皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] 壺中の天国 |
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倉知淳 | 出版月: 2000年09月 | 平均: 6.16点 | 書評数: 19件 |
角川書店 2000年09月 |
角川書店 2003年05月 |
東京創元社 2011年12月 |
東京創元社 2011年12月 |
No.19 | 5点 | 文生 | 2021/08/27 03:19 |
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何万人といる街の中から一人の犯人を特定するという趣向はユニークではあるのものの、実際のところあまり成功しているとは思えません。思わず唸らされるようなロジックがあるわけでもなく、何より犯人を指摘するシーンが全く盛り上がらないのが大きなマイナスです。いままで全く登場していない人物が犯人だといわれてもカタルシスに欠けます。
とはいえ、新しいことに果敢に挑む姿勢は嫌いではなく、そのチャレンジ精神を買って5点といったところでしょうか。 |
No.18 | 4点 | ボナンザ | 2020/07/02 00:29 |
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猫丸シリーズの短編を長編に引き延ばしたような内容。いくらなんでも不必要に長すぎる。 |
No.17 | 5点 | いいちこ | 2017/01/10 19:54 |
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犯行プロセスと登場人物の丹念な描写を通じて、現代人の精神の病理(壺中の天)を抉り出した構成力と筆力は高く評価。
一方で本作は、「限られた登場人物の中から犯人を消去法的に特定する」通常のプロットではなく、「不特定多数の中から突如犯人を特定する」異色のプロットを採用しており、それを成立させた力業と力量は認めるものの、ミステリとしては明らかに裏目に出ていると言わざるを得ない。 こうしたプロットを採用した場合には、犯人特定のロジックが余程に強固でなければ、読者の納得感やカタルシスが得られない。 その点、本作は各所に張り巡らされた伏線を巧みに活かしているものの、やはりそのロジックは弱い。 非常によく考えられた意欲的な作品であり、1個の読物としての完成度も高いだけに、極めて惜しい作品 |
No.16 | 6点 | あびびび | 2015/11/17 03:02 |
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本格としては微妙な作品だが、フィギア作りのページがサスペンスを盛り上げている。殺意を抱くには伏線が弱いと感じるのは普通の感覚だからで、犯人のような異常者には当然のことなのだろう。
そのあたりの効果を出すために長い作品になったが、短編でこの犯人では困る。色々な要素を鑑みると、すべてが計算されているのだなと思う。 |
No.15 | 6点 | 505 | 2015/10/29 20:36 |
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やや間延びしている印象は拭えず、第1回本格ミステリ大賞を受賞した作品であるが、ミステリの味わいは深いものがあるとしても、〝本格ミステリ〟という部分は弱い気がする。法月綸太郎は、倉知を〝天然カー〟と評していた。この作品もその傾向は御多分に洩れず。
構成としては日常パートと被害者視点のパートと謎のオタクによる記述と電波怪文書が順番に並べてある。構成の妙によって、ほのぼのとした雰囲気が漂う作品となっているが、〝次に誰が狙われるのか〟が分からないサスペンス調が実に中和されている。倉知淳の味といえばそれまでであるが、日常の描写と非日常の描写を分けたことによって、緊迫感はやはり薄らいでいるので、電波系連続通り魔事件という殺伐としたサイコ的雰囲気が無いのは、もしかしたら読者を選ぶ要因となるかもしれない。 事件自体は怪事件である上に、容疑者が絞り込めないサスペンス度の高いものではあるが、日常パートの安心感が奇妙な落差を生むために、不思議と事件の凄惨さが遠い出来事に思える。探偵役たちも事件から〝離れた位置〟にいるように思えるために、日常パートと非日常パートのメリハリが付きすぎている。その辺を〝天然カー〟の醍醐味だと表現しても問題はないだろうが、薄いものは薄いと感じた。 本編全体にあるのは、ミッシングリンクとしての魅力にある。そして、その真相は実に単純明快かつ挑戦的である。風刺的と言っても差し支えないだろう。 しかし、フーダニットの弱さは否めず。〝通り魔〟という特性を存分に活かしたフーダニットであることには違いないが、エンタメ性はなく、カタルシスも欠けている。 とはいっても、探偵役の圧巻のプロファイリングといった解決篇の勢いは凄まじいものがあり、堅固なミッシングリンクを強烈に公開する流れは満足感の高いものがある。おばさん怪文書といった最初から提示されていた手掛かりから導かれる犯人像の絞り方をベースとした怒涛の推理はミステリパートのオチに相応しい巧さ。なかでも第2の被害者でもある甲斐靖世が出演していたビデオの使い方と人間心理は絶妙である。 また、犯人の独白にある、電波系要因の大きな仕掛けは大きな拍手を。ここまであからさまに提示されていたとは思いも寄らず。被害者目線で描かれているパートなので、巧妙に錯誤を生みだしている。言葉の受け取りによる認識のズレが秀逸。 さらに、〝閉鎖型の本格〟ではないところからの作品としての拡がりが、電波系連続通り魔事件にそれなりのリアリティを生み出している部分は評価すべき点である。作中に一度も描かれていない人物が犯人という可能性すらも〝有り得る〟空気感を醸し出すことには成功しており、容疑者が〝不特定多数〟という『クローズドサークル』には相容れない要素を〝天然カー〟の味付けで料理している技術は確かなものである。荒業でありながらも、ギリギリとしての線を残しつつ確立している意匠。作家としての引き出しを感じさせる作品となっている。 |
No.14 | 4点 | 蟷螂の斧 | 2014/01/04 11:15 |
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副題に「家庭諧謔探偵小説」とあり、日常のユーモア?を描きつつという趣旨なのか?。ミステリー的要素(特にミッシング・リンク)は弱い感じがしました。第1回本格ミステリー大賞とのことですが、選出理由がよくわかりませんでした。何しろ長過ぎますね・・・。 |
