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[ 青春ミステリ ]
海を見ないで陸を見よう
「青春三部作」芦川高志
梶龍雄 出版月: 1978年05月 平均: 7.00点 書評数: 6件

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講談社
1978年05月

講談社
1984年08月

No.6 7点 レッドキング 2018/10/07 18:04
ケム・ナンの残酷な青春小説「源にふれろ」のテーマは「源にふれるな」。すなわち「海を見ないで陸を見よう」。

No.5 7点 蟷螂の斧 2013/11/21 20:07
終戦直後の青春群像を描いた秀作。ミステリー的には、伏線の妙のお手本。

No.4 7点 おっさん 2013/08/23 15:55
終戦から三年目の、進駐軍統治下の、夏。
大学生・芦川高志は食料難の東京都心を離れ、愛知にある、海ぞいの伯母の別荘に滞在することになった。
再会した幼なじみの姉妹と旧交を温めるうち、その妹のほうが、やがて岬の潮だまりで溺死体となって発見され――高志は今さらのように、自分が彼女・戸張津枝子を愛していたことに気づき、打ちのめされる。
そんな高志のまえに現われた、ひとりの刑事。津枝子の死に不審があるという、匿名の電話を受けて、関係者から話を聞いていると言うのだが・・・

『透明な季節』で第23回江戸川乱歩賞を受賞した梶龍雄が、同一主人公で翌昭和53年(1978)に発表した続編が、本書。
といっても、ストーリーは前作から完全に独立しており、これ単独で読んでまったく問題ない半面、あれだけの事件(経験)がまったく言及(反映)されないのは、この主人公の連作ストーリーとして、若干の違和感を覚えました(きつい言いかたをすれば、キャラクターを再起用した意味が無いような)。

さて。
『透明な季節』のレヴューでは、E・C・ベントリーを引き合いに出しましたが、おお、こちらはA・E・W・メイスンではありませんか。カジタツは黄金時代英国探偵小説の継承者かw
その他、脳裏をよぎった名前には、狩久、クリスチアナ・ブランド、それに刑事コロンボなどもあり――マニア(SRの会)出身の作者らしく、既存のギミックを自在にアレンジ、組み合わせることで自作を構築しています。
そのマニアックさは、一見、“少年のひと夏もの”の、回想を多用した(さながら、早く来すぎたトマス・H・クック)青春小説タッチのかげに隠れて目立たないわけですが。

主人公の、年上の女性への思慕が、ミステリのプロットに融合していなかった『透明な季節』にくらべると、恋愛感情をふくむ青春小説的要素が、ことごとくミステリ要素と不可分なつくりになっている点で、本書は格段に優れています。
また、解明の論理に乏しかった前作への反省からか、張りめぐらした伏線(前段のストーリー展開を印象づけていたフラッシュバックが、いかに計算されたうえでの構成手段であったことか!)を援用した終盤の謎解きには、相当に力が入っています。

ただ。
犯行手段は、ぶっつけ本番でそううまくいくだろうか? という疑問をぬぐえませんし、浮かびあがる犯行の経緯――いくつものトリックを弄した計画犯罪――と、犯人のエモーショナルな“動機”が、乖離してしまっているのではないかな?
作者も動機面の弱さは意識していたのか、蛇足のような「血」の問題を持ち出していますが、それはいささか安易な(そして偏見を露呈する)決めつけのように、筆者には思えます。

『透明な季節』に付された「著者のことば」には、「謎やトリック」と「人間」、そのどちらにも注力してなおかつ、「不自然でない面白い」推理小説を書きたい、という梶の理想が綴られていました。
その理想からすれば、本書もまだ遠い出来でしょうね。しかし、理想を高く掲げて、自分のペンでそれに近づこうとする真摯さには、強く惹かれるものがあります。

名探偵システムをとっていないから出来る、“探偵役”の処理とその効果、最後に明確化される、「海を見ないで陸を見よう」というタイトル、それが意味するもの――読後の余韻は上々です。

No.3 6点 nukkam 2012/07/12 20:22
(ネタバレなしです) 1978年発表の長編第2作の本格派推理小説です。第1作の「透明な季節」(1977年)から作中時代が4年が経過した設定で同じ主人公(芦川高志)が登場していますが、前作のことに全く触れていないのでどちらを先に読んでも支障はありません。青春小説要素が濃いのは前作と共通していますが前作が後半になるとミステリー要素が薄くなるのとは対照に、本書は後半になるほど本格派推理小説として充実したものとなり、最終章では豊富な伏線に基づく推理が披露されています。容疑者の中に進駐軍所属の外国人が登場するためか英語交じりの会話が多いですが、現在の日常会話には定着しなかった単語が結構多いですね。

No.2 8点 kanamori 2010/06/25 22:07
初期の終戦直後を時代背景とした青春恋愛ミステリの一冊で、「透明な季節」と登場人物が重なりますが、単独で読んでも支障ありません。
知多半島東舞子の海水浴場を舞台に、主人公の大学生が慕う女性の死の謎を中心に据えたミステリですが、ミステリ以前に青春恋愛ものとしてノスタルジックな物語で、非常に読み心地がよかった。
ミステリとしては派手なトリックはないものの、多数の伏線が物語と綺麗に融け合っているのが美しいと感じました。

No.1 7点 こう 2009/10/27 00:10
 昨年発売された本格ミステリフラッシュバックというガイド本のお薦めで読んでみました。
 本作品は透明な季節の続編にあたり昭和20年代を舞台にした青春ミステリといった趣きでした。正直犯人を含めた登場人物の心理は理解し難いところもありますし殺人トリックもどうということはないのですが確かに伏線が多数張られている作品で作品の構成は楽しめました。
 これから梶龍雄作品を読み進めていきたくなりました。


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梶龍雄
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