皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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  | makomakoさん | |
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| 平均点: 6.17点 | 書評数: 898件 | 
| No.298 | 7点 | 月への梯子- 樋口有介 | 2012/11/01 21:47 | 
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| 本格推理としてはちょっと甘いが、好きな小説です。樋口氏は推理小説は文学性を犠牲にしてもプロットとトリックという姿勢はとらないようで、ちょっとした切れ目に必ず美しい描写が入り、それがとてもよい雰囲気をかもし出す。作者は近年の作品になるほど洒落た会話に加えてこういった素敵な文が入り、読んでいてとても気分が良い。 本作品は登場人物もとんでもない人が大半であることが分かってくるのだが、決して感じが悪くなくやさしい内容であることが好ましい。 最後は結構ひねりが効いており読後感も悪くない。 | |||
| No.297 | 6点 | 長いお別れ- レイモンド・チャンドラー | 2012/10/28 17:18 | 
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| どうもこの話は私にはあわない。登場人物がなんでこんなに暴力的でわざととしか思えないほど相手を挑発しているようで。さらに相手がひどく怒りっぽくすぐにナイフなどを持ち出したりして。 読み始めはマーロウという人物がバカに見えて仕方がなかった。 もうちょっと丁寧にやればこんな目にあわなくてもすみそうなのにねえ。 そんなわけでこの長い話を読みきるのにかなり努力が必要でした。ことに最初のあたりでは何度かもう読むのを止めようかと思ったほどでしたが、評判の名作なのできっと面白くなるだろうとがんばって読むことになりました。 わたしは初めのうちマーロウという主人公にはじめはぜんぜん感情移入ができなかったのです。自分に素直でなくわざと嫌われるようなせりふを吐き、すぐに暴力沙汰となる人間は現代の日本人からはあまり好まれないのでは。 読み進むにつれて何とか彼がキライでない程度にはなりました。 それにしても50年代のアメリカは飲酒運転は容認され、警官の暴力などはぜんぜん気にされていない世界であったのだ。 日本の官憲が暴力的であったというけどアメリカもあんまり変わりなかったのかも知れない。 非常に評価の高い作品にあまり低い点数をつけるのは気がひけますが、わたしなりの感想ということでご勘弁を。 | |||
| No.296 | 8点 | 枯葉色グッドバイ- 樋口有介 | 2012/10/19 08:03 | 
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| 樋口氏の小説はいつも無頼(古い!)な感じと、暖かさと皮肉と洒落たセンスが感じられ、ストーリーよりそちらの方面に惹かれて読んでしまうこともあるのですが、この作品はかなりしっかりと筋書きだててあり、作者のも述べているように終わりまできっちり書かれている。 主人公がホームレスまで落ちぶれた敏腕警官というのもちょっと極端な設定に思えますが、読んでいくとぜんぜん気にならなくなる。 ストーリも二転三転して最後はきっちりとどんでん返しとなっており、この作者らしく無謀に走りやすい吹石夕子にもちゃんとお手柄をあたえているのがなんとも優しい。 ちゃんと終わりまで書いてくれたので文句は言えないのだが、これはこれでちょっとくどい感じというのは読者のわがままでしょう。 とにかくとてもよかった。 | |||
| No.295 | 6点 | 鋏の記憶- 今邑彩 | 2012/10/19 07:48 | 
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| 超能力をミステリーに仕立てると何でもできてしまうので、本格物としては掟破りふうなのだが。 この作品のように物に触るとそのものに関連した昔の記憶が分かる能力がある女の子がいたら、まず事件の起きた部屋へ連れて行ってつぎつぎと物に触ってもらえば、まずどんな難事件も即座に解決してめでたしめでたし--。などと気難しいことは言わないで読めば結構楽しめます。 最初の三時十分の死などはきちんとトリックも仕掛けてありなるほどと思わせます。ただ早苗ちゃんはちょっとかわいそうだなあ。 最後の猫の恩返しはなかなか良い。何となくほっこりした気分になれました。 | |||
