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[ 本格/新本格 ]
殺意の演奏
大谷羊太郎 出版月: 1970年01月 平均: 5.60点 書評数: 5件

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講談社
1970年01月

講談社
1975年04月

講談社
1999年09月

アドレナライズ
2016年09月

No.5 6点 ◇・・ 2024/01/30 19:45
大学受験に失敗して芸能ショーの司会者になった細井道夫がアパートの自室でガス中毒死していた。彼はクイズを得意にしていたが、クイズとも暗号ともつかぬ遺書のようなものが残されていた。現場が完全な密室状態だったところから、警察は自殺として処理する。数年後、兄の志を継いでアナウンサーになった弟が、ひょんなところから疑惑を抱き、恋人や兄の親友だった男と共に真相解明に乗り出す。
トリックに凝りすぎてストーリーにやや渋滞が見られるものの、魅力的な謎、論理的な展開、意外な結末の三要素に、芸能界の内幕情報が加味されて、まさしく本格派の醍醐味を感じさせる。

No.4 6点 虫暮部 2021/07/06 11:42
 ネタバレしつつ書くが……動機が人物間を伝播した点が特徴的。作者が意図した二重解決より面白い。
 Aが殺された。犯人Bの動機は“自らの能力を証明して劣等感を払拭したい”と言ったものだった。Cは、それを看破し、ほぼ同じ心理でBを殺した。
 では、それを看破したDは……? Dにもやはり同じ心理が伝播したのではないか。Dは自分が誘惑に負けるのを恐れてCに自首を勧めたのではないか。Cがあっさり自首したのは殺されると思ったからではないか。結末の部分はそういう風に読めた。

No.3 7点 クリスティ再読 2020/04/28 21:48
あれ、皆さん点がカラいなあ。本作あたり、いわゆる「新本格」のハシりみたいな作品だと評者、思ってるんだがな。だから本作も「虚無への供物」を相当、意識している作品で、上田敏「海潮音」の象徴詩論に触発されて、

一編の物語に対する解釈が、読者の好みに従って、少なくとも二つに分かれる、しかし、どちらのケースをとっても、作者が訴えたいテーマは読者に伝わる。

というリドル・ストーリー風の狙いを秘めた、密室&多重解釈モノなんだもの。明白に「匣の中の失楽」の先輩に当たる作品なんだが...乱歩賞を獲ったわりに、今の知名度がないみたいだ。残念だねえ。
まあもちろん、「虚無」の風格も「奇書度」も及ばないのはそうだけど、それ言うなら「匣」だって本作と似たり寄ったりの出来のようにも思う。ハッタリが薄くてシンプルな「匣」くらいに思って読むんなら、十分に楽しめると思うんだがねえ。それなりに良くできたメタ・ミステリというか「準奇書」だと評者は思うよ。というわけで、もう少し知名度が欲しいと思うので、「匣」よりイイ点にします。

あとどうでもいいバレで、本作は乱歩賞の選考に関するメタなお遊びがあるのでお楽しみに!

No.2 4点 nukkam 2016/03/21 06:40
(ネタバレなしです) プロのギタリストや芸能マネージャーであった大谷羊太郎(1931-2022)はミステリー作家として成功するために江戸川乱歩賞を獲得することに執念を見せており、1970年発表の本書でついに受賞に成功しました。そのため初期代表作として紹介されることが多いのですが、これは同時にかなりの異色作でもあるようです。密室や暗号など本格派推理小説らしさも十分にあるのですが、この解決はかなりの奇想系で前衛的、マニア読者やミステリー研究家向きの作品ではないでしょうか。賞狙いのためか結末以外はそれほどのひねりもなくて読みやすいですが入門編としては他の作品の方がいいように思います。ウエスタンバンドとかロカビリーとか、現代ではあまり使われなくなった音楽用語が散りばめられているのが時代を感じさせます。

No.1 5点 kanamori 2010/10/02 18:42
芸能界ネタと密室トリックが作者のトレード・マークのようで、乱歩賞の本書も例に漏れない内容でした。
二つの密室トリックに二重構造の暗号、メタミステリのような技巧的な全体の構図まで、本格パズラーに対する並みはずれた情熱は感じましたが、筆力が伴っていないので、小説としてあまり面白いとは思えなかった。


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大谷羊太郎
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1970年01月
殺意の演奏
平均:5.60 / 書評数:5