海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト

蟷螂の斧さん
平均点: 6.07点 書評数: 1573件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.50 6点 マン島の黄金- アガサ・クリスティー 2022/01/07 17:15
①夢の家 4点 若干ホラーテイストの恋愛物語。結末が良くない
②名演技 7点 女優が昔のことで強請られるが・・・芝居はお手の物
③崖っぷち 8点 想いを寄せる男が結婚。その妻は不貞を働いている・・・アンソロジー「厭な物語」(文春文庫)のトップバッター
④クリスマスの冒険 5点 プディングからルビーが出てきた・・・「クリスマス・プディングの冒険」の短めヴァージョン
⑤孤独な神さま 6点 ラブロマンスもの。「夢の家」より断然好み。絵に描かれた想い人の表情がいい
⑥マン島の黄金 4点 観光客誘致のために書かれた宝探し懸賞小説
⑦壁の中 8点 画家の絵を決して褒めない女性・・・こんなプロットをよく思いつくものだなと感心
⑧バグダッドの大櫃の謎 8点 パーティの翌日、大櫃の中から死体が・・・「スペイン櫃の秘密」の短めヴァージョン
⑨光が消えぬかぎり 5点 再婚したところ、戦死したはずの前夫が現れて・・・
⑩クィン氏のティー・セット 4点 毒殺を阻止できるか・・・動機、方法、真相がイマイチ
⑪白木蓮の花 4点 駆け落ちをしようとしたら、夫の会社が倒産・・・心理がよく分からん(笑)
⑫愛犬の死 5点 愛犬と暮らすために結婚?・・・愛犬家の気持ちは分らん

No.49 7点 死人の鏡- アガサ・クリスティー 2022/01/03 18:06
4編とも、よくあるプロットですが、初出は誰なのだろう?著者なのか?気になるところ
①厩舎街の殺人 7点 密室での自殺と思われたが、ピストルを持っていた手の逆側のこめかみに銃痕があった・・・
②謎の盗難事件 6点 居間に置いたばかりの重要な設計図が紛失した。窓から出る人の気配がしたというが、窓の外には足跡はなかった・・・
③死人の鏡 8点 密室でのピストル自殺?。頭蓋骨を通過した銃弾で鏡が割れていた。そうなると体の角度がおかしくないか?・・・長篇ならば、ある人物がレッド・へリングになるのは明らかですね。ラストはちょっぴりホロッとする
④砂にかかれた三角形 8点  二組の夫婦の間に三角関係が、そして殺人事件へ・・・ 著者らしい騙しのテクニック。してやられた(笑)

No.48 7点 牧師館の殺人- アガサ・クリスティー 2021/03/27 17:27
マープル長編初登場。著者によれば、マープルのシリーズなど考えていなかったとのこと。「あのひとは、一番意地悪な人よ」などとマープルを評しており、そのことが窺がえるところが面白い。また皮肉やユーモアのある会話が楽しめる。なお、キスシーンなどは著者作品ではお初かも(笑)。本書はトリックよりプロット(犯人像や別の事件の組み合わせ)のうまさが光る作品だと思います。

No.47 6点 ホロー荘の殺人- アガサ・クリスティー 2020/08/06 20:59
複雑に絡み合った恋愛関係が読みどころ。一途な女性ミッジを応援!!その結果は満足です(笑)。この人物が犯人で、動機もこうであろうと思いながらの読書でしたが、毎度のことですが、大ハズレ。読むたびに著者はうまいなあと感心するばかりです。なお、結末に至る過程がややあっけなかったかなと思いで6点どまりとしました。

No.46 6点 死が最後にやってくる- アガサ・クリスティー 2020/07/10 20:33
ロマンスの行方は予想できましたが、犯人は分からずじまい。古代エジプトが舞台なので、犯人にはそんなに悪知恵はないだろうとの思い込みが敗因でした(笑)。ラストはほのぼの感に満たされています。こういうのに弱いんです。なお、裏表紙にある重要事件がすぐ起きるものと思ったら、全頁の五分の二まで起こりませんでした。よって、かなり無神経なネタバレであると思います。

