皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
いいちこさん |
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平均点: 5.67点 | 書評数: 557件 |
No.517 | 5点 | invert II 覗き窓の死角- 相沢沙呼 | 2023/11/09 19:38 |
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捻って着地も決まっているので、水準には達しているが、物足りなさが残る。
倒叙ミステリというジャンルそのものが、やや特殊な変化球であり、連投されると、どうしても目が慣れてくるというハンデはあるのだが。 いずれにしても世評ほどの傑作とは感じられなかった |
No.516 | 7点 | 帝王- フレデリック・フォーサイス | 2023/10/23 15:29 |
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とにかく収録されている8つの短編に外れがない。
いずれの作品も、ミステリ風のプロットの完成度が高く、かつ軽妙さ・洒脱さが感じられ、ラストの捻りも決まっている。 また、登場人物が抱える心の傷・弱さが読者の共感を強く訴えるような筆致となっている。 とくに、世評の高い「免責特権」「帝王」を高く評価したい |
No.515 | 4点 | 激走 福岡国際マラソン 42.195キロの謎- 鳥飼否宇 | 2023/10/23 15:28 |
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最終盤に明かされた真相は、一定のサプライズを演出しているし、細部に至るまでよく練られている。
ただ、いかにも小品という印象は否めないし、完成度の点で問題があり、物語に文字どおり挿入されたというべきアクシデントには強い違和感・異物感が残る。 各所で好意的に評価されている作品であり、批判的な立場に立つつもりもないのだが、4点の下位 |
No.514 | 5点 | 誰か Somebody- 宮部みゆき | 2023/10/03 16:08 |
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筆力の高さは相変わらずで、よく描けている。
作品の主題も悪くはない。 ただ、いかんせん、ミステリとしてはプロットや真相があまりにも平凡であり、回収されていない設定の存在等も含め、抜群の完成度とはいえない。 ストレスを感じることなく、読書を楽しめるものの、読者の心に何かを強く残す作品ではない。 5点の中位 |
No.513 | 4点 | むかしむかしあるところに、死体がありました。- 青柳碧人 | 2023/09/24 09:00 |
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本作のコンセプトを着想した発想力・構成力、論理性・整合性等は、それなりに評価できるのだが、緻密である反面、冗長という印象が拭えないうえ、ここまで改編してしまうなら、著名な昔話を題材にとった意味がほとんど感じられない。
また、重要な設定の後出しが散見される点で、読者の納得感が得られにくい。 発想の奇抜さは買うものの、それが読み物としての面白さにつながっておらず、4点の下位 |
No.512 | 5点 | メソポタミヤの殺人- アガサ・クリスティー | 2023/08/24 14:02 |
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犯行プロセスの合理性・フィージビリティの低さ、意外性を追求するあまり、フィージビリティを無視した真犯人の設定、実証性に欠ける捜査プロセス等、ミステリとして評価できる要素に乏しい。
また、タイトルとは裏腹に、舞台を中近東とし、主要登場人物が遺跡調査に携わっているとする必然性が感じられない。 世評ほどの傑作と評価することはできない |
No.511 | 5点 | ウランバーナの森- 奥田英朗 | 2023/08/14 20:54 |
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本作の主人公は「ジョン」とされているが、これは明らかにジョン・レノンであろうし、妻の「ケイコ」はオノ・ヨーコ、「ジュニア」はショーンだろう。
著者は、ジョン・レノンが4年間の空白を置いて発表したアルバムの作風が大きく変わった点をふまえ、その「空白の4年間」を埋めてみたかったと語っている。 悪い作品ではないと感じたが、本作が普遍的な意味をもっているのかどうかは、判断が難しいというか、読者によって分かれるところであろう。 本サイトで評価すべき作品ではないことは百も承知で、この評価とする。 著者のもっている引き出しの多さは評価されて然るべきだとは思う |
No.510 | 4点 | ダークゾーン- 貴志祐介 | 2023/08/09 16:51 |
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紙幅の大半が費やされる、将棋を模したバトルゲームは、それなりに描けている。
ただ、目次から勝敗の推移が概ね予想できるという点が決定的な欠陥だろう。 勝敗の帰趨を決定的に左右する重要な設定が、言わば後出しジャンケン的に、徐々に明らかになっていく点、獲られたはずの駒が絶命する前に相討ちにもっていく場合と、そうでない場合がある点など、小説である以上、当然とは言え、著者の匙加減一つという印象をあまりにも強く受ける点でも少なからず減点。 そうなると読者の興味は「このゲームの舞台は何なのか」という一点に集中するのだが、予想どおりの最悪の真相。 著者の筆力は感じるものの、好意的に評価することはできない |
No.509 | 4点 | 黄色い部屋の謎- ガストン・ルルー | 2023/07/12 17:00 |
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当該真犯人は、本作の刊行当時においては大きなサプライズであったろう。
しかし、現代ミステリを渉猟してきた人間であれば、「奇想天外な犯人にするなら、この人物だろう」と考える人物であり、そのような意味で意外性がない。 また、明かされた真相は拍子抜けであり、犯行プロセスにフィージビリティが感じられない。 このように見ると、現代においては、本作のミステリの歴史における位置づけ以外には、読む意味が見いだせない。 4点の下位 |
No.508 | 5点 | イコン- フレデリック・フォーサイス | 2023/07/09 15:04 |
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現代ロシアの政情を理解するうえで非常に興味深く、また筆力の高さも健在ではあるのだが、主人公のあまりにも超人的な能力・資質が、予定調和的なストーリー展開という印象を生んでいる |
