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文生さん
平均点: 5.85点 書評数: 456件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.196 8点 魔眼の匣の殺人- 今村昌弘 2021/08/14 11:03
前作の『屍人荘の殺人』と比べると話自体は地味なのですが、特殊設定を活かしきったロジックが素晴らしかったです。シンプルで極めてロジカルでありながら、同時にクレイジーな真相は特殊設定ミステリのお手本だといえます。

No.195 6点 兇人邸の殺人- 今村昌弘 2021/08/14 10:53
スプラッターホラー仕立てのストーリーは大いに楽しめましたし、ミステリーとしても決して悪い作品ではないのですが、前2作と比べると目玉となる仕掛けに欠けていた点に物足りなさを覚えます。
一応、兇人邸からの脱出方法が目玉かなとは思うものの、殺人事件の方にも独創的な仕掛けが何かひとつほしかったところです。手数だけ多くてごちゃごちゃした印象を受けてしまったのが残念。

No.194 8点 硝子の塔の殺人- 知念実希人 2021/08/02 09:16
8点つけておいてなんですが、この点数を信じて安易に手を出すのはやめてください。多くの人は一読後、「ふざけるな!」と怒りだすと思うので。

なんといっても最大の問題点はメイントリック及びそれに付随する硝子の塔の秘密で、これを許せないと感じる人は少なくないでしょう。しかし、個人的には、物理トリックで構築したメタミステリーみたいな趣向が非常にユニークに感じました。叙述トリックによる世界が反転するような感覚を物理トリックの力技で実現させてみせたのが最大の評価ポイントです。硝子の塔の秘密に関してもバカミスとして楽しませてもらいました。その代わり、リアリティは皆無ですし、同人のようなネタをプロがやるなという意見があったとしてもそれはそれでもっともなことだと思います。

次に、密室やダイイング・メッセージなどのサブトリックについてですが、数だけは多いものの、どれも使いふるされたトリックの安易なアレンジだったり、トリックのためのトリックだったりして正直パッとしません。その点に失望する人も多いでしょう。ただ、これらのトリックがパッとしないこと自体に事件の本質にかかわる大きな意味合いがあり、その事実に思わず感心してしまいました。

さらに、犯人をミスリードする手口にも唸らされましたし、主人公が終盤突如××から×××にジョブチェンジするところなどは感動ものです。唯一、真相が解明されてからの展開がもやもやしてすっきりしないのが不満点でしょうか。

というわけで、賛否両論(というか否の方が多いかな?)が予想される本作ですが、個人的には大いに気に入りました。

No.193 6点 赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。- 青柳碧人 2020/09/20 09:52
赤ずきんちゃんを探偵役に据えた連作ミステリーであり、「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠り姫」「マッチ売りの少女」といった原典のネタをミステリーに上手くアレンジしてそれなりに楽しめる作品に仕上がっています。
ただ、着想の奇抜さ、トリックの面白さなどに関しては前作の「むかしむかしあるところに、死体がありました。」のほうが数段上です。本作の場合、探偵役を固定して普通の本格ミステリのフォーマットに落とし込んだために、無難にまとまりすぎた感があります。

No.192 7点 オランダ靴の秘密- エラリイ・クイーン 2020/09/15 22:36
本作は事件発生のあとは関係者の証言を淡々と集めていくだけで物語としては起伏に乏しく地味です。そもそも、トリックが小粒でロジックメインの作品は個人的にあまり好きではありません。
しかし、この作品だけは別格で、ロジックの美しさには思わずため息が出てしまいます。推理パートの見事さと物語の退屈さの差し引きしでトータル7点といったところでしょうか。

