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斎藤警部さん
平均点: 6.69点 書評数: 1433件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.113 6点 雲をつかむ死- アガサ・クリスティー 2015/06/16 04:42
謎解き物語として深くはないし、サスペンスも緩いですけど、全体的に憎めない作品です。
クリスティと自分との相性を考えると、ミステリーの骨組とはまた別の所にあるちょっとした何かで好き嫌いが大きく分かれてしまうなあ、といつも思うのですが、これはまあ相性がいい。 航空機内という浮遊する密室感がまた良いのかも知れません。
邦題は「大空の死」が好きだ。

No.112 6点 都会の狼- 高木彬光 2015/06/15 15:05
出所したヤクザが、恩義ある死刑囚(ヤクザの出所直前に執行!)の無実を証明しようと都会の暗所を奔走するサスペンス。彼が事件の真相に近づく度、重要関係者と目星を付けた人物が次々殺されて行く。。
などと書けばまるでありきたりなストーリーの様ですがなかなかどうして、粗筋だけでは知り得ない長篇小説の力が全篇に漲(みなぎ)って読者の意識を離しません。 高木先生独特の微妙な間抜け味も重厚なストーリーといい具合にブレンド。 埋もれたままにしておくに惜しい、ちょっとした読み物です。 昭和30年代の残り香が強い40年代初頭の雰囲気もよく漂っていて悪くない。
それにしても、郷愁を誘う「伊勢佐木(ザキ)町のジャック」なる人物の呼び名。これひょっとして発表当時既にちょっとズレてる感じだったんじゃ。。

No.111 8点 蒸発- 夏樹静子 2015/06/15 12:52
質実な人間ドラマに貫かれた複雑系アリバイトリックの傑作。航空機という大きな密室からの人間消失事件で幕を開け、その後も次々と現れる多くの謎と疑惑が最後に美しく収束します。ぐっとフェミニンになった鮎川哲也といった趣があり、鮎さんファンにもお薦め(特に「死のある風景」が好きな人)。 これは再読したい。

No.110 9点 三つの棺- ジョン・ディクスン・カー 2015/06/12 11:10
誠に大事(おおごと)ですなあ、この物語に登場するトリックの全貌は!! 
密室トリックとアリバイトリックが不可分に補完し合っておりますし、
犯人の意志と偶然の成り行きも絶妙に組み合っておる、
おまけに被害者と犯人が。。 更に○○○。。 そこにちょっぴりおばかさんな大物理トリックまで彩りを添え(ここまでやっといてトリックの中心じゃないってのも凄い)、全ての背景には相当に暗くて深い過去のおぞましい因縁が。。。。

こりゃ作中の「密室講義」なる戯れ(意外とあっさりで驚き)であらかじめハードルを思いっきり上げておくのもなるほど納得、むしろそれくらいして読者に心と頭の準備をさせておかないと本作のトリックが想像外にこってりがっしりし過ぎでおいそれと一発理解出来なくなってしまう、という事なのではないか?

真相解明に至るまでの物々しくも皮相な物語はさして夢中にさせるものでは無かったが、このただ事でない「何時(いつ)、誰が、何処で、何を、何故、如何様に為していたのか!」をあらためて反芻してみるに、小説の愉悦にやや乏しいにしては破格のこの様な点数を付ける外は無しとする心境に至った。

No.109 5点 大いなる眠り- レイモンド・チャンドラー 2015/06/11 17:40
私は姉の方が好きです。
それと、あまりに比喩表現の得意な兄さんが出て来てびっくりしました。彼は体もタフです。 
話の筋がちょっと絡まってるけど、ザワザワした感じで悪くないです。

No.108 6点 誤飲- 仙川環 2015/06/11 16:28
元医学ジャーナリストによる、錠剤と男女関係(と格差?)をモチーフにした連作短篇集の様な、そう見せかけた長篇の様な、日常の謎のような、日常のサスペンスの様な、どこかでふと殺人ないし過失致死が起こりそうな。。
東野圭吾の「新参者」を思わせる構成。だけどあれより暗い。。のにあれより軽い。。でも悪くない。

ところで、この本の最後の最後のシーンでやっと「ある事」が起こ(ろうとす)るのですが、あれはひょっとして、まさかある意味ハッピーエンドって事ですか?

