそういう意味である。 「葬儀を終えて」が出たこの後期、クリスティは「罪を為す人の心」に強い関心を寄せて作品を書いている。 これもまたクリスティが生んだ名犯人の一人だろう。 D.スーシェのドラマでは犯人の心情をさらに強調している。ディナーに同席していたモードからココアを作るように「命令」されて顔をこわばらせるシーン、さらにはエンディングでポワロの指摘を受けてタガの外れたような壊れぶりをみせるシーン。どれも「普通」ではない名演技。 |
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| No.35 | 6点 | クリスマス・プディングの冒険- アガサ・クリスティー | 2026/10/09 07:52 |
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| 中編、短編それぞれ三話の構成。
ミステリーとしての緊張感はほどほどだが、クリスマス企画にふさわしくどれも楽しく読める。 「スペイン櫃の秘密」は出来のいい本格謎解き。この作品は「オセロ」ばりの心理劇を絡めた長編として読みたかった。 お気に入りは、なんと美味しそうなイギリス料理!!が出てくる二作。 表題作「クリスマス・プディングの冒険」はほどよくまとまった中編。お屋敷での英国風クリスマス風景がいい。血の流れない冒険譚。子供たちの悪戯に対するポワロの逆トリックが痛快。 料理人のプディング蘊蓄も興味深い。 「二十四羽の黒つぐみ」はレストランで語られるイギリス料理談がいい。 トリックの有効性は疑問だが、ちょっとした日常の謎から黒い企みが暴かれる展開の妙を買う。 D.スーシェのシリーズでは三作とも映像化されていた。 「盗まれたロイヤルルビー」(「クリスマス・プディングの冒険」改題)では、冒頭ポワロが休暇用に大量のチョコレートを買い込むシーンが加えられていて、ポワロに味見させて顔を窺う店のオヤジの演技が印象的。 |
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| No.34 | 7点 | カーテン ポアロ最後の事件- アガサ・クリスティー | 2026/10/04 08:58 |
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| シリーズ最終話を円熟期に作り置いて没後に発表する。舞台は第一話と同じスタイルズ荘。名探偵ポワロが命を賭けて「悪」と対決する・・・
まことにミステリーの女王にふさわしい出版企画。 さてその最終話、語り手たるヘイスティングスもポワロもそしてスタイルズ荘も老いた。漂う喪失感は時代を反映するかのようだ。続く二つの大戦でイギリスは疲弊し「大英帝国」はもうもたないだろうと人々が思い始めた頃である。 この1940年代前半には「白昼の悪魔」「杉の柩」「五匹の子豚」などが出版されている。「カーテン」の緻密な構成やダークで明晰な文体はこれらの名作とも共通する。ヘイスティングスの無意識のトリックにも中期以前の持ち味がある。 唯一残念なのは犯人(ここでは被害者?)の造形。ポワロが全存在を賭けて闘う相手としてはいかにも卑小。犯行そのものは悪魔的だがそれを体現すべき人間の存在感はモリアティにほど遠い。 もしも後期の「終わりなき夜に生まれつく」の頃に書かれていたらどんな作品になっただろうと想像してしまう。 |
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| No.33 | 7点 | 死人の鏡- アガサ・クリスティー | 2026/10/01 10:09 |
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| 中編三作に短編一作という珍しい構成で良作揃い。
100ページ前後の中編というのはなかなか面白い小説の形式だと思う。 ほどよくまとまった展開のなかに十分な起伏が必要で、長い短編ではダメだし短い長編というわけでもない。交響曲ではなく弦楽アンサンブルみたいなもの。 中編らしい佳作は「厩舎街の殺人」。シンプルな事件だがほどよく起伏があって意外な結末になる。タイトルも好き! 一方「死人の鏡」は短い長編だし「謎の盗難事件」は長い短編。 もっともクリスティらしいのは短編「砂にかかれた三角形」。 ここでのポイントは意外な犯人ではなく人間関係の擬装。このアイデアはその後の長編にたびたび登場する。 クリスティを一通り読んだ方はすぐわかるだろう。 |
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| No.32 | 5点 | 動く指- アガサ・クリスティー | 2026/09/28 19:52 |
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| 前半はコメディ・サスペンス、後半は渋好みのミステリー。
人物の造形も伏線もちゃんとしてるから、あとは前半部分を楽しめるかどうか・・・ 前半をゆったり味わえれば高評価、早々にドラマティックな展開を期待すると低評価になるだろう。 シリーズなんだからミス・マープルの出番が少なすぎるのはやはり減点。 紛らわしい名前はバートンとバアトンくらいに翻訳で書き分けたら? 手紙の配達の有無など、ミステリー興趣も十分あるんだが・・・うーん地味! |