No.191 6点 君に読ませたいミステリがあるんだ- 東川篤哉 2020/09/14 12:14
第2文学部の部長(部員1名)で学園一の美少女(自称)である水崎アンナが、主人公のぼくに毎回自作のミステリー小説を読ませて感想を求めるというメタ構造の連作ミステリーです。
ポンコツなヒロインが可愛く、作中作もミステリーとしてまずまずの出来なのですが、問題はそれを読まされた主人公のツッコミにあります。
正直、ツッコミがワンパターンで面白くないのです。
この手の作品はボケに対していかに的確なツッコミをするかで面白さが決まると思うのですが、本作の場合、ボケも中途半端でツッコミおざなりといった点に物足りなさを覚えてしまいます。
とはいえ、作中作自体はそこそこ楽しめましたし、全編を通しての仕掛けもうまく決まっているので総合的にはまずまずといったところでしょうか。

No.190 5点 人間動物園- 連城三紀彦 2020/09/04 21:10
連城三紀彦ならではの仕掛けは見事だと思うものの、誘拐サスペンスならではの緊迫感がほとんど感じられなかったので読んでいる間はかなり退屈でした。そのため、最後のどんでん返しもあまり驚けなかったのが残念です。

『このミステリーがすごい!2003』では7位にランクインしていますが、個人的には同じ年に発売されてランク外だった『白光』の方が遥かに面白かったです。

No.189 9点 半七捕物帳- 岡本綺堂 2020/09/02 17:41
江戸の風俗描写を交えながら不可解な謎を提示し、その謎を半七が小気味よく解いていくスタイルに痺れます。とにかくテンポがよく、謎解きのレベルもかなりのものです。個人的にはシャーロックホームズよりも楽しめました。このような謎解きミステリーの傑作が江戸川乱歩がデビューする以前から存在していたことに驚かされます。

No.188 6点 二銭銅貨- 江戸川乱歩 2020/08/31 07:14
探偵小説の巨人、江戸川乱歩のデビュー作品
ポーの『黄金虫』やドイルの『踊る人形』のような暗号ものと
思わせておいてそこからひとひねり加えているのがユニークです。
あくまでも小品ではあるものの、近代ミステリーの草分け的存在として
評価すべき作品だといえるでしょう。

No.187 4点 皮膚の下の頭蓋骨- P・D・ジェイムズ 2020/08/30 18:54
『女には向かない職業』に続く女探偵コーデリアシリーズ第2弾。
人々が集められた孤島で殺人事件が起きるという展開で、クローズドサークルを現代風に料理するという趣向には大いに興味がそそられました。しかし、心理描写や風景描写が過剰に多く、やたらと冗長なのが気になるところです。その割に真相が特に驚くべきものでもないためにどうしても肩透かしを覚えてしまいます。試みとしては買いますが、全体的には『そして誰もいなくなった』を3倍に水増しした印象で、作品としてはイマイチという感が拭えません。

No.186 5点 女には向かない職業- P・D・ジェイムズ 2020/08/30 15:53
22歳のヒロインが奮闘する女探偵ものの先駆的な存在として評価されている作品です。しかし、ミステリーとしての面白さはさほど感じず、けなげなヒロインの魅力込みでも可もなく不可もなくといったところではないでしょうか。

No.185 6点 八百万の死にざま- ローレンス・ブロック 2020/08/30 15:14
悪くはないが少々長すぎで、記憶に残っているのはアルコール依存症のエピソードだけ。事件の方はちっとも印象に残らないのが難。
それでもラストは感動的でよかったです。

No.184 7点 Iの悲劇- 米澤穂信 2020/08/30 10:02
古典部シリーズや小市民シリーズといった著者得意の連作学園ミステリーを公務員に置き換えたような作品です。
限界集落の問題をミステリーの謎に絡めいる点がよくできており、興味深く読むことができます。また、一つ一つの推理には粗を感じる部分があるものの、実はその粗が伏線となっていて最後にすべてがつながるところが見事です。著者ならではのビターな結末も印象深く、なかなかの佳品だといえるのではないでしょうか。

No.183 4点 三つ首塔- 横溝正史 2020/08/16 17:08
八つ墓村同様、冒険譚メインのミステリー
中学生の時に読んでそこそこ退屈せずには読めたものの
エロチックなシーン以外は印象に残らない作品でした

