皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
こうさん |
|
---|---|
平均点: 6.29点 | 書評数: 649件 |
No.149 | 8点 | 喪服のランデヴー- コーネル・ウールリッチ | 2008/07/05 01:29 |
---|---|---|---|
アイリッシュの別名義のサスペンスです。毎年決まった日に女性が殺されてゆくストーリーですが、冒頭で犯人が明かされており、5人の男性のリストが提示されその男性の妻、恋人が狙われることがあからさまになっておりミッシングリンクとは言えません。ただアイリッシュらしくサスペンスを際立たせる筆致はすごいです。5人目の所で本当に単純ですが本格的トリックが使われています。
犯人のやっていることはまさに狂人そのものなのですが殺人の動機が非常に救われない、悲しいストーリーです。 作品自体はラストまで作りは単純ですがアイリッシュ風なストーリーで物悲しく、とても良かったです。 但しハヤカワ文庫の裏表紙にはあからさまに犯行の動機がネタバレされ、ストーリー上の謎が一つもなくなってしまうため読む場合は裏表紙を読まないことをお薦めします。(裏表紙でネタバレされた本は初めてでした) 尚、黒衣の花嫁は男女が違うだけでほぼ同じです。 |
No.148 | 8点 | 招かれた女- 赤川次郎 | 2008/07/03 00:31 |
---|---|---|---|
これも初期のサスペンスタッチのミステリで気に入っています。
売春をしていた中学生が死体で発見され、ベテランと若手の二人の刑事が容疑者宅に踏み込もうとしたところ、容疑者の発砲で若手刑事が死亡、逃走した容疑者も死亡し、責任を取ってベテラン刑事は辞職し事件は幕、という発端が最初の数ページで語られ、そこから話が展開してゆきます。登場人物は少ないですが、どんどん殺されてゆきます。正直に言うと犯人が独善的理由で安易に殺しすぎかな、と思いますがラストの部分は予想外だったので面白かったです。 個人的には殺人の動機として自分を守るために次々に続けていく殺人は好きではありませんが、意外と後味の悪くない作風でした。 |
No.147 | 9点 | 一の悲劇- 法月綸太郎 | 2008/07/03 00:14 |
---|---|---|---|
ありきたりですが長編ではこれと頼子のためにが個人的には今でもベストです。発端がマクベインのキングの身代金の様に間違った誘拐事件の様にはじまり、そこから展開してゆくストーリーは十分楽しめた覚えがあります。ただ作風から仕方ないのかもしれませんが、法月綸太郎はじめ犯人、あるいは他の登場人物もストーリー、トリックのために配置されているだけでキャラクターに深みがない印象があります。他作品もそうですがトリックは好きでも登場人物に感情移入できない作品です。
またやはりパトリッククエンティンの某作品とテーマが非常に似ているのも少し気になります。 |
No.146 | 6点 | 陽気な容疑者たち- 天藤真 | 2008/07/03 00:04 |
---|---|---|---|
天童真第一長編です。人物像や作風はさすがに古めかしいですが(昭和37年作)それさえ気にならなければ楽しめる作品だと思います。密室のトリックよりもラストの結婚式での探偵役の語るロジックが気に入っています。
他作品同様ユーモアあふれる作風ですがそのためある人物がその場にいる不自然さにも気付きにくくなっており巧くできていると思います。しかもこの第一長編よりその後更に高水準の作品を出しており天童真は全作品お薦めです。 |
No.145 | 7点 | 水中眼鏡の女- 逢坂剛 | 2008/07/02 23:48 |
---|---|---|---|
全三篇ともサイコサスペンスで占められる短編集です。
この中では水中眼鏡(ゴーグル)の女が気に入っています。 黒い水中眼鏡をかけた若い女性が精神科医の前に現われ、ある朝突然目があかなくなる、と訴え精神分析治療を進めてゆく内にとんでもない展開が、というストーリーで他作家に類型作品はいくらでもありますが20年前の逢坂作品で見られるのが驚きの仕上がりです。どんでん返しもありますが初読時は見事にひっかかりました。あまり前情報なしで読むのが望ましい作品です。 「悪魔の耳」は少しアンフェアというか精神病に原因を押し付けている感があり「ペンテジレアの叫び」は当てやすいですが、3作とも本格ミステリ要素が強く収穫でした。 |
No.144 | 10点 | 夜よ鼠たちのために- 連城三紀彦 | 2008/07/02 23:32 |
---|---|---|---|
連城作品の中では最もトリッキーな作品が集まった好短編集だと思います。
