皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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kanamoriさん |
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| 平均点: 5.88点 | 書評数: 2474件 |
| No.2294 | 6点 | 完璧な殺人- リレー長編 | 2015/07/26 10:02 |
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| 大金持ちの妻の浮気を知ったティムは、彼女を殺害し浮気相手の男を犯人に仕立て上げるという”芸術的で完璧な殺人”を夢想し、5人の著名なミステリ作家に、完全犯罪計画の立案を依頼することに--------。
ティムの要請に応じて完全犯罪のコンサルタントになる英米の著名なミステリ作家とは、ローレンス・ブロック、ピーター・ラヴゼイ、サラ・コードウェル、トニイ・ヒラーマン、ドナルド・E・ウェストレイクの5人。よくもまあ、こんな色物企画に参画したなあと思える巨匠、実力派作家ばかりですw それぞれが手紙で計画案を伝えてくる前半は リレーミステリというより完全犯罪の競作といった趣きですが、後半は一転、楽屋落ちのジョークを交えながら、作家間でお互いの殺人プランをけなし合う、罵倒合戦となるのが面白いです。ほんと作家という人種は、プライド高く、皮肉屋でめんどくさい連中だw ただ、すべて手紙文のやり取りのみで構成されていて、作家たちの直接の絡みがないので、いまいち盛り上がりに欠ける感じもする。どうせなら別のテーマで、各作家が創造したシリーズ・キャラクターを共演させたらもっと面白くなったかもしれない。泥棒バーニイとドートマンダーの掛け合いとか、ダイヤモンド警視とリープホーン警部補にテイマー教授の推理合戦、なんて想像するだけで楽しそう。 |
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| No.2293 | 6点 | 交換殺人はいかが? - 深木章子 | 2015/07/24 21:50 |
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| 推理作家志望の小学6年生・樹来(じゅらい)は、元刑事の祖父から過去に関わった怪事件の話を聞き出すや、「そんなことじゃないと思うんだけどなあ」と、独自の推理を披露する---------。
安楽椅子探偵モノの連作短編集。 樹来(じゅらい)のリクエストに応える形で、収録6編はそれぞれミステリにお馴染みのテーマ------密室、幽霊、ダイイングメッセージ、交換殺人、双子、童謡殺人を扱っていて、作者の長編とはちょっとテイストが異なる本格パズラー志向が強い連作です。 個人的ベストは表題作の「交換殺人はいかが?」で、交換殺人という手垢のついた趣向をヒネリにヒネッたプロットによって意外な構図を捻出しています。 旧家を舞台に2組の双子の男女が殺人事件に絡む「ふたりはひとり」も、複数のミスディレクションが効果的な考え抜かれた良作。双子なら当然アッチ系のトリックということになるのですが.....。 そのほかでは、納得感のあるダイイングメッセージもの「犯人は私だ!」、バカミス系の密室トリックもの「天空のらせん階段」がまずまずと思える出来栄えかと。 |
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| No.2292 | 7点 | 薔薇の輪- クリスチアナ・ブランド | 2015/07/22 12:34 |
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| 女優エステラの絶大な人気は、ウェールズの農場に別れて暮らす障害児の一人娘との交流を綴った新聞連載のエッセイに支えられていた。しかし、米国で服役中の危険人物の夫が特赦で出所し、死ぬ前に娘に会いたいと言ってきたことから、その山間の農場を舞台に悲劇が起きる--------。