No.45 7点 愛国殺人- アガサ・クリスティー 2020/07/05 17:40
本書は江戸川乱歩が選んだクリスティ作品ベスト8の一冊。「惜しげもなく大胆なトリックをいくつも織り込んだ、よく考えられた複雑な筋」と絶賛しています。何気なく読むと、大したトリックでもないような気がしますが、実は一点一点よく見ていくと本当に手の込んだトリックと分かります。

ベスト8(マイ評価・本サイト平均点)
「そして誰もいなくなった」(10点 8.67点)
「白昼の悪魔」(7点 7.08点)
「三幕の殺人」(5点 6.27点)
「愛国殺人」(7点 5.67点)
「アクロイド殺し」(10点 7.83点)
「ゼロ時間へ」(8点 6.38点)
「シタフォードの秘密」(6点 5.20点)
「予告殺人」(5点 5.74点)


【ネタバレ】
邦題は米国版「The Patriotic Murders」より。ダブルミーニングで大変良いと思います。

No.44 6点 火曜クラブ- アガサ・クリスティー 2020/04/01 20:38
本作以降に長編にアレンジされたトリックが数点あり楽しめた。
①火曜クラブ~5点 ②アスタルテの祠~7点 ③金塊事件~4点 ④舗道の血痕~8点 ⑤動機対機会~5点 ⑥聖ペテロの指のあと~4点 ⑦青いゼラニウム~5点 ⑧二人の老嬢~8点 ⑨四人の容疑者~4点 ⑩クリスマスの悲劇~6点 ⑪毒草~6点 ⑫バンガロー事件~9点 ⑬溺死~6点 

自薦10冊を読み終えて      (当サイト)
①そして誰もいなくなった 10点 8.65点
②予告殺人         5点 5.74点
③アクロイド殺し     10点 7.83点
④オリエント急行の殺人  10点 7.70点
⑤火曜クラブ        6点 6.45点
⑥ゼロ時間へ        8点 6.38点
⑦終わりなき夜に生まれつく 8点 6.77点
⑧ねじれた家        6点 5.93点(著者が一番好きと言っている)
⑨無実はさいなむ      7点 6.23点
⑩動く指          7点 5.80点

No.43 7点 動く指- アガサ・クリスティー 2020/03/14 16:45
(自薦の一冊)裏表紙より~『傷痍軍人のバートンが療養のために妹とその村に居を構えてまもなく、悪意と中傷に満ちた匿名の手紙が住民に無差別に届けられた。陰口、噂話、疑心暗鬼が村全体を覆い、やがて名士の夫人が服毒自殺を遂げた。不気味な匿名の手紙の背後に隠された事件の真相とは?ミス・マープルが若い二人の探偵指南役を務める。』~

なんとも言えないほのぼの感。サブストーリーですが、兄妹二人の恋の同時進行は初もので楽しめました。「冒頭に罠。殺人者の思惑通り読者が引っかかる」と著者の談。その通り!。今回もミスリードにしてやられました(笑)。

No.42 6点 シタフォードの秘密- アガサ・クリスティー 2020/02/26 19:50
本作「吹雪の山荘」を坂口安吾氏がべた褒め。~このトリックほど平凡なものはない。現実に最もありうることで、奇も変もないのであるが、読者は見逃してしまうのである。露出しているトリックに気付くことができないのである。このトリックの在り方は推理作家が最大のお手本とすべきものである。~なるほど、その通り。主人公エミリーの男殺しの言動に気を取られ、動機のミスリードにすっかり騙されてしまった(笑)。

No.41 6点 邪悪の家- アガサ・クリスティー 2019/12/19 17:54
現在のミステリーファンには犯人を”推測し易い”作品であり、けして犯人が真の意味で”判る”などとは言えない作品だと思います。また、著者のポアロに関する意向とまったく違う評価となってしまった作品でもあると思います。本作は、ポアロもの6作目で、ポアロという探偵が世間的に確立した作品です。著者は本作にある通り、実はポアロを引退させたかったのですね。しかし、諸事情でその後30作品近くポアロものを書かざるを得なくなった。更にいえば、例の作品(1975年発表)の内容、書かれた時期、経緯を斟酌してみれば、この点は明らかでしょう。そういう意味ではエポックメーキング的な作品といえるのかもしれません。内容は実にクリスティー氏らしいミスディレクションをふんだんに使用した良作だと思います。惜しい点は怪しい人物を創造しなかったことと、ポアロの登場が早すぎるため、読者は余裕を持って犯人の推測が可能であったということですかね。


