皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
HORNETさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 1121件 |
No.34 | 6点 | あなたが誰かを殺した- 東野圭吾 | 2024/02/04 20:14 |
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夏の閑静な別荘地で恒例となっていた、近隣同士の四家でのバーベキュー・パーティ。ところががその晩に、5人が殺害される連続殺人が起きた。突如起きた惨劇に、悲しみに暮れる親族たちだったが、犯人はすぐに自首。四家族とは縁のない外部犯だったのだが、あまりに不可解な事件の様相を解こうと、関係者たちで「検証会」を行うことに―
「〇〇が〇〇を殺した」のタイトルによる加賀恭一郎シリーズは、これまでは作中で犯人が明らかにされず、読者が真相を推理するという仕組みの作品だったのだが、本作はそうではない。言ってしまえばいたって「普通の」フーダニットのミステリだった。 作品前段で早々に犯人が自首するのだが、当然それがそのまま真相であるはずはなく、「真犯人」が別にいるという暗黙の了解で物語を読み進めることになる。些細な違和感をもとに推理の突破口を見出す加賀刑事の慧眼は健在で、そこから真相を紐解いてく過程は本格ミステリの純度が高い作品ではある。ただそれ以上でもそれ以下でもなく、いたってオーソドックスな(良い意味でも)仕上がりの一作だった。 |
No.33 | 6点 | 卒業−雪月花殺人ゲーム- 東野圭吾 | 2023/10/29 21:36 |
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加賀恭一郎の学生時代が描かれた、シリーズ第一作。
いつもつるんでいる大学の悪友たちの一人が、卒業を前にして不可解な死を遂げることを皮切りに、心を許し合ったと思っていた友人たちの間にあった見えない部分が露になっていく。 大学卒業を目前にした何とも言えないセンチメンタルな雰囲気と、極めて正道な本格ミステリの展開がマッチして、私としては非常に好印象だった。(ちょうど最近の国内新作を立て続けに読み、「どんでん返し」や企みに満ちた作品に触れ続けていたから余計そう感じたのかも。) 茶道の「雪月花」の作法を用いたトリックはやや複雑でパズルに走りすぎているきらいもあったが、大学4年生をモチーフにした物語展開は、自分の当時を思い返して(もちろん殺人などないが)なんとなくノスタルジックな気持ちに浸って読めた。 面白かった。 |
No.32 | 7点 | 希望の糸- 東野圭吾 | 2023/03/31 21:23 |
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2人の我が子を災害で亡くしたのち、新たに授かった娘を育てるシングルファーザー・汐見行伸。夫と離婚後、一人で喫茶店を営んでいた女性・花塚弥生の殺人事件。離れた場所で起きている、全く関係のなさそうな事案が、加賀恭一郎らの捜査によって結び付けられていく―
著者の作品群では、特に加賀恭一郎シリーズが好きで好んで読んでいるのだが、本作では加賀の従弟であり部下である松宮脩平が前面に出ている作品。その松宮自身の問題も複線的な物語となっており、厚みのある作品ではあったが「加賀の鋭い推理による事件解明譚」を期待して手を付けた身としてはちょっと肩透かしだった。 ただ、喫茶店経営の女性殺害事件と、その裏にある父子家庭の家庭事情が結びついていく過程は予想できる類のものではなく、相変わらずの著者の多彩なアイデアには感嘆した。 |
No.31 | 7点 | 白鳥とコウモリ- 東野圭吾 | 2022/05/22 17:45 |
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竹桟橋近くの路上の車内で、弁護士の刺殺体が発見された。警視庁捜査一課の五代努は、わずかな手がかりから関係人物を突き止める。それは、愛知県に住む倉木達郎という初老の男だった。やがて倉木は全ての犯行を認め、捜査は終結する。だが、事件の被害者や関係者らが、その真相には「納得がいかない」という。五代自身も疑念を持ったまま、独自で捜査を進めていくうちに、一件落着したかのように見えた事件の本当の姿が明らかになっていく―
500ページを超える作品でありながら、80ページもいかないうちに「すべて私がやりました」という自白を迎える時点で、それが真相でないことはどの読者にも明らか。では真相は何なのか?という関心を持続し続けるだけの筆力が作者にはあり、少しずつ解きほぐされていく関係者の過去と、その端緒となる手がかりの提示は絶妙。 行き着いた先の真相は、正直特段目新しい感じはなかったが、わずかな手がかりやヒントを見逃さずに「気付き」を重ねて真相に迫っていく過程はなかなかに読み応えがあり、楽しめた。 |