| No.294 | 7点 | 虹果て村の秘密- 有栖川有栖 | 2012/10/12 14:09 | 
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| 子供向けのミステリーということなのでそんなに奇抜なトリックや残酷なシーンはない。トリックも平易で分かりやすい分ミステリーを読み慣れた読者には不満足かも知れない。密室トリックの初歩の初歩なのだろうが、本格ものを初めて読む読者にとっては素晴らしいトリックに違いない。 読んでいると作者のミステリーへの愛着や子供にミステリーの素晴らしさを紹介しようという暖かさは十分に伝わってくる。 登場人物間の会話の面白さは(有栖川氏の小説を読む際に最も楽しみにしていることの一つです)たっぷりで後味もよく、なかなか面白かった。 | |||
| No.293 | 6点 | 復讐の女神- アガサ・クリスティー | 2012/10/08 07:32 | 
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| 最初の出だしはナカナカですが、皆さんが述べているように話のテンポが遅くやや退屈なところがあるのは否めない。さすがのクリスティーも年をとるとなかなか切れ味の良い話を作り出すのは難しいのかとも思ってしまう。 だいたいミスマープルシリーズはあまり奇抜なトリックなどは少なく全体として退屈になりそうな話を、意外な犯人と巧みな筆で興味深く読ませるものと思っているが、本作品は若干テンポが悪い。 さらにこの話だと、旅を依頼した死せる大富豪はほとんど真相をつかんでいた?さらに被害者となった女性は真相に気づいていたのにどうして黙っていたのだろうかなどと、若干矛盾を感じるところもあるのでちょっと評価が低い。 皆さんより多少評価がよいのは多分自分が年をとり、何となくマープルさんに共感できるようになってきたせいかもしれない。 | |||
| No.292 | 6点 | カリブ海の秘密- アガサ・クリスティー | 2012/10/02 20:35 | 
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| 翻訳物があまり好きではない。翻訳文が苦手な上に登場人物がとんでもないやつであることが多く(最近では日本の小説でもしばしば見かけるが)ぜんぜん共感できない。さらに名前が覚えられない(これは単にわたしの脳の老化かもしれないが)、男か女かも時々不明となる。こんな読者ではまず外国物は楽しめないことが多いのだが、クリスティーはかなり好きです。 シリーズではポアロの方が好みでですがミスマープルもなかなか面白い。 本書はマープルもそして作者も大分年寄りとなって話が丸くなっていると思いますが、さすがはクリスティーで犯人は以外できちんと論理的でもある。 大きな山場がないがそれなりに読みやすく退屈はしない。 | |||
| No.291 | 6点 | 珈琲店タレーランの事件簿- 岡崎琢磨 | 2012/09/26 18:00 | 
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| 書店の入り口に山積みされていたのでなんとなくビブリア古書堂の事件手帖(これは好きなシリーズです)に似た感じに思えて購入した。 内容はビブリアと似ているところもあるが、違いもはっきりしており(登場人物の個性が相当異なる)二番煎じ的な物ではないとしましょう。 謎は小粒でもちろん殺人事件のような凄惨なものは全くない。謎ときはまずまずかな。連作風であるが、全体として一つの話となっており、結末はまあハッピーエンドなのでしょう。 ストーリの途中にやや不明のところがあるが、全体として平明で読んでいやな感じはない。 あまり評価があがらなかったのは主人公の男性があまりに腰抜け(こういった男は嫌いだ。)なところ。 主人公の女性もまあ魅力的といえるが、大分暗くちょっと鬱陶しい感じが否めない。 この手の話は主人公がいかに魅力的かが大きな要素となると思います。 まあ悪くはないがすごく感心もしないといったところでした。 | |||
| No.290 | 6点 | プリズン・トリック- 遠藤武文 | 2012/09/22 13:07 | 
