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[ 本格/新本格 ]
セカンド・ラブ
タロット・シリーズ
乾くるみ 出版月: 2010年09月 平均: 5.86点 書評数: 21件

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文藝春秋
2010年09月

文藝春秋
2012年05月

No.21 8点 斎藤警部 2017/10/29 15:05
そりゃ私も読み返しましたよ、アノ部分。。(セックスシーンじゃないよw)  だけど、ァんだよそんダケのオチかよ。。。と悪態ツイてからよぉく考えてみたら、フィードバック回路になってんじゃねえか。。(だからこそ最終章、古風なほど丁寧なドンデン返しの説明を。。。)イッセーさんやのりちゃんさんがその様な主旨の評を書かれる意味がよおく分かりました。こりゃ確かに、「イニシ」より悪どく手が込んでるかも知れない。  ※これ言うと微妙にネタバレ&逆ネタバレかもですが。。。。「イニシ」が仮に日常の謎・叙述ミステリだとしても「セカン」の方は日常の域からはみ出してるってか、はみ出してるかも知れないってか、、、(あのオチの事じゃないよ)、、そこにこそ、本作の怖ろしい秘密が蠢いていますよね。。。。ヤバそうだなあ、乾さんって。もっと読もっと。

そうそう本作は「イニシ」に較べると表面的によりミステリっぽいというか、割と早い段階からミステリらしい怪しいエピソードが出て来たり、積極的に疑惑を生むストーリーの流れになっていたりします。ので、恋愛小説なんてカッタリーという人にもさほど苦にはならないかも。

でもやはり私は、まるで「叙述トリック版 黒いトランク」とでも呼びたくなるほど緻密で美しい企みが網羅された「イニシエーション・ラブ」に軍配を上げます。それでなお「セカンド・ラブ」は素晴らしい作品だと思います。

ところで本作、こう見えて意外と戦後の名作「●青殺人事件」を思わせる所があったりしますよね。。

No.20 6点 のりちゃん 2016/10/24 21:13
No19の続き
スナックで働いているミナには二面性があった。一面は、私はそんなに軽い女ではないので安易に口説いたりしないでという気高い性格。もう一面は、それとは真逆で、二番目の女でいいから貴方の側にいさせてという恋多き性格。天涯孤独でも、自分の好みでもない客に対しては前者の性格で接する一方で、天涯孤独ではないが、自分の好みである客に対しては、後者の性格で接してセフレにしていた。春香の恰好をしている美奈子をミナであると見抜いた老人は、天涯孤独でも、美奈子の好みでもなかったが、大金をちらつかせて美奈子との関係を求めてきたので、美奈子の本来の性悪さがでてしまって、一度だけ関係して大金をせしめた後、態度を一変させて老人からの指名を断り続けていた、と考えられる。

