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[ クライム/倒叙 ]
メルトン先生の犯罪学演習
ヘンリー・セシル 出版月: 1961年04月 平均: 6.00点 書評数: 6件

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東京創元社
1961年04月


1961年04月

No.6 7点 人並由真 2023/11/26 01:04
(ネタバレなし)
 旧ジャケットカバーの蔵書を少年時代に買っているはずだが、例によって見つからない。
 で、何となく、最近になってなぜかこれが積極的に読みたくなって、ネットで同じ旧カバーの古書をソコソコ安い値段で買った。

 このところ少し忙しい(やや軽いワーカホリック)なので長編が読みにくいし、入れ子構造の連作短編集なら少しずつ楽しめるだろうと思ってページを開いたが……いや、結構面白い。

 目次を見ると20本近いネタが期待できるが、これがみんな先生の講義だったら後半にはさすがにマンネリになってくるだろうな、と思いきや、作者の方もその辺は十分に承知? と見えて、ちゃんとエピソードの提示にメリハリをつけてくる。

 そういう意味では後半の方が、幕間の叙述も込みで面白かった。
 特に新婚若夫婦の、二人きりでずっといるとマンネリになるので、二人きりの蜜月の価値を高めるため、いっとき、他人のあなたにそばにいてほしいと、メルトン先生に接近してくるあたりが妙にエロいというかヘンタイチックで爆笑した。これぞ英国王道のドライユーモア(たぶん少し違う)。
 終盤の挿話の(中略)ぶりも気が利いていて、一冊丸々楽しかった。セシルはまだ二冊目だが、先に読んだ『判事に保釈なし』よりずっとミステリ小説としての興趣に満ちた作品。

 ただし翻訳はちょっと凄いね。
「江戸の仇を長崎で」とか、貨幣の単位が円だとか、今なら確実に、おいおい……と言いたくなるような仕上がりで。
(ただまあ、その辺の昭和っぽさも含めて、どっか愛せる味でもあったんだけどね・笑。)

No.5 4点 クリスティ再読 2017/05/06 07:56
初読。軽い話だろうな..と思って読んだけど、どっちか言えば講義内容は短編小説の域までは達しない、小話みたいなものの連続。読んでいてミステリ短編というよりも、一つ一つが今昔物語とか耳袋とか、そういう小説未満な話という雰囲気がある。まあだから軽く流して読むくらいで十分な感じではないだろうか。

No.4 6点 斎藤警部 2015/10/20 02:08
これが存外面白くてねえ。。。 先生のスットコ講義録を一章々々集めただけの古臭いオムニバス短篇集だと思ったらこれがトんだ大違いの見立て違いの見当違い。(余談ですが真面目な席で「種違い」を間違えて「竿違い」と言っちまうほど恥ずかしい言い間違いは他になかなか無いですな、特に女子だと)ま予想してた通りの犯罪小噺集には変わり無いんですが、小噺だけじゃなく「地」の部分もね、単純に先生が講壇に立って一席ぶつ、というだけじゃなくてちょっと事が入り組んでるの。先生の「頭の事情」もあるし。。意外と不道徳で危険なスリルも漂う作品集ですよ。多少は退屈する場面もあるけど、決してありふれちゃいない素材と切り口で、辛口なのから甘いのから、ふざけてるのやちょっぴりふざけてるのや大いにふざけてるのまでバラエティに富んだ短い物語がいっぱい詰まっているわけでありますし、ミステリの人なら読んで損は無いと思いますよ。

No.3 6点 kanamori 2015/06/15 18:48
法理論の権威メルトン教授は、母校ケンブリッジ大学に迎えられ講義をすることになった。ところが、当日の朝に転倒し頭を打った先生は、いかにして法網の穴をくぐって悪事を働くかという突拍子もない講義を始める--------。

軽妙な法廷ミステリを得意とするヘンリ・セシルのデビュー作。
聴講学生には大受けするも、とんでもない講義内容に慌てた大学当局によって精神病患者の療養施設に入れられるは、逃亡した先々で出会う人々に”講義”を披露するなど、外枠はファルス風の長編ミステリですが、メルトン先生や他の登場人物が披露する話のひとつひとつが独立した短編ミステリとなっていて、こちらのほうが主体と言えます。
法律や裁判の抜け穴を素材にして、詐欺&コンゲーム風のもの、クライム・コメディ、艶笑譚など、内容は多彩で飽きさせず、いずれも軽妙なオチが楽しめます。精神病患者を相手にした”講義”では、話のオチが理解されないというひねくれたオチもありますがw

No.2 6点 mini 2011/01/12 10:05
ストラング先生を読みながら、本の題名がどこかで聞いたことあるんだよなぁ、と思ったらそうそう元ネタはこれだった(苦笑)
代表作とも言われる「法廷外裁判」は古本屋で探して本は確保してあるのだが未読なのでH・セシルはこれしか読んでいない
噂には聞いていたがたしかに変な作家である
頭を打ったメルトン先生が頭の調子が狂って完全犯罪の授業はするわ各所を彷徨う話が全体の流れ
そこを先生が語る犯罪に関する挿話の数々が一種の短篇集みたいになっている
そう、これはまさしく日本でも日常の謎派などで一時期流行った”連作短篇集形式”そのものではないか
他にサマセット・モームのスパイ小説「アシェンデン」などにも作例があるが、この「メルトン先生」は連作短篇集形式を意図的に使った結構早い時期の作ではないだろうか
挿話の散りばめられた長編とも受取れるし、いや中心となる筋はあっても基本は短篇集だという解釈も成り立つ
セシルが一筋縄ではいかない作家なのは例えば作中に挿入されたエピソードの一つに、先生がある落語のようなオチ話を語って聞かせると、聞き手が「で、それで?」「その後どうなりました?」みたいな全くオチに気付かないのを先生が当惑する場面など、なかなか捻くれた作家だなと思った
全体の流れなども、先生の変な授業風景に終始するのかと予想していたが、意外と全体の話の流れに紆余曲折が有って楽しめる

No.1 7点 江守森江 2010/12/25 00:30
※但し書き
未翻訳?短編「ひき逃げを見た!」(何かの短編集に翻訳収録されていないか検索したがヒット無し)の評を書きたい為に例外的に作者の翻訳作品欄を借ります。
古い法廷ミステリの書き手である事くらいしか作者についても知りません。
では、本題の「ひき逃げを見た」ですが脚本ヘンリー・スレッサー、監督アルフレッド・ヒッチコックでテレビ映画化されたのをAXNミステリー放送の「ヒッチコック劇場」(モノクロ作品)で視聴しました。
ヒッチコック劇場第四集のDVDにもボーナス・トラックとして収録されているそうです。
※要注意
察する方にはネタバレになります!
評を読む前に是非とも視聴してほしい作品です!!!
ピリ辛な短編ミステリのお手本と賞賛します。
ひき逃げをしたと訴えられ、法廷では自分で自分を弁護しながら多数の目撃者達の不確かさを検証し、最後まで惹きつけながら、見えない一撃(フィニッシング・ストローク)でノックアウトする作品。
ダレずに展開する法廷シーンだけでも充分面白いが、やっぱりオチあってのモノかもしれない。
モノクロの映像作品で叙述トリック?をカマされるとは思いもしなかった。
※採点に関して
ドラマ版は当然満点(8点)ですが、他作品の場所を借りているので保留のつもりで7点。
※翻訳情報を集める目的も兼ねてアップしたので、情報がありましたら、このサイトの掲示板に書き込んでいただければ嬉しいです。
宜しくお願いしますm(_ _)m


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