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青い車さん
平均点: 6.93点 書評数: 483件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.17 7点 本と鍵の季節- 米澤穂信 2019/01/29 08:08
 また高校生が主人公?と若干悪いマンネリも疑っていたのですが、読んでみると最近の流行に媚びず端正にまとまった良作だと感じました。『913』の暗号(江戸川乱歩短編に類例あり)の扱いや、『ない本』のシリアスで哀しみを帯びたオチが印象的です。安易にハッピーエンドで締めないのが米澤作品らしく、それは初期の頃から変わってない所です。

No.16 7点 さよなら妖精- 米澤穂信 2017/02/13 18:10
 ほろ苦い青春小説要素+ライトな推理小説要素の調和がいいですね。最初の方はもちろん、特に終盤の畳み掛ける推理と感動を残す結びが端正な文体で綴られていて、心地よさを感じる一作です。作者の将来性が垣間見える出来で、10年近く経って主要人物が再登場を果たしたあたりからも、特別な地位を占めています。

No.15 8点 王とサーカス- 米澤穂信 2016/12/31 22:11
 『さよなら妖精』の太刀洗万智が主人公として再登場したことでファンを驚かせ、その年のランキングを総なめにしたヒット作です。舞台ネパールの生活描写が充実しており、程よい情緒を感じます。
 事件の内容と推理の方はまずまず。つまるところ犯人は誰が唯一機会を有していたかがカギで、アクロバティックな論理展開は特にありません。目玉と言えるのはむしろその先にある反転で、さりげなく張られたそれを示唆する伏線も作者の安定した実力を見せつけています。同時にその反転が重く苦い問題提起に連結しているのも完成度を高めている要素です。
 でも、これが作者の中で突出した出来かというと、そうとは言い切れないとも思います。まとまりの良さは評価に値するものの、突き抜けたパワーはないですし。本作で作者が一皮剥けたというより、ようやく正当に認められるようになってきた証拠がこの高評価というのが正しいのではないでしょうか。

No.14 8点 折れた竜骨- 米澤穂信 2016/10/23 22:29
 異世界本格、とでも言うべき世界観ですが、作者が初めて挑んだとは思えないほど雰囲気の作り方が手馴れていることに驚かされました。設定が謎解き部分を侵食せず、両者がきちんと溶け合っている点もプラスに評価。米澤穂信の代表作といって間違いないでしょう。

No.13 7点 真実の10メートル手前- 米澤穂信 2016/10/20 23:03
 『さよなら妖精』の主要登場人物のひとり、太刀洗万智を主人公に据えた連作短篇集。内容に重なりはないので『王とサーカス』を飛ばして読んでも問題はありません。
 どの話も何らかの読みどころがあり、一定の水準をクリアしていると思います。ただ、突き抜けた傑作も見当たらず、本来の作者の実力を発揮しているとは言えません。「もっとやってくれるだろう」という気持ちが残り、米澤穂信の愛読者としては肩透かしにも感じました。

No.12 7点 追想五断章- 米澤穂信 2016/09/25 21:31
 一見、何の意味もなさそうな小説の数々が次第に謎を大きくしていき、最終的に一本の線でそれらが繋がるプロットがユニークで面白いです。文章もこれまで以上に重すぎず軽すぎず、ちょうどいい塩梅で洗練されている印象を受けます。難を挙げるとすれば、登場人物が主人公を含めなんだか没個性的でぼやけた気がなくもないところがあります。

No.11 7点 秋期限定栗きんとん事件- 米澤穂信 2016/09/10 22:42
 連続放火事件にまつわるトリックは素直に感心できたのですが、年季の入ったミステリー読者の方からはさほど喜ばれなかったようです。そこよりは彼女のできた小鳩くん、年下の男子を振り回す小佐内さんの方が重要ポイントでしょうか。しかし、それにしたって瓜野くんは可哀想すぎるだろ……。おそらく最終作になるであろう冬季がずっと出ていませんが、このシリーズがどう終結するのか、期待と不安が半々といったところです。

No.10 6点 夏期限定トロピカルパフェ事件- 米澤穂信 2016/08/28 00:01
 春期と同じく、謎解きの醍醐味は小規模な事件が中心となる「日常の謎」系として見ても弱い、というのが正直な感想です(『シャルロットだけはぼくのもの』は引きつけられましたが)。それでも、今回は小佐内さん誘拐というスリリングな展開で前作より読者へのアピールは強くなっています。あと問題となるのは主人公ふたりにどれだけ共感を覚えられるかですが、僕は共感まではいかずともちょっと変わった価値観のある子たちを見守る、という程度のスタンスで読みました。

No.9 5点 春期限定いちごタルト事件- 米澤穂信 2016/05/20 23:17
 小鳩くん、小佐内さんのコンビに好感を持てるかどうかが評価の分かれ目になっているようですね。僕は正直なところ後者かもしれません。どこか高慢な感じがちょっと鼻につくのは確か。ただ、『For your eyes only』など、(成功しているかどうかは別として)人間の機微を描こうという姿勢は高く評価したいです。日常ミステリーとしての出来は『おいしいココアの作り方』が抜きん出ており、単純な答が盲点になる典型を示していると思います。