作者晩年の1977年に別名義で発表された長編ミステリ。「猫とねずみ」以来、なんと27年ぶりにチャッキー警部が再登場するシリーズの第2作です。 前作「猫とねずみ」は、女性編集者のカティンカをヒロインとしたゴシック風サスペンスで、チャッキー警部は脇役のような感じでしたが、今作ではチャッキーが探偵役の堂々とした謎解きもの、本格ミステリになっています。 文庫オビの「すべては驚愕の結末のために」というキャッチコピーは、やや大げさに煽り過ぎという感があって、真相は驚天動地というようなものではありません。中核の謎は、フーダニットと併せて、消えたエステラの娘”スウィートハート”の消息ということになるのですが、その生死のみならず、そもそも娘は実在するのか?という疑問を含め、あらゆる可能性が検討される。限られた容疑者たちの嘘と真実が入り混じった証言にチャッキーが翻弄され、立てる仮説が三度四度と覆される展開が面白く、ブランド流本格に衰えは感じられません。 ちなみに、本書の中で個人的な一番のサプライズは、チャッキー警部の奥さんが登場するシーンでしたw |
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| No.2291 | 6点 | 救済のゲーム- 河合莞爾 | 2015/07/20 12:26 |
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| 全米オープンの開催を2日後に控えたゴルフコースの18番グリーン上で、胴体をピンフラッグで串刺しされた死体が発見される。かつて騎兵隊長が”神の木”の怒りにふれ串刺しされたというインディアン伝承に見立てた殺人なのか?日系三世の破天荒な天才ゴルファー・ジャックが謎解きに挑む---------。
本格的なゴルフ・ミステリの力作だと思います。作者のセールスポイントである”島荘風の奇想トリック”という点ではやや物足りなさがあるものの、ミステリ要素を除いたゴルフ小説というエンタメとして読んでも十分に面白く、2段組み360ページの長尺を感じさせないリーダビリティがあります。「プロゴルファー猿」などの漫画を思わせる非現実的なスーパーショットの演出は好みの分かれるところかもしれませんが。 謎解きミステリとしては、事件の隠された動機がわりと分かり易いと思わせて、どんでん返しを仕掛けてくるミスリードがなかなか巧妙で、ジャックの経歴を活かした心理分析にも納得感があります。 ジャックとキャディのティムとの名コンビの登場がこれ一冊限りというのは勿体ない。ぜひ続編を出してもらいたいものですね。 |
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| No.2290 | 6点 | ドーヴァー5/奮闘 - ジョイス・ポーター | 2015/07/18 12:50 |
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| ウィブリー家による寝室用便器の製造販売の成功によって発展した田舎町ポットウィンクルで、そのウィブリー家の一人娘で主婦のシンシアが撲殺された。こんな厄介な事件はロンドン警視庁に任せるにかぎる......だが、やって来たのは不機嫌そうなドーヴァー警部と部下のマグレガーのコンビだった--------。
お馴染み史上最低のお下劣男、ドーヴァー警部シリーズの5作目。 誰からも恨みをかっていない平凡な若い主婦が被害者で、犯人捜しよりも動機捜しがメインとなっている。 なにせ、ドーヴァーは「妻殺しの下手人は亭主に決まっておる」(←よく考えればアタリマエの迷セリフ?)と決め付け、早々に夫を逮捕してしまいますから、フーダニットの興味は最初からありませんw 舞台が”便器の町”ポットウィンクルということで、いつもにまして”トイレネタ”が多い下品なユーモアは好みの分かれるところで、中盤の展開にやや中だるみを感じるところもあるものの、ブラック・ユーモアが漂うオチは本書でも健在です。ただ、シリーズものゆえの”お約束”ネタとして楽しめる部分が多いので、それをマンネリと感じる読者がいるかもしれません。 |
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| No.2289 | 6点 | 高座の上の密室- 愛川晶 | 2015/07/16 18:40 |
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| ”神楽坂謎ばなし”シリーズの2作目。教科書出版会社に勤めているアラサーのヒロイン・希美子が、ひょんなことから寄席「神楽坂倶楽部」へ席亭(支配人)代理として出向することに。慣れない役職に戸惑い、様ざまなトラブルにも見舞われながら、周囲の手助けもあって成長していく--------というのがシリーズのあらすじ。