No.30 | 5点 | さまよう刃- 東野圭吾 | 2018/05/13 17:53 |
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少年犯罪被害者の応報感情と刑事罰のアンバランスさ、というテーマは今や社会問題として定着している感があり、それをストレートに描いている本作品はオーソドックスで標準的という印象。複雑な仕掛けもないので、500ページほどある作品だが半日で読める。
被害者心理を強く代弁する作風だが、(当然倫理的なこともあって)その復讐心を完遂させることを肯定する訳にはいかず、被害者のみならず捜査にあたる警察も含めた「無念」を「無念のまま」描いた終わりにどうしてもなってしまう。おそらく読者としては被害者(であり被疑者)である長峰に共感して読むことが多いと思うが、そうなればなるほどラストは虚しいものに感じるだろう。 あと、鮎村も長峰と同じく極悪非道な行為により娘の命を奪われた立場なのに、なぜかこちらは「空気を読めない哀れな人」「厄介者」のように描かれているのはちょっと可哀想な気がした・・・ |
No.29 | 6点 | 犯人のいない殺人の夜- 東野圭吾 | 2018/05/01 21:50 |
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ヒューマンドラマ絡みの最近の作品も好きだけど、私は氏の初期のミステリミステリした作品がそれはそれで好き(「仮面山荘」とか「ある閉ざされた…」とか)。だから基本的にこの短編集も好き。
ただまぁ、「目からウロコ」のような秀逸なひっくり返しが揃った作品集というわけでもない。最後の表題作以外は全て途中で犯人の見当がつく。真相うんぬん以上に着眼点として面白かったのは「白い凶器」。表題作「犯人のいない殺人の夜」はよく考えたものだ、とは思うけど読み返さないとなかなかホントのところが分からない分かりにくさがあった。 |
No.28 | 7点 | 夜明けの街で- 東野圭吾 | 2018/04/07 18:58 |
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昨今の週刊誌記事でのすっぱ抜き攻勢を鑑みると、ある意味旬のテーマ(笑)
ミステリの質を求め、しかも不倫モノは読んでいて不快という人には確かに評価が低いかも。自分は、「ミステリの質は求めるが、俗的な話もそれはそれで嫌いではない」ので、なかなか面白かった。 妻に気付かれていやしないか常にビクビクしながら、それでも無茶をしてしまう不倫男性の心理が筆者の筆力でうまく描かれていると思う。もちろん不倫を肯定する気はないが、よくないとわかっていながら欲望に抗えない人の弱さがよく表れている。 ミステリとしてはトリックうんぬんではないが、ヒロイン秋葉の行動動機などの真相が明らかになるくだりはなかなか面白かった。 |
No.27 | 6点 | ラプラスの魔女- 東野圭吾 | 2018/04/01 14:25 |
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超能力とかの完全な超常現象モノかと思ったけど一応そうではなかった。けど、非現実的という点ではまぁ同じような感じかな。まさにSF。
序盤はめまぐるしく場面や登場人物が変わって、各ストーリーが並行して描かれていく中で次第にそれが合わさっていく展開。相変わらず先が知りたくなり読ませる。 犯人の(昔の犯罪の方)動機は、思った通りだった。ブログの内容が怪しくなってきた時点で、オチは分かった。 最後、最初の事件の片棒を担いだ女までうやむやにされるのが腑に落ちないなぁ。 |
No.26 | 6点 | 祈りの幕が下りる時- 東野圭吾 | 2018/02/11 16:26 |
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<ネタバレです>
基本的にクオリティが高い筆者の作品としては、平均的な完成度という感想。 地道な聞き込み捜査によって、バラバラに見えるピースが次第につながっていき、全体像が見えてくるという基本的な展開は十分に面白い。 また、父娘の絆、何を犠牲にしてでも娘の人生を守ろうとする父親の愛情、という点は素直に胸を打たれるものだった。ただ、いくらそのためとはいえ、人を殺めることに対してあまりにも良心の呵責が欠けていると思う。最初の入れ替わりの事件はまだしも、善意の第三者である押谷道子を何のためらいもなく手にかける忠雄や、そのことを聞いてもすぐに受け入れられてしまう博美の姿は、父娘の絆という言葉だけで片付けることにはできない。 ダミーの伏線として描かれていた苗村についても、「子ども思いの熱心な先生」というキャラクターが真相解明の段になってあっさり覆されて、「嫉妬心の強いストーカー気質の男」に急になり下がっており、都合よく書き換えられている感じがする。 映画化の派手な宣伝文句に知らず知らずのうちに影響され、勝手にハードルを上げてしまっていたかもしれないが、良作であることは間違いないが、突出した傑作という評価にはならなかった。 |
