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[ サスペンス ] 水中眼鏡の女 |
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逢坂剛 | 出版月: 1987年02月 | 平均: 6.75点 | 書評数: 4件 |
文藝春秋 1987年02月 |
文藝春秋 1990年02月 |
集英社 2003年02月 |
No.4 | 7点 | E-BANKER | 2015/04/29 17:11 |
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1990年発表のノン・シリーズ短篇集。
いずれも精神疾患をテーマにしたサイコサスペンスが並んでいる。 ①「水中眼鏡の女」=目が開けられないといって水中眼鏡を掛けたまま精神科を訪れる美貌の女性。眼科的疾患は何もなく精神的な原因と診断され、医師による治療が始まる・・・。物語は医師による診療場面とこの女性と夫との歪んだ関係を描くパートの二つが交互に進行していくのだが、ラストには大いなる仕掛けが明らかにされる。これが実にキレイに嵌っている。多くの読者は「アッ」と思わされるのではないか? ②「ペンテジレアの叫び」=精神的ダメージにより口がきけなくなった女性の相手役として雇われた美那子。かかりつけの精神科医との仲を疑う美那子は、実は女性の病気は治癒しているのではないかとの疑念を抱く。そして、それぞれの夫を巻き込みながら、歪んだ夫婦関係を清算する大事件が起こる・・・。ラストは皮肉な結末に。 ③「悪魔の耳」=二人を殺した現場で、犯罪の相棒である弟を刑事に銃殺された男。逮捕後、精神疾患と診断され長期入院していた男が退院した。弟を殺した二人の刑事に復讐するため・・・。それぞれの大切な人を殺されまいと必死になる二人の刑事だが、危惧された犯罪が起こってしまう。 以上3編。 作者の得意技のひとつであるサイコ・サスペンス。 その面白さが十分に出た作品集に仕上がっていると思う。 いずれも歪んだ人間、狂った人間が登場するのだが、一見してそれと分かる人間だけではなく、意外な人物が実は歪んでいた・・・ という展開。 よくある手といえばそうなのだが、ラストに向け徐々にスピードアップし、緊張感が増していく展開というのは、サスペンスとしては王道だろう。 三編とも短編らしい切れ味もあり、良質な短篇集と評価できる。 (個人的には①よりも②が好き。もちろん①も佳作。③はやや落ちるかな) |
No.3 | 7点 | 蟷螂の斧 | 2013/03/25 14:57 |
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(タイトル・女⑲)表題作は1987年とのことです。著者はエッセイで「読者を誤導するための間合いを計るのに苦労した。中には仕掛けがよく分からないという人も・・・」と談。解説者によれば”現在では「仕掛けがよく分からない」という読者は、それほど多くないのではないかと思われる。類似したタイプの仕掛けのヴァリエーションを専門的に案出する作家も、昨今は随分増えてきたのだから。これはある意味、時代に先駆けすぎた小説だったかも知れない。”とあります。その「仕掛け」を理解するまでに、かなりの時間を費やしてしまいました(笑)。残り2作品もブラックユーモア、サイコサスペンスで楽しめました。 |
No.2 | 6点 | メルカトル | 2013/03/01 22:16 |
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表題作他、併せて3編からなる短編集。
20数年前に書かれた作品だが、現在でも十分通用すると思われる、大胆な仕掛けが魅力の粒揃いと言って差し支えない短編というか、中編に近いものが並ぶ。 いずれも精神鑑定が何らかの形で関わってくるが、だからと言って小難しい要素は全然なく、むしろそれをエンターテインメントに昇華させる作者の腕は確かなものがあるようだ。 テンポも良く、とても読みやすい、すぐに物語にのめり込んでしまえる、なかなかのサスペンスぶりを示している。 それぞれ、結末には驚きが待っていて、一瞬「えっ」を心の中で叫んでしまうそうになる。 よって、どんでん返しや意外な結末が好きな読者にはお薦めとなっている。 |
No.1 | 7点 | こう | 2008/07/02 23:48 |
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全三篇ともサイコサスペンスで占められる短編集です。
この中では水中眼鏡(ゴーグル)の女が気に入っています。 黒い水中眼鏡をかけた若い女性が精神科医の前に現われ、ある朝突然目があかなくなる、と訴え精神分析治療を進めてゆく内にとんでもない展開が、というストーリーで他作家に類型作品はいくらでもありますが20年前の逢坂作品で見られるのが驚きの仕上がりです。どんでん返しもありますが初読時は見事にひっかかりました。あまり前情報なしで読むのが望ましい作品です。 「悪魔の耳」は少しアンフェアというか精神病に原因を押し付けている感があり「ペンテジレアの叫び」は当てやすいですが、3作とも本格ミステリ要素が強く収穫でした。 |