やや薄味の落語ミステリという感じだった前作ですが、今回は噺家(落語)ではなく、手妻(奇術)と太神楽(曲芸)という、いわゆる”色物”芸人を扱った演芸ミステリになっています。中篇2編ともに人情ドラマと謎解きの趣向が巧く融合しており、面白かったです。 「高座の上の密室」では、衆人環視の舞台上の葛籠の中から幼女が消失するという二重密室の謎を扱っている。葛籠抜けのトリックの図解や演芸場の見取り図がほしいところですが、そのハウダニットよりも、前半部に張られた伏線とその回収の妙が読みどころかもしれない。 「鈴虫と朝顔」は、なぜ太神楽芸人は昇進試験で決められた芸を演じなかったのか?というホワイダニットが主軸。演芸場のしきたりと色物芸という伏線を活かした真相はなかなかのもの。落語だとこの設定を活かせられないからね。 |
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| No.2288 | 5点 | ワシントン・スクエアの謎- ハリー・スティーヴン・キーラー | 2015/07/14 18:44 |
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| うっかりミスで紛失した約束手形を回収するためシカゴにやってきたハーリング青年は、ワシントン・スクエア近くの廃屋内で、女性用帽子の留ピンが右目に刺さった男の死体を発見する。その留ピンは偶然出会った女性トルーデルのものと判るが、この殺人事件の裏には、偽札騒動や宝石の盗難事件が絡んでいて---------。
”史上最低の探偵小説家”という呼び声もあるキーラーが1933年に出した長編ミステリ。通俗スリラー風の展開ながら、終盤に「ちょっと待った!」として”読者への挑戦”が挿入されているのが目を引きます。 殊能将之氏のブログをはじめ巷の評判では、”怪作”とか”トンデモ本”ということだったので覚悟して読み出したのですが、主要登場人物の”偶然の出会い”を多用するご都合主義的な展開には苦笑を禁じえないものの、テンポのいいストーリー展開で、それなりに楽しめます.......途中までは。 でもねぇ、さすがにこの解決編はいかんでしょうwww 真犯人や殺人トリックに繋がるような伏線はいったいどこに? 読者への挑戦状にある「公明正大なる提案」とは何だったのか!--------さすがに版元もこのままではまずいと思ったのか、気を効かせて装丁部分にある工夫をしてはいるのですが.....。 |
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| No.2287 | 6点 | 松谷警部と三ノ輪の鏡- 平石貴樹 | 2015/07/12 14:58 |
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| 元プロゴルファー横手が撲殺された事件を担当する松谷警部の捜査班は、ゴルフ場経営や融資に携わる周辺人物の相次ぐ変死が事件に関連するとみて、失踪した経理部長の行方を追う。巡査部長に昇進した白石似愛は、殺害現場の些細な疑問点から推理を巡らすが--------。
松谷警部&白石巡査シリーズの第3弾。 初期作の純粋パズラー「だれポオ」の頃と比べると、主人公が刑事ということもあって、本格ミステリというより物語の大半が捜査小説といっていいシリーズですが、本書ではますますその様相が強まっているように思います。そのぶん登場人物が容疑者から端役にいたるまでキャラが立っていて、特に今作では所轄の三ノ輪署の新米巡査がいい味を出しています。 とはいっても、最終章の直前で、白石イアイが伏線や手掛かりをひとつひとつ取り上げて繰り出す推理の開陳シーンは読み応え有り、作者の本格ミステリに対するこだわりを感じさせてくれます。 |
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| No.2286 | 5点 | ライオンの歌が聞こえる- 東川篤哉 | 2015/07/10 18:44 |
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| 平塚おんな探偵シリーズの2作目。”ライオン”の異名を取る探偵エルザと、探偵助手”わたし”の女性コンビが、ボケをかましつつ4つの事件に挑む。