自宅で妻を殺害したばかりの男の所に警察から別の場所で妻が殺されている、と通報がある「二つの顔」から始まりいずれも高水準な9作品です。共通点としては、一部を除いて男(犯人とは限りませんが)の一人称視点で「俺」が使用されていることで、ストーリーにあっています。 どれも人物誤認、騙りが非常に巧いです。表題作「夜よ鼠たちのために」の真相については現実では人道的にあり得ないので個人的には評価できませんが。 連城作品の短編集の中では最良だと思います。 |
No.143 | 6点 | ダイヤル7をまわす時- 泡坂妻夫 | 2008/07/02 23:16 |
---|---|---|---|
あまり統一感のない短編集です。チェスタトン風ロジック炸裂というほどではないですが無難な短編集だと思います。
広重好みが一番当てやすい作品かと思います。ダイヤル7はラストの一ひねりが面白いです。 |
No.142 | 9点 | 星を継ぐもの- ジェイムズ・P・ホーガン | 2008/06/26 00:15 |
---|---|---|---|
創元のSF文庫に入っていますし確かにSF小説ですが本格小説として非常に面白い作品です。瀬戸川猛資氏の夜明けの睡魔で激賞されて読んだのですが書評通りの高水準作でした。
月面で宇宙服をまとった死体が発見されるが、この死体は5万年前の死体と判明して、という所から始まりますが、謎がいくつも出てはそれがSF的解決ではなく論理的解決がなされており、しかも最後に全てまとまるのはとにかく凄いです。 個人的にはSFは全く読まないのですがこの一冊だけは例外です。尚シリーズ物ですが2作目以降は未読ですので同様の出来かはわかりません。 |
No.141 | 7点 | 私が殺した少女- 原尞 | 2008/06/26 00:03 |
---|---|---|---|
沢崎シリーズはこれ一作しか読んでいませんが面白かったです。主人公がリューインのサムスンシリーズの様に考えて、謎に追及してゆくスタイルの作品だったので満足です。本格ミステリとはいえないですがストーリー、展開共に楽しめた覚えがあります。 |
No.140 | 5点 | 玉嶺よふたたび- 陳舜臣 | 2008/06/25 23:54 |
---|---|---|---|
日本推理作家協会賞受賞作です。裏表紙通りで25年前中国人女性を愛し、不可解な別れをした主人公が25年ぶりに中国の玉嶺に向かう所から始まり、あとはひたすら回想シーンとなります。文庫で250ページ程度ですが最後の5~6ページまで回想部分でその後の数ページで不可解な別れの真相が語られる構成になっています。
一応伏線もありますが、謎があまり大きくなくそれほどの衝撃はありません。個人的には最後の落ちは小噺の様でした。 日中戦争当時の回想部分は叙情性豊かに語られておりそこに感動すれば評価は上がるとは思いますし、文章は巧いと思いますが、ミステリとしての評価はそこそこでした。 |
No.139 | 7点 | 人間動物園- 連城三紀彦 | 2008/06/25 23:41 |
---|---|---|---|
大物政治家の孫娘が誘拐されたが被害者宅には盗聴器が仕掛けられ、警察は身動きがとれず、という形でストーリーは始まりますが連城作品らしく一筋縄ではいきません。
途中で真相の一部が倒叙形式であからさまにされますが、そこから更にどんでん返しが連発します。 一番最後のエピローグは読者によってかなり評価はわかれそうです。個人的には動機をみる限り、ここまで大掛かりなことをわざわざしなくても、と思いますが、ストーリーの展開は満足でした。 この作品も珍しく叙情的では全くなく連城作品ぽくはありません。叙情性は個人的には苦手ですが作風が他作品と全く違いかえって違和感を感じるほどでした。 |
No.138 | 8点 | 殺人症候群- リチャード・ニーリィ | 2008/06/23 00:35 |
---|---|---|---|
海外で邦訳作品全てが叙述トリック物でどんでん返しがある貴重な作家です。
メインの登場人物がたった2人でその内の一人が連続殺人犯として次々に殺人を起こすことがあからさまになっていますが、最後にどんでん返しがあります。 折原一もそうですが叙述トリックがある、と構えていると結末が予想されやすく衝撃が薄く評価が下がるかもしれないのでその点損をしている作家だと思いますが前情報なしで読むと非常に面白いと思います。邦訳作品の中では本作は当てやすい方だと思います。 作風はサイコサスペンス調なのでそれが嫌いな方は合わないかもしれません。 |
No.137 | 5点 | 放課後- 東野圭吾 | 2008/06/23 00:23 |
---|---|---|---|
20年前に中学生の時読んだのですが、その時は最後が全く納得いかず、その後しばらく東野作品を全く読まなかったのを思い出します。
エッセイによると「普通の大人では理解できない動機による殺人」を作者は書きたかった様ですが当時個人的には面白くも何ともなかったですし理解不能でした。 今になると現実でも「理解できない動機」の殺人もありますし作者が例え「殺したかったから」という動機でも作品自体は否定しませんが、個人的には今でも納得しやすい動機の作品が好きです。 作品全体は今なら楽しめるかな、と思います。 |