No.107 6点 法月綸太郎の冒険- 法月綸太郎 2015/06/10 13:16
(遠回しに書いてますが、一部否応無しにネタバレです)

死刑囚のお話 .. 犯人は瞬殺で分かったんですよ! だけどね、動機がね、もっと単純に「殺させたくない」だけなのかと思ったら、まさかそんな .. このお話の場合は「そっちの方」を防ぐための殺人ですが、同じアレでも「あっちの方」を防ぐため仕方なく殺した、、っていうあまりに悲しい「意外な動機」のお話も確かありますよね。。 あと、犯人が化けてるとは思いませんでした~ 何かトリックを使って遠隔的な何事かをやってのけたのかと思ってた。。 まさかあの犯人が、事を遂行するためにそんな暴力行為に出ていたとは。(そこだけちょっと笑っちゃう)

喪に服すお話 .. 世に知られた「意外な動機」とちょっと禁じ手な「意外な犯人」、割と手垢の付いた二つのギミックを上手に組み合わせたらあら不思議、こりゃ最後まで騙されました! ちょっと衝撃が残る、残酷な真相でしたね。。

人肉のお話 .. 最後のオチはともかく、インかと思ったらアウト! という気色の悪い逆転発想がグッと来ましたよ。 作者の意図は、題名で告白(あるいは照れ隠し?)している通り「小論」を世に問う事にあったのかしら。

残りの図書館のお話たちは、ぐっとテンション緩くなります。バカ密室あり、あまりにヒネリのないのあり、鮎川さんの企画に乗った楽屋落ちっぽいのあり、心の病が絡んだややシリアスなのあり(でもやっぱり緩い)。「高岡早紀巨乳説」なんて言葉を出してくる悪ふざけには笑った。

さて .. ホームズばりに『冒険』と銘打った割には、ちょっとアンバランスな構成でないかい?

No.106 6点 11文字の殺人- 東野圭吾 2015/06/10 09:05
平日夜、電車内と自宅で一気に読みきったものです。
東野圭吾の手に掛かれば、こんな読み捨て向きの内容でも立派なA級作品になるんだなあと、今さらながら思う。
もっと徹底して安っぽいのが読みたい人には、お薦め出来ない気高さが、やはりどこかしら漂ってます(だから良いというのでもないが)。
ただ、タイトルは思わせぶりな割に、羊頭狗肉かと。

No.105 6点 レイクサイド- 東野圭吾 2015/06/10 08:44
東野作品にしては新機軸にこだわらずあっさり書いた印象。。 と思ってると最後にやっぱりズン!と来た。 子どもを巻き込む陰鬱な内容の割に、妙に薄味なんだけどね。。 何にせよサスペンスと意外な展開/終結は保証付き。 社会派めいたものはさほど感じず。

No.104 3点 誰の死体?- ドロシー・L・セイヤーズ 2015/06/09 19:02
ところが「ナイン・テイラーズ」に数年先立って読んだこちら(処女長編)はまた何とも。
謎も解決もユーモアもそれなりに読めるのだけど、心の琴線を上滑りして行きました。
不思議なものです。
気品のある文章には好感が持てました。

No.103 9点 ナイン・テイラーズ- ドロシー・L・セイヤーズ 2015/06/09 18:48
ふとした折、記憶の向こうから聞こえて来る鐘の音たちのきらびやかさに今も幻惑されます。音の洪水と水の洪水に呑み込まれ、世にも怖ろしい事の眞相はいったい何処に漂い着いたやら。
セイヤーズ女史から読者に向けて放たれた壮大な心理トリックの網、推理小説に於ける「殺人とは何か」をあらためて照らし直す大胆で残酷で皮肉な物理トリック、二者は一分の隙無くお互いを支え合い、旧い英国田園を背景に荘重たる謎の大伽藍を打ち立てますが、最後は潔く流されて行きました。。。 構築美に圧倒される奇蹟の一品。

No.102 9点 幻の女- ウィリアム・アイリッシュ 2015/06/09 05:39
こりゃあもう、ヤヴァいっすよねえ。
かなり若い時節、世評にほだされて読み、最後の最後、の直前、まで騙されました。直前にピン!と来た瞬間のスリルと来たら、こりゃただものでは無かったねえ。
清張もかくやの物語吸引力は凄まじく、だからこそ容易に真相を悟らせない。
古典力爆発の必読作。

No.101 8点 球形の荒野- 松本清張 2015/06/09 05:15
(ネタバレ的)

Aさんはこの世に生きていますが、法的には死んだ事になっています。それは決して覆されません。 Aさんは戸籍を売っていませんし、何らかの間違った死亡診断書を出された事もありません。また、Aさんは自分が生存中である事を近親者や旧い友人にも打ち明けられません。Aさんは監禁されて不自由な身の上というのではありません。 いったいAさんに何があったのでしょう。 

こんなAさんが最重要人物として登場する本作は、最後の最後で涙を誘い、表題の意味を明かします。 歴史の重さが被さる、壮大な社会派サスペンスです。

No.100 8点 北の夕鶴2/3の殺人- 島田荘司 2015/06/09 00:57
私にとって「斜め」とは似て非なる(とは言えバカはバカですが)壮大なトリック解明に辿り着くまでの魅力的な謎と謎解きこそがこの小説の美点の中核。