作者のシリーズ・キャラクターとしてはやや個性が弱く、ギャグも不発気味に感じられる連作ですが、前作と比べると謎解き部分に見るべきところがあるように思います。 前半の2編はともに些細な疑問点から真相を導き出すロジックを主眼とする作品で、「亀とライオン」では、なぜカメ愛好家の死体は裸足だったのか?、「轢き逃げは珈琲の香り」では、なぜ轢き逃げ犯は被害者の老女にコーヒーをかけて逃げたのか?という”ホワイ”から犯人を特定する。前者の伏線を活かしたロジック展開がまずまずと思える出来栄え。 一方、後半の2編は犯人によるトリックが読みどころで、「首吊り死体と南京錠の謎」は、大学サークル部室の密室殺人を表面的な謎にしながら、そこに隠された事件の構図に意外性があり、これが編中での個人的ベスト作品。最後の「消えたフィアットを捜して」は、トリックの強引さが目立ち、バカミスとして読んでもさほど面白いとは思えなかった。 |
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| No.2285 | 6点 | ミステリー・アリーナ- 深水黎一郎 | 2015/07/08 18:44 |
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| 大晦日恒例のテレビ企画・犯人当て推理ゲーム「ミステリー・アリーナ(推理格闘場)」が、ミステリーオタク14名を回答者に迎え開催されていた。いち早く正解すれば高額の賞金が貰える一方、外した参加者には悲惨な運命が待っているのだが-------。
ミステリのタイプとしては、デビュー作の「ウルチモ・トルッコ」(=改稿改題「最後のトリック」)と同系統の、コード型本格ミステリの趣向を弄ぶような作品になっている。 全編にわたり”多重解決”に淫しているが、早押しクイズ形式になっている点がキモで、回答した次の章で新情報が出てきて、前の推理が否定される展開が繰り返される。最終的に15通りの解決という”多重解決の極北”を目指し、標榜するチャレンジ精神は評価したい。また、それを成立させるための伏線の多さには感心を通り越して呆れるばかりだ。 ただ、多重解決といっても、同じ情報を基に着眼点の違いによって異なる解を導き出すのが本来の意味の”多重解決”だと思うので、新事実が出てきて解が変わるのはあたりまえでは?と思えたことも事実。 あと、野暮を承知で付け加えると、テレビ企画なのに、問題編が推理ドラマ(映像)ではなく小説の形で提示されるのはさすがに不自然。そんなテレビ映えしない番組が成立するとは思えないw |
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| No.2284 | 7点 | わたしの愛した悪女- パトリック・クェンティン | 2015/07/06 18:48 |
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| 若い会社社長アンドリュー・ジョーダンは、2つの気懸りな私生活の問題を抱えていた。ひとつは美貌の妻モリーンの浮気疑惑、もうひとつは遊び人の弟・ネッドの金銭と女性問題。そんなアンドリュウーのもとに、モリーンの資産家の従妹がネッドと結婚すると宣言してきたことを契機に、ジョーダン家に悲劇が起きる--------。
良くも悪くもライトな感覚があったダルース夫妻シリーズとは違って、ウィーラーの単独作になってからは、家族内の問題から殺人事件が引き起こされるという内容の、一貫してシリアスなタッチの巻き込まれ型サスペンスになっています。 基本的には「わが子は殺人者」の焼き直しと言えなくもないのですが、被害者や主人公の立場を微妙に変えることで、ある程度マンネリ感を回避し、フーダニットの興味も持てるようになっていると思います。 また、晩年の作品に共通するのは、”悪女もの”でもあることで、本書はその典型と言えそうです。古いポケミスにも関わらず、翻訳が比較的洗練されていることもあって、最後の最後のどんでん返しまで面白く読めました。 ちなみに、原題の”The Green-eyed Monster(緑の目の怪物)”というのは、”嫉妬心”を意味する慣用句のようなもののようです。(そういえば、「思考機械」シリーズにも同じタイトルの作品がありましたね)。 |
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| No.2283 | 6点 | 古代史ミステリー傑作選- アンソロジー(国内編集者) | 2015/07/04 22:45 |