No.25 | 5点 | マスカレード・ナイト- 東野圭吾 | 2017/11/19 22:16 |
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基本的に上手い作家さんなので、安心して読める。しかも、サクサクと読めるリーダビリティなので、半日あれば読めてしまう。
ホテル・コルテシア東京の大みそかには、「マスカレード・ナイト」と呼ばれる仮装カウントダウンパーティがある。警察に、そのパーティに「未解決の女性殺人事件の犯人が現れる」という密告があった。半信半疑ながらも、全力で犯人逮捕にあたろうとする警察で、例によって例のごとく「ホテル従業員に扮した潜入捜査」が行われることに。そして例によって例のごとく、新田がフロントクラーク役に。前回捜査で顔なじみのコンシュルジュ・山岸尚美の協力も得ながら、不審人物のマークに励む新田の傍らで、さまざまな客の要望に応え四苦八苦する様子を見ることになる。 「不審な客」=容疑者候補のさまざまなエピソード一つ一つが面白く、ホテル業務の喜怒哀楽を読むことそのものが結構面白い。当然、どれかが、あるいはすべてが真相の伏線となるであろうから、こちらもいろいろな想像を巡らそうとするのだが、いろいろありすぎて推理する気にはなれない。案の定、真相はとても入り組んでいて、よく考えられているとは思うが分かることはないだろう、と思った。 読み物として読めば普通に面白いと思う。 |
No.24 | 5点 | ナミヤ雑貨店の奇蹟- 東野圭吾 | 2015/08/20 17:20 |
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「ナミヤ」という名前を「ナヤミ」とからかったことから始まった雑貨店の悩み相談所。店主もとうにこの世を去り、今や廃屋と化した雑貨店に逃げ込んだ空き巣3人組に起こる、不思議な出来事。ハートウォーミングなファンタジーもの。
児童養護施設に纏わる人間関係で、全体を通して次々につながっていく構成はさすがだが、ちょっとミエミエ感があったかな。後半になると登場した瞬間、「きっとあのときのあの人だ」とわかる。 第2章の「魚屋ミュージシャン」の話が一番よかった。父親の生き様にもグッと来た。 |
No.23 | 7点 | 夢幻花- 東野圭吾 | 2015/08/14 16:46 |
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アサガオがどういう意味合いを持つものなのかは読んでいくうちに大体見当がついた。最終的にはなんだか救いのない話って感じ…だけど、主人公と兄、家族についての複線の結末はよかった。
相変わらずの緻密な筋立てとリーダビリティ。よくもまぁ次から次へといろんなネタが…と感心してしまう。 |
No.22 | 8点 | 虚ろな十字架- 東野圭吾 | 2015/01/17 20:09 |
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娘を強盗殺人で失い、それがもとで離婚してしまった男が、その離婚した妻までも殺害されたという知らせを受け、真相を探る。調べていくうちに、娘の事件をただ忘れようと目を背けていた自分に比べ、その苦悩に向き合い乗り越えようと歩んでいた元妻の姿がわかってくる。さらに、ただの通り魔的強盗殺人のように思われた元妻の事件だったが……。
久しぶりに読み応えのある東の作品に出会ったというのが正直な感想。冒頭の部分が物語にどうかかわってくるのかというのもずっと気になっていたが、自分にとっては意外で面白かった。そんなふうに「何がどうつながってくるのか?」という疑問と期待でずっと読み進められた。 |
No.21 | 8点 | ある閉ざされた雪の山荘で- 東野圭吾 | 2013/11/11 19:12 |
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個人的にはこのころの東野作品は大好き。ヒューマンドラマの要素も色濃く入ってくる最近の作風もそれはそれで好きだが、ミステリ的な挑戦色の濃いこうした作品は本格ミステリファンの嗜好にぴったりだと思う。
タイトルからしてそそりますね。そしてその期待通り。中途半端に現実的になるより、思い切った虚構でミステリの面白さを追求しているところがいい。またこういう作品書いてくれないかなぁ。 |