No.19 6点 のりちゃん 2016/10/24 20:39
生き残りは、春香(宇多田ヒカル→ファーストラブ)ではなく、題名と同じセカンドラブに対応する美奈子(中森明菜→セカンドラブ)であるという点が、ラストの心霊トリックを超える最大のトリックになっている。
スキー場のある田沢湖町の育ちで、且つ男性経験が豊富な美奈子が春香を演じていたからこそ、華麗なスキーテクニックや超絶エロテクニックを披露することができたのである。2~3回のスキー経験しかなく、自殺した元彼が唯一の男性経験(友人の尚美談)だった本物の春香には、決して真似することのできない芸当である。
 自殺した元彼に関連する「好ましくない情報」を美奈子から強制的に聞かされて自暴自棄になった春香は、美奈子の思惑通りに美奈子の免許で運転して事故を起こし、美奈子として病院に運ばれたが、美奈子の意に反して生き延びてしまった。困った美奈子は、春香のふりをして通学するので、春香として入れ替わるという提案を春香の父親にした。父親には「ある理由」があったので、その提案を受け入れるしかなかった。意識を取り戻した春香が、退院するまで美奈子として入院生活をおくることに同意したのは、父親に説得されたから。その後、美奈子は、顔に関する屈辱的な言葉を浴びせて春香を自殺に追い込むことに成功した。という流れであろう。
 春香を演じる美奈子と、春香の父親とが結託していることは明らかである。春香の父親は、春香の婚約者だった正明が自殺して1~2ケ月しか経っていないのに、紀藤との結婚を許したり、急いで挙式させたりしているが、こんなことは普通ではあり得ない。挙式をそんなに急いだ理由は何か?・・・春香の父親が正明の素性で最重要視していた点は、学歴や仕事の内容ではなく、天涯孤独である点だ。こんな点にこだわるのは明らかに異常であるが、こだわったのは、天涯孤独は、短期間のうちに婿入りを承諾させて挙式させることが可能だからである。春香の父親は、先代(春香の祖父)に絶縁された経験があり、現状ではなんとか先代の地位を継がせてもらっているが、弟(春香の叔父)がその地位はく奪を虎視眈々と狙っている。春香にぞっこんの先代に対して春香の父への本格的な地位継承を決心させるためには、先代が死ぬ前に、春香を演じる美奈子に挙式させて先代の遺言作成を煽る必要がある。だから、挙式を急いだのである。
 春香の父親が入れ替わりの提案を受け入れるしかなかったのは、顔を変形させてしまった春香への愛情を先代が失ってしまうと、自分から弟に鞍替えする可能性がでてくるので、先代には絶対に知られたくなかったからである。
 春香を演じる美奈子は、お金に困っていないのに、どうしてミナとしてスナックで働くようになったのか?・・・本物の春香が事故で重症を負ったのは、交際中の彼が自殺して間もない、大学3年のときだったと考えられる。その後、春香を演じる美奈子がミナとしてスナックで働くようになるまで、かなりの期間が経過している。スナックのママの話しによれば、ミナは正月スキーに行く数ヶ月前になってようやくスナックで働き始めている。それ以前、春香を演じる美奈子と、春香の父親とは、婿入りを承諾する男性をひっかけて挙式にもちこむ作戦を企てていたものの、それほど焦ってはいなかった。育ちの良い学生しかいない私大の大学院では、婿入りを承諾しそうな男性はなかなか見つからなかったが、のんびりと構えていた。ところが、先代の発病がきっかけとなって、挙式を急がなければならなくなった。そこで、美奈子は、天涯孤独の男性に巡り会える機会を増やすために、スナックで働き始めたのである。
 ミナを逃亡させた上で正明との挙式に持ち込む必要があった春香=美奈子は、ミナも正明に恋をしたが姉のために身を引いたという設定を思い付いて、ミナとして正明と関係を結んだ。そのとき、超絶エロを披露したのは、正明に対してミナを尻軽女と思わせてミナに対する未練を抱かせないようにするため。それを確実なものにするために、読書の心得のない紀藤に正明の本を借りさせて本のトリックを仕掛けたのだが、そのトリックがわざとらし過ぎたため、「わざと尻軽女だと思わせた」と正明に勘違いされて、正明を田沢湖に向かわせることになる。

No.18 3点 ia 2016/08/23 17:44
単純に話が面白くない。
人物造形も不自然で、不必要な会話が多い。
この人の話いるかな?という無駄に思える箇所がそこそこあり。
肝心のしかけが手垢のついたオチで酷い。

No.17 6点 いいちこ 2014/06/30 19:34
叙述トリックの気配を濃厚に漂わせるプロローグからの二段底。
上手さはあるのだが、見えないところからのハイキックとでも言うべきイニ・ラブの衝撃には遠く及ばない。
致命的なのは主人公の心情変化が急激すぎること、行動が合理的でない、場当たり的に感じられる局面が多すぎることで、読者としては途中からついていけなくなってしまった。
敢えて描ききっていないプロットであることは承知しているが、あれだけの大仕掛けを演じきったヒロインの動機も明かされず。
読者が「セカンド・ラブ」という高いハードルに求めるカタルシスやサプライズはなかった。
局所的なテクニックを認めても、それ以上の評価はあげられない。

No.16 7点 イッセー 2014/06/08 07:54
No.15のつづき。その後見えてきたものについて。
本作品の本当の主人公は、本物の「美奈子」であり、彼女による「なりすましと事実(双子)の発覚を隠すための隠蔽工作」物語ではないかと。
 もしかしたら殺人(偽装自殺)も行われているかも。
・「春香」と「美奈子演じる春香」と「西川」の三角関係から、「西川」の存在が危険なものとなりこの世から消された。
・交通事故は実は、仕組まれたものであり、事故の相手は「倉持」ではないのか?(交通事故も傷害事件のひとつ。何も喧嘩だけが傷害事件ではない。)「美奈子」にとって「春香」はこの世に2人要らないのだから。
・「ほくろ」の件は、遺影にほくろが無かったことから、ごみであったとの解釈でよいと思うが、何故「つけほくろ」の必要があったのか疑問が残る。
・「尚美」については引き続き検証を要す。
「春香」として生きていく決意をした「美奈子」にとって脅威となる人物は誰か?と考えると、なんとなく繋がってきそうである。と、なると次は「紀藤」が危ない。新婚旅行先で事故死しなければいいのだが。ただ真相は事故死に見せかけた殺人なのだが・・・。
 本作は「イニシエーションラブ」より手が込んでいるかも知れない。