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| 河出文庫のテーマ別ミステリー傑作選シリーズの一冊。
古代史のミステリといえば定番の”邪馬台国の謎”しか思い浮かばないのだけど、弥生、古墳時代から奈良、平安朝前期まで、ほぼ歴史の流れの順に6編を収録したバラエティに富むアンソロジーです。 収録作は、(a)古代の遺品や遺跡を素材にした現代のミステリと、(b)古代を舞台背景にした歴史ミステリの2つのタイプに大別される。 対馬で偶然発見された弥生時代の中国製古銭が事件の発端となる石沢英太郎「貨泉」、奈良時代の幻の古楽器を巡る謎の森真沙子「蘭陵王の闇」、平安の”応天門の変”の真相に関わる古文書が殺人を引き起こす中津文彦「隠岐ノ島死情」が(a)のタイプといえる。いずれも面白いが、歴史の謎の興味に加え、アリバイ工作&意外な犯人像という本格ミステリ成分が濃い中津作品が一番読み応えがあった。 一方(b)のタイプでは、滝村康介の「剣の塔」が素晴らしい出来栄え。蘇我馬子が探偵役になって、高句麗大使の暗殺事件を謎解く。衆人環視下の不可能殺人のトリック、解明のプロセスともに時代背景が活かされている。 新羽精之「幻の馬は遥かなる邪馬台に」は、中国人が見た6世紀の日本という構成で、赤馬伝説に騎馬民族征服説を踏まえた歴史ロマンあふれる作品。もう少し小説が上手ければもっと楽しめたと思えるのが惜しい。 |
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| No.2282 | 7点 | 悪女は自殺しない- ネレ・ノイハウス | 2015/07/03 00:46 |
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| 上級検事の不可解な自殺事件につづき、飛び降り自殺に偽装された女性の殺害死体が発見される。地元警察の首席警部オリヴァーが率いる捜査班は、7年ぶりに復職したばかりの刑事ピアを加え捜査を始めるが、被害者女性イザベルを巡る複雑な人間関係と、背後に隠された複数の事件に振り回される--------。
オリヴァー首席警部&女性刑事ピア・シリーズの第1作。 本書は、既刊の「深い疵」(第3作)、「白雪姫には死んでもらう」(第4作)の高い評価で、”ドイツ・ミステリの女王”の称号を得たノイハウスが、本国でブレイクする契機となった作品ですが、当初は自費出版だったというエピソードが信じられない完成度です。 馬が専門の動物病院と地元乗馬クラブに関係する人々が容疑の対象となるが、被害者のイザベルがとんでもない裏の顔を持っていたことから、彼女に繋がる誰もが動機があるという状況。しかも、かれらは一筋縄ではいかないヤツばかり。さらに背後に隠されたいくつもの事件が絡み合って、オリヴァーの捜査が紆余曲折しながら、重要容疑者が次々と変転していく展開がやたらと面白い。 オリヴァーとピア、それぞれの配偶者との微妙な関係がシリーズを通した読みどころでもありますが、本書ではそれほど深く語られていない。既刊作品に繋がる2作目の訳出が今から待ち遠しい。 |
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| No.2281 | 5点 | なないろ金平糖 いろりの事件帖- 伽古屋圭市 | 2015/06/30 18:27 |
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| 日本橋にある金平糖屋「七ツ堂」の看板娘・いろりは、過去や未来を視ることができる千里眼の持ち主。飼い猫のジロを相棒にして、様々な事件に立ち向かう-------。
大正時代の帝都・東京市を舞台にしたライトミステリの第3弾。 小説全体に漂う雰囲気や、手慣れた語り口は好みで相変わらず巧いと思うのですが、前2作と同じタイプのものを期待していたので、ミステリ的な興趣が弱いのが物足りなく感じてしまう。各話で提示される謎にそれほど魅力がありませんし、連作を貫く仕掛けも小粒です。 主人公の少女の特殊能力がかえって足かせになって、謎解き本来の面白さを減じてしまっているような感じを受けました。冒険スリラー寄りのエンタメとしてはまずまずの出来だとは思いますが........。 また、これまでのようなレギュラー・キャラクター間のユーモラスな掛け合いの面白さが希薄な点も残念です。 |