(ネタバレあり)法月綸太郎氏の「1932年の傑作群をめぐって」の~「災厄の町」(1943年エラリー・クイーン)はクリスティの「邪悪の家」と類似~に関して。手元にメモがあるのみで詳細は忘却しましが、類似点は手紙を悪用し、毒殺されそうになる被害者を装うというプロットが共通ということでした。


No.40 5点 リスタデール卿の謎- アガサ・クリスティー 2019/07/25 18:38
12篇の短篇集。恋愛ものや冒険譚が半数位あります。
ベスト3は
「白鳥の歌」(8点)白鳥は死ぬ前に一番美しい声を出すという伝承があるらしい。「わたくし『トスカ』を歌うことはもう二度とないのよ」のセリフが心に沁みます。「お芝居はこれでおしまい!」とオシャレに短篇集のラストを締めくくっています。

「ナイチンゲール荘」(7点)どこかで読んでいると思ったら江戸川乱歩編「世界短編傑作集3」で「夜鶯荘」として紹介されていました。ブラックユーモア系です。

「リスタデール卿の謎」(7点)謎と真相のギャップが面白く微笑ましい。ハッピーエンド系。

No.39 6点 春にして君を離れ- アガサ・クリスティー 2018/11/16 22:58
ミステリーではないので評価が難しい。現代では、あえて心理ミステリーとでもこじつけることは可能かもしれません。著者自身はミステリーとしてとらえていなかったようですね。それは、別のペンネームで出版し、推理モノを求める読者を失望させないよう、クリスティと同一人物と分からぬよう箝口令を敷いていたということからも窺えます。また自伝によれば、「この小説に私は『春にして君を離れ』という題をつけた。シェークスピアの十四行詩の冒頭の語「われ、そなたと春に遠からざる」から取った。この小説がどんなふうなものかは、もちろんわたし自身にはわからない。つまらないかもしれない、書き方がまずく、全然なっていないかもしれない。だが、誠実さと純粋さをもって書いた、本当に書きたいと思うことを書いたのだから、作者としては最高の誇りである。」ともあります。名作、しかしミステリーではない。悩んだ挙句、6点としました。

No.38 6点 蜘蛛の巣- アガサ・クリスティー 2018/08/06 09:46
第一印象は、読書より劇を見た方が笑えるだろうな・・・でした。主人公・クラリサのノー天気さが良い。夫とその招待予定客が途中で登場して、もっとドタバタ劇になればなあ、とないものねだり(笑)。ミステリー的には、意外な真相と犯人といったところでした。

No.37 6点 謎のクィン氏- アガサ・クリスティー 2018/05/22 14:31
「雑誌でこういう短篇が好まれるらしいし、わたし自身好きだが、どんな定期刊行物からの連載申し入れもすべてお断りした。わたしが書きたいと思った時だけに書きたいのである。」(自伝より)ということで、著者の作品群からはかなり距離のあるファンタジー的色彩の濃い作品集。そんな中でも本格ミステリー要素のある作品が4本ぐらいありましたね。「窓ガラスに映る影」「闇の声」など長編で読みたい。でもオカルトチックな展開なので、某巨匠とかぶってしまうか?(笑)。

No.36 6点 殺人は容易だ- アガサ・クリスティー 2018/05/15 15:20
ノンシリーズもので、元警察官ルークによる私立探偵風な物語です。ノンシリーズで男の主人公は珍しいかも?。ミッシングリンクとミスディレクションのお手本のような作品でした。主人公のルークは、卿の秘書かつ婚約者であるブリジェットに一目ぼれしてしまいます。二人の会話(「あなたは冷酷な悪魔だ」等々)は結構楽しめました。物語は『一瞬の狂気』が主題になっているような気がしました。老婦人の話にある犯人の一瞬の目つきや、インコの首を一瞬に絞めたなど。

