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[ 本格/新本格 ]
プリズン・トリック
遠藤武文 出版月: 2009年08月 平均: 5.55点 書評数: 20件

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講談社
2009年08月

講談社
2012年01月

No.20 7点 斎藤警部 2023/11/25 00:08
こりゃ強烈だ! 冒頭の交通刑務所内部描写から沸々と攻め上がるインナーグルーヴ。 フーに始まり、すぐさまハウ、やがてホヮイ、何気にホェンの要素も隠し待ち、しかし何と言っても核心たるホヮットダニットの牽引力が出色。 刑務所、出所者、警察、保険会社と事件捜査に掛かる面々(≒探偵役)が多方面から真相に向けせり上がって来る多重型スリルの尊さよ。

中盤では様々な事象が並列にほぼ同じ比重で描写され、どこに焦点を絞って良いのか迷わされる。実にミステリアス。 中心事象が最後には明かされるが、それ以外のサブ事象のプレゼンスかとれもこれも強烈過ぎ、全体像の中に太い軸が屹立していない感はある。それすら混沌のスパイスとして魅力を増す一要素に。まあ登場人物で一番格好良いのは矢島警部だろうが、彼でさえ警視昇進させられた背景にはちょっと、その格好良さに陰を差すモヤモヤが宿った。

細かな多視点切り替えによるストーリーフォローの難しさは、視点人物たちの苗字が総じて平凡である事にその一因も見出せよう。(唯一目立ったのが、警察側の脇役、四方田さん?)一部作家にありがちな際立った珍姓さんとまで行かずとも、野田さん武田さん宮崎さんやらの中にせめて鳩さんとか追分さんとか樽美坂さんとか混ぜて欲しかった。実際、日本人十人も集まれば結構な珍姓さんが入っているものですし。

小粒な密室トリックにささやかな叙述ミスディレクションもミステリとして有効なサポート。社会派スパイスはスリルを焚き付けてくれた。 しかし、最後に。。。。。。。。 単行本オリジナルには最後の「手紙」が無かった(後にWeb上で発表)って。。。。 スキャンダラスだよねえ。

No.19 5点 zuso 2021/11/25 22:40
大胆な仕掛けには好感を持つものの、いざ明かしてみると狙いほど成功しているとは言い難い。個性や人間味に乏しい人物など、小説の熟成度も今ひとつ。
ただ、交通事故を巡る加害者と被害者の葛藤は、社会派として評価できる。

No.18 5点 名探偵ジャパン 2019/03/01 22:59
冒頭の交通刑務所のくだりが長く退屈で、ようやくそれが終わり事件が発生したかと思うと、視点人物がころころ変わっていき、読み難いったらありません。何度も「もういいや」と投げかけました。最後、そうする必要があったことは、まあ分かるのですが、それにしても視点になる人物が多すぎます。作者が初めて書いた小説だということを差っ引いても、これはひどいと思います。本作は公募作品なのですが、下読みはよくこれを我慢して読み切ったねと褒めてあげたいです。
とはいえ、全てが収斂していくラストは、なかなか良かったのではないでしょうか。我慢して読み切った努力が報われた感じです。
救われない終わり方なのですが、やっとこの本を読む作業から解放されるという安堵があったため、「まあ、どうでもいいや」と思ってしまい、それほど嫌悪感はありませんでした(笑)。作者はそこまで計算して、わざと読み難い文章を書いたのかもしれません。恐るべき策士ですね(多分違う)。

No.17 4点 CHABI 2015/09/04 22:10
序盤は交通刑務所内の説明ばかりで退屈すぎです。
何度も挫折しかかりました。
事件が起こってからは展開の早さはいいのですが、場面が変わり過ぎで誰の視点なのか理解するだけで大変でした。
登場人物表が必要だと思いますが、それはそれで別の問題が生じてしまうのがつらいところ。
刑務所内のトリックにもあまり感心できませんでしたし、刑務所内で殺害しなければならない根拠も納得しにくいものでした。
最後の一行には当然驚きはしましたが、それ相応の伏線があったのかどうか、読了後すぐには読み直す気力もないってのが本音です。
再読すれば、評価の変わる作品かも知れないですが・・・。

No.16 5点 yoneppi 2014/04/25 20:34
たしかに読みづらい。面白かったけれど。

No.15 6点 ドクターマッコい 2013/11/29 07:54
「ネタばれあり」
交通刑務所をめぐる連続殺人事件。
テーマとしては新鮮で看守での侵入も少し無理があるが面白かった。ただし、市長殺害の読者をミスリードさせるシャンプーの香り云々、告白のところでこの説明は少しくどい。
書体も若干解り難いところがありここらも少し辛かったです。

