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[ 本格/新本格 ] 二重アリバイ三重奏 八木沢警部補シリーズ |
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大谷羊太郎 | 出版月: 1994年09月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
光文社 1994年09月 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | 2021/04/21 19:22 |
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(ネタバレなし)
その年の3月11日の午後9時代。練馬のマンションで、タレント活動もふくめて人気を博している若手作家、哲村玲次郎が殺された。31歳の哲村は、大学教授の娘で保育園の先生である24歳の美人・中条友美にプロポーズ中。だが返事は保留中で、さらに友美をめぐって争っている恋仇の会社員・浅田利行の存在が、捜査線上に浮かんでくる。しかしその浅田には確実と思われるアリバイがあり、さらにもうひとりの人物に嫌疑がかかるが、捜査を続けるうちに彼らには、それぞれ二重に別の場所で目撃された? 怪異な情報が確認される。 文庫書き下ろし。 あちこちに荒っぽい面もあるが、50~60年代の埋もれていて発掘された英国の技巧派パズラーを読むような感じで、かなり楽しかった。 ここではあまり書けないが、途中で作品の方向性が切り替わり、それと同時に読者の前に提示される謎の成分なども変遷してゆく。 作者的には最後まで(中略)ミステリとして息が続かないのでチェンジアップした気配もあるのだが、逆に言えばなりふり構わず、ラストまで謎解き作品としてエンターテインメントしてやる、という気概のようなものもうかがえた。とても好感がもてる。 本題の二重アリバイの真相は笑っちゃうようなところもあるが、これはこれで愛せる感じ。作者らしい? チープなトリックも個人的には歓迎したい。 ただしラストのお話としてのどんでん返しは見え見えで、深夜アニメのネットでの実況で言うなら「デスヨネー」と書き込みたくなるような感じであった。まあそんなお約束ぶりもキライじゃないよ(笑)。 楽しめるB級パズラー。小市民的なキャラクターのミステリとしての運用ぶりが、どっかクロフツっぽいティストも感じたりした。 ところで探偵役の八木沢庄一郎刑事、レギュラーキャラなんですな。個人的には初めて接しました。本作のなかでは警視庁捜査一課に所属というだけで、特に階級は明言されてないんだよね。もう警部補になっているのかしらん(叙述されてないだけでそうであったとしても、特に問題はないけれど)。 |