No.20 | 7点 | 禁断の魔術- 東野圭吾 | 2013/08/30 19:47 |
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単なる謎解き・トリックだけではなく、そこに人間の悲哀や感動を絡める点で、非常に秀逸な存在だと感じる作品集だった。一章「透視す」は、義母に育てられたホステスの、二章「曲球る」は戦力外になったプロ野球選手の、家族との絆が感じられる感動的な話で、すごくよかった。ラストの「猛射つ」は中編と言っていい長さ。湯川の母校の後輩の、これまた悲哀の感じられる秀作だった。 |
No.19 | 6点 | 虚像の道化師- 東野圭吾 | 2013/08/30 19:39 |
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平均的にクオリティが高く、まずハズれないのはさすが。ただ、自身が推理して読むタイプの読者(私もそう)は、ガリレオが物理学者ということで、トリック・真相が科学的なことに帰結するのは仕方ないのだが、そういうものははじめから推理を放棄してしまう。だから、本作品でいえば後半の「偽装(よそお)う」「演技(えんじ)る」のようなタイプの作品が好き。いずれにせよ、ガッツリ長編を読む時間も気力もなく、でも読むなら没頭して読めるものを、というときに最適。 |
No.18 | 5点 | 赤い指- 東野圭吾 | 2013/02/16 13:08 |
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切迫した妻の電話で家に帰ると、見知らぬ幼女の死体が。中3の長男に幼女趣味があり、殺してしまったらしい、と物語が始まる、いわば倒叙法で描かれた作品だが―やられた。
設定、構成、仕掛けどれも秀逸。であることは間違いない。が、あまりにも気分が悪い。言葉は悪いが、胸糞悪い。救われない話だった。 |
No.17 | 7点 | 悪意- 東野圭吾 | 2012/10/14 22:05 |
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人気作家の殺人で幕を開ける本編は,典型的なフーダニットミステリの導入でありながら,そこからハウダニット,ホワイダニットへと転じていくその展開そのものに驚きと奥深さがあり,非常に面白かった。相変わらず無駄な展開や描写がなく,といって味気ないわけでもなく,登場人物の手記によって視点人物が変わる構成でありながら非常に読みやすい。些細な違和感を掘り下げて真相へと迫っていく加賀恭一郎の推理も変わらず見応えがある。
※以下ネタバレ 登場人物の手記で始まる本編は,クリスティの某有名作品を知る読者なら,はじめから疑いはもつだろう。気付いてからはその記述にもはや信憑性はなく,加賀が視点人物として語る部分のみが客観的な材料となる。だが些細な不審を端緒に真相に迫ろうとする加賀の推理も,実は犯人によるミスリードであることさえ,物語が後半に至るにつれなんとなく分かってくる。が,分かってくるとなおさら真相解明の欲求が高まり,全てが分かったときに「やられた」感が大きくなるという仕組みである。 犯人にも同情の余地あり,という前半のミスリードが,真相が分かったときの脱帽感と,ある意味反省にも似たような感情をもたらしてくれる。 |
No.16 | 7点 | 嘘をもうひとつだけ- 東野圭吾 | 2012/10/09 22:15 |
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一つ一つの作品の水準が高い、良質な短編集。基本的には、犯人が概ね(はっきりとではない)明らかになっている上で話が進むいわゆる「ハウダニット」中心。短い各話の中にもきちんと材料が散りばめられ、刑事コロンボのように加賀恭一郎が謎を解き明かしていく。表題作と、「冷たい灼熱」「狂った計算」が面白かった。まぁ、多少強引さを感じる展開もあるが。 |
No.15 | 4点 | 回廊亭の殺人- 東野圭吾 | 2012/08/13 02:42 |
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まったくアンフェアではないと感じる。むしろ,トリックとしては確かに意外だったが,「そこに何らかの仕掛けがある」というのはそれまでの描き方で薄々感じていたので意外ではなかった。だから「ミステりー三昧」さんが書かれているように,まさに「あぁそう」と言う感じ。
面白い,考えられた仕掛けだと思うのでミステりーとしてそれほど不満はないが,ストーリーとして読後感が不快。報われない感じが強く,そういう意味で評価が下がった。 |