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| 初めの交通刑務所の話はちょっと驚きました。どうやって取材したか不明ですが、刑務所ではこんなこととなっていたとはぜんぜん知りませんでした。あまり異議が出たという話がないので多分事実なんでしょう。 問題は話が進んで途中ぐらいから視点がつぎつぎにずれて、名前を覚えるのが苦手なわたしには誰が何をやっているかわからなくなってしまった。これってちょっとひどいと思います。 途中で止めようかと思ったが、ラストのトリックが素晴らしいとの論評があるのでとにかく最後まで読んだ。 うーんなるほど。ぜんぜん見通せなかった。 あまり読後感がよろしくない終わり方だけどまあ納得。 最後に一つだけ。 遠藤さん首に静脈注射ってしたことありますか?血管は太いのでさせそうだけど相手が動くと案外難しいのですよ。注射をうったことがない人に極度の緊張下でそううまく打てますかどうか。 | |||
| No.289 | 5点 | グラスホッパー- 伊坂幸太郎 | 2012/09/08 17:50 | 
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| はじめはやたら現実感のない殺人が出てきたりして、とても嫌な感じでした。こんな本もう読むのをやめてしまおうかと思ってもいたが、まあ手元に他に読むものもなかったのでしかたなく読んだ(重傷の活字中毒の兆候ですな)。 途中からはまずまず納得できる内容となってきたので読むこと事態は苦痛ではなくなったのだが、だから面白く読んだというほどではなかった。名前を覚えるのが苦手なわたしにとって蝉だの鯨だの覚えやすい登場人物なのがまあよかったといえばよかった。 要するにわたしの肌に合わない小説でした。 | |||
| No.288 | 7点 | 黒猫館の殺人- 綾辻行人 | 2012/09/08 17:39 | 
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| これが出た20年程前に読み、当時は館シリーズとしてはもうひとつの感があった。今回再読してみたが、トリックなどたいていは忘れてしまうわたしでもさすがにこのトリックは覚えており、ついでに犯人も不思議に覚えていたのになかなかおもしろかった。 たくさんの伏線が張ってあり、まあフェアといえばフェアでもありといった作者の苦心の跡がしのばれて楽しめた。 まあ本格物の中毒症状がひどくなったということかもしれませんが。 | |||
| No.287 | 7点 | 赤いべべ着せよ…- 今邑彩 | 2012/09/01 13:11 | 
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| 本格もとしてきちんとまとまっており、犯人もまあ以外だしそう悪いところはないのだが、いまひとつインパクトにかける気がする。トリックというほどのものは出てこないし、何となく小粒な印象です。 もちろん作者独特のホラー趣味はあるが、それほど前に出てこないので、わたしとしては読みやすかった。 本格物が好きなら読んで楽しめると思います。 | |||
| No.286 | 6点 | 時鐘館の殺人- 今邑彩 | 2012/08/26 09:11 | 
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| 作者の本格物の作品はわたしの好むところなのだが、ホラーのほうへ傾いたものは苦手。 本作品は一作目の生ける屍の殺人はホラーに傾いている。 短編集って一作目から読むと思うのだけど、(そうでない方もいるのかな)最初の作品でつまづくとあとはどうも気が進まなくなる。 最後の時鐘館の殺人なんかは結構よかったのだが、たどり着くまでの作品はもう一つのように感じてしまった。 順番が変わったら評価がもう少しあがったかも(そんな評価って当てにならないですね)。 | |||
| No.285 | 3点 | 少年たちのおだやかな日々- 多島斗志之 | 2012/08/26 08:59 | 
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| 多島氏は好きな作家。作品があまり多くないので未読作品が少なくなっていくのは寂しく思っていたところへたまたまこの本が見つかった。表紙がなんだか気に入らないけどとにかく購入。 読んでがっかり。これって本当に多島氏の作品なの? 意表をつくストーリーと丁寧な文章はよいのだが、内容がぜんぜん好きでないのだ。妙に気持ちが悪かったり、残酷だったりして。後味も悪い。 好みの作家でも時に合わない作品があるのだが、これはまさにわたしにはとってハズレでした。 | |||
| No.284 | 4点 | 連続殺人鬼 カエル男- 中山七里 | 2012/08/12 10:28 | 
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| この作者が同時に「さよならドビュッシー」を書いていたことにまず驚きました。「さよなら」の爽やかさだけではどうしても物足りずに毒をこの作品につぎ込んだのでしょうか。 残酷シーンやグロいシーンはどうも苦手で、こういったもので楽しむことはできそうにありません。 まあそれなりによくできた作品とは思いますが。 | |||
