皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 007/わたしを愛したスパイ 007 |
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イアン・フレミング | 出版月: 1963年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 3件 |
早川書房 1963年01月 |
早川書房 1976年12月 |
早川書房 1998年06月 |
No.3 | 5点 | 蟷螂の斧 | 2020/09/03 08:42 |
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007としては異色のラブロマンスもの。主人公の女性は過去の男二人について、彼らはわたしのハートを求めたのではなかったと回想しています。ではボンドはどうなのだろう?。彼女を愛したのか?。女性の一人称なので、ボンドの心のうちはわかりません。よって題名の「わたしを愛したスパイ」はやはり「わたしが愛したスパイ」の方がスッキリするのではないかと思ったり。解説の新津きよみさんとは反対の意見となりますが・・・(笑)。他作品では、映画とは違い、ボンドが結婚した?とか結婚しようとかボンドの内面がかなり描かれています。本作品はラブロマンスものとしては、その辺が物足りなかったですね。 |
No.2 | 7点 | クリスティ再読 | 2018/12/09 22:02 |
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「サンダーボール作戦」以降は映画のための仕事みたいになって、007の余生みたいなものだ...というと言い過ぎかしらん?でその中で書かれた本作は「007外伝」なんだけど、逆に言えば「カジノ」も「ロシア」も本当はヒロイン視点でもよかったのでは?という作品なことを考え合わせると、やはり本作はフレミングが「書きたくて書いた」作品なんだと思う。そういう作者の思いがあってか、映画化にあたって「小説に書かれた内容を使用することを禁止する」という異例の契約をしたらしい。ま、およそ映画向きじゃない作品だが、ボンドガールの名前にさえ、本作のヒロインのヴィヴ・ミシェルは採用されていないくらいだ。
でね、本作、エロい。女性視点での「セックス」が大きなテーマだ。「わたし」「彼ら」「あの人」の三部構成で「わたし」はヒロインの生い立ちと男性歴で、およそミステリとは無関係なんだけど...しかしね「女性から見た(神話的な)ボンドという男」を描くテーマからすれば、これは絶対必要なパートなんだろう。スクーター(時代を感じる)でアメリカ大陸縦断旅行に出たヒロインは、旅費稼ぎにモーテルの臨時の留守番役に雇われた。一人で留守を預かったヒロインは嵐の晩を過ごすが、2人のギャングの侵入を許すことになる。ギャングの狙いはモーテルを火事にして、保険金を詐取するために雇われたようだ...絶体絶命のピンチに、偶然モーテルに車の故障によって立ち寄った男がいた。その男はジェームズ・ボンドと名乗った! で、見事にボンドはギャングを退治してヒロインを救う。そしてヒロインはボンドとのベッドシーン....となるわけだが、本作の最大の眼目はこのベッドシーンを描くこと以外にあるわけがない。ここでのヒロインの述懐が、フレミングの「ジェームズ・ボンドについての結論」みたいなものなのであろう。本作を読まずして、007を語ってはいけないね。 まあそういう経緯の作品なので、映画とは「タイトル以外は無関係」という関係にある。「ミステリの祭典」的には触れる必要はなかろう。 |
No.1 | 6点 | mini | 2013/01/25 09:56 |
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先日22日に常盤新平氏が亡くなった、謹んで御冥福をお祈りいたします
常盤新平と言えば早川ミスマガの前身日本版EQMMの3代目編集長として知られている、ちなみに初代は泣く子も黙る都筑道夫、2代目が生島治郎である 編集者としての常盤新平は、現在の早川NV文庫の前身ハヤカワノヴェルズを立ち上げたりニューヨーカー短編集の編纂など、ミステリーの枠を広げた業績が光る、ちなみにノヴェルズの第一弾が当時の新鋭スパイ小説ル・カレの「寒い国から帰ってきたスパイ」だった EQMM元編集長という肩書きにしては、早川書房退社後の評論などの著作活動に於いてもミステリー関連の著作が少ないのが特徴だ 後継の4代目編集長が狭い意味でミステリーの鬼的な各務三郎だっただけに、常盤新平は言わば異色の編集長だったのだ、ちなみに現編集長は女性の方なんだよね 本日発売の早川ミステリマガジン3月号の特集は、”わたしの愛した007” 昨年末に日本封切り公開となった007新作映画「スカイフォール」への便乗企画だろう、007映画も含めた識者アンケート記事が目玉かな さて特集記事の名前の元ネタがフレミングの「007/わたしを愛したスパイ」である この作はシリーズ随一の異色作で、視点となる主人公をボンドではなく失恋の傷心旅行中に事件に巻き込まれる若い女性に設定し、その女性から見たボンド像として描いているのだ ただしこの作、内容的にシリーズ映画向きじゃ無いから、同名の映画では全く別物に変えていて、ロジャー・ムーア主演の中では最高傑作とも言われている ちなみに(今回はこのフレーズが多いな‥苦笑)、歴代の映画の中で個人的に高評価なのはティモシー・ダルトン主演の「リビング・デイライツ」だな、題名は短編から採ってるんだけど ちなみに(またか)、ボンドガールで好きなのは「死ぬのは奴らだ」に出演のジェーン・シーモアかなぁ ついでに余談だが「わたしを愛したスパイ」でクールなボンドガールを演じたバーバラ・バックの現夫は元ビートルズのリンゴ・スターだってのは知らなかったな |