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| No.31 | 6点 | ポアロのクリスマス- アガサ・クリスティー | 2026/09/28 13:38 |
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| お利口なクリスティがわざと書いて見せたバカミス。
カーもびっくりのキッチュなトリック、ホームズパクリの因縁話、漫画みたいな性悪家長、そして意外というより唐突な犯人・・・ だから普通の減点法で評価してもしょうがない。全部コミで丸ごと楽しめるかどうかだが、それにしてもおバカなパーツとお利口なままの構成や伏線とがアンバランス。 実はこの作品、テキストより映像向きではないか。 D.スーシェのドラマ版ではショボい風船カスやよく似せて描いた小道具の肖像画など、突っ込みどころも含めて多いに楽しめた。 |
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| No.30 | 5点 | 復讐の女神- アガサ・クリスティー | 2026/09/27 08:05 |
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| ミス・マープルと毒舌富豪ラフィール翁のシニアコンビが活躍した「カリブ海の秘密」の続編。
ラフィール翁は既に亡く、遺言でミス・マープルに事件の解決を依頼してくる。内容は不明。あるのは行動計画と資金だけ。 とりあえず手配されたバスツアーに加わるが、前半はミス・マープルも読者も五里霧中。ここは少し退屈。 事件の輪郭が見えてくる後半で、クリスティは愛の悲劇と悪を為す人の心を描きたかったのだろうが、いかんせん尺が足りず中途半端。それを描き切るにはやはり長編一冊分がいるだろう。あの一人称の名作のように。 一方、ミス・マープル主役のシニアハードボイルドパートは楽しいが、あまりにアクティブで読む方が心配になる。 影の主役は死してなおプロデューサーたるラフィール翁。 エンディングで、高額の報酬をパッと使うから当座預金に振り込んでと指示するマープルが痛快。 |
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| No.29 | 10点 | 五匹の子豚- アガサ・クリスティー | 2026/09/26 10:02 |
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| むかしむかし、小学生は「そして誰もいなくなった」をよんで、ほんとうにびっくりして、一ばんのたんていしょうせつだとおもいました。
その後「オリエント急行の殺人」「アクロイド殺し」と一番は更新されて、二十歳前後「五匹の子豚」を最後に更新は途絶えた。今もクリスティ作品の「一番」は揺るがない。 しかし最近になって、もっと緩くて大仕掛けで現在進行形のミステリーもいいなと思えるようになった。代表格は「ナイルに死す」。したがってこの二作がクリスティのW一番。 「五匹の子豚」は過去の犯罪を検証するミステリー。結晶化した鉱物を顕微鏡で調べるようなスタティックな物語である。 関係者五人の談話や手記は当然食い違う。微妙なずれの中から亡きキャロラインやエイミアスの人間像が立体的に浮かび上がってくる過程はスリリング。彼らの回想の中に、レース編みのようにダブルミーニングが仕掛けられている。 真犯人と犠牲者の心理を鍵にした様式美あふれるパズラー。傑作である。 「その後」を取っ払ってポワロの絵の台詞で締めてほしかったなあ・・・ |
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| No.28 | 8点 | 死との約束- アガサ・クリスティー | 2026/09/26 08:20 |
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| 「ナイルに死す」の翌年1938年に発表された。こちらも旅先が舞台。
この頃、まだ植民地や領土を世界中に持っていた大英帝国の臣民は、なかば国内旅行の感覚で海外に出かけたんだろうな。ポンドも強かったのか金持ちだけではなく中産階級のオバサンや若者もよく登場する。 今回はアメリカの大家族で、専制的な家長と抑圧された家族たち。これもクリスティお得意の設定。 書出し一行目「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」でいきなり先頭打者ホームラン。 殺害ターゲットが割れても読者は退屈しない。専横きわまるイヤミな人物造形だから、今か今かと期待しながら読み進める。その存在感たるやクリスティ作品中屈指の「名被害者」だろう。 丁寧に伏線が仕掛けてあるが、whoはなかなか難易度が高い。howから地道に思い巡らすしかないだろう。勘のいい人ならwhyのヒントはつかめるかもしれない。 テンポのいい展開、意外な犯人、意外な動機、読後感もいい・・・再読にも再再読にも堪える秀作ミステリー。 |
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| No.27 | 5点 | ハロウィーン・パーティ- アガサ・クリスティー | 2026/09/25 08:05 |