No.14 6点 makomako 2012/09/22 13:07
 初めの交通刑務所の話はちょっと驚きました。どうやって取材したか不明ですが、刑務所ではこんなこととなっていたとはぜんぜん知りませんでした。あまり異議が出たという話がないので多分事実なんでしょう。
 問題は話が進んで途中ぐらいから視点がつぎつぎにずれて、名前を覚えるのが苦手なわたしには誰が何をやっているかわからなくなってしまった。これってちょっとひどいと思います。
 途中で止めようかと思ったが、ラストのトリックが素晴らしいとの論評があるのでとにかく最後まで読んだ。
 うーんなるほど。ぜんぜん見通せなかった。
 あまり読後感がよろしくない終わり方だけどまあ納得。

 最後に一つだけ。
 遠藤さん首に静脈注射ってしたことありますか?血管は太いのでさせそうだけど相手が動くと案外難しいのですよ。注射をうったことがない人に極度の緊張下でそううまく打てますかどうか。

No.13 8点 ボンボン 2012/03/08 23:45
読んでから月日が経っても何故か忘れられない、後を引く面白さ。小説の出来としては、本当にめちゃくちゃだが、別々の本を3冊読んだような満足感がある。いろいろ詰め込んで、3冊分バラバラに感じるところが悪いところなんだとは思うが。

No.12 5点 E-BANKER 2012/02/05 22:25
第55回江戸川乱歩賞受賞作。
今回、問題の「ある人物からの手記」が巻末に収められた「完全版」として文庫化。

~市原の交通刑務所内で、受刑者・石塚が殺され、同所内の宮崎が逃亡。遺体は奇妙にも「前へならえ」の姿勢をとっていた。完全な密室で起きた殺人事件は、長野・安曇野を舞台にした政治汚職事件にまで波及していく・・・。「乱歩賞史上最大級の問題作」(!)とも言われた作品だが・・・~

確かに、巷の評価通り「瑕疵の目立つ」作品なのは間違いない。
ただ、全体的な評価としては、乱歩賞選考委員である恩田陸氏のコメントどおりで「ひとことで言うと、志が高い。描こうとしている絵の大きさや、やろうとしていることのハードルの高さに惹かれた。」ということになるのだろう。

中盤以降、視点人物がつぎつぎ入れ替わるというのは、やっぱり「いただけない」。
特に「中島」(登場人物ね)などは、果たして視点人物として必要だったのか、たいへんに疑わしい。
また、探偵役として事件を推理&探究するのは、結局誰だったのか? それっぽく登場している武田警視にしても、自身の立場や家庭環境に憂うという役回りばっかりで、事件の探求はさっぱり・・・
「傷だらけ穴だらけの中盤」という東野圭吾氏の選評も「そうだなあ」と頷かざるを得ない感じ。
(「密室」の処理の仕方もちょっとヒドイ)

そして、単行本では「衝撃のラスト」だったろう、最後の1行。
これも、ミステリー好きなら十分に「予想範囲内」じゃないかな?
今回追加された「ある登場人物の手記」で、一応は作品全体に貫かれる動機や構図が明らかにされたのはまぁよかった。

というわけで、どうしても「穴」を付く書評になってしまいますが、処女作品ということを考えれば、それはそれでスゴイこと。
(交通刑務所の様子が詳細に描かれた「序章」が、個人的には本作の白眉だったなぁ。)

No.11 6点 いけお 2010/12/08 20:29
確かに欠点は、方々で指摘の通りその量・内容共にかなりあるが、補うだけのアイディアもあり楽しめた。

No.10 5点 2010/04/16 19:22
長所、欠点がいろいろある作品ですね。
 (欠点)
作家として素人に毛の生えた程度なのに、欲張りすぎ。それによる瑕疵が噴出したような感じ。
特に多視点は大きな問題。フェアを貫こうとしたためか?しかし、多視点にするとかえってアンフェアじゃないかと疑いを持たれる。佐野洋氏が選考委員だったら受賞はできなかったかも。
小説作法を無視して勢いだけで読ませようとしている(これは長所なのかも)。
トリックが大仕掛けすぎる(長所でもある)。そのくせ粗雑。必然性が見えてこない。
どんでん返しはなくてもよいのでは。最後の一行は、伏線からも、一般的な常識からも予想できたことで、驚きはない(作者はどうしてもやりたかったのでしょうね)。
主要な人物をメモしながら読んだが、メモしなかった人物が重要人物だった。人物造形がダメということか。それとも私自身の欠点なのか(笑)。
 (長所)
描写は部分的にはすごく迫力がある。例えば、冒頭の刑務所内の描写や、交通事故の被害者と加害者との対峙場面など。
ストーリーに勢いがあるせいかワクワクしながら読めた。だから視点がコロコロ変わるわりには読みやすかった。
汚職がらみの社会性は好みではないが、交通事故に関する社会性は時代にもマッチし、ストーリーにもうまくからんで自然な流れになっているので良かった。

選考委員は「志の高さ」を買って、減点方式も足切り方式も採用せず、一点豪華主義で賞を与えてしまったようです。プロの作家から見れば将来性があるのでしょうか。たしかに、なんとなく魅力があります。