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| No.2280 | 5点 | 殺人を選んだ7人- ロイ・ヴィカーズ | 2015/06/28 17:20 |
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| ロンドン警視庁のレイスン警部が登場する迷宮課シリーズ3編に、単発もの4編を加えた第4短編集。全般的に犯罪ドキュメント風の語りが洗練されてきて、初期作と比べると読みやすくなったと思える反面、ミステリ的な面白さが減退してしまっているという印象をうけた。
タイトルからは、倒叙形式で犯人の内面や動機の部分を深く掘り下げるタイプの作品群を想像していましたが、複雑な家庭関係内での連続毒殺事件を扱った「デイジー家殺人事件」や、自家用船舶上のパーティで多情な女性が殺される「招かれぬ女」など、限られた集団内でのフーダニットが多かったのは意外でした。ただ、謎解きとしてはこれといった工夫は見られず、出来はいずれも平凡です。 そんななかで、ちょっと印象に残った作品は、同居する友人を殺害されたオールドミスが犯人を捜し出す話の「信念に生きる女」で、主人公がラストにとる異様な行動が皮肉的です。 また、夫婦と友人たち男女4人が集う場での毒殺事件を扱った「老嬢の証言」もまずまずで、毒殺トリック(と表現するのは適切かどうか)は、ある意味では前代未聞と言えるかもしれない。 |
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| No.2279 | 6点 | 脅迫者によろしく- 都筑道夫 | 2015/06/26 22:54 |
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| 私立探偵・西連寺剛シリーズの第2短編集。”おれ”こと西連寺は、ボクサー上がりの硬骨漢ながら弱者に対する優しさもある。自宅マンションを探偵事務所にして、主に人探しを専門に請け負う。
本格パズラーから捕物帳、SFファンタジー、ホラー、時代伝奇、クライム・コメディまで、作者が色々なジャンルで創出してきたシリーズ・キャラクターのなかでは、この主人公は常識人で個性は抑え目に感じられる。やや通俗に流れるところがあるものの、内容はわりとシリアスで、正統派のハードボイルドを志向しています。 収録作はハードボイルドの定番である失踪人捜しが中心ですが、小学生が貯金箱を持って依頼に来たり、スナックで隣り合った女が謎めいたメッセージを残して失踪するなど、事件の発端がそれぞれ工夫があり、自然とストーリーに入り込めるようになっているのが良。謎解きの伏線という点では不十分なものが多いものの、結末の意外性はそれなりに担保されています。 6編のなかでは、古い詩集の挿絵画家の行方を追う「表紙のとれた詩集」が、長編にしてもいいぐらいの中身の濃い作品。ラストに現れるある人物の裏の顔には戦慄を覚える。また、「子豚の銀行」と「髭を忘れたサンタクロース」は、子供の健気さと真相の残酷さの対比で、哀切感をより際立たせることに成功していると思う。 |
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| No.2278 | 6点 | 探偵レオナルド・ダ・ヴィンチ- ダイアン・A・S・スタカート | 2015/06/23 19:05 |
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| 15世紀イタリア。ミラノ公国の宮廷で宴の余興の”人間チェス”ゲームが催されていたが、休憩の合間に白のビショップの駒を演じていた伯爵が庭園で死体となって発見される。宮廷画家で技師主任のレオナルドは、ミラノ公に命じられ、弟子のディノとともに犯人捜しに乗り出した---------。
若き天才画家にして発明家、レオナルド・ダ・ヴィンチを探偵役に据えた歴史ミステリ・シリーズの第1作。 作者が元々は歴史もののロマンス小説の書き手ということもあってか、正直なところ謎解きミステリとしては”推理”にあまり見るべきところがありません。レオナルドの発明品が捜査の手助けをするという見せ場(=終盤に出てきたアレには驚きましたw)はあるものの、推理の部分にその天才性がいかされていないのです。 とはいっても物語が面白くないわけではありません。語り手でワトソン役になる弟子ディノの抱える秘密を中心にしたエピソード部分は上手いと思わせますし、獅子奮迅の活躍をするディノが主人公の冒険スリラーとしては面白く読めました。 次作はレオナルド・ダ・ヴィンチのもっと名探偵ぶりを読んでみたいですね。 |
