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帝王
フレデリック・フォーサイス 出版月: 1982年09月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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角川書店
1982年09月

角川書店
1984年05月

No.1 7点 E-BANKER 2019/12/17 20:01
~冒険、復讐、コンゲーム・・・短編の名手としても定評のある著者が“男の世界”を描き、小説の醍醐味を満喫させる、魅力の傑作集~
と紹介されている作品集。どんな「男の世界」が登場するのか? (いかにも汗臭そうだな・・・)
収録作は1972~1982年までの発表。

①「よく喋る死体」=強制退去させられた家屋から発見されたミイラ化した死体。家主の老人は完全黙秘。捜査官は状況証拠から真相に迫るが、家主の妻と目された死体は別人と分かり・・・。最後の一行で反転させられるところがミソ。
②「アイルランドに蛇はいない」=そうなんだ! で?内容はというと、ずばり「因果応報」かと思いきや、割とブラックなラスト一行、っていう感じかな。(想像すると気持ち悪い!)
③「厄日」=こちらはまさに「因果応報」。でも、最初に「厄日だ」と思った人物でなく、違う人物が「厄日だ!」と痛切に思うことになる・・・。ご愁傷さまです。
④「免責特権」=根拠のない誹謗中傷記事を書いても、大新聞社の特権に守られて素知らぬ顔の新聞記者。そんな奴に強烈なしっぺ返しを食らわせるべく、男は立ち上がった! そして図書館通い・・・。でも本当にギャフン(死語)と言わせる。
⑤「完全なる死」=よく見るプロットと言ったらそうなんだけど、最後には気分がスゥーッとする。(いわゆる勧善懲悪) 超高齢化が進む昨今、自分で自分の死後の準備をしておきたいものです。
⑥「悪魔の囁き」=これもなかなか気が利いてる。お堅い「判事さま」が徐々に賭け事に熱くなっていき、最後には・・・ということなんだけど、出来のいいコントのような一編。
⑦「ダブリンの銃声」=これが中では一番地味。いわゆる“最後の一撃”なんだと思うんだけど、これは欧米人なら分かるのだろうか・・・
⑧「帝王」=いやぁー、分かるよ! 分かるんだけど、大丈夫か? 銀行の支店長という職を捨てて島の漁師に弟子入りなんて! いくら我が儘で全く愛情のない妻と離れるためとはいえ・・・。それを決断させたのが「帝王」なのだ(何のことやら?)。

以上8編。
うん。面白い。「短編の名手」という言葉は正しい。
どれもプロットが旨いし、ラストの捻りが決まっている作品ばかり。
何より、作者の腕前を感じるのは人物造形。
みんなどこかに傷や弱みを抱えていて、こっちも読んでるうちにシンパシーを感じる仕掛けになっている。

さすがフォーサイスだね。シリアスな長編もいいけど、こんな軽妙な短編も書けるんだ。
これぞ「一流」作家ということでしょう。
(個人的ベストは⑧かな・・・。痛切にシンパシーを感じてしまった)


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