| No.283 | 6点 | 誰か Somebody- 宮部みゆき | 2012/07/29 10:02 | 
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| 悪くはないが、ちょっと盛り上がりに欠ける面もある。それでもすらすら読めてしまうのは作者の力量なのでしょう。 謎や探偵さんの個性に関してはまあ普通。登場人物はみんなそれほど悪くない思っていると、さすがに女性の作家らしく男には書けないような女性の嫌なところを最後に見せてくれる。 女は意地悪で嫌なところがあるなどと男性が書いたらセクハラだと騒がれるが、女性が書く分にはそういった心配もないせいのでしょう。 逆に女性の作家さんらしく男性に対する描き方は甘いね。 異性はすべてが分かったら幻滅。永遠に分からないから好きにもなれるのでしょうね。 | |||
| No.282 | 3点 | 田舎の刑事の趣味とお仕事- 滝田務雄 | 2012/07/22 16:57 | 
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| これは好みではありません。作者は人が死なない推理小説を書こうと思ったとのことで、そういった姿勢は悪くないのですがなんといっても文章が悪いし、登場人物があまり感じ良くない。 こういった話では一見仲の悪い同士でもどこか心がつながっていないとしっくりしない。 わたしには暇つぶしにもなりませんでした。 | |||
| No.281 | 6点 | 赤い指- 東野圭吾 | 2012/07/21 07:52 | 
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| 読んでいて楽しい小説ではないですね。特に前半は嫌になってしまう。まあそれだけ作者が上手に小説を書いているのですが。 だいたい殺人事件を現実的でシリアスの書けば書くほど嫌な感じがするのはある面で当然で、それを好んで読むかどうかは読者の選択ということとなるのでしょう。 東野氏の小説は時々こういった嫌な感じが表へ出てくるものがあり、そういった作品群は個人的には好みではありません。どこか冷たい感じがするのです。 登場の少年は商売柄ときどき似たようなヤツ(あえてヤツと呼ぶ)と遭遇します。自分がうまくいかないとみんなが困ると思っているのです。加賀と同じような感じを抱いてはいます。 いろいろあるけど本当は素直でいいやつなんですよ、といったところがないので読んでいるとつらいだけになってしまいます。そんなふうなところが少しあったらぐっと点数は上がったのに。 甘いかな。 | |||
| No.280 | 4点 | ふたりの距離の概算- 米澤穂信 | 2012/07/20 06:26 | 
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| 米澤氏の作品でも古典部シリーズは好きなものなのだが、これはいただけなかった。「インシテミル」のように生理的に受け付けない感じがするのではないのだが、はっきりいってあまり興味のない話でした。 まずマラソン大会で走りながら推理するというところから気に入らない。わたしはずっと運動部に所属していたが、何を隠そうマラソンが大嫌い。走りながら考えることはいつも後どれだけ走ればオシマイだからがんばろうだけでしたので、こんな設定は考えられない。 謎となっていることも小粒なことは古典部なのだから当然だが、大して興味がないし文章もさえない。 暇つぶしに読むのもちょっと苦痛ぐらいでした。 | |||
| No.279 | 8点 | ビブリア古書堂の事件手帖3- 三上延 | 2012/07/20 06:14 | 
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| このシリーズは奇抜なトリックや殺人などは皆無なのだが、愛すべき登場人物と暖かい雰囲気が満ちていて読んでいて楽しい。 栞子さんは精神科医や心理からみればアスペルガーだというかもしれないが(本格ミステリーの登場人物はしばしば精神的に異常な人間が活躍するのであるが)、大変好きな探偵さんです。 たまたま海外旅行する飛行機の中で読んだのだが、時間が余って何度も読み返すこととなったが、やっぱり楽しく読むことができた。ストーリーやトリックを読んでいるのではなく雰囲気を楽しんでいたからなのでしょう。 シリーズ物はだんだん飽きてくることが多いのだが、このシリーズはだんだんすきになってきたようです。次が楽しみ。 | |||