No.8 6点 インシテミル- 米澤穂信 2016/05/20 23:00
 クローズド・サークルが嫌いなわけではないのですが、「殺し合いをさせるため」に用意されたあまりに人工的な設定には抵抗があります。そのためかスリリングなはずの展開にあからさまなわざとらしさを感じてしまい、あまり恐怖にのめり込むことができませんでした。この作者の文章や登場人物の掛け合いには個人的に好感を持っていたので、惜しい作品です。初の米澤穂信作品としてはあまりお薦めできません。まずは『さよなら妖精』か『折れた竜骨』あたりを読むべきと思います。
 とはいえ、『僧正殺人事件』『Yの悲劇』『犬神家の一族』『緑のカプセルの謎』など、数々の名作のタイトルを知り興味を持つきっかけになったという意味ではとても思い出深い作品でもあります。

No.7 6点 犬はどこだ- 米澤穂信 2016/05/20 22:45
 どこか乾いていて、さながらハードボイルドのような文体が気に入りました。それでいて、ネット上のトラブルが事件の発端となっている現代的な要素があるのも面白いです。スカッとした爽快感はないものの何とも言えない余韻の残るラストも印象的。シリーズ化を期待したいのですが、現在のところこの一作だけで止まっているので続篇はもう書かれないのでしょうか?

No.6 8点 ふたりの距離の概算- 米澤穂信 2016/03/02 22:46
『クドリャフカの順番』では高校文化祭での騒動を描いていましたが、今回は現在と過去のパートを交互に並べ、マラソン大会の道中で謎解きが行われます。感心するのは、青春ミステリーという推理が緩くなりがちなジャンルでありながら、ひとつひとつの推理が意外にも緻密であるところです。部員勧誘の謎や、カフェの店名当てなど、しっかり地に足の着いたロジカルさが楽しめます。特に伏線の張り方が巧みで、派手な事件こそ扱ってはいませんが、作者が本格ミステリーを描く実力も備えていることを示しています。新入生、大日向友子の心情を描いた瑞々しい青春小説としても上質な良作。

No.5 7点 遠まわりする雛- 米澤穂信 2016/03/02 22:22
古典部シリーズ第四弾。主人公ホータローたちが高校入学してから二年生になるまでの一年間を描いた短篇集。温泉合宿、初詣、バレンタインなど定番のイベントを追っており、ファンなら間違いなく楽しめる内容です。ミステリー的には弱いようでいて、誰もが経験したことがあるような錯覚を利用した『大罪を犯す』や、メッセージのアイディアが面白い『あきましておめでとう』などは素直に感心させられました。

No.4 8点 満願- 米澤穂信 2016/02/20 15:11
警察官の救いようのない腐敗を描いた『夜警』。他人の絶望を前にした人の無力さを痛感する『死人宿』。歪んだ親子間の愛情に恐怖を覚える『柘榴』。信念が引き起こした殺人が意外な形で暴かれる『万灯』。一見無関係な点と点がおぞましい真相で結びつく『関守』。そして、ひとりの女性が守ろうとした物をめぐるホワイダニット『満願』。
いずれも高水準の短篇集です。米澤穂信の端正で読みやすい筆致が冴えた最高の作例で、このミス一位も納得のクオリティ。やはりベストは『満願』かな。次にお気に入りなのは『柘榴』か『関守』。

No.3 8点 クドリャフカの順番- 米澤穂信 2016/02/15 22:37
前作から引き続き学園ドラマとしてどんどん面白くなっています。文化祭のドタバタ劇を読んでいるだけでも最高に楽しいです(特に料理バトルのくだりが面白い)。ミステリー的に見ても、トリックがABCパターンの発展形として独創的なのに加え、犯人の心中のデリケートな描き方は作者の面目躍如といった感じです。表面的なラノベ感やアニメ化されたということもあってか、このシリーズは変な色眼鏡をかけて見られがちな気がしてなりません。大人の鑑賞にも耐えうる小説として、ぜひ本格ファンにもお勧めしたい作品。

No.2 7点 愚者のエンドロール- 米澤穂信 2016/02/15 22:22
最後から二番目の答は以前テレビの推理クイズで同じものを観たことがあったので、これが真相だったらガッカリだと思っていたんですが、ちゃんともう一捻りしてくれたので安心しました。あのリストが伏線になるんだろうなあ、とは薄々わかっていましたがこの着地はなかなかに意外。ミステリー度が上がると同時にホータローを始めキャラクターたちにも愛着が出てきて、確実に『氷菓』よりパワーアップしています。

No.1 5点 氷菓- 米澤穂信 2016/01/25 11:10
デビュー作にして、すでになかなか端正で読みやすい文体になっていることに感心したのを覚えています。また、いわゆる「日常の謎」系ながらしっかり論理的な推理を展開しているのも好感が持てます。それだけに肝心の謎が他愛のない地味なもの(閉じ込められたえる、図書館の本など)が多いのが非常に惜しいところです。本筋にあたるカンヤ祭の真相も駄洒落に近いもので若干期待外れであり、ちょっと厳しめに評価します。この先に大躍進する作者としてはまずまずのスタートといったところでしょうか。

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青い車さん
ひとこと
正面からロジックで切り込むタイプの作品を愛好しています。ただ、横山秀夫『半落ち』なども夢中になったので、面白ければ何でも読む、というのが本当かもしれません。
雰囲気重視の『悪魔が来りて笛を吹く』『僧正...
好きな作家
エラリー・クイーン、アガサ・クリスティー、D・M・ディヴァイン、横溝正史、泡坂妻夫...
採点傾向
平均点: 6.93点   採点数: 483件
採点の多い作家(TOP10)
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク(46)
アガサ・クリスティー(39)
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