No.507 | 6点 | 儚い羊たちの祝宴- 米澤穂信 | 2023/05/26 10:38 |
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各短編のいずれもリアリティやフィージビリティがほとんど顧みられておらず、ミステリというより、むしろサスペンス・ホラーに類する作品であろう。
著者の筆力の高さが確かに感じられ、水準には達しているが、敢えて説明しない作風も相まって、読後にジワジワと染み透るイメージであり、強烈なインパクトには欠ける。 「身内に不幸がありまして」をベスト、「玉野五十鈴の誉れ」を次点と評価 |
No.506 | 6点 | 死が招く- ポール・アルテ | 2023/05/24 18:43 |
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真犯人の意外性は掛け値なしに認めるのだが、少ない紙幅に多くの要素を盛り込みすぎたことによる副作用が強い。
とりわけ犯人解明の決定打となった犯人の行動は、あまりにも唐突で、かつ内容が非常に不自然であり、伏線としてはあまりにも上手くない。 本作のプロットはよくできているだけに、残念な印象が残る作品 |
No.505 | 4点 | ノースライト- 横山秀夫 | 2023/05/15 13:59 |
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重厚長大な作品のようでいて、ミステリとしての本作の眼目は、結局のところ施主が3,000万円もの大金を払いながら、建築士に設計内容を一任した点と、当該施主がその家屋に居住せず、連絡もとれなくなっている点のみにある。
しかし、そもそも3,000万円もの高額な契約を締結しておきながら、受託側が施主の住所・家族構成等を把握していないということがあり得るのか。 仮に連絡がとれなくなっているとしても、警察に連絡することなく、東京から長野に何度も足を運んで、その行方を捜すものなのか。 最終盤に明かされる真相は、きわめてチープであり、まるでリアリティが感じられない。 このプロットの骨格に魅力が感じられないから、著者の高い筆力が却って冗長・水増しと映るし、さまざまな脇道を経由し、拡散していく話が夾雑物・水増しにしか見えてこない。 まあ、「ノースライト」というタイトルで明らかなとおり、本作の眼目は以上の点にはないのであろう。 すなわち、本作はミステリではなく、主人公に投影・仮託されたバブルからの再生物語ということなのであろうが、そうだとしても、その目論見が成功しているようには感じられない |
No.504 | 6点 | 名もなき星の哀歌- 結城真一郎 | 2023/05/15 13:58 |
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人間のアイデンティティは記憶にこそ存在するという着眼点は鋭い。
ただ、記憶を保管・分離・削除・共有・移植することが可能という設定では、どれほど荒唐無稽な話でも成立してしまうから、却ってサプライズを演出しようがない。 いや、それ以前に、そもそも本作の各描写が現実に発生している出来事なのか、誰かの記憶なのかさえ、区別が付かないという強烈な副作用を生じてしまっている。 ファンタジー・ライトノベルとしては水準を超える作品であり、6点の最下層と評価する。 ただ、本作はミステリとしては評価できないし、そもそもミステリとはいえないのではないか |
No.503 | 4点 | メルカトル悪人狩り- 麻耶雄嵩 | 2023/04/11 16:07 |
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著者の作品を散々読んできた者として、執筆意図は理解できるし、それに意味がないとも思わないが、作品として面白いかどうかは別の話。
同工異曲と比べれば、相当に、非常に強く、見劣りすると言わざるを得ない |
No.502 | 4点 | R.P.G.- 宮部みゆき | 2023/04/06 13:54 |
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本作に底流する、現代社会における家族のあり方に対する問題認識は鋭く、十分に共感性があるのだが、プロットそのもの、犯行動機のリアリティが乏しく、1個の作品として昇華されていない。
また、ミステリとしての基本的なお作法を破ってまで仕掛けた割には、真犯人と、その解明プロセスの双方に意外性がない。 著者の作品としては相当に凡庸なデキで、4点の最下層 |
No.501 | 4点 | 乱鴉の島- 有栖川有栖 | 2023/03/28 18:48 |
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まず、相応の紙幅を割いているにもかかわらず、その造形がまるで描けていない登場人物が多く、そうした人物が犯人と指摘されても、何らの感慨も呼び起こされない。
次に、登場人物たちが本島に集まっている理由は、端的に言ってリアリティに欠けるが、それをカバーするような雰囲気づくり、舞台装置の準備が不十分であり、まして、それが犯行動機とは無関係という点に至っては脱力モノと言わざるを得ない。 最後に、犯行プロセスは一貫して偶然の産物であり、真相解明プロセスにも見るべき点が乏しい。 プロット・叙述の双方において、著者の作品としては最低クラスの出来栄えであり、4点の最下層と評価 |
No.500 | 5点 | ZOO- 乙一 | 2023/03/23 08:35 |
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独創的・トリッキーな舞台設定・作風の短編ばかりであるが、いずれの作品も水準に達しており、著者の力量の高さは疑い得ない。
ただ一方で、突き抜けるものがないのも事実で、上手さは感じるが、それ以上ではない 5点の上位 |
No.499 | 4点 | 十三角関係- 山田風太郎 | 2023/03/23 08:35 |
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プロットそのものに若干の無理を感じる。
本件真相であれば、実証的な捜査を丹念に続ければ、必ずや解明できるであろうし、犯行動機のリアリティが弱い点でも不満が残る。 全体として平凡な印象 |
No.498 | 5点 | invert 城塚翡翠倒叙集- 相沢沙呼 | 2023/03/07 16:32 |
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第1話は、地味な印象は拭えないものの、全体として堅牢な造りの佳作であると感じた。
第2話は、それより落ちるものの、やはり同様の印象。 第3話は、プロットそのものが荒唐無稽であり、かつそれが読物としての面白さにもつながっておらず、率直に言って論外。 これらを全体として5点の最下層と評価。 第3話がなければ、異なる評価を下していたのは間違いないが、倒叙形式であることの難しさを割り引くとしても、前作の水準には遠く及んでいない |