No.35 6点 死者のあやまち- アガサ・クリスティー 2018/04/22 13:20
真相、意外な犯人等、著者らしく中々のものと思うのですが、やや消化不良気味の感。何故なのか?。第一の殺人が起こった後、家主の妻が行方不明となり、彼女の帽子が川で発見される。生死はあやふやのままである。ポアロは死んでいると考えるがその根拠を語ることがない。この辺がもやもやして、スッキリしなかったですね。第一の殺人を主体に推理しているので、これでは読者は犯人像や真相のヒントをつかむことができないのでは?・・・。結局、ミスディレクションの妙、伏線回収の妙が弱かったのではないかと思う次第です。

No.34 6点 ねずみとり- アガサ・クリスティー 2017/10/30 20:48
裏表紙より~『若夫婦の山荘に、大雪をついて五人の泊り客、そして一人の刑事がやってきた。折しも、ラジオからは凄惨な殺人事件のニュースが流れはじめる。やがて、不気味なほどの緊張感がたかまり、舞台は暗転した!マザー・グースのしらべにのって展開する、スリリングな罠。演劇史上類をみないロングランを誇るミステリ劇。』~1幕、2幕とも同じ舞台で演じられます。こういうスチエーションがなぜか好みなんです。ある犯人像を著者が書かないわけがないと思っていたので、やっと出会った感じ(笑)。

No.33 5点 なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?- アガサ・クリスティー 2017/10/09 08:14
ダイイングメッセージだけで一冊の物語を書き上げてしまったことに感服。著者に対しては、どうしても本格ものを期待してしまいます。本作は冒険小説風、青春ミステリー風でした。

No.32 6点 ポアロのクリスマス- アガサ・クリスティー 2017/02/04 18:06
裏表紙より~『聖夜に惨劇は起きた!一族が再会した富豪の屋敷で、偏屈な老当主リーの血みどろの死体が発見される。部屋のドアは中から施錠され、窓も閉ざされているのに、犯人はどうやって侵入したのか?休暇返上で捜査にあたるポアロは被害者の性格に事件の鍵が隠されていると考えるが…』~

著者にとっては珍しい密室物!。メインはやはり例のごとく意外な犯人像ですかね。結構楽しめたのですが、今一歩高評価にできなかった点は、ポアロの心理的何とか。これは駄目とは言いませんが、まったく面白くない(笑)。あと、怪しそうで怪しくないとか、怪しそうではないがなんとなく気になるとか、著者の作品では必ず感じることができるのですが、本作にはそれがなかった。読者はあるイメージを植え付けられるのですが、それがミスディレクションとして機能しなかった。悪く言えば嘘をつかれた感じ。伏線はたくさんあるのですが、前記と反作用を起こしてしまい驚きに繋がらなかったということです。残念。

No.31 9点 招かれざる客- アガサ・クリスティー 2016/09/02 17:31
裏表紙より~『深い霧がたちこめ、霧笛が響く夜。庭を見わたすフランス窓の前で、車椅子に座った館の当主が射殺されていた。そのかたわらには、拳銃を握ったままの若い妻が立ちつくしている。車の故障でたまたま立ち寄った男は、美しい妻のために一計を案ずるが…スリリングな展開と意外な結末が待ちかまえる傑作ミステリ戯曲。』~

久しぶりに「ガツン」と来ましたね。サスペンスものです。巧い!(笑)。著者らしさが凝縮された作品であると思います。著者の作品では戯曲ということもあり、あまり読まれていないようです。「アガサクリスティー完全攻略」(霜月蒼氏)での高評価と、あるサイトでの”べた誉め”評により手にしてみました。大正解でした。

蟷螂の斧さん
ひとこと
ミステリーは、作家中心では読んでおらず、話題作や、ネットでのお勧め作品を読んでいます。(2013.6追加~本サイトを非常に参考とさせてもらっています。現在は、読後、類似なトリック・モチーフの作品を探した...
好きな作家
ミステリー以外で「石川達三」、短編で「阿刀田高」、思想家で「荘子」
採点傾向
平均点: 6.07点   採点数: 1573件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(50)
折原一(47)
中山七里(33)
松本清張(25)
島田荘司(20)
歌野晶午(19)
東野圭吾(19)
パトリック・クェンティン(18)
綾辻行人(18)
阿刀田高(18)