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[ 本格 ]
蛇は嗤う
ライアン・クロフォード&ゴードン警部
スーザン・ギルラス 出版月: 2007年05月 平均: 7.00点 書評数: 3件

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長崎出版
2007年05月

No.3 7点 kanamori 2015/05/19 18:30
夫の女性関係に悩むライアンは、北アフリカへ傷心旅行に出るが、モロッコの空港に降り立った早々に嫌な米国人男性に付き纏われたり、ホテルでは怪しげな老嬢に声を掛けられ、彼女の周辺で不穏な雰囲気が漂い出す。やがて、波止場のゴロツキが何者かに殴打される事件につづき、海岸で射殺死体が見つかる----------。

英国女性ライアン・クロフォードと、ヒュー・ゴードン警部のコンビが殺人事件の謎に挑むシリーズ第7作。
本書は、植草甚一『雨降りだからミステリでも勉強しよう』のなかで「蛇はまだ生きている」のタイトルでレビューがあり、「一種独特のひねりかたで、こうも面白くなるのか」と好意的に評価(☆4つ)されていて、シリーズ最終作にも拘らず最初に邦訳された事情も、そういった評判からと推察されます。
中盤までは、異国の地に住み着く西洋人たちの人間関係の説明描写で展開がゆっくり気味と感じるところがあるものの、ゴードン警部が登場してからの、犯行時間の矛盾点を巡る謎解き過程で俄然面白くなります。
”観光地の海岸に横たわる死体”ということで、英国某有名女流作家二人のアレとアレを想起させ、読者によっては仕掛けに気づてしまうかもしれませんが、数々の伏線の回収具合と終盤の2段階のどんでん返し、構図の反転が実に鮮やかです。ぜひシリーズの残りの作品も邦訳してもらいたいものですね。

No.2 7点 nukkam 2011/01/20 18:01
(ネタバレなしです) 英国の女性作家スーザン・ギルラス(1911-没年不詳)については経歴がそれほどはっきりしていません。世代的にはエリス・ピーターズ(1913-1995)に近いのですが亡くなるまで執筆を続けたピーターズに対してギルラスは1950年代から1960年代までとごく限られた期間に7作品を発表したのみでした。そのミステリーはライアン・クロフォードとゴードン警部を主役にしたシリーズですが最終作(つまりシリーズ第7作)となった本書(1963年出版)を読む限りではかなりの実力を感じさせる作家です。抑制の効いた異国情緒と個性的な人物描写の組み合わせが魅力的です。陰謀の影がちらつくスリラー小説風な雰囲気と本格派推理小説としてのしっかりした謎解きプロットのバランスも絶妙で、これはなかなかの掘り出し物でした。モロッコのタンジールを舞台にした本格派推理小説というとカーター・ディクスンの「赤い鎧戸のかげで」(1952年)がありますが、文体は異なれど結構共通する描写もありますので比較しても面白いかも。ロマンチックな幕切れも印象的で、続編が書かれなかったのが非常に残念です。

No.1 7点 mini 2008/10/14 11:37
長崎出版は海外クラシック全集の中では後発だけれど、面白いところを突いてくるので目が離せない
長崎出版の比較的新しい作家の中で最も掘り出し物と思ったのがスーザン・ギルラスだ
西アフリカの異国情緒たっぷりな舞台
旧仏領の西アフリカ地域は距離的には欧州から案外と近く、日本で例えると香港とか台湾やフィリピンあたりな感じか
謎解き部分もまあまあで、何と言ってもエキゾティックな雰囲気に気分良く浸れるのが嬉しい


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スーザン・ギルラス
2007年05月
蛇は嗤う
平均:7.00 / 書評数:3