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| 以前、このサイトで「『ご都合主義』と評する奴にロクなのはいない!」という投稿を見かけた。他者をディスりながらの書評は論外で品性を疑うが、言わんとするところは分からなくもない。
そもそもミステリーは作者が都合のいい人物、都合のいい設定、都合のいい動機を編み出して創造するものだから「ご都合主義」と括ってしまえば書評をしたようで書評にならないからだ。 問題はその都合の良さがいかに自然に処理されているかということだろう。カーや横溝のように、都合良さが少々目についても奇抜なトリックや雰囲気満点のストーリー性で許せてしまう作風もあるが、クリスティの場合はそうではない。 都合良さを必然性で覆い、精緻な伏線を張ってアイデンティティ擬装や構図の反転で読者を騙してくれるのがクリスティの流儀だったはず。 この作品ではそれが弱い。真犯人(黒幕)は自らの特質を武器に多くの人を都合良く操る。動機はファンタジック。いっぽう殺しの手法は即物的。ポワロも露骨に都合良く真相に到達する。 ダークで審美的な動機、即物的な犯行、明朗な探偵コンビ、それぞれがチグハグ。 いっそ後期クリスティお得意のダークファンタジーに徹したら異色の名作になったかもしれない。その場合は快活なオリヴァ夫人の出番はないが。 ケネス・ブラナーの最新作はひどい。原作の影も形も残らない改変もそうだが、何よりポワロシリーズの重要キャラクターたるオリヴァ夫人の名をあんな卑小なキャラとして使うなど許しがたい。 |
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| No.26 | 6点 | カリブ海の秘密- アガサ・クリスティー | 2026/09/24 08:35 |
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| リゾートホテル、クローズドサークル、危うい男女間系、そして過去の犯罪・・・
クリスティお得意のテンプレで、ポワロシリーズとノンシリーズにもそれぞれ傑作長編がある。 この作品も緻密でテンポのいい展開。 ミス・マープルと毒舌富豪ジジイのハードボイルドコンビがいい。 ミス・マープルのアクションシーン?が出てくるとは思わなかった!! 犯人がいささかショボく、最後に偶然が入ってしまったのが残念。 |
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| No.25 | 8点 | ねじれた家- アガサ・クリスティー | 2026/09/21 09:01 |
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| 豪壮な館、富豪の老当主、謎の遺言書、スポイルされた家族たち・・・
あまりにもベタな設定だがミステリーとしての肌合いは意外にモダン。 男性一人称の語りはサスペンスフル。犯人を含めた各人物の心理も手に取るようにわかる。複数の人物が無意識下に真相に近づいていく展開がスリリング。エンディングも納得感がある。最後に毅然と処理をしたあの人物が印象的。 先行する同じアイデアの有名作が重厚なゴシック風味かつ非近代的な幕切れになるのとは対照的である。 クリスティが先行作を知らないわけはないから、私ならこう書くと意識的にとり組んだんだろう。 さまざまな伏線やミスリードが精密に仕掛けられている。 先行作を知らずに読めれば一番いいがその可能性は低いから、ネタを知った上で再読で楽しむのも一興。 私の場合、読み返すたびに評価が上がっていった。 おまけ: 印象に残った副総監の台詞「殺人というのはな、素人の犯罪なんだ」・・・うん、確かに |
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| No.24 | 7点 | 死の猟犬- アガサ・クリスティー | 2026/09/19 09:05 |
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| クリスティ作品の中ではダークで風変わりな短編集。
いつもの明晰な謎解きを期待して読むと戸惑うだろう。 目玉は短編ミステリーのオールタイムベスト「検察側の証人」。 この短編と戯曲版とではエンディングが異なっている。舞台で見るには戯曲版の方が映えるだろうし、テキストで読むならこちらの方がダントツにキレがいい。さすがの描き分け。 残りの11編には多く超常現象が出てくる。 中途でロジックが立ち消えて怖いのは「死の猟犬」、まともにロジックが通って怖いのは「第四の男」、ロジックが通りすぎて怖いのは「最後の降霊会」。 いずれもドライな肌合いの秀作ホラー。 ホラー + サスペンス + 本格謎解き + イヤミス風味。クリスティの別の一面を味わえるので少しオマケ。 |
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| No.23 | 6点 | マン島の黄金- アガサ・クリスティー | 2026/09/18 08:40 |
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| 拾遺集らしくバラエティに富んでいる。言い換えると玉石混淆。