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| No.2277 | 4点 | 藤雪夫探偵小説選Ⅰ- 藤雪夫 | 2015/06/19 22:32 |
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| 昭和25年に「宝石」誌の懸賞応募で鮎川哲也、島久平らと賞を競った「渦潮」がメイン。ほかに昭和20年代後半に雑誌掲載された中短編5編が収められています。
「渦潮」は、娘・藤桂子との2作目の合作長編「黒水仙」の原型となる長編ですが、発端の銀行強盗の設定は同じでも、その後の展開やメイントリック、犯人像までが後の改稿作とは異なり、全くの別物のようだったのには驚きました。ただ、菊地警部を中心とする捜査はテンポが悪く、アリバイトリックも面白みに欠け、あまりいい出来とはいえません。この内容だと「ペトロフ事件」や「硝子の家」に軍配を挙げたくなりますね。 中篇の「黒水仙」(=タイトルは同じだが、藤桂子との合作長編とは別作品。ややこしい)は、アリバイ奪取をテーマにした「幻の女」を思わせる(というか換骨奪胎のようなw)作品。”昼の月”からアリバイを崩すアイデアが面白いが、不自然な設定や説明不足と感じるところが多々あり気になった。 残る4つの短編は、内面描写がアンフェアと感じる「指紋」、証拠が専門的すぎてピンとこない「アリバイ」など、どの作品もパッとしない出来栄え。 |
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| No.2276 | 6点 | メルトン先生の犯罪学演習- ヘンリー・セシル | 2015/06/15 18:48 |
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| 法理論の権威メルトン教授は、母校ケンブリッジ大学に迎えられ講義をすることになった。ところが、当日の朝に転倒し頭を打った先生は、いかにして法網の穴をくぐって悪事を働くかという突拍子もない講義を始める--------。
軽妙な法廷ミステリを得意とするヘンリ・セシルのデビュー作。 聴講学生には大受けするも、とんでもない講義内容に慌てた大学当局によって精神病患者の療養施設に入れられるは、逃亡した先々で出会う人々に”講義”を披露するなど、外枠はファルス風の長編ミステリですが、メルトン先生や他の登場人物が披露する話のひとつひとつが独立した短編ミステリとなっていて、こちらのほうが主体と言えます。 法律や裁判の抜け穴を素材にして、詐欺&コンゲーム風のもの、クライム・コメディ、艶笑譚など、内容は多彩で飽きさせず、いずれも軽妙なオチが楽しめます。精神病患者を相手にした”講義”では、話のオチが理解されないというひねくれたオチもありますがw |
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| No.2275 | 5点 | 捕獲屋カメレオンの事件簿- 滝田務雄 | 2015/06/09 18:34 |
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| 元刑事でフリーライターの浜名は、オカルト雑誌社の社長の紹介で、”オフィス・カメレオン”の女社長とともに”捕獲屋”という裏稼業についた。ふたりは森羅万象あらゆるものの捕獲を請負い、現場で起きた事件の真相も捕獲する-------。
凸凹男女コンビによるユーモア連作ミステリながら、決めるときは意外と端正なロジックも飛び出すという作風は、東川篤哉の一連の作品を思わせます。ちょっと外し気味のユーモア・センスも似ている気がする。 ”捕獲屋”という設定が探偵役でもあり、また別の役回りでもあったりで、やや連作としてのコンセプトを掴みづらい面があるけれども、元同僚の女刑事が登場する第3話「ソラマメ銀座の幽霊」などは逆にそんな設定が効いている。なかには頭の中に3Dプリンターを持つ浜名の超空間認識能力が十分活かされていないように思える作品もあって、全体としてはこれぐらいの評価になってしまうかな。なお、強いて個人的ベストを挙げるなら最終話の「前日譚 夜行奇人」あたり。 |
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