No.182 6点 人間の証明- 森村誠一 2020/08/16 05:49
本作を本格ミステリとしてみた場合、解くべき謎が「ストイハ」「キスミー」などといった一種のダイイングメッセージぐらいしかなく、極めて薄味です。
しかし、その一方で、西條八十の詩に絡めた悲劇とそれに伴う人間ドラマは非常に読み応えがあります。
森村誠一による社会派ミステリーのひとつの到達点です。

No.181 4点 奇岩城- モーリス・ルブラン 2020/08/15 21:01
子どもの頃に結構ワクワクしながら読んだ記憶はあるのですが、やはり問題はホームズの扱い
江戸乱歩の「黄金仮面」におけるルパンの扱いもひどかったが、この作品のホームズの扱いも同じぐらいひどい

No.180 6点 がん消滅の罠 完全寛解の謎- 岩木一麻 2020/08/13 18:28
末期癌のはずの患者が次々と完治するという謎が強烈でぐいぐいと引き込まれていきます。物語の深みといったものには欠けますが、テンポよく読めるので暇つぶしには最適な作品だといえるでしょう。
ただ、肝心のトリックは専門知識を要するものであり、本格ミステリの面白さを期待した人はがっかりかもしれません。
その代わり、お勉強ミステリーとしてはなかなかの佳品です。

No.179 4点 僧正の積木唄- 山田正紀 2020/08/11 13:53
― 僧正殺人事件は解決していなかった!アメリカに渡っていた金田一耕助けが真実を解き明かす!!
という非常にワクワクする内容なのに全然乗れなかったですね。
まず、山田正紀節と原典の雰囲気が水と油だし、本格ミステリとしてもこれといって魅力がない。
それに社会問題とかをこの題材に持ち込んでほしくなかったというのが正直なところ。
山田正紀自体は好きな作家なのだが、「桜花忍法帖」といい、パスティーシュ作品には向いていないと思う。
全部自分色に染めてしまうから。

No.178 5点 生首に聞いてみろ- 法月綸太郎 2020/08/09 13:49
ミステリーとしては細部までよく考えられているものの、他の多くの人と同じで、ストーリーが起伏に乏しくて退屈に感じました。
また、ミステリーとしても丁寧ではあるのですが、今一つインパクトに欠ける点が残念です。
クオリティ自体は決して低くはないものの、結構長めの長編を支えるには魅力不足な気がします

No.177 4点 キドリントンから消えた娘- コリン・デクスター 2020/08/07 19:19
二転三転四転五転する多重解決ものでコリン・デクスターの代表作と目されている作品ですが、個人的にはイマイチでした。
まず、二転三転といっても一つ一つの仮説にさほどの根拠がなく、また、緻密なロジックによって導かれたものでもないので、それをひっくりかえされても特に驚きや衝撃を感じられなかったのが、楽しめなかった大きな理由として挙げられます。
それに、肝心の真相がぱっとしないうえに、すべての発端である手紙の送り主が不明のまま終わったのも大きなマイナス点です。
全体的な完成度はデビュー作である『ウッドストック行最終バス』のほうが遥かに上のような気がします。

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文生さん
ひとこと
本格脳なので本格度が高いほど評価も高くなります。ただし、本格好きと言ってもフェアプレーなどはどうでもよい派なのでロジックだけの作品は評価が低めです。トリックやプロットを重視した採点となっています。
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー、土屋隆夫、竹本健治、山田正紀
採点傾向
平均点: 5.85点   採点数: 456件
採点の多い作家(TOP10)
ジョン・ディクスン・カー(18)
アガサ・クリスティー(17)
横溝正史(12)
カーター・ディクスン(11)
エラリイ・クイーン(11)
西尾維新(11)
米澤穂信(10)
森村誠一(10)
東野圭吾(10)
竹本健治(9)