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[ 本格/新本格 ]
裏六甲異人館の惨劇
映画監督・五城シリーズ
梶龍雄 出版月: 1987年09月 平均: 5.50点 書評数: 2件

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講談社
1987年09月

No.2 6点 人並由真 2022/04/09 08:08
(ネタバレなし)
 映画の助監督(雑用係)である20台の青年・吉田隼人は、とある仕事で神戸に来ていた。吉田は深酒の果てに地元のタクシーを利用するが、酔って朦朧とした頭で、近隣に建つ異人館の周辺で殺人前後の光景を見たような気がする。その直後、地元の大学教授・真隅重弘の屋敷の異人館で、来客である外国人の老人ウッドリッチの死体が実際に発見された。吉田が目撃したのはこの殺人の現場だったのか? だが殺人の状況は、吉田の記憶と相応の異同があった。映画業界で吉田と名コンビを組む監督の五城秀樹は、かつて奥秩父での殺人事件を解決したアマチュア名探偵で、今回もこの怪事件に乗り出すが。

 『奥秩父狐火殺人事件』に続く、映画監督でアマチュア名探偵・五城のシリーズ第二弾。とはいっても登場作品はこの2つしかないみたいだし、しかも前作で「五城賀津雄」という設定名だったはずの五城監督は、今回はなぜか名前が「五城秀樹」に変わっている。本作の作中では前作の内容に則った奥秩父での殺人事件の話題も登場するので、大枠としては同一シリーズのハズだが、厳密にはニアイコール世界のパラレルワールド、近似の存在の別の主人公として書かれているかもしれん? なんでそんなややこしいことになったか知らんけど。
(『奥秩父』は10年くらい前に、当時としては珍しく人物メモまで作りながら読了したはずだが、もう細部はトリックも犯人もふくめてまったく忘れてる。まさか、前作のラストで某EQの長編の終盤みたいに、メインキャラクターが改名していたってことはないと思うが?)

 事実上のメインヒロインといえる異人館の女主人=重弘の美人の奥さん・絹子の名前が中盤になるまで登場しない(本人は序盤から登場しながら、しばらく「真隅夫人」と地の文でも呼ばれてた)。
 特にそのことに小説やミステリとしての意味なんかなく、この辺りもふくめて全体的に雑な文章で小説だという感慨も生じたが、量産期の梶作品ならこういうものもあるか、とも思ったり。

 それで裏表紙には「恐るべき真相が明らかになる!」とあるが、最後まで読んでああ、そういうことね、という感じ。正直、大山鳴動して鼠一匹のパターンだが、しつこくしつこく張ってあった伏線を回収しまくる作者の執着は、ちょっとトキメいた。
 前半から怪しい人が本当に(中略)だったのは困ったもんだけど、トータルとしてのキャラクター描写は、グレイゾーンでまあまあ良い仕上がりになっている気もする。
 しかし読みやすい割に、クライマックスに至るまでの部分では「ワクワク面白いからリーダビリティが高い」という感覚などとはまるで無縁で、なんだかな、である。

 例によってAmazonでとんでもない古書価がついているけど、もちろんそんな大枚払う作品ではないです。自分は、15~20年くらい前にブックオフで105円で買っておいて、ずっと放っておいた蔵書を気が向いて読んだけど。
 興味がある人は図書館か人からか借りるか、安い古書に出会えるのを待つか、あるいは、また動きのあるみたいな梶作品復刊の波に乗るのを期待するか、その辺がよろしいかと。

No.1 5点 kanamori 2011/01/13 17:47
映画のロケハンのため六甲山へ出向いた助監督が、酔っ払って覗いた別荘で殺人を目撃するという発端の本書は、映画監督・五城が探偵役を務めるシリーズの一編らしい。
まえがきで”殺人とは零点である云々”とあり、しきりにクリスティの「ゼロ時間へ」のオマージュであるかの如く書かれていますが、メイン・アイデアは、むしろ女史の別作品のヴァリエーションでしょう。
やりたかった企みは判るものの、それが機能しているかは微妙です。


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