No.136 | 7点 | どこまでも殺されて- 連城三紀彦 | 2008/06/23 00:11 |
---|---|---|---|
冒頭よりいきなり、これまで7回殺され今また殺されようとしている、という内容の告白から始まるいかにも連城作品らしいストーリーです。
ただ高校が舞台でメインキャストが高校教師とそのクラスの女子高生で教師が包み隠さず生徒に報告し二人で推理してゆく設定はかなり無理がありました。舞台上止むを得なかったのでしょうが。 真相は予想しやすいもので連城作品中ではひねりは小さめかもしれません。(どちらかというと他作家で類型の作品があるので予想しやすいのかもしれません。) 尚舞台が高校のためか他作品で見られる叙情さはこの作品では見られません。 個人的には叙情さが苦手なのでそれがなくても作品そのものは楽しめました。 |
No.135 | 4点 | 顔のない敵- 石持浅海 | 2008/06/22 23:57 |
---|---|---|---|
対人地雷をテーマに地雷除去NGOのメンバーの周囲で起こる殺人事件を中心とした6編と作者の処女短編「暗い箱の中で」が収められた短編集です。
対人地雷をテーマに選ぶ辺りは石持浅海らしいと思います。所謂メッセージ性は強くなく本格ミステリの土俵として選んでいると思います。殺人事件が多いせいか、ロジックも他作品よりは受け入れやすいものが多かったです。 ただ「暗い箱の中で」は会社の同僚のみが乗ったエレベーターの中で起きた殺人事件を扱っていますがロジックは良いと思いますが「何も起こらなければ飲み会(送別会)に一緒に行く筈だったメンバー」を殺害する動機が納得いきませんでした。 推理の過程には文句はありませんがそんな簡単に人を殺すものかな、と思ってしまいます。 |
No.134 | 8点 | 自白の風景- 深谷忠記 | 2008/06/22 02:01 |
---|---|---|---|
18年前の菊山事件、という殺人事件を担当した弁護人がキーパーソンで、18年後菊山事件の裁判長がひき逃げで死亡、その容疑者が菊山事件を担当した元警部で、その担当が菊山事件と同じ弁護人で、という形で進んでゆく所謂冤罪物です。
少し長いのが難点ですが、非常に読み応えがありました。ラストの部分は海外作品の「首つり判事」と似たところがあります。冤罪を扱ったミステリとしては、個人的には気に入っています。(いわゆる冤罪そのものを扱ったものは除きます) |
No.133 | 5点 | こわされた少年- D・M・ディヴァイン | 2008/06/22 01:46 |
---|---|---|---|
16歳の少年が突然失踪し、警察が捜査してゆく過程で、作品のキーパーソンの姉が襲撃されて、という話ですが明らかな本格作品である他作品程の仕上がりはありません。
最後犯人は唐突に明かされますが、正直犯人の行動は一般読者には納得しかねるものです。 ディバインの邦訳作品の中では一番出来が悪いと思いますが、個人的にはまあまあ楽しめました。 |
No.132 | 6点 | 敗北への凱旋- 連城三紀彦 | 2008/06/22 01:30 |
---|---|---|---|
連城三紀彦第二長編です。第二次大戦で将来を絶たれたピアニストの生涯を小説の題材とした小説家が主人公で取材を続けるうちに戦後直後の殺人事件の真相や、様々な謎が明らかにされていく、というストーリーです。
暗号については全くわかりませんで、ただ読み飛ばすだけでしたが、それ以外の真相は連城作品らしい仕上がりです。 犯人のキャラクターは正直あまり好きではなく、殺人の動機もあまり納得いきませんが、戦争直後ならありうる動機なのかもしれません。 ただその動機をひきおこす戦争そのものがトリックになっている所が壮大で凄いです。ある有名な海外作品の古典と本質は全く同じですが、ストーリーにうまくあっていると思います。 |
No.131 | 6点 | 解決まではあと6人 5W1H殺人事件- 岡嶋二人 | 2008/06/22 01:17 |
---|---|---|---|
次々に別の興信所に奇妙な依頼をする女性がキーパーソンで、最終章でそれがまとまる作品で面白い趣向だと思います。
各章の謎はどちらかというと解明のプロセスを提示されているだけで読者の推理の余地はあまりありませんし、最終章のまとめはかなり強引ですが、まあまあ楽しめた作品でした。 |
No.130 | 7点 | 天空の蜂- 東野圭吾 | 2008/06/22 01:11 |
---|---|---|---|
この作品が出た時点で明らかにそれまでの作品と一線を画した作風のサスペンス大作であまり期待せずに読んだのですがとても面白かった覚えがあります。
エッセイを読むと作者はこの作品に最も思い入れが強いようです。テーマの掘り下げ方は最近のものも含めて一番かな、と思います。 |