それにしても、御手洗でなくまさか吉敷警部がこんな事件に遭遇するとは! 彼が主人公のせいで幾分抑制の効いた渋い雰囲気で進む物語が、最後のトリック究明で一気に大バカ大会に突入、しつつも微妙にまだダンディズムの薫りを残している(のか?ww)というまるで泉昌之のマンガを思わせるクスクス笑いの感覚はお笑い的は大好きだけど推理小説としてはどうだかなあ。でも島荘さんの作品(ご本人も?)ってそういう何というか「モテそう+可笑しい」みたいなムウドがどこかしら付いて回りますよね。。
とにかく、面白いです。 長い間、御手洗ものと勘違いしてました。

No.99 7点 消えた乗組員(クルー)- 西村京太郎 2015/06/09 00:33
京太郎海洋期。『消えたタンカー』に続くは、船が消えず中にいる筈の人間だけ消えて発見される、その名も『消えた乗組員(クルー)』。 
「魔の海域」を巡って対立するオカルト研究家と科学評論家の各派。 やがて件の海域に一台の大型クルーザーが出される事となり。。 「海難審判」なる毛色の違った法廷シーンも新鮮。 スピーディーに読めて爽快、納得の一冊。

No.98 6点 フレンチ警部と紫色の鎌- F・W・クロフツ 2015/06/08 22:39
序盤から登場する主役級かと思えた若い女子があっけなく殺されてしまうサイコ効果(?)にはびっくり。その後も起こる連続殺人の裏側に徐々に見えて来る、不可解な、しかし奇妙に地味とも思える何らかの詐欺事件のようなもの。。 明かされる「悪事トリック」に拙者は「占星術殺人事件」のメイントリックに一脈通じるものを嗅いでしまったのだが、、考えすぎですかな。 だけど本作の主たるトリックを別角度から根気良く煎じ詰めて行くと、実は島荘サン的驚天動地の心理的大物理トリックに行き着くのではないかと、どうにも妄想してしまうのでございます。。 既に誰か何かやってるかも知れませんがね。

No.97 8点 眼の壁- 松本清張 2015/06/08 13:00
詐欺、暴力、差別、謀略と残酷なトリックの渦中を疾走するサスペンス、サスペンス、怖いほど強烈なサスペンス、、、にがっちりと抱き留められた本格推理の力作! 人間社会に棲み付く、事件を産み出した諸々の暗黒要素があまりに生々しく息づいているため、人それを社会派と呼ぶのもごもっともで異論無し!! 壮年期とは言え駆け出し時代の筆に拠るせいか、時折蒼い草の匂いが漂うのも素敵だ。

No.96 9点 理由- 宮部みゆき 2015/06/08 11:48
「黒死館」に寄せた乱歩の序文じゃないが、壮大なこの一篇に埋め込まれた膨大な創作ドキュメンタリー資料の数々から幾つもの硬派な社会派推理小説群が解(ほど)き出されるのではないか、とそんな愉しくも少し苦い妄想をせずにいられない市民物語の巨大集積塔。。。。 の圧倒ぶりに較べて結末だけ意外にあっさりしてしまったか。
とまれ必読の風格漂わざるを得ぬ、重みの一冊。

No.95 8点 大滑空- 佐野洋 2015/06/08 11:33
アウトドア・スポーツを通しテーマに置いた、これは本格ミステリの隠れた傑作短篇集。代表作に数えられていないのがあまりに勿体無い。
大胆な伏線が思いも寄らない場所に音を立てて引っ掛かり、崩れる様にまさかの結末へ。。 言うまでも無く文章は洒落ている。お洒落は通奏低音、主旋律はストーリーと謎解きのデュエット、中盤の分厚いハーモニーがサスペンス、時々エロスのアタックが入っては消える。 「世の中には頭のいい奴がいるんだなあ」という後味を残す。

大滑空 /血滴る矢 /心を読む馬 /絶対本命 /空の蛇 /赤い点が光った
(講談社文庫)

No.94 8点 一本の鉛- 佐野洋 2015/06/08 11:21
都会派佐野洋、初期の佳品。 表題の意味は最後の最後に明かされ、同時に事件の真相も一気に収斂します。
秀れた技巧が悪目立ちせず、ひたすら作品の完成だけに貢献する、フランス音楽で言うラヴェルのようないい香りのする若き熟練の一品。事件は女性ばかり暮らすアパートにて、バーのホステス殺し(昭和!)。容疑者は現場で確保。一見ごく当たり前の事件の様ですが。。

それにしても、これだけ洒脱で明るいムードなのに、ここまで強いサスペンスと深い謎めき度合い。かなり踏み込んだエロティック描写を爽やかに描き切る手管。天性と育った環境の存在を感じさせずにはいられません。日本共産党も惜しいシンパを無くしたものです。

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斎藤警部さん
ひとこと
昔の創元推理文庫「本格」のマークだった「?おじさん」の横顔ですけど、あれどっちかつうと「本格」より「ハードボイルド」の探偵のイメージでないですか?
好きな作家
鮎川 清張 島荘 東野 クリスチアナ 京太郎 風太郎 連城
採点傾向
平均点: 6.69点   採点数: 1433件
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