No.9 6点 こう 2010/03/15 00:08
 最近の乱歩賞作品の中では本格色が強い意欲作だったのではと思います。選評を読んでも思った以上に好意的なのにはむしろ驚きました。ただ帯の「乱歩賞史上最高のトリック」というのは本当に東野氏は言ったり書いたりしたのでしょうか。流石にここまで誇張しなくともと思います。作品についての意見は他の皆さまと大体同じです。次回作も本格作品の方向で期待したいと思います。

No.8 5点 まさむね 2010/02/08 22:14
帯の「乱歩賞史上最高のトリックだ」という東野圭吾氏コメント(?)を見て思わず購入しました。
刑務所内での密室殺人・入れ替わりトリック・ラスト1行の試みなど,ミステリとしての要素は十分で,「志が高い」と複数の選考委員が語るのも十分に理解できます。
ただし,登場人物名のわかりにくさ・視点がコロコロ変わっていく不均一感・そしてなんと言っても最後の1行の「これって…??」感など,突っ込みどころも満載です。特に,最後の1行は読者が不条理に自問自答すること請け合い。私などは、読後に講談社が実施した「真犯人からの手紙クイズ(のようなものだったと思う)」で,ネットで公開された真犯人からの「手紙」を読み,ようやく心のつっかえが取れた次第。ラスト1行の不完全燃焼感は痛い。前半の交通刑務所の描写などは,グイグイ引き込まれたのですが…惜しい!
色々書いてしまいましたが,それでも魅力は否定できない作品。今後の作品に期待です。

No.7 3点 文生 2010/01/25 12:14
江戸川乱歩賞お得意のちょっと変わった職業や設定についての詳細を語りつつミステリーを展開していくタイプの作品。
そういう意味では、交通刑務所の内情はよく書けていると思う。
ただ、受賞理由になった本格ミステリーとしての魅力があまり感じられなかった。
いろいろ謎やトリックはあるのだが、どれも無理があったり、投げっぱなしだったりでいかにも練り込み不足という感じがする。

No.6 7点 おしょわ 2010/01/24 22:48
新人としてはかなりでき良いと思います。
期待値が上がってる分みなさん辛めだとは思いますが、転房のタイミングを待ってた理由が分かって、なんかもやもやしてたところがクリアになりました。
最後のくだりはない方が良かったかな。

No.5 4点 江守森江 2009/12/18 23:33
本の帯での東野圭吾のコメントに騙されたの声&2chで本年度クズミス・ダメミス大賞候補の声に、怖いもの見たさで読んだ。
細かな叙述を仕込む為、やたらと視点人物が替わり、本編での主人公が存在しないストーリー展開で、読み進まなさ加減は如何ともし難い。
(一度やってみたい作者の気持ちは理解できるのだが)最後の一撃(一行)は、途中で察せて驚けない、本編(事件)の内容と整合性を欠く、の2点で不要だと思う(時間をかけて加筆修正し整合性を保つ方法も可)
本格部分を(変更した)タイトルでもある、刑務所内での不可能犯罪ハウダニット(此方は刑務所内のネチっこい描写を伏線に合格点)に絞った社会派推理小説でスッキリ纏めていたら(一部の間とはいえ)ここまで酷評されなかっただろう。
もっとも、作者には書評での賞賛より乱歩賞受賞に意味がある・・・。
スピリットの空回りが何とも惜しい。
※私的見解では、読み難いがクズミス・ダメミスではない。

No.4 8点 北浦透 2009/12/06 07:58
久しぶりにミステリーって楽しいなあとワクワクしながら読んだ。謎で引っ張る物語であった。
物語のつながりがやや強引であることなど、ラストのカタルシスの物足りなさは気になるけれど、刈り込んだ文章といい、今後どのような作品を書かれるのかが非常に楽しみだなと思った。

No.3 7点 白い風 2009/11/10 22:23
2009年(第55回)の江戸川乱歩賞受賞作品なので読んでみました。
交通刑務所での密室殺人、また被害者と容疑者が入れ替わり?
ミステリの面白要素満載でしたね。
ただ、結末はトリックを含めもう少し工夫して欲しい気もしますね。
おそらく次回作も私は読むと思いますね。

No.2 4点 あるびれお 2009/10/21 02:31
選評にもあった通り、視点がコロコロ変わるため、どうにも居心地が悪い読書でした。トリックについても、東野圭吾の言葉通り(乱歩賞史上最高)とは思えず、「理事長にうまく乗せられて買ってしまった」。もっと何かにしぼり込んで書き込まれていたら、違った印象になったのでは、と思います。

No.1 5点 (^^) 2009/09/02 00:20
社会派でありながら本格という江戸川乱歩賞受賞作品。
投げっ放しの点がいくつかあって、ちょっと消化不良かも。
ただ「前倣え」の死体の理由付けは絶妙。次回作を期待。


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