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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
007号の冒険
007、短編集 別題『007/薔薇と拳銃』『007/バラと拳銃』
イアン・フレミング 出版月: 1964年01月 平均: 6.25点 書評数: 4件

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東京創元新社
1964年01月

東京創元社
1964年05月

東京創元社
2007年06月

No.4 6点 蟷螂の斧 2022/03/26 19:48
映画は初代ボンド以降観ていませんので、よくわかりませんが本作品からの題名やアクションシーンがあるようですね。
①薔薇と拳銃 6点 バイクでのチェイス。 ボンドは16歳のとき、パリの売春宿で・・・のエピソード
②読後焼却すべし 6点 上司Mの個人的な復讐ともいえる任務で葛藤するボンド
③危険 6点 コロンボという人物が麻薬のボス?彼のキャラが魅力的
④珍魚ヒルデブランド 6点 鼻持ちならない富豪のヨットで珍魚の捕獲に向かうボンド。事件が・・・。ボンドの活躍のない異色作
⑤ナッソーの夜 6点 ディナー・パーティーで植民地総督が、一組のカップルの数奇な運命について語りはじめた。これも異色作でボンドものでなくてもいいような・・・短篇らしいオチはある

No.3 8点 クリスティ再読 2019/05/08 22:22
007の人気が上がってきたので、「プレイボーイ」などの一般誌からの依頼を受けて書かれた007の短編集である。だったら無理しない。番外の顔見世興行みたいなものだから、ボンドのキャラを今更深めなくても読者は喜んでくれる。筋立てにも工夫せず、ウケそうなサワリの場面をつないで逃げ切ればいい....で書かれたようなものなんだけども、逆にフレミングは、その余裕の中で、文章をギリギリまでに彫琢したようなのだ。

大きな黒いゴムの防塵眼鏡のかげで、その目は火打石のように冷ややかだった。時速七○ですっとばすBSAM二〇オートバイ ― からだも機械も宙に踊っているのだが、その目だけは静かに落ちついている。防塵眼鏡に守られて、ハンドルのまんなかあたりのちょっと上で、ぴたりと前方を見つめる黒いその目は、まるで拳銃の銃口みたいだった。

模範的なハードボイルド文といっていいだろう。ほぼ全作この調子で緩みのないタイトな文章で綴られている。大変心地よい。

自足荘の広いベランダでは、夕日の最後の名残りが赤いしみを照らしだしていた。小鳥の一羽が、手すりをこえて、ハヴロック夫人の心臓のすぐ上に行って見おろす。これは、蜜ではない。小鳥は陽気に花をとじかけたふようの草むらのねぐらのほうへ飛び去ってしまった。

でしかも、この「読後焼却すべし(For Your Eyes Only)」では、このハヴロック夫妻の仇討ちをMから私的に依頼されたボンドが、その娘と協力してターゲットを殺す。短編の幕切れでは、この娘、

ジュディもそのうしろにつづいた。歩きながら彼女が、髪をたばねていた草とリボンをとると、金髪がはらりと肩にたれかかった。

で小説が終わる。映画の最後でストップモーションで終わる(昔「ラスチョン」なんて呼んでたが)ような効果だ。映画を見なくたって、映画を見たかような視覚的な満足感を得られる。素晴らしい。名文家フレミングの絶頂期の筆の冴えを堪能するがいい。

No.2 5点 2018/02/19 17:08
「薔薇と拳銃」「読後焼却すべし」「危険」「珍魚ヒルデブラント」「ナッソーの夜」の5短編が収録されている。
長編のようなボンドの大活躍はない。わずかにアクションはあるが、大活劇といった感じはしない。オチらしいオチもなく、エンタテイメント・ミステリー短編らしさを求めるファンには、まずダメだろう。
「珍魚ヒルデブラント」は少しミステリー色があるが、ラストがはっきりせず、もやもや感が残る。「ナッソーの夜は」は、ボンドは聞き役でボンドでなくてもいいような作品だが、なんとなく引きこまれる。
これらには、アクション場面は一切ない。
なお、各編の各部が映画に採用されているようだ。

個人的には、「珍魚」と「ナッソー」がベストだが、全5作とも、ミステリーファンにひろくお奨めできるような短編小説ではない。長編を何作か読み、ボンド物をもっと楽しみたいというファン向きだろうか。

No.1 6点 mini 2009/01/25 11:01
昨日24日に日本公開となった007新作映画「慰めの報酬」
例によって題名は原作から借りてきただけで内容は別ものだが、今回の題名の元は短編「ナッソーの夜」で、収録している短編集が『薔薇と拳銃/007号の冒険』なのである
実は映画の題名の方が素直に原題の直訳であって、小説の題名「ナッソーの夜」の方が翻訳時の変更なのだ
たしかに「ナッソーの夜」の方が小説の内容的にはしっくりくる
カリブ海に浮かぶバハマ諸島の首都ナッソーで、ボンドはある人物から一夜の物語を聞かされることになる
小説ではその語られる話が全てであって、ボンドがスパイとして活躍する場面は一切無い異色作なのである
映画版では流石にナッソーでの一夜の語りというわけにはいかないから、内容を小説版とは全く変えざるを得なかったのは当然である
映画版では小説には全く出てこない、環境保護団体グリーンピースがモデルと思われる団体が出てくるのが今風で、しかもその正体たるやNGO法人の仮面をかぶった謎の・・という趣向
「ナッソーの夜」はシリーズ外伝のほとんど普通小説と言ってもよく、元来が作者フレミングには純文学指向があったのだろうが、仕方なくボンドものとして書いたのだろう
人生というものを短い短篇の中に凝縮して見せた物語は魅力的で、007という先入観を持って読むと驚くだろう

他の収録作「読後焼却すべし」は私的な事情で抹殺という工作活動が許されるのかという重いテーマを持っているこれも異色作
原題は「ユア・アイズ・オンリー」そう映画版の題名は単にカタカナ書きしただけなのだが、日本で言うところの”親展”てな意味だろうね
映画版「ユア・アイズ・オンリー」も特殊兵器などがほとんど登場せず、映画シリーズ中でもとりわけ地味な異色作だった
この短編集の他作品からもプールに飛び込む男に対するボウガンの矢や敵味方の判別シーンなど小説中の場面をそのまま使っているし、ボンドとヒロインが縛られて海中を引きずられる場面は長編「死ぬのは奴らだ」から使っている
案外と小説の内容を100%無視しているわけでもないんだな
ただし必ずしも映画版と同一タイトルの小説から100%採っては無いんだけどね


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イアン・フレミング
1974年02月
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1972年01月
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1965年01月
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1963年01月
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1957年01月
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