No.13 | 5点 | メルカトル | 2013/12/29 22:38 |
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再読です。
長い、とにかく長すぎる。せめて文庫で400頁くらいなら6点だったのに。長尺のわりにスケール感がないのは、連続通り魔殺人事件?が狭い地方都市に限定されていることや、舞台が家庭内や町内に限られていることが挙げられると思う。それと、何やら怪しげな衒学趣味が無駄に放り込まれているのも一つの原因と言えそうだ。 事件の中核を担う、4人の被害者の共通点、いわゆるミッシング・リンクが最後に明かされるが、分かったような分からないような理由で、素直に首肯しかねる感じであまりスッキリはしない。 また冒頭の訳の分からない怪文書は、一体これから何が始まるのかと読者に期待を持たせるが、結局それ自体は事件とは無関係であって(多少影響を及ぼしはするが)、作者の手口としてはあざとく、あまり誉められたものではないと思う。 一方、主人公の知子をはじめ登場人物の造形はしっかり描かれているので、その点は評価したい。 それにしても、本作が第一回本格ミステリ大賞を受賞した事実は何を物語っているのだろうか。その年が余程不作だったとしか思えないのだが。 |
No.12 | 9点 | mohicant | 2013/08/03 22:52 |
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倉知淳の作品の中では一番好き。本格だと思って読めば拍子抜けしてしまうだろうが、本格かどうかなんか度外視して楽しめた。各登場人物の描き方がとても丁寧であり、それだけでも楽しめた。 |
No.11 | 6点 | 江守森江 | 2009/05/22 05:48 |
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本格ミステリ大賞を何故受賞できたのか?
本格というよりオタク&プロファイリング小説路線の作品 普通に小説としては面白いが、犯人を知って何らカタルシスを得られない微妙な推理小説だった。 |
No.10 | 6点 | ロビン | 2008/12/07 18:01 |
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この人の作風というか描く世界観が連続殺人という猟奇性に合っていないため、緊迫感や恐怖感といったものはまるで感じられない。
とはいうものの、いったいどうやって事件を解決するのかと思いきや、いたるところに伏線が散りばめられていたのね。なんというか「無から有を生み出す」ロジック。 欲を言えば、狂気に隠された正気を期待していたが、結局動機は狂気のまま。 ただ、探偵役の人物の「壷中の天」の思想には賛同。おそらく僕も含めて、このサイトに書き込みをしている他のみなさんにとっても、ミステリーが「壷中の天」なのでしょう。 「男が自分の弱いところを見せるのは、好きな女の前だけだ」とは、言うねえ笑 |
No.9 | 7点 | VOLKS | 2008/04/09 22:00 |
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平和な小さい町に突然訪れた殺人事件と怪文書を、平凡な家庭の主婦からの目線で捉えた小説。長編ではあったが、一気に読むことが出来た。
謎を解明する「探偵役」の登場人物がいい。 |
No.8 | 3点 | いけお | 2008/01/05 01:24 |
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無駄に冗長に感じた。 |
No.7 | 8点 | itokin | 2008/01/01 17:18 |
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込み入った謎解きをあまり好きでない自分にとってはこうゆうのが一番好きだ。最後までだれることなく楽しめた。終わり方がほのぼので後味が良い。 |
No.6 | 5点 | ほっとプレート | 2004/03/31 21:02 |
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う〜ん、おしい。最後に何かを期待したのがいけなかったのか? |
No.5 | 5点 | やじばら | 2003/07/14 06:54 |
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決して面白くなかったわけではないのだけど、「賞」をもらう程かといわれると微妙。構成が凝ってはいたんですけど、効果という意味でも微妙でした。個人的に、作者自体は好きなんですけどね。 |
No.4 | 8点 | ao | 2002/06/21 03:42 |
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作品としての面白さを支えているのは、倉知淳独特のユーモアある語り口や雰囲気。「壺中の天」を絡めたエピソードなど見所も他にある。ただ≪本格≫として見るとイマイチ。何故正太郎は解答に辿り着けたのか?伏線も弱い。本格を求めない読者なら十分楽しめる作品だろう。 |
No.3 | 7点 | 由良小三郎 | 2002/01/07 18:52 |
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僕にとっての初めての倉知作品です。 他の作品の雰囲気を知らないので、登場人物が魅力的に書いてあるとは思いましたが、犯人と登場人物たちとの距離が随分遠いミステリというのが新鮮なのでしょうか。 |
No.2 | 9点 | たぬきち | 2001/11/28 03:16 |
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表紙に惹かれて読んだ、初めての倉知淳作品。読後感が良かった。自転車に乗って走りたくなる。電子レンジ使う時は離れるクセがついた。 |
No.1 | 9点 | しゃん | 2001/11/19 14:45 |
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普通の生活が書き方次第でミステリもしくはサスペンスになるという事に気づかせてくれました 脱帽! |