No.15 7点 イッセー 2014/06/08 01:19
正明が自殺したという「オチ」以外に、何かあると思って何度も読み返しているのだが、決定的な確証が得られず、暫く検証が続きそう。そういった意味では、「かなり楽しめた」というより「現在進行形で楽しんでいる。」現段階での推測として、死んだのは「春香」で「美奈子」が「春香」を演じているということ。免許証の有効期限は昭和60年の誕生日、当時の道交法では有効期間は3年間のはず。ということは、前回の更新時期は昭和57年2月23日から同3月23日の間で、その時期「美奈子」は交通事故で顔面に大きな怪我をしていたはず。
(事故の時期が特定できないが、文脈から推察して。)
でも免許証の写真は「ほくろ」らしきものがある以外、特に異状はない。交通事故を起こし、その後自殺したのが「本物の春香」であり、その後「春香」に成り済ましているのが「本物の美奈子」では?というのが現段階での分析状況。
「ほくろ」「倉持」「尚美」「西川」・・・そのあたりを更に読み込むとまだまだ何かが見えてきそうな予感がします。
たとえば、「西川」を振ったのが「春香に成りすましていた美奈子」でこれがきっかけで「本物の春香」は交通事故を起こしたのでは・・・とか。
 2度読みどころか、まだまだ楽しめそうな作品です。

No.14 4点 taro 2014/01/19 11:10
 前作が良すぎたのか、最大の謎であった二人の女性が同一人物かどうかなどはどうでも良いことでしょう。
 唯一の驚きの部分は有名映画のパクリと言われてもしょうがない。それも、ああ~そういうオチかと言う程度。たれもが序章には違和感を覚えるはず。

読むのに費やした時間が無駄だった。
イニシエーションラブほどの衝撃はない。ファンの人は覚悟して読むべし。

他に気づかなかった驚きの衝撃があるのかもと、
ググってみて一番衝撃の真実は

「乾くるみが男性」だったことでした。(笑)

No.13 6点 makomako 2013/11/05 20:44
 わたしにはこの作品は分からないところが多くあります。どういう風にもとれる様に書かれたのだとは思いますが。それがすっきりしないといえばすっきりしない。
 イニシエーション・ラビと同様に女はかわいいけど怖いよというところをまざまざと見せてくれます。わたしのような読者は当然作者の思いどうりにだまされ最後にぎゃふんと言わされるのですが、みなさんが述べておられるようにイニシエーション・ラブよりちょっと落ちる。どうもすっきりしないところがあるのです。

No.12 4点 HORNET 2013/08/30 20:50
 一作目は「ただの恋愛小説としか思えない展開」の中で、ラストで「実は仕掛けが施されていたこと」自体が衝撃で、その仕掛けの内容や巧みさは二次的なものだったと思うので、2作目にあたる本作では、もう読み手として「そういうことが起こる」ことを予想してしまっている以上、どれだけその仕掛けを手の込んだものにしても前作は越えられないと思う。そして、やはりその通りだった。
 けど、もしこのシリーズ(?)っぽい3作目が出たとしたら、たぶんやっぱり何かを期待して読んでしまうと思う(笑)

No.11 5点 Q-1 2013/08/12 01:39
これは叙述トリックなのでしょうか?
とてもミスリードを狙ってるようには感じなかったです。

春香が一人二役やっていた理由は恐らく本当に死んだのは春香のほうで日頃春香を演じている美奈子の憂さ晴らしだろうと想像できるのですが、

春香の霊感ネタは正明の死を最後のあの表現で書きたかったためのものなのか真意を計りかねます。

倉持さんの夜逃げも何だったのでしょうか。よくわかりません。

No.10 7点 mohicant 2013/08/05 08:53
 前作より難易度は低く分かりやすい。叙述トリックの方向性としてはおもしろいが、前作の衝撃と比べればどうしても劣ってしまう。

No.9 3点 E-BANKER 2012/09/01 19:18
大ヒット作「イニシエーション・ラブ」の続編的位置付けの作品(直接の関係はありませんが)。
今回はどのように騙してくれるか、期待を込めて読み始めた訳ですが・・・

~1983年元旦、僕は会社の先輩から誘われたスキー旅行で、春香と出会った。やがて付き合い始めた僕たちはとても幸せだった。春香とそっくりな女性、美奈子が現れるまでは・・・。清楚な春香と大胆な美奈子。対照的な2人の間で揺れる心。「イニシエーション・ラブ」に続く二度読み必至の恋愛ミステリー~