お気に入りはミステリー色の薄い「夢の家」と「孤独な神さま」。 「夢の家」はこの後、「スリーピングマーダー」や「終わりなき夜に生まれつく」など、多くの作品に繰り返し登場するモチーフ。 「孤独な神さま」はクリスティにしては甘いロマンチシズムだが、神さまのたたずまいがいい。レッドキングさんのお地蔵さん説に共感!! 私は円空仏を連想した。 ところで気になるのは「クィン氏のティー・セット」の小倉訳。サタスウェイト氏はクィン氏に「きみ」「わし」のタメ口。いっぽう短編集「謎のクィン氏」の嵯峨訳は「わたし」「あなた」の丁寧語。どう考えても両者の関係はこちらだろう。同級生じゃあるまいし。だいいちスノッブなサタスウェイト氏が「わし」なんて・・・ クリスティのことだから水準は維持している。誰が読んでもひとつや二つは刺さるだろう。 |
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| No.22 | 8点 | ヘラクレスの冒険- アガサ・クリスティー | 2026/09/17 09:34 |
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| 引退を決意したエルキュール(ヘラクレス)・ポワロが仕事の締めくくりにふさわしい事件を選んで手掛ける、という趣向の12の短編。でも実際には引退しないけど・・・
物理トリックやお得意のアイデンティティー擬装など、バラエティに富んでいて水準は高い。 なつかしのロサコフ伯爵婦人も登場する。 お気に入りは犯罪の起きない謎解きの「アルカディアの鹿」。仄暗いロマンティシズムがいい。 中には短編ではなく、中長編に仕立てたほうが味わい深そうな話もある。 D.スーシェのTVドラマ版では、「エルマントスのイノシシ」を軸に、複数の話をミックスして楽しい冒険劇になっていた。 |
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| No.21 | 10点 | ナイルに死す- アガサ・クリスティー | 2025/08/12 11:01 |
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| そういえばまだ書評していなかった。
文句なしの代表作。 殺しそのものはオーソドックスなトリック。だがこの作品のキモはそこにはない。 人間関係の中に大きな企みがあるから前半の長さは必要不可欠。 そしてクリスティのことだからサイドストーリーも楽しく読める。 映像は観た限りでは映画2篇とTVドラマ1編だが、ドラマのD.スーシェ版がいい。1978年の映画は巨漢のユスティノフポワロがあり得ない上に、せっかくのオールスターキャストがガチャガチャとぎこちなく、ルメット版「オリエント急行」のような洒落っ気がない。最新のケネス・ブラナー版はシリアスなプロローグがチグハグ。 |
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| No.20 | 10点 | 春にして君を離れ- アガサ・クリスティー | 2024/07/15 09:07 |
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| 「終わりなき夜に生まれつく」と並ぶ最上のクライム・フィクション。
実はずっと以前に読んでいたのだが、どう評しても言い尽くせない気がして今に至った次第。 二編ともに、自己意識の歪みを描ききった名作である。 |
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| No.19 | 7点 | 牧師館の殺人- アガサ・クリスティー | 2024/05/02 09:23 |
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| 本格派フーダニットの見本のような作品。
丁寧に伏線が張り巡らされている。容疑者候補もたくさんで楽しい。 ただ、話者がニュートラルな人物のせいもあって全体に地味。 後期の名作のようなドラマチックな展開はない。 |
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| No.18 | 8点 | 鏡は横にひび割れて- アガサ・クリスティー | 2023/01/25 11:04 |
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| 二つの側面を持つ作品である。以下ネタバレ気味です・・・
一面はホワイ&フーダニットの謎解きミステリ、もう一面は女優マリーナ・グレッグの悲劇。 そして厄介なことに前者より後者のほうが圧倒的に素晴らしい。 マリーナは中盤まで登場しないが、周辺の人物たちへの尋問によって彼女の半生が浮び上がる。クリスティお得意の手法。 一方ミステリとしてはシンプルな構造である。メインの殺人は序盤に起こる。あとは尋問が続き中盤は冗長。終盤の事件は口封じに過ぎないと推測がつく。これはむしろ短編向きのプロットかもしれない。 ミステリ部分をうんと軽くしたら、ウェストマコット名義の名作になったのではないだろうか。 |
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