ひとことで言えば『期待はずれ』。
叙述トリックがどうだとか、作者の「仕掛け」がどうだった、と評する前に・・・
一冊の「小説」として全く面白くなかった、というのが正直な感想。

トリックについては、確かに「凝ってる」といえば凝ってる。
あの序章があっての終章だから、最初は「エッ!なぜ?」という感覚になるが、ラスト2行の意味が分かると「あーそういうこと」とのことで納得がいく。(伏線もきっちり張られてたしね)
名前のアナグラムや中森明菜・宇多田ヒカルの曲名をもじった各章のタイトルもまぁお遊びとしては面白いだろう。
でも、ほぼそれだけのことではないか?
恋愛に不器用な男を巡るストーリーという点では「イニシーエーション・ラブ」と同様だが、主人公の言動があまりにイタすぎて、前作ほどラブストーリーとしても楽しめなかった。

とにかく「誉める点」が見当たらない、というのが本作に対する評価。
(続編はせめて前作くらいの「仕掛け」が欲しいところ。)

No.8 5点 haruka 2012/07/01 01:50
イニシエーションラブと比べ、物語や登場人物の不自然さが目に付いた。最後のオチは意表を突かれたが、これを期待して読んでいたわけではないので。。

No.7 7点 いけお 2012/06/07 09:52
インパクトや完成度は前作には及ばないが、それでもだまされた。
わるくはないと思うが、前作と比較するとかなり落ちる。

No.6 5点 こう 2012/02/16 23:47
(ネタバレになっているかも) 
個人的にはイニシエーションラブは全く推理せずに最終ページまで読み進めてしまいやられた読者だったので今度はどうくるか、と非常に期待していましたがちょっと期待外れでした。
 叙述に対し身構えすぎたので「これは違うな」という見当はついたんですが矛盾点をどういう風につじつまを合わせるんだろうと思いながら最終ページに達したのでラストを見た瞬間「こんな落ちかよ」とがっかりしてしまいました。
 ラストを読むとあんなセリフが伏線か、というのはわかりますがあまりやられた感じはしませんでした。
 あと同僚のエピソードが無関係なのにわざわざページを割いたのは無意味でしょう。

No.5 9点 蟷螂の斧 2012/02/12 08:05
ラストが解りやすいので、「イニ・ラブ」より衝撃度は大きかった。謎めいた序章、「オチ」はこれしかないとの思わせぶり、そしてラストのどんでん返し、お見事です。ラストへの伏線は3ヵ所あったのですが騙されました。音楽は素人ですが、「章」と「曲名」の関係で、宇多田ヒカルさんの「Can You Keep A Secret ?」が(序章・秘密をその胸に)、以下「Automatic」(2章・時は自動的に)「First Love」(6章・はるかな初恋)、中森明菜さん「スローモーション」(1章・緩やかな動き)「セカンドラブ」(5章・二番目の愛を)「1/2の神話」(7章・1/2の女)「北ウイング」(終章・北へと向かう翼)くらいが分かりました。中々凝ってますね。

No.4 6点 テレキャス 2011/04/13 08:52
言わずと知れたイニシエーション・ラヴの第2段と言わんばかりのタイトル。
前作は見抜いたつもりで余裕ぶっこいてたらラストで手痛くやられたのでその反省をふまえて、今作品は注意深く読み進めました。でも結局、撃沈でした(笑)
そこかよっ!って思わずつっこんでしまいました。

前作でハードル上げてる割には良いのかなと思いますが、劣化版なのは否定できません。

No.3 8点 虫暮部 2011/03/07 09:41
 わざわざ『イニシエーション・ラブ』路線第二弾、といわんばかりの題名をつけて読者を警戒させた上で見事に驚かせてくれた。でも終章の解説部分はあまりにもわざとらしい。
 そして、彼女の行動は確かに謎なのだが、奇しくも本書の前に読んだ京極夏彦『死ねばいいのに』にこんな台詞があって、私はそれでなんとなく納得してしまったのだった。
 「……人間は性欲だけで生きてる訳じゃねぇって言ったじゃないすか。俺もそう思いますよ。でも、人間金欲しいって奴ばかりでもねぇっすよ。(中略)面白がってただけかもしれねぇすよね?」

No.2 5点 kanamori 2010/11/07 20:06
どうしても姉妹編の「イニ・ラブ」を意識したものになりますが、全てのエピソードが伏線になっていた前作とちがって完成度はちょっと落ちますね。
そもそも女性主人公の行為が納得いきませんし、町田工場のある人物のエピソードは物語上全く意味がありません。終盤近くの男女の会話は、読者のための解説になってしまっています。


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